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平成ライダーの世界

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第十一章

 しかしその中で以前からメールをやり取りしていた菊池啓太郎と知り合い最初はお互いメル友とは知らなかったのですがやがてそれを知りさらに親密になっていきます。そして木場、海堂達と共に人間の側からオルフェノクと戦うようになりました。
 彼女はその中でロブスターオルフェノクこと影山冴子との因縁も生じます。あくまで自分をオルフェノクと考える影山と人間でいたいと考える長田は実に対象的でした。しかしそれは結局やはり人間とオルフェノクのことをわかっておらずどちらも人間であると理解していなかったからでしょう。
 彼女は真理と並ぶヒロインでありオルフェノクとして攻撃されたり実験にされたりしてます。木場達三人の中で最も過酷な生涯でした。とりわけ実験に使われ力を失い最期は影山に殺されたことが木場にも大きく影響しています。啓太郎との愛も最後まで成就せず幸薄い一生でした。
 しかしそその彼女もやはり生きているのでしょう。僕はそう思って長田も拙作に出しました。彼女もまたオルフェノクとは何か、ということを理解してそのうえでスサノオと戦う運命を持っていると考えたからです。彼女もまた戦士なのです。
 海堂は僕がファイズの中で最も好きなキャラクターです。唐橋充さんの演技もさることながらその独特の人間性を見ていて深い共感も覚えました。
 最初はギターの天才として大学でも持て囃されていました。しかしそれをオウルオルフェノクの卑劣な姦計により奪われてしまいます。ここで重要なのはオウルオルフェノクはオルフェノクだから最低だったのではなく人間として最低下劣な存在でした。まずこのことが違います。彼は人間の最も醜悪な部分が出た存在でした。
 そのオウルオルフェノクは木場によって裁かれ海堂も自分を持て囃した後で腐した大学のかつての仲間達に言いたいことを言い自分の後に夢を託せる後輩を見てギターを完全に諦めます。夢は呪いと同じもの、というのがこの時のテーマでしたが彼はその夢を捨てました。非常に辛いですがそれを捨て未練の対象だったギターも捨てました。
 それからの彼はファイズになったり一旦オルフェノクになろうとしたり何かトリッキーになろうとしたり定まりません。ふらふらしていました。しかしその中で鈴木照夫という少年と会ったことが転機になります。
 この少年と会ってから彼は父親の様な、兄貴の様な心を持つようになり彼に愛情を注ぐようになります。しかしその照夫こそがオルフェノクの王であり彼にとっては最大の敵となる存在でした。そしてさらに長田は死に木場は完全にオルフェノクの側に立ってしまいました。彼はこれまであやふやだったアイデンティティをどうするかという選択をさせられることになったと言っていいでしょう。
 その彼には二つの選択がありました。人間として生きるか、それともオルフェノクになるか。彼は木場の行動に絶望しながらもです。かつての彼の意志を継ぐ形で人間として生きることを選びました。
 オルフェノクの身体では長くは生きられない、しかしオルフェノクの王は確かにオルフェノクを糧にしますがそれでも完全にオルフェノクとなることを選べば永遠の命を与えてくれる。しかし彼は人間として生きることを選んだのです。
 それが彼が辿り着いた答えでした。ギターを失いオルフェノクになりそれからも行ったり来たりを繰り返した彼は最後には人間でいることを決めたのです。そのうえで乾達と完全に合流しました。
 彼はライダーのベルトの正統な所持者になるべきだったかも知れません。あるネット小説ではオーガのベルトの所有者、そしてスマートブレイン社の社長になり全てを終わらせています。彼ならばそれも可能だったでしょう。
 彼は最後まで生き残りました。人間として残された時間がどれだけあるのかわからない、しかしそれでも人間として生きることを選び木場と長田のことを歌ったと思われる歌を口ずさみオルフェノクとは何だったのかと呟きながら何処かへと消えていきました。
 彼は今はオルフェノクではないでしょう。しかしスサノオとの戦いは今も行っています。何故なら彼もまたその運命の中に身を置くことになったからです。オルフェノクになったしまったことによってです。彼はファイズの最後の方までそのアイデンティティを確かなものにはできませんでした。しかしその辿り着いたアイデンティティはこのうえなく美しいものでした。しかし何度も道を踏み外しかけてもすんでのところで踏み止まり続けた彼はやはり運命に導かれているものがあったのでしょう。僕はこの海堂というキャラクターを忘れられません。人間とは何かということも考えさせてくれるキャラクターでした。
 海堂は人間でいることを決意しましたが逆にスマートブレインの面々はそうではありませんでした。村上峡児にしても影山冴子にしても北崎にしてもです。Jもまたそうですし映画版のレオもです。
 彼等は自分がオルフェノクと信じ込んでいました。そのことを疑わず人間を侮蔑し敵視していました。しかしこれはスサノオの罠にかかっていたと思います。
 村上はとりわけ自分をオルフェノクとして意識して彼が以前から持っていたと思われるその攻撃的かつ不遜な性格とあいまって乾達の前に立ちはだかりました。ローズオルフェノクとしての圧倒的な戦闘力もさることながらその自分をオルフェノクとしたうえで人間に見せる攻撃性と敵意もかなり印象的でした。
 こうして意味で影山、北崎、J、レオも同じです。しかしオルフェノクの側にも人間というものに揺らぎを見せ最後は人間であることを選んだ者達もいました。
 まずは澤田亜季です。僕はこのキャラクターは身勝手な人間だと思いファイズの世界では最も嫌いなのですが澤田は自分が人間なのかそれともオルフェノクなのかと考え続けていました。 
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