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魔法少女リリカルなのは 絆を奪いし神とその神に選ばれた少年

作者:レゾナ
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第三十五話 過去の思い出

はやてSIDE

あの模擬戦の後、リインや他の皆と一緒に家に帰ってきたあたし。

でも、夕食を食べようともお風呂に入ろうとも、ベッドに入ろうともあの光景が頭から離れなかった。

『ごめん、ごめん……最後まで、一緒にいてあげられなくて……』

『大丈夫ですよ、全さん……全さんは何も悪くありません……だから、大丈夫ですよ?』

『ごめん、ごめん、ごめん……』

「あれは、一体どういう事なんやろうか……」

あれを見る限り、リインと橘君には面識がある。でも、リインが生まれてまだ日が浅い。だというのに、橘君の言葉はどういう事なんだろうか。

最後まで、一緒にいてあげられなくて……これではまるで、リインが一度は消滅したような言い方やないか。

「そんな事実あらへんし……いや、関係あらへんな」

可能性を考えて止める。だって、関係あらへんもん。リインにはリインフォースの頃の記憶はあらへんってのは結果が出とるんやし。

「でもなぁ……ああ、もう!むしゃくしゃする!!」

うちは何となく、机の上に置いてある写真立てを手に取る。

「お父さん、お母さん……」

そこに写っていたのは、車椅子に座っているうちと車椅子を押しているお母さん。そしてそんなうち等に寄り添うようにして笑っているお父さん。

「うち、覚えとらんもんな……二人の事……」

二人はうちが物心つく前に他界した。その後はグレアムおじさんに援助してもらっとったしな。

「二人とも……ん?」

そこで、おかしい事に気が付いた。

この写真立ての中に入っている写真は一枚の筈。だというのに、なぜか写真立てとは違う固い感触があるのだ。

「何か、入っとるんか……?」

それを写真立てから取り出してみる。それはいくつかの鍵だった。

「小っさい鍵の束…?でも、どこの鍵……」

見たこともない鍵の束にうちは疑問しか感じられへんかった。





翌日、うちは一通りの鍵の束を家中の扉で試してみたんやけど、一つだけわからん鍵があった。

後、開けてないのは一つだけ。お父さんの書斎だけや。

「多分、ここの鍵なんやろうけど……なんであんな所に入っとったんやろ?」

うちは疑問に感じながらも、鍵穴に通してみる。すると、鍵穴は拒むことなくするりと鍵を通していき、鍵を回すと、カチャッと音がする。鍵が開いたのだろう。

ドアノブを回し、中に入る。

お父さんの書斎には初めて入るけど……こんな感じなんやな。

「所狭しと本が入っとるし……あ、これってアルバムやろうか」

うちは何となく目に入ったアルバムを手に取る。

そこにはこう書かれていた。

『はやての成長日記』と。

「あはは。これってうちの五歳とかそんな頃のやろか。結構あるんやな。…………え?」

次のページをめくった途端、うちの思考は停止してしまった。

だって仕方ないと思う。そこには()()()()()()()()のリインフォースが優し気な瞳をしてうちと同じくらいの年齢の男の子と一緒に写っとったんやから。その傍には小さなうちもおる。

「これって、何なん……?こんなの知らん。こんなん、うち撮った覚えあらへん!!」

それに、リインフォースはうちと最初に出会った時には既に大人の姿やった!こんな、小さなリインフォースなんか、うち知らん!!

