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暁ラブライブ!アンソロジー【完結】

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君のことは。 【映日果】

 
前書き
お待たせしました!!企画のスタートです!!トップバッターは『限られた日々の中で~女神と歩んだ1年~』等を執筆している映日果さんです。テーマは『バッドエンド』、残酷な描写が含まれているため、閲覧の際はご注意ください。




別の小説投稿サイトでラブライブなどの小説を書いている映日果です。
某映画とタイトルが似てる?そう思った人はきっと、えっと、きっと……
と、とりあえず本編をどうぞ!
べ、別に思いつかなかったわけじゃないんだからね!
 

 

「今日はお買い物付き合ってくれてありがとね、凛ちゃん」
「凛もかよちんとお買い物するの好きだから気にすることないにゃ」
手にはいくつも紙袋を持った女子高生が二人、わいわい話しながら帰っていた。
この二人はμ'sのメンバーの小泉花陽と星空凛である。
トップアイドルである彼女たちもプライベートでは普通の女子高生。楽しく買い物をしてきた帰り道。
「あれ……?」
ふと凛が足を止めた。
「どうしたの、凜ちゃん?」
「近くで猫ちゃんの声が聞こえた気がする……」
「そう? 私は全然だったけど……」
花陽より凛の方がこういうことに、特に猫の鳴き声にはとても敏感であることを彼女は知っていた。それゆえに
――気のせいじゃない?
そんなことを言うことはできず。
「ちょっと探してみる?」
そう、親友に答えてしまった。
「うん! ありがと、かよちん!」
凛はすぐに駆け出す。当然、元陸上部の彼女のスピードに花陽はついていけないわけで。
「ま、待ってよ、凛ちゃん!」
あっという間に置いて行かれた。





「あれ、かよちん? またおいてきちゃったにゃ……」
またやってしまった、凛はそんな風に一瞬落ち込んだが、すぐに追いつくだろうと楽観してまた猫探しに注意を戻した。
「凛ちゃん、どこに行っちゃったのかな? たぶんこっちに来たと思うんだけど……」
遅れること数分、先ほどまで凛がいたところに花陽がやってくる。
「凛ちゃ~ん! どこぉ?」
花陽が心細そうに声をかけながら探し始める花陽。奇しくもそれは凛が進んだ方向と同じだった。
かくして二人は徐々に距離が縮めていく。
「やめて! なんでねこちゃんをいじめるにゃ!」
ある路地に差し掛かった時、花陽は親友の声を聴き、その路地を覗き込んだ。







「猫ちゃんどこかにゃ~?」
走りながら路地をのぞき込みつつ探していく。
「おっかしいなぁ、こっちじゃなかったのかにゃ?」
スピードを落として早歩きになった凛。
猫の声も聞こえることはなく、とりあえず引き返そうかと考えていたとき
――にぎゃあああ!!
まるで猫の悲鳴のような鳴き声がかなり近くで聞こえた。
はじかれるように走り出した凛。聞こえたであろう路地に急いで向かうとそこにいたのは凛よりもかなり大きい体の男が三人と彼らに囲まれうずくまっている子猫が一匹。
とっさに隠れた凜の足は震えていた。猫は助けたい、だが、自分に何ができるだろうか、もし襲われたら……そう思うと凛は躊躇してしまう。
――にぎゃああ!!!!
鈍い音とともにまた猫の悲鳴のような声が聞こえた。
思わず飛び出した凛。
「やめて! なんでねこちゃんをいじめるにゃ!」
気づけば口に出していた。
「ああ? なんだてめぇ。女が何口出してんだよ!」
「い、いや、り、凛は……」
男たちの威圧に気圧され、凛は少し後ずさる。
「あれ、よく見たらこの子結構かわいいじゃん?」
「あ、俺この子知ってる。μ'sの星空凛じゃなかったっけ?」
「マジで!? なんか話題になってるやつか! なあお嬢ちゃん、いや、凛ちゃんだっけ? ちょぉっと体貸してくれない? そしたら猫も返しちゃうからさぁ」
「い、いや! や、止めてください!」
嫌がる凜の腕を無理やり持ち、上に引き上げる。とっさに反抗した凛の手が不良の一人にぶつかった。
「ほう、いい度胸だな、これはたっぷり体で話をしねえとだめみたいだなぁ……」
「え、いや……! な、なんでそんなことする、にゃぁ!」
青いブレザーを取られ、彼女のブラウスに手が伸びた時
「や、やめてください! り、凛ちゃんに、手、出さないで!」
「かよちん!? 来ちゃダメ! 逃げて!」
こんな状況だが、凛は幼い頃のある記憶が思い出される。
交通博物館で凛が警備員に注意されてた時、花陽が助けてくれた記憶。それを思い出すと不思議と力が湧いてくる気がした。
「にゃあ!!」
凛が不良の手を振り切り、花陽のもとに走る。
「大丈夫だよ、かよちんは凛が守ってあげるから」
「凛ちゃん! 一緒に逃げよ?」
凛は頷き、花陽の手を取り、走り出す。
だが、ここは路地裏。しかも自分たちが知らない道。
そんな中、この場をホームとしている彼らから逃げられるはずはなく。まして、花陽と言う足手まといがいる中ではスピードも出ない。
かくして、彼女たちはあっという間に差を詰められてしまった。
「本当に最高だよ、お前ら。でももう諦めろ……っよ!」
凛のタックルが見事に決まり、一瞬よろける。その隙に二人は抜け出し、また駈け出す。
「……あの女ぁ……絶対許さねえ……!」
おもむろに取り出したのは折りたたみ式の小さなナイフ。それを手の中で開き、刃を出す。
「多少手荒になっても手に入れてやる」



