Liber incendio Vulgate
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Edizione straordinaria
Alone the way 6
前書き
氷刀・鈴花。
小脇差くらいの刃長で考えようかな。
ちなみに40㎝未満。
【雷】とは電位差が発生した雲または大地などの間に発生する光と音を伴う大規模な放電現象のこと。
雷を発生させる雲を雷雲と呼び、その時の雲は帯電状態となっている。
雷鳴とは放電現象が発生した時に生じる音であり地面に落ちた時の音ではない。
放電の際に放たれる熱量によって雷周辺の空気が膨脹し、音速を超えた時の衝撃波である。
なお放電に際し放たれる熱量は主雷撃が始まって1マイクロ秒後には放電路に当たる大気の温度は局所的にではあるが2万から3万℃という高温に達する。
「まあそんな温度をポンポンと
人体で出すわけにはいかないんだけどな」
《影縫子規》は【五本指】の《島崎更生》から放たれる地上の【学園都市】に在籍している【超能力者】の『第三位』が出せる最大出力と同じ10億ボルトの『電圧』がある雷撃を歪めて別方向に飛ばす。
「でも0.1ミリアンペアの『電流』が心臓に流れるとミクロショックで『心室細動』が起きて長くても数分で死ぬよな」
《真咲 証》は強くなったお陰でバースト無しでの大気干渉範囲が広がった為に更生の雷が届かない。
「人間の体に10ミリアンペア程度の電流が流れると筋肉が動かなくなるぞ」
少し離れた場所にいる更生は二人の会話が聞こえたのか忠告するかのように一言付け加える。
三人はその場に留まったまま動かない。というより動けない。更生の出す攻撃の数が異常なほど多い上に彼自身も相手どっている二人の実力が高いことに感付いて下手に前へ出れなくなっている。
更生は体から放電するだけでなく大気中の電子を操り増幅して電撃を飛ばす。
三人のいる一帯は水平に飛ぶ更生自身から放たれる横向きの電撃と大気の上から落ちる縦の雷撃、そして様々な角度から飛来するプラズマにより眩しく輝いていた。
子規と証はダメージを受けはしないが縦横無尽に走る雷の檻に閉じ込められた格好だ。別にここからでも無理矢理動くことが出来なくはないが更生が睨みを利かせているので避けたい選択肢ではある。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
「このまま膠着状態が続いて奴さんが諦めるか飽きてくれたら御の字なんだけどなぁ~……」
「あの《島崎更生》ってマジですげえな。手数は勿論なんだけど連続で攻撃を出す速さと同時に出せる攻撃の数がえらく多い。第三位の【超電磁砲】が並みの電気能力者に見えてくる」
島崎更生は発電能力が学園都市の総発電量を超えるほどなのだが、真価は【莫大蓄電庫】の二つ名が示す通り『蓄電』だ。
彼の体にはどれだけ使っても使い切れない電力が有り余っている。普段でも直ぐに体から出てしまう程に蓄えられたその量を測定することは不可能だ。
日本の電力不足を解決出来るどころでは無い電力なのは間違いないだろう。
つまり彼は適当に避けれないほど多くの攻撃を広範囲に出して戦っていれば相手の方が勝手に息切れするというまともに戦術が成り立たないような戦略級の出鱈目な電力量を持っているのである。
だが更生は気が短い。大量の雑魚散らしをしているのなら兎も角として今現在戦っている子規と証にそんな悠長なことはしない。そして更生は身体能力が普通の常人では有り得ないレベルで高かった。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
「来るみたいだぞ」
「俺が空気でちっとでも足止めするわ」
「よし、なら俺は証に能力使う。制御限界ギリギリまで暴走させるからLEVEL5を超えろ」
「それをやるなら俺がバーストしてからにしてくれ。限界を超えないと無事に済みそうにないからな」
自分の神経に流れる電気信号に干渉し、感覚を鋭敏化した更生はその話を黙って聞いていた。
「面白え。敢えてその賭けに乗ってやる。最近とんと歯応えがある奴がいなくて退屈してたんだよ。失望させんじゃねぇぞ手前ら」
彼の体から行われる放電が更に増した。プラズマに身を包み地上から立ち昇る雷でその姿が見えなくなってしまう。圧倒的な熱量は周囲のビルをも溶かし始めた。
「マジで底無しの出力と電力量だな……」
「お前に賭けるぞ、頼んだ」
証が集中する。彼から発するAIM拡散力場が目には見えずとも触れることが可能なほど凝縮し濃密となった。
「感情起動………」
脳の回転が速まる。相変わらず思考回路がひりつくようなこの感覚は少し癖になりそうだ。
圧倒的な窮地に立ちながらも証は
この状況を楽しんでいた。
学園都市で過ごしながら地上のぬるま湯に浸り、退屈な世界と共に腐っていた日々が嘘のよう。
こんな楽しい時間を二度と過ごせなくなるなんて御免だ。まだまだこの【第0学区】という場所を味わい尽くさなければならない。
