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夢値とあれと遊戯王 太陽は絶交日和

作者:臣杖特
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レベル6後編 ウジウジばきゃりの自分にバイバイまたバイバイ

 
前書き
前中編あらすじ
個性に執着する4人組ハンターが襲来する。
内3人を退け、ついに最終戦に突入。

※この作品は、未成年飲酒喫煙を推奨するものではありません。どうしてもしたいなら政治家のご意見番にでもなって法律を変えて下さい。 

 
決闘(デュエル)だ!てめぇみたいな没個性なやつなんざ、一瞬で捻り潰してやらぁ!」
 4人組の最後の1人、ピーツーが吠えた。
「あの、1つ質問いいですか?」
 老伍路(オイゴロ) 夢値(ムチ)はひょいと手を上げた。
「なんだなんちゃらぁ!」
「なんで、僕は没個性なのですか?」
「あぁ?んなの常識で考えろ!」
「へ?」
 夢値は首を傾げた。
「どうして常識で考えるんですか?」
「ああああめんどくせぇななんちゃらぁ!」
 ピーツーは地団駄を踏んだ。
「俺がやりてぇのは禅問答じゃねぇ!決闘だ!」
「ぼくも決闘は好きですよ」
「「決闘!!」」
「先攻はもらいます。ぼくは《SR(スピードロイド)バンブー・ホース》を召喚します。そしてその効果で、手札のレベル4以下の『SR』モンスター、《SRメンコート》を特殊召喚します」

バンブー・ホース 攻1100
メンコート 守2000

「ぼくはレベル4の《バンブー・ホース》と《メンコート》でオーバーレイ。ランク4、《ギアギガント (クロス)》をエクシーズ召喚します」

ギアギガント X 攻2300

「そして《ギアギガント X》のオーバーレイ・ユニットの内、《バンブー・ホース》の方を取り除いて、《ギアギガント X》の効果を発動します。デッキからレベル4以下の機械族モンスター、《SRベイゴマックス》を手札に加えます。ぼくはカードを2枚伏せて、ターンエンドです」
「俺のターンドロー!……ククク」
 ピーツーは突然顔を手札に伏せた。
「?」
「アーハッハッハッハハハハハ!すげぇ!何だこの手札!」
 ピーツーは大声で笑った。
「揃ってる!揃ってやがる!オンリーワンだ!オンリーワンだ!この手札なら、あのなんちゃらってやつも俺の前にひれ伏すぜ!」
「それは楽しみですね」
「俺は《マンジュ・ゴッド》を召喚!そして効果で《ブリューナクの影霊衣》をサーチ。1枚伏せてターンエンドォ!」
「……それだけ?」
 哀手(アイデ) (モク)は拍子抜けした。
「別のやつでも見たような光景だが、それ以外の手札がいいんだろうな」
 ダードは冷静に呟いた。
「エンドフェイズ、ライフを1000払い、伏せカードを対象に速攻魔法《コズミック・サイクロン》を発動します。対象のカードをゲームから除外」

夢値 LP8000→7000

 除外されたカードは、《(かみ)通告(つうこく)
「エンドサイクか。チッ、改めてターンエンドだ」
「エンドサイク?改めて?」
 樢は素直にダードに尋ねた。
「まずはエンドサイクについてだが……」
 ダードが解説している間にも、決闘は進んでいく。