「何なん……?何が、どうなっとるんや……」

うちは恐る恐るその写真を手に取る。何気なく、後ろを見てみるとそこには一つの文が書かれていた。

『全君とリインちゃんが、はやてと遊んでくれた♪』と、書かれている。

「全……って、橘君の事?なんで、ここで橘君が出てくるん……?」

そう言葉にした後、うちの行動は早かった。

SIDE OUT

「ふんふんふーん……ふんふふーん♪」

鼻歌を歌いながら、床に掃除機をかけていく全。

今日は全が前々から決めていたひと月に一度の大掃除の日。

というのも、元来綺麗好きである全はひと月に一度は家の大掃除をしているのだ。

今日はその日だという訳だ。

「これで……終わりっと。うん、上出来上出来。さぁて、地下にこもって特訓でも……ん?」

模擬戦を終えた後、ミサキから「特訓を控えるように。いいな、過度な運動はするなよ!」ときつく言い含められているにも関わらず、特訓をしようとする全。

軽く位ならいいよな?と言い訳をしながら地下室へと向かおうとする全。と、そこに

Prrr Prrr

家の固定電話が鳴る。

「電話?……はい、もしもし。橘ですが」

全は電話に出る。

『橘君やな?』

「その声……八神か?なんだ、何か用事か?」

『用事も用事。大切な用事や、今からうちの家に来て!ええな!今すぐや!!』

「っ……言いたい事だけ言って切ったよ……はぁ、特訓はまた後日だな……」

用件だけ言った後電話を切ったはやてにため息をつく全。

それでも一言も文句を言わず、行こうとするのは全らしい。

迷うことなくはやての家にたどり着く全。

(懐かしいな……ホント、懐かしい……)

懐かしみながらも、家のドアに近づく全。

と、それを予見していたかのように扉が開く。

「………………」

扉の先にいたのははやてだ。そして、なぜかジト目だ。

「な、なんだ、その目は?あまり時間はかけていない筈だが……」

「…………とりあえず、入って」

はやての態度に訝しみながら家の中に入っていく全。

「あれ?全さん?」

「君は……」

と、家に入った所で全はリインフォースⅡと出会う。

「ちょうどよかったわ。リインも一緒に来てや」

「??? はいです」

なぜかリインも同行する事になりますます訳がわからなくなる全。

そしてはやてはある部屋の前で立ち止まる。

そこは全もよく知る場所。はやての父親である智樹の書斎だった。

「ここや」

「ここは?」

全は知っているが、知らない振りをする。

ここで知っていると言った所でどうにもならないし、ましてやはやては記憶を取り戻していない。

現段階では何も言うべきではないと判断した故の言葉だ。

「お父さんの書斎……」

はやてはそれだけ言うと、部屋へと入っていく。

全とリインも一緒になって入る。はやては迷うことなく机の上に置いてある一冊の本を取り出す。

そこには『はやての成長日記』と書かれていた。几帳面な智樹さんと日和さんらしいなと全は思う。

恐らく誰も入ってこれないここにそんな大事な思い出を置いておいたんだろうと想像する全。

「問題は……これや」

「問題ってな…………に…………………」

はやてはその中から写真を取り出し、それを全に突きつける。

それを見た全は驚く。そこには幼い頃の全とはやて、そしてそんな二人と同じ背丈の銀髪の少女が笑顔でいるからだ。

「これ、どういう事なん?この写真の裏には全君とリインちゃんがって書かれとる。銀髪の女の子の方が……信じられんけど、リインフォースや。でも、こっち。この男の子の方……これ、橘君やろ?」

「そ、それは……」

「は、はやてちゃん……」

全とリインは言葉に詰まらせる。真実を言う事が出来ないからだ。

ここでなぜリインが全の事を知っているのかという事を説明しておこう。彼女の前身であるリインフォースは全との思い出を残そうと考えていた。

そこである賭けに出たのだ。それは自身のデータベースに記録として思い出を記録させておく事。

ある種の賭けだったのだが、リインフォースはその賭けに勝った。

その記録はリインフォースⅡにも受け継がれており、それによってリインフォースⅡは全の事を知っているのだ。

そして、全とリインは何も言えないまま数秒が過ぎ、さらにはやてが詰め寄ろうとすると

『そこまでにしてください、主はやて』

部屋内に、そんな声が鳴り響いた。

その声にはやて、全、リインフォースⅡは固まる。

なぜならば、その声は彼らにとって大事な人の声だったからだ。

「リイン……フォース……なん?」

「リインフォース、なのか?」

「お姉さま、なのですか?」

そう、それは忘れもしない……初代リインフォース(祝福の風)の声だった。 
 

 
後書き
ここ最近この作品のネタばかり思い浮かぶ。なぜだ?

いや、まあ。出る分には構わないんだけどね。








予告という訳ではないが、次回辺りで早くもはやての記憶が戻りそうというね。その後はまあ……全君にはちょいと辛い思いをしてもらう事になる。まあ、それを乗り越えればね。全君にとって心強い味方が現れますから。 
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