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特権階級

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第五章

「それやったら」
「先生はちゃう言うてるけどな」
「共産主義は差別がないって」
「皆平等やてな」
「それで幸せな国やって」
「特にあの国は地上の楽園やで」
「けどや」
 賢章はまた言った。
「話を聞いてたら階級社会やぞ、共産主義国家って」
「特にあの国はか」
「ガチガチの階級社会か」
「そやねんな」
「そうとしか思えんわ、平等ちゃうやろ」
 それこそどう考えてもというのだ。
「中学の時の先生言うてたけどな」
「ああ、菅野先生やな」 
 同じ中学から高校に進んで今は同じクラスの友人が応えた。村川十三といい今はリーゼントにしているが丸い顔には似合っていない。
「あの先生がよお言うてたな」
「そや、あの先生がや」
「いつも言うてたな」
「あの先生の言うてることもな」
「おかしいっていうねんな」
「今はそうちゃうかって思うけどどうやろ」
「そういえばあの先生な」
 その菅野についてだ、十三はこう話した。
「今組合でのしあがってるらしいで」
「先生のか」
「そや、先生の労働組合でな」
 日教組、正式名称を日本教職員組合というこの組織でだ。
「偉くなってるらしいわ」
「そうなんか」
「けどあの先生の言うてることはか」
「今はおかしいんちゃうかって思ってるわ」
 どうにもというのだ。
「何かな」
「そやねんな」
「まだはっきり言えんけどな」
 疑念、それも強いものを感じているというのだ。
「そうちゃうか?」
「そうなんか」
「あの国もあの先生もおかしいやろ」
 首を傾げさせする、疑念にそうさせられた。
「そう思ってきたわ」
「ほなどうするんや?」
 十三にあらためて問われた。
「御前は」
「あの国についてか」
「おかしいって思ってるんやろ」
「それやったらどうするかか」
「ああ、どうしていくんや」
「とはいっても他の国やしな」
 日本ではない、だから直接どうかは出来ない。そもそも一介の高校生に何かが出来る筈もないことだ。大阪の普通の高校生に。
「何も出来んわ、けどな」
「それでもか」
「調べて勉強することは出来るからな」
「それでやな」
「ちょっとあの国について調べてくわ」
「共産主義についてもか」
「学生運動も変や思うしな」
 近頃巷で騒いでいる彼等についてもというのだ。
「平和とか言いながら棒持って暴れ回ってな」
「全然平和やない」
「やってることは暴力やし」
「あの人達も何かちゃう」
「そうやっていうんやな」
「そや、学生運動もおかしいやろ」
 彼等もというのだ。
「そうも思うしな」
「共産主義自体についてもか」
「調べてくんやな」
「よお見て」
「そうするわ、おかしいって思うしな」
 祖父の昭彦が中学時代の彼に言った通りのことを感じているからだ、だからこそ彼はそうすることにした。そして。
 彼は高校でも大学でも調べていった、大学は幸いにして学費もあり成績も上々だったので市立大学に入学出来た。そこにも革命や共産主義が好きな教授や学生がいたが。 
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