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Liber incendio Vulgate

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Edizione straordinaria
  Alone the Way 5

 
前書き
さあ五人目のルートだ。
ここが一番面倒臭い。 

 
影縫子規(かげぬいしき)》と《真咲(しんさき) (しょう)》は互いの思い通り、全力を出して大暴れしていた。

【最深学区】という場所が場所なので止めに入る者も少ない。思う存分に能力を使って腕を磨いている。

子規は証の力を観察し続けて気付いた。


(証のやつ、最深学区に来てからAIM拡散力場の反応が段々と強くなってるな。それに加えて戦ったり能力を使うごとに力が増してるぞ)


抑えられていた力が少しずつ解放されるというよりは本来の姿に近付いているといった感じだ。違和感がまるで無い。

此処に来ることが初めてでないような……。


「何処見てやがる!」


子規の相手をしていた能力者が一斉に能力を放つ。炎に水に念力に金属。AIM拡散力場を物質化して使うやつもいた。

だがどれだけ正確な狙いを付け、どれほど優れた制御の能力を使って挑もうと子規には無意味だった。


「無駄な努力ご苦労様なこって」


彼がAIM拡散力場に身を包みつつ能力を使う。すると精密に操られていた能力群が制御不能となり辺りを無数の鞭のように叩く。


「うおぉっ!? 危ねえ!!」


証が空気を圧縮してドーム状の壁を作りながらAIM付きの衝撃波で飛んでくる能力を物理的にもAIM的にも()らして弾く。


片や子規の方は荒れ狂う能力の嵐の中を平然と突き進み前に踏み出す。一歩先へ()く度に能力の勢いは増し、狙いを付ける数も多くなる。しかし彼にそんなことは関係無かった。


「【能力戦闘技法(サイキックアーツ)】・消力(シャオリー)


彼に触れようとした敵の能力は水が流れるように(すべ)り、その背後へと飛んでいく。

体術とAIM拡散力場、能力を組み合わせて作られた能力者による能力者の為の能力者による対能力者専用の特別な技法である。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


「なんっつー無茶苦茶な……」


流石の証も開いた口が塞がらない。


「じゃあ今度は俺の番だ。逝っちまいな」


子規に攻撃していた相手が全て光を放つ。一般人にも視認できるほど活性化したAIM拡散力場だ。それに全員が転げ回りながら頭を()(むし)っている。

目、鼻、口、耳から血が流れ遂には水道を(ひね)ったように勢いよく噴き出した。そして痙攣(けいれん)を起こして地面に寝転びながらビクンビクンと跳ねている。

その状態でも声を出そうとするので水に溺れたように血の泡がゴボゴボと音を鳴らす。

さながら阿鼻叫喚(あびきょうかん)の血の池地獄とでも言ったところだろうか?

その中心にあって子規は顔色一つ変えず子供が夏休みの宿題で昆虫観察をするように笑みを浮かべ彼等を見詰めている。

血霞が(けぶ)(あけ)に染まるその風景に証はこれまでに無い戦慄が走る。辺り一帯が赤い血霧(ちぎり)に覆われ子規の姿も影のように暗く見える。

だが証はそれと同時に目の前の惨状を造り上げた子規と戦ってみたいという気持ちにもさせられた。

闘争本能が(たかぶ)って堪らない。

もしも今彼と戦ったらどうなるのだろう。

そう思うと証のわくわくが止まらない。

心臓の鼓動が早鐘(はやがね)を打ちアドレナリンとエンドルフィンがドクドク出てくる。

真咲証は今、最っ高に絶頂(ハイ)な精神状態だった。

子規も最深学区(このまち)で戦い続けたお陰か強さが増していた。それだけでなく来た時から常に気を張っていたので感覚が研ぎ澄まされている。

戦いの趨勢(すうせい)とは電撃的に変化する。一々気を締めたり緩めたりしているようでは話にならない。今の彼には一分の隙も無かった。

感知範囲なら《七草花夜(ななくさはなよ)》の不意討ちくらいしか気付かれないのではないだろうか。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


証が興奮と欲求を我慢出来ず、子規に手合わせを願おうとしたその時だった。

二人の周囲に雷鳴が響き渡る。

そして大気に凄まじい量の静電気が発生した。

証と子規が何もせずとも痛い程に静電気が弾け、まるで心霊現象のラップ音のように二人しかいない空間で小さく破裂する音が鳴り止まない。


「おい子規、これって……」

「どうやら俺達はとんでもない大外れ(おおあたり)を引いちまったらしいな……」


この桁外れに重い威圧感(プレッシャー)

そして他を圧倒するAIM拡散力場。

二人が【最深学区】を来訪してから出会った
全ての相手を合わせても足りない存在感。

何かの地響きがする。

実際にはそんなことは無いのだが子規と証は試合前のウォームアップが終わり体が完全に温まっている状態だ。足取りも軽く羽が生えたよう。

そこまで仕上がっているので相手の力を捉え見抜く洞察力や勘もいつも以上に働いている。

その最高な二人を(もっ)てしても本心から胆を冷やすほどに危険だと言わしめる大敵。


「こりゃ真っ向勝負って訳にはいかないな……」

「最深学区に来た時のローギア状態だったら
瞬殺されてたかもしんねえ」


この相手には最初から最後までトップギア。

気を抜くことは許されない。

(まばた)き一つが命取りになる。

先駆放電(ステップトリーダー)先行放電(ストリーマー)を従者のように引き連れて、自身の肉体からも(おびただ)しい電光が(ほとばし)り、青白いオーラに包まれている。


「ようお前等。二人だけで随分と楽しそうなことやってるみたいじゃねえか。俺も混ぜてくれよ。まあ嫌だっつっても逃がさねえんだけどな?」


影縫子規(かげぬいしき)》と《真咲(しんさき) (しょう)》の前に立ち塞がったのは、第0学区全体で見渡しても【管理者(ボス)】と並ぶ圧倒的な強さを持つ実力者。

そして【五本指】にして人工原石の一人。


「特徴を聞いた事が有るだけだったけど
誰だか直ぐに解ったぜ……」

「おい子規、なんだあの化け(もん)……」

「この第0学区でぜってーに手を出しちゃならない【禁忌】に数えられる【五本指】の一人、《島崎更正(しまざきこうせい)】だ。何とか逃げて巻きたいとこだけど多少は()らないと無理かな……」

「あれと戦うとか勘弁してくれよ……」 
 

 
後書き
なんか話が進むごとに書く内容が大変になってるような気がする。
 
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