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SAO~円卓の騎士達~

作者:エニグマ
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第五十八話 因縁との再開

~シンタロー side~

俺達が橋に着くと、ちょうどバトルが終わっていた。

シンタロー「さぁ、何か仕掛けるんだろ。 さっさと見せやがれ。」

すると、ペイルライダーに着弾のエフェクト、次いで倒れる。

サクマ「倒れた。 だが、何で起き上がらない?」
エネ「起き上がらないんじゃなくて起き上がれないのよ。 見て。 あいつの肩付近。 スパークのエフェクトがあるでしょ?」
サクマ「あ、あぁ。 確かに。」
エネ「あれは電磁スタン弾、着弾した敵の動きを止める弾よ。 普通は対Mob用の弾なんだけど。」
シンタロー「それよりも問題なのは撃った奴が使っている銃だ。 近くに居るはずなのに銃声が聞こえなかった。 だとすると、サプレッサー装備のスナイパーライフルの可能性が高い。」
サクマ「とにかく、相手が動くまで待つしかないか。」
シンタロー「あぁ。」

十数秒の沈黙の後、そいつは音もなく現れた。

エネ「あいつ、いつの間にあそこに?」
シンタロー「分からない。 が、この好機を逃すわけにはいかな、っ!!」

俺が銃で狙撃の体制に入った瞬間、まるでナイフを喉元に当てられてるような感じがした。
俺はサブの光剣を取り出し、後ろを振り返る。
エネとサクマも気付いたようで周りを油断無く見渡している。

その時、橋の方で銃声がしたので振り返ると橋の向こう側にキリトとシノンがいる。

どうやらシノンがステルベンを狙撃したようだ。
それに続き、俺も狙撃しようとしたとき、何処からか声が聞こえてきた。

???「クッハハハハハハ!! It's show time!! ハハハハハハ!!」

この声、さっきの殺気。
忘れるわけが、忘れられるわけが無い。
最凶ギルド、ラフィンコフィンのリーダー、pohだ。
こいつが近くにいるとなると、ステルベンを狙ってる隙に後ろから殺られる可能性もある。
迂闊には動けない。

パァン

乾いた音が鳴り響く。
橋の方を見ると、ステルベンがペイルライダーを撃った。
ペイルライダーはスタンから回復し、全身をバネのように起こし、ARショットガンをステルベンの胸に突き付けた。
だが、ペイルライダーは苦しみだし、ARショットガンを地面に落とした。
ゆっくりと傾き、地面に横倒しになった。
胸の中央を掴むような仕草を見せた、その直後、ペイルライダーはノイズを思わせる不規則な光に包まれ、消滅した。
最後に残った光が、【DISCONNECTION】という文字を作り、溶けるように消えた。

シンタロー「あの野郎、殺りやがった。」
サクマ「くそっ!」

丁度その時サテライト・スキャンが通ったのですぐに確認する。
しかし、ステルベンとグレイ、hopeの三人だけが確認出来なかった。

シンタロー「グレイって奴は誰だか知らないけど、hopeが恐らくpohだ。 逆さまにしてeをつければhopeになるからな。 ふざけたネーミングしてやがる。」
サクマ「銃士Xとコノハが都市エリアに居た。 キリトと合流して都市エリアに向かおう。」
エネ「そうね。 ステルベンもスナイパーである以上オープンスペースは苦手のはず。 都市エリアに向かった可能性は高いわ。」

