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HUNTER×HUNTER 六つの食作法

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001話

「……あれ?」
 
ふと周囲を見回す。まず目に入ってくるのは晴れ晴れとした青空と白い雲、典型的な快晴の空だ。次に飛び込んでくるのは木に地面に生えている草に花。のどかな草原といった表現がぴったりと当てはまる。身体を起こす、次に思ったのはどうしてここに居るのかと言う疑問点。

「……?」

立ち上がる、普段と同じように立ち上がるが膝に手を置き力を込めた時違いに気付く。

「ぬぁっ!?」

余りの力にそのまま膝を押し込み地面へと転がった。何気なく力を込めたはずだった、だが自分は大きく一回半回転し再び地面に倒れた。何処かからの調子は悪くない、寧ろ良いほど。それなのに一体何が起きているのだろうか……そんな時だった、不意に身体に電流が走るかのような強い感覚を覚える。記憶、知識、経験が次々と脳裏に蘇って来る……眩暈がする、動悸が止まらない。

「ぐぁ……―――っぁぁぁぁぁぁ!!!!」

声にもならない悲鳴、苦痛だけに溢れている感情が全身を突き抜けて声として外へと出て行く。何時収まるかも解らない地獄のような時間、一体どれだけの時間が立っているのかさえ解らない。痛みで感覚が麻痺して時間の感覚が消え伏せているのかもしれない。そんな思いを抱くほどに苦しみ抜くと漸く痛みが消え去った。

息は上がり、精神は衰弱していた。地獄そのものを垣間見たような気もした、だが代わりに得た物もあった。身体に溢れている力だ、痛みで閉じていた瞳を開けると全身から吹き上がる蒸気の如き上がっている湯気のような物が見えた。それがなんなのかも地獄の代償で理解していた。

「オーラ、か……」

オーラ、生命から溢れ出す生命エネルギーの俗称。そしてオーラは個人によって差があり特徴も違う、このオーラを自在に使いこなす者達を念能力者と呼ぶ。

「解った……ここが『HUNTER×HUNTER』の世界だって事が」

彼、時保 久世は所謂転生者。人生を一度終えたがある事情による二度目の生を得た人間である、事情とは人間が上位の存在と崇める神によるものである。久世が遭遇した神は酷く人間くさい存在だった、自分を転生させる理由としては退屈だから、人間に神が介入しその人間が過ごす生がどんな物が見たいからと言う理由で彼は二度目の生を手にした。

「………自然と、出来たな。纏」

静かに瞑想するかのように集中する、溢れ出ているオーラが出尽くさず身体の周囲を巡回するよう。心臓から送り出されていく血液のように全身の隅から隅まで滞りなく巡るかのようにイメージ、それを行う。オーラが先程のように溢れ出し続けると自分のエネルギーを無駄に放出し続けている事になる、使わない燃料に無駄にしないようにする。

「さて……俺が望んだのは健康で頑強な強い肉体、人に好かれやすくなる事、自由に物を出し入れできる空間倉庫、そして……」

病気がちだったから望んだ健康で健康で強い肉体、そして生前はボッチだった為人に好かれやすい性質を、沢山の買い物をした際に重くて辛い思いをしないように空間倉庫を。そして―――瞬間、久世は5メートル以上先の地面に立っていた。瞬間移動ではない、瞬間的に地面を10回以上蹴る事で爆発的な加速をした。

「うし、まだこの程度しか出来てないけど俺にも使えるぞ―――"六式"」

最後に望んだ事、それは"ONE PIECE"に登場する人体を武器に匹敵させる超人的体術"六式"の会得であった。指銃(シガン) 鉄塊(テッカイ) (ソル) 紙絵(カミエ) 嵐脚(ランキャク) 月歩(ゲッポ)、これらの体術を自分は習得している。知識として熟知し、経験としてはあくまで使用できるレベルの最低限のレベルで身体が知っている。これから自分がする事は

「六式を鍛え上げると同時に念能力を鍛える事……!!!」

病弱でまともにスポーツも出来なかった彼は喜びに浸っていた、これからどうやって身体を鍛えて強くなってやろうかと。そして彼は気付けば修行に没頭していた……。



「へいらっしゃい」
「おう邪魔するぜ」

ザバン市の一角にある定食屋を営んでいる親父が入ってきた客を見て思った事はデカい、だった。身長は楽に2メートルを超えているに加えて身体は非常にがっしりとして身長以上の大きさと威圧感を感じられていた。そして同時に感じる異様な存在感と力を、多くの人間を見てきたが初対面でこれほどまでに凄みを感じるのは久しぶりと言わざる得なかった。

「?親父、どうかしたか?」
「んっああいや何でもねぇや!悪かった、注文は?」

思わず男に見入ってしまっていた、その威圧感に。だがその声は優しくこちらを気遣っているのが簡単に解った。

「ステーキ定食頼むぜ」
「っ!ステーキ定食ね、焼き加減は?」

男は太陽の朝の日差しのような優しい微笑みを浮かべながら右手の人差し指を立てながら答えた。

「弱火でじっくり!にな」
「あいよ、奥の部屋にどうぞ」
「おうサンキュ」

案内の女性に連れて行かれる男を見送る親父は自分の眼がまだ捨てた物ではない物と思いつつ今年はとんでもない核弾頭がやってきたと内心で笑うのであった。そして彼が、待つ間に食べるステーキ定食には特大の肉と大盛りの米を盛り付けて大急ぎで運ばせた。

