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プロローグ

 
前書き
TS要素が殆ど無いプロローグです。 

 
僕こと保登 心愛は、この度高校生になった。

進学先は街の高校。自然に囲まれた我が家からでは数時間特急電車に揺られないと登校できない、遠くの街の高校だ。

……流石に遠すぎ。そんな長い時間電車に乗ってたら疲れちゃうし、お腹も減るだろう。


何より僕は早起きが出来ない。


ということをお母さんに相談したところ、件の街ーー木組みの家と石畳の街のご家庭に居候させて頂くことになった。

そして、今日はそのご家庭、香風家に下宿する日、当日。

当然のように寝坊し、お母さんとお姉ちゃんを呆れさせるなか特急電車に乗り込み、そのまま揺られること数時間。

漸く木組みの街に辿り着いた僕であったが、さて。
そんな僕が今、何をしているかと言うと。

「綺麗……」


街の景観に見惚れていた。


暖かみと風情溢れる木組みの家。

所々削れているのが否応なしに歴史を感じさせる石畳。

せせらぎが美しい小川。

その上に掛けられた石橋。

目に見えるもの全てが洋風、というより"洋"そのもの。

「素敵な街だなあ」

そう呟いて、僕は今一度周りを見回した。

木組みの家、石畳。
明るく話し込む二人の女の子に、笑顔溢れる子供達。

釣られて、僕も笑顔になる。

「ここなら楽しく暮らせそう!」

これからの日々に想いを馳せながら言った。

周りの木組みの家や、石畳。空に浮ぶ雲に、光輝く太陽。果ては、運河に写った木組みの家まで。

僕には、今日から始まるだろうきらきらした日常を祝福しているように見えた。






ーーーーーー






鼻唄を歌いながら石畳道を真っ直ぐ歩いていたら、面白いものを発見した。

それは、うさぎの看板。真っ黒なうさぎのエムブレムに、店の名前とおぼしき文字が彫られている。
ええと、どれどれ……ラビットハウス、って書いてあるのかな?

ふむ。ラビットハウス、かあ。直訳するとうさぎの家。
うまり、この店の中には大量のうさぎがいるのだろうか。

僕はこの店に入店したら、というのを想像した。




明るい色をメインとした、メルヘンな内装。
そんな中、一匹の可愛いうさぎさんが出迎えてくれる。

「いらっしゃいませ。こちらの席にどうぞ」

うさぎさんはとてとて可愛らしい足取りで席に案内する。
あ、ちなみにうさぎが喋ることの是非については無視するのでそのつもりで。

それはともかく。
そうして席に着かされた僕に、うさぎさんは可愛らしく小首を傾げて、

「ご注文は何に致しますか?」

「たくさんのうさぎさん!」

即答。うさぎさんは表情を変えずに「かしこまりました」と言い、店の奥に引き上げていく。

直後。

数えるのも面倒くさくなるほどたくさんのうさぎ達が僕のところにやって来る。

僕は表情をだらしなく緩ませる。

ーーこんなにたくさんのうさぎさんがやって来るなんて!
これはもふもふしないと損ってもんだよ!

僕は近くにきたうさぎさんを撫でる。
柔らかな毛並みが、手を優しく包み込む。

……もふもふ!

すごいもふもふ。とってももふもふ。とんでもなくもふもふ。

ーーああ、もふもふ天国は、ここにあったんだな……




…………………………

………………

……



はっ!?

一瞬思考がもふもふ天国へ旅立っていた。
顔に手を当ててみるとよだれが垂れている。

……うわぁ。

我ながら、これは無い。端から見たら僕はお店のドアの前で気持ち悪い笑顔を浮かべてよだれを垂らしている怪しい少年ということになるのだろう。




うん。なんというか、これはない。



……取り合えず、入ってみようっと。
早くこの場所から逃げ去りたいし。

ばつの悪い笑顔を浮かべながら、僕はラビットハウスのドアを開けた。

珈琲の香りが鼻腔を擽った。

耳に届くのは丁度いい音量のクラシック、それとあどけない「いらっしゃいませ」の声。

目に写るはセピアな内装、コーヒーミル、蓄音機、そして店員なのだろう、銀髪の少女。

一瞬にして脳に多大な情報が送られてきたのだが、取り合えず僕が言いたいことは。



ーーうさぎがいない

テーブルの下にも、椅子の下にも、ゴミ箱の中にも、店内のどこにも。

「うさぎがいない!」

思わず叫んでしまった。そんな僕を、店員さんは怪訝な目で見つめてきた。 
 

 
後書き
アニメ1期一羽でいうところのアバンパートが書き終わったので、折角だからテストも兼ねて暁さんに投稿してみました。

なんか一話からして冗長になってる気もしますが、温かく見守って下されば。 
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