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DQ5~友と絆と男と女  (リュカ伝その1)

作者:あちゃ
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46.出産。男に出来る事は何もない。ヤることしか出来ないなんて情けない。

<グランバニア城>

俺は謁見の間で落ち着かない時間を過ごしている。
もう…どのくらい経過したのだろう…
たいして経過してないのかもしれないが、とても長く感じるイヤな時間だ!

ビアンカが俺の目の前で蹲り産気づいたのだ。
俺は情けない声でビアンカの名を呼び狼狽える事しか出来なかった。
俺、何の役にもたってない。
俺の存在なんて必要ないのではないか!

今、ビアンカは寝室で苦しんでいる。
かなりの苦痛に耐え、苦しんでいる。
俺は何をしている?
何もしていない…
せめて苦痛だけでも俺が引き受けられないだろうか?
そんな思いが俺の中を堂々巡っている。


<グランバニア城>
サンチョSIDE

「リュカ!少しは落ち着かんか!」
謁見の間を落ち着き無く彷徨いていた坊ちゃんに、オジロン様から叱咤がとぶ。
坊ちゃんが産まれた時の事を思い出す。
パパス様もこの部屋を落ち着き無く歩き回っていたものです。
「え!?ヤダなぁ~、落ち着いてますよ。本当、本当!だってビアンカは強いもん!心配する必要無いもん!全然平気。全然大丈夫。僕、冷静。僕、平常心。僕へっちゃら」
引きつった笑顔で言い訳する坊ちゃん…ムリがありますよ。

「そ、そうですよ、坊ちゃん。ビアンカちゃんなら大丈夫ですよ。お強い女性ですから!」
「そうだよね!心配する必要無いよね!あんなのウンコするのと変わりないよね!ちょっとでっかいだけだよね!死んだりしないよね!?そんなこと無いよね?ビアンカ、また笑顔見せてくれるよね?死なないよね?…大丈夫だよね…?」
そこまで言い終えると坊ちゃんの目から涙がこぼれ落ちてきた。

坊ちゃんは幼い頃からビアンカちゃんの事が好きだったのだ。
その思いが強すぎて坊ちゃんを不安にさせる。
「大丈夫ですから!もうすぐですから!」
そんな事しか言えない自分が情けなくなる。
出産は女性が主役なのだ…我ら男は、ただ狼狽える事しか出来ないのだ!

サンチョSIDE END



<グランバニア城>
ビアンカSIDE

私の目の前に涙目のリュカが立っている。
「もうリュカ…パパになったんだからそんな顔しないの!」
「うん…ごめん、ビアンカ。大丈夫?」
もう…何で出産した私より弱ってるのよ…
「私は大丈夫…疲れたけど…」
「双子だったんだね。どうりで大きい訳だ…」
お産を手伝ってくれたシスター・レミと侍女のブレンダさんが、それぞれ男の子と女の子を抱いてリュカに見せている。

「ねぇ…リュカ…名前、考えてある?」
「え!?名前って?」
まさか…
「赤ちゃんの名前よ!考えてないの?」
「…ソンナコトナイヨ」
本当に何も考えて無いのね…(汗)

「はぁ~…考えてないのね…まぁ、いいわ。私、考えてあるから!」
「ゲレゲレとかボロンゴとか言わないよねぇ…」
「古い事持ち出さないでよ!」
「(クスッ)ごめん。で、ビアンカが考えた名前は?」
「うん。男の子が『ティミー』、女の子が『ポピー』!…どう?」
「うん!『ビアンカ』の次に良い名前だね」
もう…さりげなく惚れ直しちゃう事言わないでよ。
リュカは双子を抱き抱え、
「こんな情けないパパだけど一生懸命頑張るから、あんまりいぢめないでね」

(コンコン)
ノックと共にサンチョさんが入ってきた。
「ビアンカちゃん。双子出産おめでとうございます」
「ありがとうサンチョさん」
「おめでたい所申し訳ありませんが坊ちゃん、オジロン様がお呼びです」
サンチョさんも申し訳なさそうに切りだした。

「何だよぉ~、空気読めよぉ~…バカじゃねーの?」
…まったく…しょうがないでしょうに…
「リュカ!式典の事よ、きっと…」
「シキテン?」
ま、まさか…忘れてるわけないわよね!
「今日、戴冠式なの忘れてたの?」
「ソンナコトナイヨ。オボエテイルヨ」
「ほら!私達の事はいいから、お仕事してきて!」
大きなため息を吐くと、渋々…本当に渋々部屋を出て行った。

ビアンカSIDE END



<グランバニア城>

今俺は、オジロンの前で片膝を着き俯き畏まっている。
初めて知ったのだが、俺の本名は『リュケイロム・エル・ケル・グランバニア』と言うらしい。長いね!
「ここに宣言する。リュケイロム・エル・ケル・グランバニアがグランバニアの新たなる国王になった事を!」
俺は立ち上がり、家臣達を見渡して城下町へ下りて行く。
すごくこそばゆい…
うん。俺には向かないね!


<グランバニア城-城下町>

城下町の中央広場に大勢の人が集まり、ステージ上に立っている俺の事を瞳を輝かせながら見つめている。
中には泣き出している人も…
パパスの息子と言うだけで凄い人気ぶりだ。
親の七光りってすげー。

さっき国務大臣が小声で、『オジロン様の後でリュカ陛下のスピーチです。準備はいいですか?』ってプレッシャーかけてきたので、『モチロンサ』て棒読みで答えてやった。
すげー不安そうな顔してた。
だから止めようって言ったのに!

「………では、皆に紹介しよう。先代デュムパポスの子!リュケイロム・エル・ケル・グランバニア!グランバニアの新たなる国王を!」
来てしまいました、この瞬間が!
だが、大丈夫!
俺には秘策がある!
偉大なる不敗の名将が残したスピーチが…

俺はオジロンより前に出て、大きく息を吸った。
「リュケイロム・エル・ケル・グランバニアです。どうぞ、よろしく」
俺はまた、オジロンの後ろに下がり笑顔でみんなに手を振った。
みんな唖然としている。
名前が長い分、2秒スピーチとまではいかなかったが、俺的には大満足のスピーチだ。

ちらほらと拍手が聞こえてくると、その拍手は瞬く間に広がり皆が歓喜の声を上げている。
家臣の方達の顔を見ると、オジロンはヤレヤレと言った感じ。
国務大臣は………だから止めようって言ったのに!


新国王戴冠祝賀会と銘打って開かれたドンチャン騒ぎは、俺が居なくても盛り上がれるだろうと思うくらい盛り上がっている。
早くビアンカの所に行きたい俺は、国務大臣の隙を見ては抜け出そうとしているのだが、結構目聡く抜け出せない。
おかしくないですか?
ボクはパパになったばっかりなのですよ…
気を使ってもらいたいですね。

「リュカ陛下が祝杯をあげなければ皆が心から祝えません。さ、どうぞこれを!」
国務大臣が満面の笑みで俺にワインを渡してきた。
飲めなくはないが、あまり酒は好きでは無い。
強くも無い。
心から断りたい。
でも、飲むしかないんだろうなぁ~…
何で王様が気を使うの?普通、逆じゃね?

俺は覚悟を決めて一気にワインを飲み干した。
予想以上に強いワインは、俺の喉を熱くする。
一気に飲み干した所為か、視界が歪み足の力が抜け、その場に倒れ込む。
俺は闇の中に落ち、記憶がそこで途切れた…
あ、あれ…?
こ、こんなに…弱かっ…た…け…?



 
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