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グランバニアは概ね平和……(リュカ伝その3.5えくすとらバージョン)

作者:あちゃ
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第67話:企みは予定通りに遂行してる……と思い込むと失敗する。

(グランバニア城・宰相兼国務大臣執務室)
ユニSIDE

私の上司が出世した。
それに伴い今日から職場が替わり部下が大勢出来た。
補佐してた私達もご相伴に与り出世し、大勢の部下が出来た。

私の上司は“グランバニア王国宰相兼国務大臣”のウルフ閣下……
そして私は“グランバニア王国宰相兼国務大臣付城内務秘書官”になり、同僚のプロムは“グランバニア王国宰相兼国務大臣付軍務秘書官”で、もう一人の同僚のリックは“グランバニア王国宰相兼国務大臣付政務秘書官”になった。

……長い。
肩書きが面倒臭いくらい長い。
長くなった肩書きに対して、仕事内容に変わりは無く、部下が出来た事で仕事量も少し減った。

それなのに給料が倍近くに増え、申し訳ない感が増大する。
だからウルフ閣下に言いました『例の件で失態をしてる訳ですし、私の給料は据え置きで良いです』と……
そうしたらウルフ閣下は、一瞬ポカンとした後に『安心して良いよ。仕事量が減ったように感じるのは最初だけで、俺の方が軌道に乗ったら殺したくなるくらい仕事量が増えるから(笑)』と言われました。

はい。安心は出来ません。
だって仕事量が増えすぎて、またミスをしたくないですもの!
だから今のうちにメイド達の人物評価を再度行う事にしました。

今回は最悪な事態は免れましたが、次に人物鑑定でミスをして悪人を王家に近づけてしまっては大問題です。
仕事量が減った今のうちに、全てのメイドの再評価を付け万全を期したいと思います。
その為に、新しく出来た部下等を含め同僚達も帰宅した後、一人残業をしようとオフィスに残ってたのですけれど……

『部下が残業するのに、上司が知らん顔で帰る訳には行かない』と言い、ウルフ閣下も一緒に残業してくれてます。
以前の執務室の5倍以上の広さになったオフィスに、私とウルフ閣下だけが残り仕事をしている。
ウルフ閣下好きのメイド等が知ったら、盛大にヤキモチを焼くに違いない。意味ないのに……

(バン!!)
「ウ、ウルフ君、大変だ!!」
突如執務室に飛び込んできたのはレクルトさん。
何やら大層慌ててらっしゃる。

「馬鹿者! 若い上司が若い異性の部下と就業時間外にオフィスで仕事らしき事をしてるんだぞ……情事に耽ってるかもしれないだろ! 察して遠慮しろ馬鹿」
「馬鹿は貴様だ若い上司!」

あまりの馬鹿発言に睨みを利かせて若い上司を罵倒する。
だが大して効果はなく、戯けた顔で肩を竦めるだけだった。
「そ、そんな事如何でも良いんだよ!」
そんな遣り取りを見たレクルトさんだが、気にする事なく自分の言いたい事だけを言おうとしている。何があったの?

「陛下が怒ってて、ウルフ君を大至急呼べって言ったんだよ!」
「え~……リュカさん怒ってるのぉ~? 行きたくないなぁ……断っといてよ」
「出来る訳ないだろ!!」
「居なかったって言えば良いじゃん」

レクルトさんにそんな事が言える訳ないの解ってるのに、ニヤケ顔の若い上司は来客を困らせる。
「一体何だって怒ってんの? 俺、関係なくない? 怒らせたのはお前等なんだろ」
「何で怒ってるのかは知らないよ! ウィンチェストの発明武器を見たら、急に怒り出したんだよ! そしてウルフ君を呼べって……」

「へぇ~……ウィンチェストの奴、もう新しい武器を開発したんだ。意外とやるモンだなぁ……もっと時間かかると思ってたのに。……まぁその分、投獄期間が長くなるだけだけど(笑)」
投獄期間? ウルフ閣下は何か知ってるのかしら?

「ウ、ウルフ君……君、何か企んでるのか? だから陛下はお怒りに?」
「さて……何のことやら(ニヤリ)」
不適な笑顔を浮かべ立ち上がるウルフ閣下。そして……

「下手に詮索しない方が身の為だ……今のスタンスで居れば、お前には有益に働くんだからな」
そう言いながら執務室を出ようとするウルフ閣下。
絶対何か知ってる!

「あぁユニさん。このゴタゴタが終わったら俺は直帰するから、貴女も根を詰めないようにしてね。夜更かしは美容に悪いから」
「……はい」
何かを企んでるウルフ閣下が怖くて、私は短く答えるだけしか出来なかった。

やっぱり偉くなる人は何かを持ってる……こんなに怖い笑顔する人だとは思ってなかったわ。

ユニSIDE END



(グランバニア城・武器開発室)
レクルトSIDE

「イケメン宰相、只今参上ぅ☆」
(パン!!)(ガシャン!!)
急いで連れてきたウルフ君が先頭で武器開発室に入ると、突然乾いた破裂音がして入り口の直ぐ隣に配置してあった花瓶が割れ、生けてあった花が四散する。

「……………今の……その新兵器?」
正面に視線を移すと先程ウィンチェストが自慢してた武器を構えた陛下が立っている。
新兵器の先から白い煙を昇らせて……

「凄ーな! その距離から花瓶を割れるんだ……魔法でもないのに!」
「え……その武器、そんな事が出来るの!?」
ウルフ君に言われ初めて花瓶を割ったのが新兵器の性能だと知った僕……素直に驚いたね。

「にしても危ねーなぁ……俺に当たったら如何すんだよ?」
「貴様を狙ったんだ……制作者が不器用で照準が合ってなかったら当たらなかったけどな!」
凄い兵器だけど陛下は何を怒ってるんだろうか?