夢値 LP7000

モンスター  ギアギガント X(攻2300)
魔法、罠   伏せカード1枚
ペンデュラム 無し

ピーツー LP8000

モンスター  マンジュ・ゴッド(攻1400)
魔法、罠   無し
ペンデュラム 無し

「ぼくのターン、ドロー。まずは残りのオーバーレイ・ユニットを取り除いて《ギアギガント X》の効果を発動します。デッキからレベル4以下の機械族、《SRダブルヨーヨー》を手札に加えます」
「へはは!勝手にやってろ!どうせ俺が超個性的な必殺コンボを決めて勝つんだからよぉ!」
「それは早くても3ターン後でしょう?」
「あぁ?」
「この手札なら、ぼくはこのターンで勝てるかもしれません」
「はぁああ!?」
 ピーツーは素っ頓狂な声を上げたが、樢はそんなピーツーが意外だった。
「ねぇダード、」
「なんだ?」
「もう夢値が勝てるって言ってるけど、変なの?」
「そうだな。実質的な勝ち確定ならともかく、先攻の2ターン目に勝つってのは珍しい。……だが」
 ダードは必死にピーツーを励ます外野を一瞥した。
「んなことは今までの闘いで分かってたことだ。夢値は運が良くて、得体のしれないループを2ターン以内に組み上げる。そういう試合を3戦も見てきた」
「だよね」
「ちゃんと前の試合を見ていれば、いい手札からコンボ成立まで3ターンかかるデッキなんざ夢値相手には使わない」
「じゃあなんで使ってるの?」
「答えてやろうかなんちゃらぁ!」
 ピーツーが話に割り込んできた。
「な、何よ」
「それはなぁ!これが超個性的なデッキだからだよぉ!」
「個性的個性的って、それに拘って変なデッキ使えない状況にさせられてんじゃない」
「うるせぇ!あぁんな無個性な金太郎飴4切れデッキ共で勝って楽しいなんてよっぽどだ!」
「……あのぉ」
 樢が話に割り込んできた。
「なんだなんちゃらぁ!」
「ぼく、あなたのデッキと似たのを見たと思います」
「…………は?」
 空気が一瞬にして固まった。
「ぼくの知り合いが、似たようなデッキを使っていました。彼は少し前に、《緊急儀式術》に特化した(ペンデュラム)タイプのデッキに改造していましたけれども」
「な……な……」
「そりゃあ誰かとは被るわよ」
「なんだとぉぉぉぉおおぉ!」
「え!?私変なこと言った!?」
 樢は慌ててダードに確認した。
「それはともかく、ぼくは《ギアギガント X》を対象に……」
「待てなんちゃらぁ!」
 ピーツーの大声に空気が震えた。
「なんですか?」
「それは、それは違う!」
「何がですか?」
「違うって言ってんだよ!」
「何がよ……?」
 樢はわけが分からなかった。
「違いませんよ、何も。ぼくは《ギアギガント X》を対象に罠カード《強制脱出装置》を発動します。《ギアギガント X》をエクストラデッキに戻します」
「はぁ!?気でも狂ったか!」
「今回はさっきのモンスターを無限に出すの?」
「……お前、流石に夢値に毒されすぎだ」
 叫ぶピーツー、首を傾げる樢、呆れるダード。
「ぼくのフィールドにモンスターが存在しないので、手札から《ベイゴマックス》を特殊召喚します。特殊召喚に成功したので、効果を発動。デッキから『SR』モンスターの《SRタケトンボーグ》を手札に加えます。そして風属性モンスターがフィールドにいるので、手札から《タケトンボーグ》を特殊召喚します」
「単に《ベイゴマックス》を特殊召喚する為にフィールドを空けたかっただけだろう」

ベイゴマックス 守600
タケトンボーグ 守1200

「ぼくは墓地の自身をゲームから除外することで、《バンブー・ホース》の効果を発動します。デッキから《SR赤目(あかめ)のダイス》を墓地に送ります。そして《ダブルヨーヨー》を召喚。召喚に成功したので墓地の《赤目のダイス》を対象に効果を発動します。墓地の《赤目のダイス》を特殊召喚」

ダブルヨーヨー 攻1400
赤目のダイス 守100

「《赤目のダイス》が特殊召喚に成功したので、《タケトンボーグ》を対象に効果を発動して、《タケトンボーグ》のレベルを2にします」

タケトンボーグ 星3→2

 あっという間に夢値のフィールドにはモンスターが4体揃った。
「ぼくはレベル4の《ダブルヨーヨー》にレベル1の《赤目のダイス》をチューニング。レベル5《アクセル・シンクロン》をシンクロ召喚します」

