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グランバニアは概ね平和……(リュカ伝その3.5えくすとらバージョン)

作者:あちゃ
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第66話:結果的に失敗。結果が出るまでは失敗だと思わない。

(グランバニア城・ピピン宅)
ピピンSIDE

「お邪魔してるよ!」
仕事を終え自宅に帰ると、そこにはリュカ様が居られた。
義父上から愛人の事を聞かされ、ドリスが頗る機嫌悪く、そのフォローに来たのだろうか?

「だから言ったじゃんオジロン。ドリスに愛人の事を言ったら、ゴキ○リを見るような蔑んだ目で見られるよって。黙ってれば良かったのに……」
「ホント最低だなお前等。リュカの蛮行を見てるのに、いい歳したジジイが娘より若い愛人を作るなんて……」

今にも唾を吐き捨てそうな勢いで、応接間のソファーに座るリュカ様と義父上を睨み付ける我妻。
どうやらリュカ様はフォローに来たのではないらしい。
ただの興味本位だろう。

「だよねぇ……ウルフと同い年の愛人じゃぁねぇ……もうちょっと年の離れてない()をターゲットにすれば良かったのに。って事で、ピピンは大丈夫だね。あの()とは13歳差だっけ?」
「ああ゛!? お前にも愛人が居るのかコラ!」

「ちょっと止めてくださいよリュカ様ぁ……私は女性にモテないんですから。ドリスも解れよ……リュカ様の戯れ言だって」
「如何だか……男なんて股間で物を考える獣だからな。ヘタレ小僧のウルフだって、2人の女と付き合ってる訳だしな!」

「オジロ~ン、何か言ってやれよぉ。「ワシの場合は、妻に先立たれてフリーだったんだから、文句言われる筋合いはない」とか」
しかし義父上は俯いて縮こまるだけ。

「お母さん……お祖父ちゃんは独身なんだから、誰と付き合おうが問題ないと思うよ」
「ピパン、よくぞ言った! そうだぞドリス……オジロンは独身なんだから、年の差婚だって問題ないんだ。子供作っちゃえば良かったのにぃ」

「ピパン、この駄メンズ共に共感するのは止めなさい! 碌な大人になりませんよ」
「そうかなぁ……お祖父ちゃんは大臣だし、リュカ様は王様だよ! お父さんだって大臣なんだから、凄い大人になれる予感がする」

「ピパン~……お父さんは浮気してないよぉ~……数に入れないでよぉ~……」
哀しい……息子に疑われるなんて凄く哀しい!
やはりリュカ様を我が家に入れてはダメだ! 何とか追い出さねば……だが如何すれば?

「それにねピパン。愛人にベラベラ機密情報を喋ってた事が、お母さんは許せないのよ! その所為で優秀なメイドは国外追放になったのよ……酷い話じゃない!」
「ドリス的に愛人は良いんだ?」

「この場合、愛人じゃなくて若い恋人でしょ! 私より遙かに若いって事に嫌悪感を感じるけど、人を好きになるって感情は理屈じゃないから」
「そっかぁ……お父さんは仕事の話を家でしないもんね」

「ピパン……君のお父さんが仕事の話を家でしないのは、君のお母さんが口煩いからだよ。下手に仕事の話をしようモノなら“それは違う”だの“これはこうだろ”だのと口を挟んでくるからだよ。政務から身を引いた者は黙ってろ……と言いたくなるけど、君のお母さんにそれを言ったら酷い事になるから言えないんだよ、君のお父さんは」

「何だコノヤロー、喧嘩売ってんのか?」
「まぁまぁ二人とも……その辺で止めましょうよ。……そ、それより陛下。武器開発部が新たに兵器開発を成功させたと報告が入ってます。連中から視察の依頼がくる前に、抜き打ち視察をした方が宜しいのではないでしょうか?」

「マジで? 数週間前に視察して役に立たない武器を見せたのに、もう新しい玩具を開発したの!? やる気は買うけど数打ちゃ当たるモンでもないだろうに……」
「レクルト曰く、ウルフ殿が随分とウィンチェストを煽ったそうですよ(笑)」

「そのウルフに泣き付いたのはレクルトだろ? 結局ピピンの差し金じゃん!」
「いや……その……こんなにもご迷惑をお掛けするとは予想してませんでした」
リュカ様には何でも見透かされてしまう。

「まぁいいや……じゃぁレクルトを呼んできてよ。今から抜き打ちで視察するから(笑)」
「い、今からですか!? 抜き打ちとは言え明日でも宜しくないですか?」
そんなぁ……折角今夜は残業しないで帰宅したのに。

「ふふふっ、お前(ピピン)が僕を追い出したがってるから、その希望を叶えてあげるんだよ。でも僕を邪魔者扱いする以上、そのリスクは支払ってもらうよ……さぁ、執務室に戻って残業してるレクルトに声をかけるんだピピン(ニヤリ)」

うそぉ~ん……全てバレバレで藪蛇だったのぉ?