~side out~

~シノン side~

川の向こう側にいたサクマ、シンタロー、エネと合流し、都市エリアに向かう。

その途中で死銃ことステルベンには二人の仲間がいて、その二人もSAOサバイバーだということを知った。

シノン「一つ、いいかしら?」
サクマ「なんだ?」
シノン「その三人がラフィン・コフィンっていう殺人ギルド出身なのは分かったけど、あなたたちとはどういう関係だったの? 口振りからして赤の他人っていうわけでも無さそうだし。」
サクマ「リアルでは赤の他人さ。 でもSAO内では俺達は常に対立していた。」
キリト「攻略と治安維持を前提とした俺達のギルド『円卓の騎士団』、殺人含むありとあらゆる犯罪を前提としたpoh率いる最凶ギルド『ラフィン・コフィン』。」
エネ「これだけでも敵対していた事が分かるでしょ? でも、それだけじゃなくて。」
シンタロー「ウチのギルドマスターであるアーサーはpohとはβテスト時代から殺し合っていた仲だ。 そのせいで俺達と奴等は常に互いをマークしあってた。」
サクマ「そんな中、ある日一つの作戦が実行された。 ラフコフを捕らえる作戦だった。」
キリト「決行されたその作戦は相手にバレていて攻略組とラフコフで全面戦争が起こった。」
シンタロー「そんな中、リーダーのpohはアーサーが隠れていたのを見つけて追い込んだけど、取り逃がした。 幹部の二人含むメンバーを捕まえただけだった。」
エネ「私は参加しなかったけど、お互いにかなりの被害が出た。 死者が両方合わせて二十人以上よ。」
シンタロー「もう分かるだろ。 お互いに因縁の相手なんだ。」
シノン「そ、そんな事が、」
シンタロー「おしゃべりはここまでだ。 そろそろサテライトが来る。 俺達は一応都市エリア以外も調べるからキリトとシノンで都市エリアを頼む。」

右手に衛星端末を握り、左腕のクロノグラフを睨む。
九時ジャストになり端末のマップ上に、光点が幾つも浮かび上がる。

シノン「キリト、あんたは北側からチェックして!」

私は片っ端から光点をタップし、名前を表示させる。
その中には【Sterben】の名前は見当たらなかった。
その代わりに、この都市エリアの中に《konoha》の名前を見つける事が出来た。

シノン「ステルベンの名前はなかったわね。 そうなると、この廃墟エリアには居ないって事になるわね。」
シンタロー「いや、他のエリアにも見つからなかった。 となると水中か、洞窟か、後はシェルターとかだな。」
キリト「すると知られてない隠しシェルターで、姿を隠しているのかもしれない。 用心しながら進もう。 このエリアには《konoha》の名前が表示された。 まずはコノハと合流しよう。」
シノン「ええ、そうね。 スタジアムの方だったわ。 銃士Xも居た。 戦闘中かもね。」

そうなったら銃士Xには悪いけど、私達が共闘して倒させてもらう。

シンタロー「俺とシノンで後方から援護する。 気を付けながらコノハと合流してくれ。」
サクマ「了解。」

私とシンタローが残り、他の三人がスタジアムに向かっていくのを見ながら近くの建物の中に入る。

シンタロー「俺はその隣のビルの屋上から狙撃する。 何かあったらすぐに銃を撃て。 駆け付ける。」
シノン「ふん。 アンタに心配されるほど弱くは無いわよ。」

シンタローはビルの壁面の崩壊部を潜り、走った。
私はそれを見送った瞬間、背筋に強烈な寒気を感じ振り向こうとし、それすらも出来ずに地面に倒れた。
一体何が起きたのか、すぐに理解できなかった。
反射的に左手を持ち上げたら、腕の外側に激しい衝撃があった。
撃たれた、と思い咄嗟に目の前の崩壊部の陰に身を隠そうとするが、何故か足が動かなくなり、路面に棒立ちになり左に身体が傾き崩れ落ちた。
起き上がろうとするが、身体が言う事をきかない。
動かせるのは両目だけ、投げ出された左手を懸命に見下ろし、ダメージ感があった場所を確かめる。
ジャケットの袖を貫き、腕に突き刺さっていたものは、弾というよりは、銀の針のような物体だった。
根元部分が甲高い振動音と共に青白く発光し、そこから発光した糸のようなスパークが、腕から全身に流れて込んでいく。
これはペイルライダーの動きを止めた、電磁スタン弾。
それが今、シノンの身体の動きを止めている。