「お前が火縄銃の作り方をウィンチェストに教えたんだろ!」
「ほほぉ~……その新兵器はウィンチェストが考案したんじゃ無いと?」
そう言えば先程も陛下はウィンチェストにはこの武器を作れないと仰ってたな。

「如何なのかなウィンチェスト君。この武器は君の発明では無く、私の発明なのかな?」
「何を言うか! このガンツァーは私が考案し作り出した、正真正銘我が発明品だ!」
いや違う。陛下の口振りとウルフ君の態度からすると、この武器はウルフ君が作り方を教えた物だ。

だがウィンチェストの性格からして、自分の功績にしたがってウルフ君から教わったとは言わない。それが解ってるから、ウルフ君はこの武器を見た陛下がお怒りになる事も想定して彼に新兵器の作り方を教えたんだ……だけど何が目的だ?

「お前みたいな阿呆に火縄銃が作れる訳ねーだろ! あんな使えねーボウガンを作り出す奴に!」
「何を言われます陛下! 私の能力を理解して居られないとは……哀しいですなぁ」
やっぱりコイツは馬鹿だ……如何なる理由が有るにしても、お怒りの王様に向かって言う台詞では無い。なのに言ってしまうのは馬鹿の証拠だ。

「では先日作った役に立たないボウガンから、この火縄銃へのミッシングリンクを説明せよ!」
「ミ、ミッシングリンク?」
「ミッシングリンクとは、あのボウガンから今回の武器への進化の過程で出来た、別の発明品だよ。言葉の意味も知らんのかアンタ」

僕も知らなかったけど、ウルフ君がウィンチェストを馬鹿にするように教えてくれたので、知る事が出来た。
確かに、あのボウガンからは想像出来ない武器だ。
いきなりこんな新兵器を開発出来るとは考えにくいし、進化の過程が必要だろう。

「そ、そんな物はありません……天才な私は、いきなりガンツァーを思い付いたのですから!」
「火薬の性質も金属の特性も解ってねー奴に出来る訳ねーだろ! ……もう話にならん、貴様は黙ってろ」
そうだ、これ以上陛下を怒らせるな……黙ってろ馬鹿!

「陛下、誰の発案で作られた兵器かなんて関係ないでしょう。これは素晴らしい武器です……何をお怒りになってるのですか(ニヤニヤ)」
「テメェ……解ってて言ってるな」
僕には何故怒ってるのか解らないが、ウルフ君は解って言ってる……だってニヤ付いてるモン!

「さて……見当も付きませんなぁ。魔法を使えない者でも遠距離から攻撃が出来、戦力を大幅に増強出来る発明。軍を縮小させてる陛下にとって、これ以上無いくらい有難い武器ではありませんか!? 兵士を減らしても、この武器を量産すれば他国より圧倒的有利な立場になれるのでるからねぇ!」

「ふざけるな! この武器が進化していけば、(いず)れは非道な大量破壊兵器が出来上がる事を知ってるから、僕は銃をこの世界に持ち込もうとしなかったんだ! 元日本人だから持ってる感覚だったのに、あの馬鹿女にはそんな感覚無いのか!? 日本文化に精通してたけど、元外人か奴は!?」

「仰ってる意味が解りません。『馬鹿女』とは誰です?」
「貴様……ぐっ!」
多分『馬鹿女』とは、姫様(ウルフ君と付き合ってるどちらか)の事だと思うんだけど、その事を公開してない為、チラッと武器開発部員を見て言葉に詰まる陛下。ウルフ君はそこまで見越して企んでる模様。

「では陛下の仰る通り、全てを私が計画し実行したとします。その場合、陛下の仰った『馬鹿女』に武器の詳細を聞く事になりますが、私からそんな事を聞き出したと思いますか? 私には相手が如何なる情報を持ってるかなんて心内は判らないのですよ! それなのに私から聞き出したと思いますか?」

「い、いや……それは無いな。アイツから言い出したに違いない」
「そうなりますね(ニヤリ)」
あぁ……ウルフ君が嬉しそうだ。怖い……

「では、あの女から武器の事を話してきたと感じてるのに、私に怒りが向くのは些か横暴ですね。陛下にとって恐るべき結末を迎える武器の事なのですから、情報を秘匿するだけでは無く公開しそうな人物にも釘を刺しておく必要があったでしょう! それを怠り、口の軽い『馬鹿女』を野放しにしておいて、何をお怒りになってるんですか!? 陛下の知ってる未来も心内も判らない私には、『馬鹿女』が提示した有用に見える情報に飛び付くのは必然です。全ての情報を持ち合わせて、それらの情報を操作出来る立場にある陛下が、自らの立場に即した行動をとっていれば、防げた結末なのですよ……面倒な事柄を部下に丸投げしてきて、遊び呆けてきた罰が当たったんですよ! 甘んじて受けなさい」

「こ、このガキ……」
え~ん……怖いよー!
お家へ帰りたいよぉ~!

「まぁ陛下……落ち着いてください。今言ったのは、私が武器の情報をウィンチェストに教えたとした場合です。ですが違うのでしょう、ウィンチェスト?」
「そ、そうだ! このガンツァーは私の発明品だ!」

「だそうですよ(笑) 良かったですねぇ……陛下にも私にも、そして例の『馬鹿女』にも落ち度はありません。(いず)れ人類が到達する状況なんですよ」
ちっとも良くない。

陛下は拳を握り締めて凄い形相でウルフ君を睨んでるよ~。

レクルトSIDE END



 
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