ピピンSIDE END



(グランバニア城・武器開発室)
レクルトSIDE

「折角今日は残業せずに帰られたのに、何で結局残業してるんですか? いい迷惑なんですけど……」
「仕方ないだろ……陛下が我が家に居座ってて追い出す目的で仕事の話したら、思惑バレバレで即座に視察決行になってしまったのだから」

僕はピピン大臣に顔を近づけて小声で訴える。
何故なら、丁度帰ろうとしてたウィンチェスト等を無理矢理残らせ、今から陛下が直々に視察にくる事を伝え、その事にブゥブゥ文句を言われたからだ。
陛下には直接文句を言えないクセに、僕には遠慮無く言う……不公平だ。

「追い出したくても陛下の前で仕事の話をしなくても良いじゃないですか。ホント、いい迷惑ですよ」
「そう言うなよ。俺も失敗したと反省してるんだから……家には仕事を持ち帰らない主義なのに、思わず出てきた話題がソレだったんだから」

「いっその事、陛下を飲みに誘えば良かったじゃないですか! カワイイ女の子が居る店に誘って、程良く逃げてくれば良かったじゃないですか!」
「あの人、酒が嫌いなんだよ。飲みに誘ったって行くとは思えない」

「ウルフ君も連れて行こうって言えば、面白がって誘いに乗ったかもしれないですよ」
「そうしたらウルフ殿から恨みを買うだろ。被害は小さい方が良い……負け戦の時は特に」
はぁ……溜息しか出ない。

「お待たせぇい☆」
僕の溜息と同時に武器開発室の扉が開き、陛下が何時もの様に爽やかで軽い調子のまま入ってきた。人の気も知らないでいい気なモンだ……と思いたいが、僕がピピン閣下の指示でウルフ君を利用した事で生じた面倒事だ。我慢せねば。

(わり)ぃね、嫌々残業させちゃって」
「いいえ! 我々は残業する事を嫌だと思った事はありません。むしろ陛下ご自身がいらっしゃる事に感激しております!」

「お、口が上手いねぇウィンチェスト。でも大丈夫だよ、君がレクルトにブゥブゥ文句垂れてた事は知っているから。面と向かって言っちゃっても良いよ(笑)」
「い、いえ……わ、私はそんな……」

あぁ~……メッチャ僕の事を睨んでる。
僕は陛下に言ってないのに……つーか、あの人に文句を垂れられてから今現在まで、陛下に会ってなかったのに! あの人の表情から察したんだと思うのにぃ!

「そんで……新しく作った武器はどれ?」
「はい。今すぐ持ってきます……私の自信作を!」
先日の視察後は、ウルフ君と激しく言い合ったウィンチェストだけど、本当に凄い武器を開発したのかな?

「お待たせしました陛下」
『凄い武器を作ってる』『この武器があれば世界は一変する』等とウィンチェストは言い、僕に開発中の武器自体は見せなかった……

だが陛下の視察に伴い、僕も初めて新兵器を見る事が出来る。
ウィンチェストが運んできたのは細長い木箱だ。
ロングソードだと入りきらないけど、ミドルソードなら余裕で収納できるサイズの木箱を、キャスター付きの作業台に乗せて運んでくる。

「私は自分の才能が怖いと思ったのは初めてです! この武器は、私にそう思わせるほどの代物で、我がグランバニアを最強にする大発明品であります! これを「いいから早く見せろ! 長ーんだよボケ!」
ウィンチェストの前口上の長さに痺れを切らした陛下。怒らせるなよぉ……怖いだろぉ!

「も、申し訳ございません……で、では……私の大発明品。“ガント式遠距離攻撃兵器”その名も“ガンツァー”です!!」
自作の兵器に自分お名前を入れ込むって……どんだけナルシストなんだよ、この男は!?
それに何だ……? ケースからして剣か槍だと思ってたけど、妙な仕掛けが付いた長い筒だな。

「……何だ……おい……これ!?」
「はい。"ガント式遠距離攻撃兵器”その名も“ガ「火縄銃じゃねーか!」
ヒナワジュウ? 陛下はウィンチェストの言葉を無視して、出てきた武器の名前を勝手に付け替えた。

「い、いえ……その様なセンスの無い名前ではなく、これはガンツァーと言いまして……」
「黙れ、名前なんて如何でも良いんだよ! 貴様……これの作り方を誰に聞いた?」
おや? 陛下はこの武器がどの様な物なのかを存じ上げてるみたいだ。

しかもウィンチェストが作った物じゃないと確信している。
ふむ……って事は、ウルフ君がウィンチェストに入れ知恵したんだなぁ。
それ以外考えられない。

「お言葉ですが陛下……このガンツァーは、私が考案し開発した兵器です。誰かに作り方を聞いたなど……」
ウィンチェストは何時もの人を馬鹿にした口調で陛下に話しかけてたが、大魔王ですら逃げ出しそうな陛下の形相を見て言葉を止めた。

「お前にこれが作り出せる訳ねーだろ! 自分の事も理解できない大馬鹿が!」
やっぱり陛下もウィンチェストの事を、その様に評価してたんだね。
陛下はこの武器をお気に召してないみたいだし、そんな不愉快な物を作り出した人物と共に、解雇してくれないかなぁ……

「レクルト!」
「は、はいぃぃぃ!!」
な、何ですか!? 突然怒鳴るように呼ばれましたけども……何かしましたか僕!?

「今すぐウルフを呼んでこい!」
「はいぃぃぃぃ!! 直ちに呼んで参りますぅぅぅ!!!」
何か拙い! 絶対に拙い!

兎も角逆らっちゃダメだ。
僕は今すぐウルフ君を呼びに行かなきゃダメなんだ!
だから猛ダッシュで部屋を飛び出した。

そしてウルフ君が仕事してる、宰相兼国務大臣執務室へ……

レクルトSIDE END



 
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