シノン「(でも一体誰が、どうやって銃撃したって言うのよ?)」

この廃墟エリアには、私達五人と、《konoha》、《銃士X》しか表示居ないはず。
直後私が捉えたのは、南に約二十メートル離れた空間に、じじっと、光の粒が幾つか流れ、空間を切り裂き何らかの影が出現した光景だ。
私は無言で叫んだ。

シノン「(メタマテリアル光歪曲迷彩!!)」

装甲表面の光其の物そのものを滑らせ自身の姿を不可視化する、謂わば究極の迷彩能力だ。

シノン「(シンタローと私が離れた瞬間を狙ったの。)」

其処に現れたのは、表面がボロボロに毛羽だったマント、頭部を完全に覆うフード。
姿を現した襲撃者を、私は呆然と見詰めた。
あれは、《死銃》。
死銃が滑るような動きで近づいてくる。
命中したのが左腕だったので、右腕が僅かに動かせる状態だ。
副武装として腰に下げたMP7のグリップを握り、上向け、トリガーを引く事は可能かもしれない。
右手がじりじりと動き始め、指先に握り慣れたMP7のグリップが触れる。
今まで気にしなかったけど、死銃の後方の上空には、中継用のカメラが【●REC】の文字を赤く点滅させながら浮かんでいる。
死銃はカメラを確認してから、勝ち誇ったように十字ジェスチャー行為を行っている。
私はMP7のグリップを掌で捉えた。
後は標準して、トリガーを引くだけ。
が、死銃がマントの中から抜いた黒い拳銃が眼に入った瞬間、私の全身が凍り付いた。

シノン「(何で? あの銃は何の変哲もないハンドガンのはず。)」

死銃は左手をスライドに添え、銃の左側面を晒した。
正確には、縦に滑り止めのセレーションが刻まれた金属グリップと、その中央に存在する小さな刻印が。
円の中央に、星。
黒い星。
黒星ヘイシン。 五四式。
あの銃。

力を失った右手から、最後の望みであるMP7が滑り落ちた。
死銃は、かちっ、と音を立ててハンマーを起こしてから左手でグリップを包み、狙いを私に照準した。

ステルベン「黒騎士、龍騎士、軍師。 お前達が、本物か、偽物か、これで、はっきり、する。」

今死銃が携えている銃は、五年前ある小さな郵便局に押し入り、お母さんを撃とうとした男が持っていた拳銃。
幼かった私が無我夢中で飛び掛かり、男に突き付け、男の命を奪った銃。
男を殺した銃が、今私に向けられている。

フードの内部の暗闇が奇妙に歪み、血走った深いような眼が見える。
あの男の眼だ。
いたんだ。 ここにいたんだ。 この世界に潜み、隠れて、私に復讐する時を待っていたんだ。
全身の感覚が失われていた。
夕空の赤も、廃墟の灰色も消え去り、暗闇の中に二つの眼と、一つの銃口だけが見えた。
あの指が数ミリ動けば、ハンマーが撃針を叩き、銃弾が発射されるだろう。
仮想の銃弾では無く、本物の銃弾だ。
シノン/朝田詩乃の心臓を撃ち抜き、止め、殺す。
私が男にそうしたように、これは運命だ。
決して逃れる事の出来ない運命。
私は思考を閉ざし、最後の瞬間を待った。
しかし、

ズドオォォォン!!