アクセル 守2100

「デッキから《ジェット・シンクロン》を墓地に送ることで、《アクセル》の効果を発動します。アクセル・シンクロンのレベルを《ジェット》のレベル分、1下げます」

アクセル 星5→4

「ぼくはレベル3の《ベイゴマックス》に、レベル4になった《アクセル》をチューニング。レベル7《邪竜星(じゃりゅうせい)-ガイザー》をシンクロ召喚します」

ガイザー 攻2600

「ぼくは自身と相手の《マンジュ・ゴッド》を対象に、《ガイザー》の効果を発動して、対象になったモンスター達を破壊します。そして破壊された《ガイザー》の効果を発動して、デッキから幻竜族モンスター、《龍大神(りゅうおおかみ)》を特殊召喚します」

龍大神 攻2900

「更にぼくは手札を1枚墓地に送ることで、《ジェット》の効果を発動します。墓地から自身を特殊召喚」

ジェット 守0

「そして《龍大神》を対象に通常魔法《シエンの間者》を発動します。《龍大神》のコントロールを相手に移します。そして、ぼくはレベル2になった《タケトンボーグ》にレベル1の《ジェット》をチューニング。レベル3、《ゴヨウ・ディフェンダー》をシンクロ召喚します」

ディフェンダー 守1000

「特殊召喚に成功したので、相手の場の《龍大神》の効果が発動します。エクストラデッキから《SRチャンバライダー》を墓地に送ります。そして、ゲームから除外された『SR』モンスターである《バンブー・ホース》を対象に墓地に送られた《チャンバライダー》の効果を発動して、《バンブー・ホース》を手札に加えます。そして、ぼくのフィールドに地属性(シンクロ)モンスターしかいないので、《ディフェンダー》の効果を発動して、エクストラデッキの2体目の《ディフェンダー》を特殊召喚します」

ディフェンダー 守1000

「また特殊召喚したので次は《PSY(サイ)フレームロード・Ω(オメガ)》を墓地に送ります。そして墓地の《チャンバライダー》を対象に、《Ω》の効果を発動して、それら2枚をデッキに戻します。そして2体目の《ディフェンダー》の効果で3体目の《ディフェンダー》を特殊召喚して、エクストラデッキから《Ω》を墓地に送ります」

ディフェンダー 守1000

「ぼくは、レベル3の1体目の《ディフェンダー》と2体目の《ディフェンダー》でオーバーレイ。ランク3、《(ミッシング).(エックス)-セイバー インヴォーカー》をエクシーズ召喚します。そしてエクストラデッキから《チャンバライダー》を墓地に送ります」
「あぁこれは……」
 ダードはこれからどうなるか察しがついたようだった。

インヴォーカー 攻1600

「《Ω》の効果で《Ω》と《チャンバライダー》をデッキに戻してから、自身のオーバーレイユニットを取り除いて《インヴォーカー》の効果を発動します。デッキから地属性レベル4戦士族モンスター、《アマゾネスの射手(アマゾネスアーチャー)》を特殊召喚して、《Ω》を墓地に送ります」

射手  守1000

「まぁたかぁなんちゃらぁ!」
 ピーツーは叫んだ。
「また?」
「あのカードは、自分のモンスターを2体リリースすることで相手にダメージを与えることが出来る。要は前に使った《キャノン・ソルジャー》に近いやつだ」
「へぇー。でも、なんで今回はモンスターを変えたの?」
「《射手》は《インヴォーカー(インヴォ)》で出せるからな。ランク3を、えっとレベル3のモンスターが2体簡単に出せるなら《射手》の方がコンボパーツをデッキから持って来られて便利なんだろうな」
「要は無限バーンかなんかで勝つつもりじゃねぇか!まぁた同じだ!」
「同じとも違うとも言います」
「なんちゃらの中でどんな風になってんのか知らねぇけどよぉ!やられる方のことも考えやがれよなんちゃらぁ!」
「それは大切なことですね」
 夢値は頷いた。
「そして、やる方がいるならやられる方がいるならやる方もいるのですよ。ぼくは自身と《インヴォーカー》をリリースして、《射手》の効果を発動します。相手に1200ダメージ」

