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提督がワンピースの世界に着任しました

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第22話 脱出と結果

 日が暮れて、辺りが段々と暗くなり始めた頃。引き連れてきた学者達を全員無事に目的地点へと到着することが出来た。後ろを振り返り来た道に目を向けてみると、森は暗くて闇の中。しかし、その闇の向こう遠くの方は妙に明るく見える。あの赤い光は、街や森が燃えている明かりだろうか。

 完全に日が落ちる前に森を抜け出られたのは、幸いだった。探照灯などの光源が手持ちにあれば、あるいは問題は無かったかもしれない。しかし、突然に巻き込まれた出来事で事前準備もできていない。下手をしたら森のなかで視界がきかなくなり、遭難なりして山火事に巻き込まれてたり、チンタラしている内に海軍に捉えられたりという事も考えられる。

 と嫌な考えが頭に浮かんだが、今更それらの事を考えても無駄。これからどうするべきか考えた方が有益だろうと思い直し、俺は島から脱出するための指示を出し始める。

「舞風、頼む」
「りょうかい! 提督」

 その短い一言だけで、舞風は俺が何をして欲しいのかを正しく察してくれた。彼女はすぐに、目の前にある海の上に大きな鉄の船体を出現させた。

 簡潔に『出現させた』と言っても、全長が118メートルもある船が突然現れる光景は、何度見ても凄いなあ、という感想を胸に抱かせる。そして、逃げ連れてきた学者達にとっては初めての光景。突然現れた駆逐艦舞風を見上げて、顎を外さんばかりに大きく口を開けて驚いた表情をするのは仕方のない反応だろう。

 俺も再び学者達と一緒になって艦を見上げながら、この大きさの艦ならば引き連れてきた百数名の学者達を全員乗せても大丈夫だろう、と判断した。

「みなさん、これが私たちの用意していた船です。この船なら、ココに居る全員が乗っても大丈夫でしょう。すぐに乗り込んで下さい!」

 驚いていた学者達の表情は、既に興味津々という目と表情をしていたが、今は海軍や世界政府の人間から逃げるのが優先だと理解しているのか、俺の指示に従ってくれて、黙々と駆逐艦舞風に乗り込んで行った。

 急がずゆっくりと全員が乗り込むまで、しばらくは辺りを注意深く警戒しながら顎に手をつき考える。

 森を突き進んでいる時に、丸メガネの男以外の敵に出会わなかったのも運が良かった。今しがた逃げてきた道は、普段は誰も通っていないような獣道だったので、自分たち以外の人間は居ないだろうと見越していたが。

 丸メガネの男。海軍の中でも戦闘力は上位と思われるその人物と、森の中で鉢合わせてしまったのは想定外だった。少し見ただけで、艦娘達に任せられるぐらいの強さだとけれど。
 しかし、あれが俺たちを油断させる為の反応だったとしたら。今更ながらに残してきた艦娘達が心配になってきた。天龍と夕立と吹雪。彼女たちならば、相当なことが無ければ負けることも無いと思うが。


「提督、悪りぃ。待たせた」
「お待たせしました」
「っぽい」

 心配している間に、森の奥から天龍に吹雪と夕立の3人が来るのが見えた。彼女達の姿は何も変わりはなく、その表情も明るいままだった。どうやら、丸メガネの男との戦闘はその後苦戦も無く無事に終わったことが察せられた。

「皆、無事で安心した。それで、あの海軍の男はどうなった?」
「あの男は、オレたちの波状攻撃で簡単にやっつけたぜ」
「敵わないと思ったのか、すぐに街や図書館が有る方向へ逃げていきました」
「結構弱かったっぽい!」

 悪魔の実の能力者だったようなので強敵だと思ったけれど、それほど戦闘能力が高い訳では無かったのか。

「ありがとう。天龍に吹雪、夕立の三人のおかげで、学者達は全員が無事に島から脱出できる。さぁ、俺達も艦に乗ってすぐに出発しよう。海軍は今のところ反対側の港に居るようだから、今のうちに離れてしまおう!」


***


 その後、オハラ島から脱出した我々は海軍や世界政府の人間と海上で遭遇すること無く、何事もなく簡単に神威鎮守府がある本拠地へと生還することが出来た。

 出発した時には居なかった百数人の人間を引き連れて戻ってきた俺達は、神威鎮守府に待機していた艦娘達に経緯の説明をして、今後の助けた彼らの取扱をどうするべきか数時間を掛けて話し合った。