轟音が鳴り響き、ステルベンの動きが止まった。

ステルベン「くっくっく、甘いな、軍師。 何故、今の、隙に、撃って、当てなかった?」
シンタロー「てめぇには聞きたいことがあるからよ。 ここでログアウトされて貰っちゃあ、困るんだよな。」
ステルベン「そうか。 だが、二対一で、勝てると、思うか?」

すると、部屋の隅にまた、一人の男が現れた。

シンタロー「poh・・・!」
poh「久し振りだなぁ。 軍師さんよぉ。」
シンタロー「良かった。 てめぇにも色々聞きたいことがあるんだよ。」
ステルベン「時間を、稼ごうと、しても、無駄、だ。 お前を、殺して、この、女も、殺す。」
シンタロー「いーや、もう十分稼いださ。」
サクマ「どうした!?」
キリト「っ!」
シンタロー「これで三対二だ。 だけど、ここは逃げさせて貰うぜ。」
poh「そんなこと簡単にさせるとでも思ってるのか?」
シンタロー「エネ、コノハ。 時間稼ぎ頼む。」
エネ「分かったわ。 今度何か奢りなさいよね。」
コノハ「右に同じ。」
シンタロー「・・・コノハは勘弁してくれ。」

それだけ言うとサクマが私の体を抱え上げ、外に出た。

シノン「(もう、いいよ。 置いていって。)」

そう思ったが、やはり言葉に出来ない。
全身。 いや、意識が完全に痺れてしまっている。

シンタロー「いくらあいつらでもそう長くはもたない。 出来るだけ離れるぞ。」
???「ヒャッヒャッヒャァ! そう簡単に逃がさねぇってpohの頭が言っただろうが!」
キリト「ちぃっ!」

飛んできた弾丸をキリトがすべて叩き落とす。

キリト「クラディール・・・!」
グレイ「黒騎士かぁ!? ここではグレイって名前にしてんだ。 そう呼んでくれや。 そういやぁ、お前と軍師には借りが有ったなぁ。 でっけぇ借りがよぉ! この手で殺してやりてぇと思ってた矢先、こんな所で会えるとはツイてるぜぇ!」
シンタロー「キリト!」
キリト「分かってる。 お前とは何時かもう一度殺り合うと思ってた。 けど、それは今じゃない!」

キリトがグレネードを転がす。

グレイ「ちぃっ!」

グレイは直ぐに退避するが、そのグレネードは爆発する代わりに煙を吐き出した。
スモークグレネードだ。

私の視線の先に映った文字列は、【Rentlal Buggy&Horse】。
無人営業のレンタル乗り物店だった。
モータープールに停めてある三輪バギーは全てが全損状態だったが、その隣に置いてあった車が走れそうだった。

シンタロー「キリト、動かせるか?」
キリト「多分!」
シンタロー「ならキリトは運転頼む。 サクマはシノンを乗せて、シノンを守れ。 俺が後部座席から迎撃する。」

キリトは運転席に座りエンジンを掛け、私とサクマ、シンタローが後部座席に乗ったのを確認してから、アクセルを全開にして車を走らせた。

ズドォォォォン!

轟音が鳴り、そっちを見ると同時に置いてあったロボットホースが爆発した。

シンタロー「これでそう簡単には追い付けないはずだ。 キリト、このまま砂漠エリアに。」
キリト「了解。」

その後、しばらく走り続けていたが、

キリト「ぬおっ!?」

車が急にふらつき、止まる。
直後、数メートル先の廃車が爆発。

シンタロー「先回りか。」
キリト「あぁ。」
シンタロー「って、車止めたままにするな! さっさと発進させろ!」

私の右頬に、弾道予測線の真っ赤な線が表示された。
私は反射的に首を左に倒した。
直後、銃口がオレンジ色に発光し、かぁん、と高い衝撃音を立て、右頬から十センチほどの空間を通過した。
銃弾が車を通り抜け、右側の廃車に命中した後も、ライトエフェクトの微粒子が空間を漂い、頬に触れた。

シノン「嫌ああぁぁっ!!」

その瞬間、私は恐怖に駆られ、悲鳴を上げた。
二発目が車のドアに命中したらしく、高音が鳴る。

シノン「やだよ、助けて、助けてよ。」

私は赤ん坊のようにぎゅっと、身体を縮めて、弱々しい言葉だけを繰り返す。

直後、キリトが車を動かした。
私は縮こまったまま疾駆する車の振動に身を任せた。

~side out~ 
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