(それに子規にも約束を守ってもらわなくちゃならないからな。その時がえらく早まったけど)
「───炸裂」
その言葉が告げられた直後だった。証が干渉していた大気が元に戻る。しかし能力が切れたわけではない。むしろ逆だった。
干渉していた大気の空気が全て証の体表面に集まる。それは見えない鎧。そして凄まじい圧力が解放された。まるで爆心地のように風が渦巻く。
それは牙を向いて更生へ向かう。彼はそれを雷で相殺した。しかし三人のいた場所のビルは壁材がこそげ落ち、内部の構造が剥き出しになっている。
そして証の立つ場所は彼の足元を除き馬鹿げた大気圧で地面が沈み、クレーターとなってしまった。
「えっと…なんだこれ……?」
大気から空気を剥ぎ取り御身に纏う風の王。真咲証はこれまでのバーストでは感じられなかった手応えと視界のクリアさ、頭の冴えに生まれ変わったように戸惑っていた。
「証が俺と初めて逢った時は
レベルいくつだった?」
「地上の基準で4だけど」
「今の証はレベル5クラスだ。しかも【PHASE】が低くとも『5.6』以上はある」
証は衝撃を受けた。まさかそこまで強くなっているとは思わなかったから。そしてそれを見抜いた子規にも。
「子規。お前は一体何者なんだ?」
「前にも言っただろう? 俺はしがない通りすがりの【絶対能力者】だよ」
二人の光景を見た更生が動いた。
マッハ441、54万㎞、雷速を備えて1万トンにもなる筋力を込めた重さの拳が15キロトンのエネルギーを持つ電力量を込めて豪快かつ無遠慮に振り抜かれる。
狙われたのは証の方だ。やはり危険だと判断したのだろう。だがしかし、彼は気付いていなかった。現時点で気を払うべきなのはまだ子規の方だということに。
「おい」
更生の腕を回り込んで子規の手が外側から拳の前に差し出された。更生はその速度に感心したが構わず証へと腕を伸ばす。だがその攻撃は届くこと無く子規の手の平に掴まれていた。
総量では広島型原爆を上回るエネルギーを片手で受け止めた子規に更生と証は頭が真っ白になった。しかしそこで証に声が掛かる。
「やるぞ証ッ!!!!」
その声に正気を取り戻した証は更生にありったけの大気圧を掛ける。更生はその尋常でない能力で抵抗する。
「まだコイツの方が上か……!」
「証、約束守るぜ。お前のレベル上げてやる」
子規が大気圧で動けない更生から離れ後ろから証の頭に両手を添えた。
「【危険地帯】ッッ!!」
証の能力が一気に活性化する。そして体の奥深くから噴火寸前のマグマのように力が沸き上がってきた。周囲に暴走の光が漂う。
しかし決して能力は制御を失わない。証の限界点を捉えたように事象が安定したまま力を上げていく。
「俺と互角とはな……!」
島崎更生は楽しそうに笑う。
証もまた愉快だった。
暴れ狂う力が完全に言うことを聞いている。
子規も顔が緩む。
目的はほぼ達成出来たから。
「さあ行くぞ証。フィニッシュだ。
これで決めてやれ!」
証が圧力を掛けたまま両手で構える。
そこにAIM拡散力場と空気が集束していく。
その力は天井知らずに上がり続ける。
「Has a mind of his own」
証が詠った時にそれは起きた。
「それは……!」
「おいおい本気かよ……!」
子規と更生の驚愕を余所に証の変化は続く。
彼の背中から白い二枚の翼が生えた。頭には白く輝く円輪が浮かぶ。そして能力の桁が一変する。
何処からか現れた竜巻は三人を取り囲み一帯のビルを巻き取るように引き千切り地面を削って吹き上げる。
証の双掌に結集した空気は圧力が掛かりすぎてプラズマと化した。しかしそのプラズマを押し潰す程の空気が収斂し強引にその状態を維持させる。
「【強燃の衝旋撃】」
プラズマが空気と共に渦を巻き、螺旋を描きながら島崎更生を呑み込んだ。それは最深学区の一角を更地どころか浅い部分に核兵器を埋めて爆破したように地中から抉り取ってしまった。
「………」
島崎更生は二人から遠く離れたところに吹き飛ばされてしまったが命に別状も無く生きていた。
どうやら能力で出せる全ての力を防御に回して使うことで命からがら凌ぎ切ったようだ。
ボロボロで指一本動かせない状態だが彼は満足したように深い眠りに就き傷を治していく。
「助かったよ子規。礼を言わせてもらう」
「証はもう潜在的にLEVEL6だよ」
「今バーストしたらどうなるかな?」
「俺より強いかもな。安定して使えたらだけど」
二人は回復した更生に見付からない内にその場を後にして、元々行こうとしていた目的地である【TEACHER】の元へ辿り着いた。
後書き
自分的に戦闘を頑張ったつもりです。
証君を超強化したら何故かこんなことに(笑)
ちなみにちゃんと子規君も強くなってますよ。
次はどうしようかなあ。後は武器を受け取って帰れば一応は終わりなんですけど。
文字数はやっぱり何時もくらいが
一番合ってますね。
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