「あれ? 凛ちゃん、花陽ちゃん、そんなに走ってどうしたの?」
走った先に偶然いたのは二人が想いを寄せる春人。
「春くん、ここにいちゃダメ! 早く逃げないと!」
「逃げる? 本当にどうしたの、凛ちゃん。花陽ちゃんも何か言って……」
そこで言葉は切れた。背後に迫ってくる男たちに気がついたから。
「ちょっと痛い目みないとわからないみたいだな」
そう言って、駆け寄ってくる不良の手にはナイフが光る。
不良の狙いは凛ではなく花陽。より近くにいたこともあるが、狙いはもう1つあった。
「かよちん! 逃げて!」
「ぁ、ぁ……」
萎縮してしまった花陽は動くことができない。花陽は覚悟を決め目を瞑る。











だが、いつまで経っても来るべき肉を引き裂かれる感覚は訪れなかった。同時に人が倒れる音が聞こえた。
恐る恐る目を開け、映った光景は











――血だまりの中に沈む春人だった。










「は、はると、くん……?」
花陽は恐々名前を呼ぶ。
「はなよ、ちゃん……だ、大丈夫だった……?」
呼びかけに答えるようにゆっくりと立ち上がる。
腹回りは血にまみれ、流れ出した血で顔も汚れた彼は笑っていた。
「花陽ちゃんたちは……絶対に、守る……」
そう言って、一歩、また一歩と不良たちに近づく春人。
「ば、ばけもの……き、気持ち悪いんだよ……こっちくんな!!」
不良たちは一人、また一人と消えていき春人を刺しと張本人も狂っているような春人の姿についに逃げ出した。
「もう……大丈、夫……だよ……はなよ、ちゃん、りん、ちゃ……」
安心させようといつも通りの笑顔を見せようとした春人が花陽と凛に振り返る。
「ひぅっ!」
「こ、こないで……」
「え……?」
普段のように近づこうとした春人の足が止まる。
「こ、怖い……」
「こわいにゃ……」
あからさまに距離を取る二人。
「な、なん、で……」
守りたかったものに拒絶され、彼は何を最期に思ったのか。それは彼にしかわかりえないが少なくとも失意のどん底にいることは間違いないだろう。
その光景を最期に、彼の時間は止まった。









春人は他の人の通報により病院に運ばれた。
奇跡的に重要臓器、重要血管は避けていて一命はとりとめました。だが、出血量が多すぎた。
――脳死の可能性
医者から言われた診断はこれだった。
脳死、蘇生する可能性がある植物状態とは違い、二度と意識を取り戻すことはない、完全に機械に生かされているだけの状態。
花陽と凛はあの時拒絶した罪悪感からか一度もお見舞いに来ていない。
花陽はご飯がのどを通らなくなり、自室にこもって泣いてばかりいる。
凛は夜走ることがなくなり、あのラーメンの屋台行くこともなくなった。








そして……







――彼女たちは悲しみだけを心に抱え















――春人との記憶をすべて忘れ















――彼の存在自体を忘れ去った 
 

 
後書き
どうでしたでしょうか?
タイトルの意味、少しでも伝わったら嬉しいです。
まさかのトップバッターでしたが、この先の作家さんは皆さん私より面白い小説を書いている方々なので私も楽しみです!
長々と書くのもこれくらいにして、最後に。
私の小説、読みに来てね!(ダイマ) 
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