ピーツー LP8000→6800

「《Ω》の効果で自身と《ディフェンダー》をデッキに戻します、それで、ぼくのフィールドには地属性Sモンスターしかいないので、《ディフェンダー》をエクストラデッキから特殊召喚します。そして《Ω》を墓地に。そして《Ω》と《ディフェンダー》をデッキに戻して、もう1度《ディフェンダー》を特殊召喚して《Ω》を墓地に送ります。その《Ω》で自身と《インヴォーカー》をデッキに戻します。そして効果を使った《ディフェンダー》2体で《インヴォーカー》をエクシーズ召喚して、《Ω》を墓地に送ります。そしてその《Ω》の効果で自身と《射手》をデッキに戻します」
「おんなじ場に戻ったわね」
「そうだな」
 ダードは首肯した。
「《龍大神》と《Ω》のコンボで、モンスターを特殊召喚する度に墓地のカードを1枚デッキに戻せることは話したな?今回デッキに戻したいモンスターは《ディフェンダー》2体と《インヴォ》と《射手》の4枚。特殊召喚するのも、《ディフェンダー》2枚と《インヴォ》と《射手》で4回。採算がピッタリ合うからずっとループを続けていられるわけだな」
「《インヴォーカー》の効果で《射手》を特殊召喚して《Ω》を墓地に落として《Ω》と《ディフェンダー》をデッキに戻して、《射手》と《インヴォーカー》をリリースして1200ダメージです」

