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DQ5~友と絆と男と女  (リュカ伝その1)

作者:あちゃ
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44.疑うと誰も信じられなくなる。疑わなければ信じられる。自分次第だ。

<グランバニア城>
オジロンSIDE

「まったく!帰還早々我々を呼び付けるとは…いったい何を考えているのか!?」
ワシは大臣達と2階の会議室は向かい歩いているところだ。
国務大臣のエクリー(ワシの一番信頼の置ける側近)が、リュカの急な呼び出しに腹を立てている。
「試練に成功すれば既に国王とでも思っているのですかね!!」
エクリーの憤慨は止まる気配が無い…
どうもリュカとはソリが合わない様だ…

「戴冠式が終わるまではオジロン様が国王で在らせられるのに、そのオジロン様まで呼び付けるとは!いったいどう言…う………」
大声で不平を鳴らしつつ会議室のドアを開けると、そこにはリュカが優しい笑顔で佇んでいた…全身血塗れで…
「リュ…リュカ…無事か…?」
皆が声を失っている中、ワシは辛うじてリュカの無事を確認した。
「全部返り血です。ご心配なく…」
か、返り血…!?

「いったい何が…」
「試練の洞窟で命を狙われました。」
リュカは表情を変えずに優しい口調で話していく。
「い………いったい誰に………」
エクリーの疑問を聞くと、持っていた血塗れの包みをテーブルに置き中身を晒す。
表情を変えずに…

「彼と彼の手下10人程に命を狙われました」
そこには男の生首が1つ。
「大盗賊カンダタ!」
「あれ?叔父上の知り合いですか?」
「いや…そうではない。世界を股に掛けて盗賊家業を行っている犯罪者だ!」
「盗賊が殺し屋の真似事…クスッ…世も末だ」

「しかし…何故…?」
「この中の誰かが僕を王様にしたく無いんですよ」
ワシの問いに不思議そうに答えるリュカ。
「な!我々の中にその様な不届き者がいると、疑っているのか!!」
エクリーは声を裏返しながら憤慨する。
ワシも疑われるのは心外だ。

「あはははは…疑っているのではなく、確信しているのですよ!国務大臣閣下!!」
全身血塗れで腹を抱えて笑うリュカの姿に畏怖の念を抱き、言葉を発する事が出来ない…
「まぁ…正直…この中の誰であるかまでは分からないのですが、これだけは言っておきます。今回は僕の実力を過小評価してくれたお陰で、あの様なザコの相手で済み大事には至らなかった」
違う!
カンダタ一味はザコではない。
我が軍も再三手痛い被害を被っている!
「だが…もし、またこの様な事が起こりビアンカや生まれ来る子供に何かあったら…」
リュカの顔から笑みが消え、氷の様な瞳で我々を見つめている。

これ程恐ろしい怒りを感じたのは初めてだ。
兄上の怒号に恐怖を感じた事もあったが、それの比ではない!
一見するとただの優男にしか見えないのに…

「で……では…は、犯人捜しは…」
絞り出す様な声でエクリーが問いかける。
「別に犯人捜しなどどうでもいい!僕が王になれば自ずと浮彫になる!」
皆、互いに顔を合わせ何も言えないでいる。
「では、僕はこの辺で…、国務大臣殿。申し訳ありませんでした、国王でもない身分の者がお忙しい皆様を、この様なくだらない事で呼び出してしまい」
どうやら先程のエクリーの憤慨が聞こえていた様で、いつもの様な優しい笑顔で嫌味を言い終えると、リュカは一人会議室を出て行ってしまった…

オジロンSIDE END



<グランバニア城>

俺は兵士用のシャワールームで返り血を流し、キレイな服に着替えるビアンカの所へ歩き出す。
途中、オジロンとサンチョが話しかけてきた。
「リュカよ!まさか叔父であるワシまで本当に疑っている訳ではあるまいな!」
何だぁ?めんどくせーなぁ……

「叔父上!僕は叔父上の事をあまりよく知りません。この国で僕に疑われて無いのはサンチョぐらいですよ」
「坊ちゃん…」
サンチョは嬉しそうに頷き、オジロンは口を尖らす。
「ワシが王位を譲ると言い出したんだぞ!」
「それこそ目眩ましの芝居かもしれません。まぁ……疑えば…と言う事ですから、お気になさらずに。」
「気にするわい!」
「(クスッ)…本命は別にいますから…あくまで疑う要素が少なからずあるという事ですよ」
「だからといってワシを脅さんでも…」
あ~…めんどくせーなぁーも~!
「叔父上にはこれから王になる為の事を色々教わらねばなりません。どうか機嫌をなおして下さい。では…」
オジロンはサンチョに何かブツブツ愚痴っていたが、それを無視してビアンカの元へ向かった。


ビアンカの部屋に入るといきなり抱き付かれた。
「リュカ!!大丈夫!?怪我はない!?何があったの!?」
「ちょ…ビアンカ、落ち着いて!」
抱き付かれたのは嬉しいが、パニック状態なのがちと困る。

「だって!リュカが血塗れで帰ってきたって…」
「口軽っ!!」
思わず叫びドリスを見つめる!
「わ、私じゃないわよ!戻ってきたら、もう知っていたのよ!」
本当かよ!?

「だれだぁ…ベラベラ喋るヤツは…お尻ペンペンだ!」
「侍女のエリーヌが教えてくれたの…」
「エリーヌさんって…あのキュートなお尻の?……よし!あとでお仕置きのお尻ナデナデだな!」
「ペンペンがナデナデに変わったけど!!」
「あれぇ!?本当?最初からナデナデじゃなかった?」
「もう……でも、無事で本当に良かった…」
またビアンカを泣かせてしまった。
「ビアンカは心配性だなぁ~…そんな娘にはお仕置きのオッパイモミモミだ!」
「ちょ…ダメ…リュカ!…い、今は…コラ!!…ドリスが居るから…」
「ドリスが居なければいいの?」
「「え!?」」
「よし!ドリス。出てって」
ドリスの踵落としを喰らい、その日はお開きとなった。
何で俺がこんな目に遭うの?



 
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