 助けた以上は、途中で放り投げる事はしない。幸いにも神威鎮守府には、空いたままで誰も使っていない部屋がかなりの数有るので受け入れるのには問題ない。鎮守府にある食料は有限だが、今のところは貯蓄は十分だし無駄に渋っていては腐らせてしまうだけだ。そういう訳で、学者達一同に居留の提案をしてみると殆ど全員が了承する結果となった。

 そして、神威鎮守府に住まわせる対価として、学者達の豊富な知識や知能を提供してもらえることになった。つまりは、彼らは俺達の頼もしい仲間となってくれた、という訳だった。

 一部は、しばらく滞在してから島から出ていく意志が有るという。その一部というのが、オハラ島の騒動の時にクローバー博士と再会した際に一緒に行動していた、あの時の女性。
 彼女の名は、ニコ・オルビア。そして娘が居るらしく、なんとあの『ニコ・ロビン』らしい。つまりは、あのオハラ島の出来事の時に、原作のキャラクターが近くに居たらしい。
 ニコ・ロビンは、あの騒動の時には学者達の仲間では無いと言って市民と一緒にして先に逃したので、残念ながらあの時に彼女に出会うことが出来なかったという。ニコ・オルビアは、オハラ島の騒動のほとぼりがさめたら、先に逃した娘を探しに島を出ていくと言っている。

 よくよく話を聞いてみると、ニコ・ロビンはあの島に住んでいたそうで、1年間という期間を通っていた俺達が彼女の存在を知らなかったのは、ひとえに偶然だという。毎日通っていたわけではない俺達は、偶然にも彼女とは出会わなかったので、クローバー博士も彼女を紹介する機会が無かったと言う。しかし、彼女の存在を知っていれば、ぜひ会っておきたかったと残念に思う。

 そういえば、ニコ・ロビンというキャラクターは子供の頃から逃亡生活を送っていたという台詞が漫画にあったのを覚えているが、今回の事が逃亡生活のキッカケなのだろうか。
 それに、ニコ・ロビンの過去であるらしい今回の出来事は、俺の知らない空島編以降の未来の漫画の展開として語られている可能性が高いと思う。
 という事は、その語られているかもしれないストーリーの中に登場するキャラクターたちとして、母親であるニコ・オルビアや図書館長のクローバー博士が描かれているのかもしれない。と言っても、俺は知らない話なので想像でしか無いのだが。


***


 学者達を仲間にして更に暫く経った頃。オハラ島であった出来事は、新聞等で多くの人達が知ることになった。世界の壊滅を目論んだ者”オハラの悪魔達”によって引き起こされた事件だと、海軍や世界政府によって都合の良い嘘で作られた出来事として。

 クローバー博士とニコ・オルビアには、更にそれぞれに懸賞金1億2000万ベリーと1億ベリーという大金が掛けられるという事態にも発展していた。

 彼らに懸賞金が掛けられた時に、俺、天龍、吹雪、夕立も今回の騒動の関係者として指名手配が掛けられてしまった。指名手配犯としての悪評が付いてしまった為に、一部の商人たちとの関係も切られる事になり、1年掛けて作ってきた補給ルートを一から作り直すハメになってしまった。
 と言っても、全部のルートが駄目になった訳でもなく、世界政府に対して裏社会で反抗しているという革命軍なる連中とのコネが出来たりもした。

 そして、その後のオハラ島の状況について説明すると、島全体が砲撃に晒されてしまい、島に住んでいた人も動物も居なくなって、人が住んでいた建物も近くの森も、そして島の中心にあるシンボルであった大樹も半ばから力任せに千切れたようになっていて、メチャクチャになっていた。オハラ島は、地図からも消された無人島となった。
 しばらくの間は、オハラ島の周りに海軍船数隻が一日中駐留していて、島を見張っていたのか、島を壊滅させた後の調査をしていたのか、ずっと張り付いていた。だが、時間が経つと、彼らは引き上げていった。その後に、ひっそりと俺達は島に再度上陸して図書館の火災から退避させた本や資料をピストン輸送で速やかに神威鎮守府に回収した。



 こうして、オハラ島の出来事については、神威鎮守府に訪れた新しい仲間を迎えるキッカケとなり、俺達の存在の一部が世間に知られることになる発端となって終わった。 
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