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聖闘士星矢 黄金の若き戦士達

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184部分:第二十五話 一人の帰還その三


第二十五話 一人の帰還その三

「ふむ、これは」
「鶯の舌ですな」
「そうだ。他にもあるぞ」
 エリスは八人の上座にいた。やはり神だけありその座は上座になるのだった。神に相応しく。
「この孔雀の脳味噌だが」
「これもですか」
「ふむ、これは中々」
 大公達はその孔雀の脳味噌を煮たものを食べながらまた述べた。
「美味ですな」
「思いも寄らない料理ですが」
「思いも寄らぬか」
 エリスはその右手にワインを持っていた。それを飲みつつ悠然と大公達に対して言うのだった。
「この馳走は」
「はい、こうしたものは」
 見れば鶯や孔雀だけではない。他にも子牛の丸茹でやヤマネ、兎の丸焼き、他には猪等もある。肉料理と果物を中心としたかなり風変わりなものであった。
「ありませんが」
「これは一体」
「これはローマのものだ」
 エリスはこう大公達に言うのだった。
「ローマ帝国の馳走だ」
「ローマのですか」
「これは」
 見れば猪は周りに小さな猪の形のビスケットがあり牙にはナツメヤシを入れた小枝細工の籠があり見事に飾られている。そしてその猪の腹を開けばそこには野菜やソーセージが煮て入れられていた。彼等はその野菜やソーセージも食べるのだった。
「こうしたものを当時食べていたのですか」
「成程」
「こうしたものを食するのも久し振りだ」
 エリスはその猪の中のソーセージを食べつつ言う。
「そして食するかいがあるというものよ」
「食するですか」
「左様。宴は戦いと同じもの」
 今度はこうしたことを言うエリスだった。
「華やかでかつ血に満ちたものでなければならぬ」
「そういえばこの牛から流れる血は」
「まことに美味ですな」
 彼等はその中で焼けた牛を食べていた。そこから流れる血を見てそれを食べながら言うのだった。
「この味。実に」
「さあ。遠慮せず食べるがいい」
 エリスは今度は兎の血をパンに浸して食べていた。白い見事なパンである。
「皆でな」
「はい、それではです」
「喜んで頂きます」
「風呂も用意してある」
 それもあるというのだった。
「遠慮せず入るがいい。よいな」
「風呂もですか」
「それもあるのですか」
「宴の後で入り気持ちをすっきりさせるのもよいことだ」
 エリスは風呂についても語った。
「さあ、今は全てを心ゆくまで楽しむがいい」
「有り難うございます。それでは」
「この宴。心おきなく」
 こうして彼等はこの華やかかつ血もある宴を楽しむのだった。そしてそのうえで次の戦いに向けて英気を養うのだった。
 狂闘士達が宴を行っているその時に黄金聖闘士達も集まっていた。今度はシュラの磨羯宮において彼等も宴を開いていたのだった。
「まずは御無事で何よりです」
「全くだ」
 ムウとアルデバランがまずシュラに対して言っていた。
「ベールの小宇宙もまたかなりのものでしたが」
「それと互角だったそうだな」
「一歩間違えればどちらかが倒れていた」
 シュラはこう二人に述べる。彼等は宮殿の緑と小さな花々が咲き誇る庭において円卓を置きそれを囲みつつ酒と馳走を楽しんでいるのだ。
「俺も。一歩間違えればだ」
「ほお、御前がそう言うのか」
 デスマスクは大きい焼けた羊肉にかぶりつきながらシュラに問うた。
「やっぱりあの野郎も尋常な奴じゃねえみてえだな」
「そうだ。御前が闘ったベルゼブブと同じだ」
「へっ、今度会った時が奴の命日だぜ」
 デスマスクはここではあえて本心を語らなかった。既に誰もが知っているとしてもだ。
「この俺の力じゃよ。あんな蝿野郎確実にな」
「そうですね。貴方のその意気があれば」
 ムウはそんなデスマスクの心を汲み取ってあえて微笑んで言ってみせた。
「次こそは必ず果たしてくれますね」
「そんなの当然だろうが。俺を誰だと思ってるんだ」
 デスマスクもまたムウのその言葉に合わせて言うのだった。
「キャンサーの黄金聖闘士だ。忘れるんじゃねえぞ」
「ええ、それは勿論」
 ムウは微笑んで彼の言葉に応えた。
 
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