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おぢばにおかえり

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第三十五話 詰所での再会その十

「私の後輩なのかしら」
「それが縁ってことですね」
「おひきよせね」
「そういうことですね」
「じゃあこれからも宜しくお願いします」
「わかったわよ、ただね」
 私はお口を尖らせて阿波野君に言いました。
「そんな態度だと本当に困るわよ」
「そのうちですか」
「そうよ、自分でもしなさい」
 助けてあげることは納得しました、というか何か阿波野君を見ていると放っておけない気持ちもあって。後輩だからですけれど。
「いいわね」
「わかりました、ただ僕こうしたこと言うの先輩だけですよ」
「私だけ?」
「はい、本当に」
「それどうしてなの?」
「いえ、何となく」
 変な笑顔での返事でした。
「そうなんですよ」
「それ何よ」
「何って言ったままですよ」
「何となく私にそう言ってくるの?」
「そうです、まあそういうことで」
「そういうことって」
 訳のわからない娘です、今回は特にこう思いました。
「何なのよ」
「先輩何か言いやすくて」
「それでなの」
「そうです、まあとにかく色々教えて下さいね」
「おみちのことね」
「他にも色々と、それと」
 私にさらに言ってきました。
「学校のこととかこのおぢばのことも」
「学校のことはもう先生に教えてもらったでしょ」
「いえいえ、高校だけじゃなくて」
 さらにというのです。
「大学とかのことも」
「天理大学受けるって言ってたわね」
「そのつもりです」
「どの学科受けるの?」
「宗教学科を」
 阿波野君はカレーを食べながら私に答えました、見れば食べる勢いがよくてもう一杯目を食べ終えようとしています。
「そっちを受けようって思ってます」
「それじゃあ私と同じじゃない」
「やっぱり先輩はそうですか」
「教会継ぐから」
 長女だからです、三人姉妹の。
「そのつもりよ」
「それでなんですよね」
「ええ、ただ私はお家が教会だからだけれど」
「僕はあれです」
「そうよね」
「はい、家は普通のサラリーマンと公務員です」
 ご両親が共働きと聞いています。
「信者さんの家ですけれど」
「それでも宗教学科受けるの」
「それでおみちのことを勉強しようって思ってます」
「何でまた」 
 ここまで聞いて私は思わず首を傾げさせてしまいました、どうしてもわからないことがあったからです。
「お家がサラリーマンと公務員で」
「はい、それでもです」
「ご両親教会の人じゃなかったら」
 それこそです。
「阿波野君もそうしたお仕事に就くんでしょう?」
「いえ、サラリーマンとか公務員になるつもりはないです」
「それじゃあ天理教の?」
「そう考えていまして」
「教会に入るの?」
 阿波野君の目をじっと見て尋ねました。 
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