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生贄になった神

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第二章

「その頭を岩で割りだ」
「殺すか」
「そうするか」
「そうする、頭を割りそれから三人で首を締めてだ」
「止めを刺す」
「息の根を止めるか」
「そうしよう、とにかく寝込みを襲って一気に殺す」 
 ユミルがそのチカラで反撃に転じないうちにだ。
「さすれば世界は我等のものだ」
「よし、ではな」
「ユミルが寝る時を待とう」
「そして彼から世界を奪おう」
「我等がこの世界の主となるのだ」
「ではな」
 オーディンは弟達に話し終えると早速その用意に入った、大きく先が尖った岩を探し出した、それも人数分だ。
 そしてユミルの首を絞める為の紐を自分達の髪と髭から作った、そこまでしてからだった。
 ユミルが寝た時を見計らって近付いてだ、そうして。
 彼に近付いて三人でだ、その頭を次々と割り。
 何が起こったかわからないままの彼の首に紐を巻きつけて三人がかりで絞めつけた。これでさしもの巨人もだった。
 反撃する間もなく息絶えた、その様子を見てだった。
 オーディンは弟達にだ、こう言った。
「ユミルは死んだ」
「間違いなくな」
「そうなったな」
「これで我々が主だ」
「この世界のな」
「そうなった、それでだが」
 オーディンは弟達にさらに言った。
「ユミルの流れた血でだ」
「うむ、頭を割った時の血だな」
「また随分と出たな」
「そしてその血でだ」
「我々にとっていいことが起こった」
 二人は周り、ユミルの血で満ちた世界を見た。見るとだ。
 その血でだ、世界が流されてだ。
「他の巨人達がいなくなった」
「最も厄介な者達がな」
「我々を脅かす者達が」
「流されて死んだ」
「人間達は残っているが」
 オーディンは彼等にはこう言った。彼等が創造した者達は。
「彼等はいい」
「そうだな、彼等についてはな」
「我々の民だ」
「そして我々を崇拝し力にもなる」
「有り難い者達だ」
「彼等が残ったことは幸いだ」
 人間についてはこう言うのだった、そして。
 あらためてだ、オーディンは弟達にこうも言った。
「それでだが」
「まだ何かあるのか」
「巨人はいなくいなり世界は我等のものとなったが」
「残っているのは我々と人間だけだが」
「何かあるか」
「味気ないとは思わないか」 
 オーディンが言うのはこのことだった。
「どうにも」
「言われてみればそうだな」
「この世界は何もない」
「我々はいるが」
「他には何もない」
「これでは我々が支配しても味気ない」
 こう弟達に言うのだった。
「違うか」
「いや、その通りだ」
「兄者の言う通りだ」
「これではどうにもな」
「治めても張り合いがないな」
「だからだ」
 ここでオーディンはさらに言った。 
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