「(しっかり食って励めよ)」

―――定食屋の親父の密かな楽しみは、有望な新人を見送る事であった。


「うんめぇなこれ!!肉は柔らかくて口に入れた途端溶けちまう!!あーもうもっと残っててくれよもっと味わいたいのにぃ!?」

奥の部屋へと通された大柄の男、シャイルは部屋に通されると置かれているステーキ定食に手をつけていた。部屋に入り席に着くと部屋全体が揺れるのを感じた、エレベーターになっている部屋に納得しつつ食事を楽しんでいた。

シャイルとは新しい世界を生きる為につけた名。今、シャイルはこの世界で最も素晴らしい仕事の一つであるプロハンターの資格を取る為にその試験に望もうとしていた。理由としてはこの世界で中心となって周って行く職業であると同時にプロハンターの資格は強い力を持っており、転生しこの世界の戸籍を持っていない自分にとってこの先非常に有利になる為の物だからだ。

転生してから既に2年が過ぎ去っていた、シャイルの身体は逞しく鍛えられ身長は2m30cm。腕や足は丸太のように太く頑丈になっている、顔には修行中に負った傷が左目と耳の間を走るように付いているが彼は全く気にしていない。

「(にしても……確かに健康的に逞しい身体だけど、これ、トリコやん……)」

彼の身体は神よって構成された物、その元となったのは漫画『トリコ』の主人公であるトリコの身体がベースなっている。同時にトリコの知識も多少ある為かサバイバルなどは全く問題が無かった。神に感謝しなければいけないかもしれない。

「面白いって話だけど……あ~あ、これなら友達(あいつ)の話、もっと真面目に聞けばよかった」

思い浮かぶのはトリコが大好きだった友人、週間で出る雑誌にトリコの新話が出れば話してくるような友人だった。だが余り興味が無かった為が全く聞いていなかった、辛うじて覚えているのはトリコの技のほんの一部だけ、もって覚えていればこの体を有効活用できたかもしれなかったのに……。

「まっいいさ、俺が俺なりにやっていけばいいさ♪」

気楽に呟くがそれは自信と確信があるから、今日まで行ってきた修行は絶対に嘘はつかない。時に号泣もしたし血も吐きもした。それだけの苦労を積んできた、苦しかったが続けてきた自分を信じようと心の追う底から思えた。そして部屋が停止し扉が開いた、どうやら着いたようだ。降ろしていたリュックを背負い直し外へと出る。エレベーターの表示にはB100となっていた、地下100階。かなりの深さ、エレベーターを出ると薄暗い闇が降りているトンネルの中には人がぎゅうぎゅう詰めになるほどに押し込まれていた。

「(すげえ人数だな)これ全部試験者か」
「はいそうです、どうぞ試験番号札です」
「おっすまないな」

小柄な人物から札を受け取る、405番。少なくともこれほどの大人数が試験を受けると言う事なのか、札を胸へとつけていると黒髪のツンツン髪の少年が近寄ってきた。

「ねえ貴方も試験受けに来たんでしょ?」
「うん?ああ勿論、此処に来てるって事は君だろ?」
「うん!」

元気良く笑顔を見せながら返事をしてくれる少年につられてシャイルも笑顔を見せる。

「俺はゴン!」
「おっとこれはご丁寧に、俺はシャイルだ、好きに呼んでくれて良いぜゴン君」
「俺の事はゴンで良いよ、シャイルさん!」
「はははっだったら俺の事もシャイルって呼び捨てでいいぜ」

ガッチリと握手を結ぶ、なぜかこの事は仲良くなれそうな気がして成らなかった。

「シャイル紹介するね、こっちがクラピカでこっちはレオリオ!」
「私はクラピカ、宜しく頼む」
「レオリオだ、宜しくなシャイルさんよ」
「ああシャイルだ」

新たに紹介されるゴンの友人達、軽く挨拶と名前を交わす。

「ねっシャイルはどうして試験受けようと思ったの?」
「ゴン、いきなり会った人にそういう事を聞くのは失礼に当たるぞ」
「構いはしないって。簡単に言えば身分証明が欲しかったのさ」
「身分証明?そりゃ如何して」

シャイルの言葉に無意識に聞いたレオリオ、彼の質問はある意味正しい答えだろう。しっかりとした環境で生まれたのでならば身分は証明されている筈だろうと。そんな彼にクラピカは軽く小突いた。

「ってぇな、何すんだよクラピカァ!?」
「詮索しすぎだぞっと言う事だ」
「だから良いって、俺ってば生まれてから親の顔も知らねぇし兄弟がいるのかも知らねぇ。それに俺ってば捨てられたみたいだし戸籍無いんだよなぁ、お陰で就職に困るわカード作れねえわで大変な訳だ。んでハンターライセンスを取りに来た訳だ」

涼しい顔で理由を語るがそんな顔で語る物ではない位に重い、が本人が最後に浮かべた笑顔に下手に聴かないほうが良いと相手は思った。本人は全く気にしていないと理解させた。

「それとクラピカありがとな、俺の事気遣ってくれたんだろ?俺が根無し草だって事気にしてるかもしれないって」
「ああ。だが要らぬ心配だったようだ」
「だけど嬉しかったぜ、ありがとな」
「っ……あ、ああ」

クラピカの少々戸惑ったような言葉、それを皮切りと無かったのかトンネル内にけたたましく鳴り響いた。一瞬にして言葉が消えて周囲の人々は更に集中力を高めている、更にピリピリとして行く空気。シャイル達も気持ちを切り替える、それから少しするとトンネルの奥の壁が上へとスライドしていく。

―――大変お待たせ致しました。ただいまをもってハンター受験者の受付時間を終了いたします。 
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