ピーツー LP6800→5600

「こんなのが何だ!こんなのが何なんだよ!」
 ピーツーは机に拳を叩きつけた。
「これが、ぼくにとっての、オリジナルデッキです」
「オリジナルだとぉ?」
 ピーツーは夢値を睨みつけた。
「なぁにがオリジナルだ。ただ単にわけ分からねぇのグルグルしてるだけじゃねぇか!こんなん似たようなのいくらでも見たことあるぜ!」
「でしょうね」
 夢値は頷いた。
「あなたがもっと長く決闘をすれば、似たどころかこれと全く同じの、いや、もっと素晴らしい構築のデッキと対戦することが出来るかもしれません」
「んだとぉなんちゃらぁ!それのどこがオリジナルなんだよぉ!」
「その場合、オリジナルだけどオリジナルじゃなかっただけですね」
「はぁ!?」
 ピーツーは目を見開いた。
「本当にこのデッキが唯一の存在なのか、ぼくには確認する術はありません。それでも、ぼくはこのデッキをオリジナルと言い張ります」
「何の根拠も無しにかよなんちゃらよぉ!」
「世界は、いえ、宇宙は広いのですよ?」
「だからどうした!」
「この宇宙の中に、全てにおいて自分より優れた存在がいないと、絶対に保証することは出来ません。その人ならば、ぼくと同じような、ぼくよりも優れたデッキを仕上げるでしょう」
「じゃあ個性なんて無ぇじゃねぇかよなんちゃらぁ!」
「勿論あなたのデッキも、あなたより優れた人がもっといいデッキを作っていたかもしれません」
「んなわけねぇだろぉてめぇと一緒にすんななんちゃらよぉ!」
 ピーツーは詰め寄らんばかりだ。見えないテーブルさえ無ければそうしていたかもしれない。
「……何故、唯一で1番でなくてはならないのですか?」
 そんなピーツーに向けて、夢値は首を傾げてみせた。
「いきなりなんだ」
「あなたは、自分より優れた存在がいないのではなく、自分より優れた存在を認めていないだけです。何故唯一で1番の座に固執するのですか?」
「それが俺の個性になるからだ!」
「それも、あなたの個性です。しかし、それ以外を何故個性と認めないのですか?」
「それ以外は個性じゃないからに決まっているだろなんちゃらめ」
「……それは個性じゃないと、どうして思っているのですか?」
「俺は禅問答しに来たわけじゃねぇっつってんだろなんちゃらぁ!誰もがそう言うだろうが!」
「誰もが?でも、あなたにとって重要な人物も、そう言ったのですよね?」
「だったらなんだよなんちゃらぁ!」
 叫んだピーツーだったが、少し整えるように黙ってから口を開いた。
「……俺の兄貴は出来たやつだった。小学校のテストでいつも100点ばっか取ってた。特に算数は100点以外を見たことが無いぐらいだった。兄貴はそれから有名私立中学に入った。そこでは流石にいつも100点じゃなかったが、数学だけはずっと1位だった」
「……」
「俺はずっと兄貴を追い続けて、そして負け続けた。算数でも数学でもそれ以外でも、なんでも負け続けた。悔しそうにしている俺に、兄貴は優しかった。『お前にもいつか、誰にも負けない何かが出来るようになる』よく俺にそう言った。だから俺は、不良(ワル)になった」
 ピーツーは腕をグルンと回した。
「優等生だった兄貴は、ポイ捨てだの信号無視だのぐらいしかしたことが無かった。だから俺はしょぼい中学に入るとまず煙草を吸った。それから酒だって飲んだ。兄貴はそれを止めようとはしてたが、あんまし強くは言ってこなかった。んで、俺はそれをずっと無視してた」
 ピーツーの独白は続く。
「俺は気分が良かった。俺はあの何でも出来る兄貴が、無力そうに俺を見てたから。だが、家庭で悪ぶんのは楽しかったが、中学ではそうもいかなかった」
「……」
「もっと悪いやつがいた。酒や煙草どころかヤクをやってるやつもいた。ヤバいやつは何度も少年院送りにされてた。だが俺は、そんなことをする勇気が無かった。その時の俺は、何者でも無かった」
 ピーツーはそう言うと、力を絞るように拳を強く握りしめた。
「だが今は違う!仲間と組んだ超超個性的で世界で俺達だけの最強デッキがある!これで雑魚共を、無個性共を沢山蹴散らし、より俺達の個性に磨きをかけてやる!」
「……成る程」
 夢値は頷いた。
「なんちゃら如きに俺の話が……」
「矛盾している自覚はあったのですね」
「はぁぁ!?」
 夢値の言葉に、ピーツーは口を大きく開けた。
「今やっていることをいくらやっても、あなたの言う個性に辿り着かない。そういう自覚が、あるのですね」
「何言ってんだてめぇなんちゃらコラァ!」
「一番大切な、どうしてあなたが個性的なのかが全く触れられていません」
 問題の答えでも解くように、夢値は淡々と喋った。
「俺が個性的だからだよ!」
「それは禅問答ですか?」
「ぐっ……てめぇ」
「本当は気づいているんでしょう?自分で出した問いに答えられていないと」
「……」
 ピーツーは夢値を睨み、黙った。
「「誰にも負けない何か」を持っていないけど、持っていなければならない。だから、持っていると思い込むしか無かった。そうですね?」
「ふ、ふざけんな!持ってるぞ、てめ、なんちゃらよぉ!」
「自分が一番になっている為には、他に自分より優れた人が存在していてはおかしい。だから他人の否定に躍起になっていたんですね」
「なんだ、何が言いてぇんだ。な、なんちゃら、よぉ」
「あなたは、あなたであるだけで十分唯一の存在なのです。無理に強くなることなんて無いのです」
「……だ、だが、兄貴は、」
「誰にも負けない何かが無いなら、誰かに負けない何かでいいのです。それも無いなら、何かでもいいのです」
「で、でも」
「自分を心から誇れるようになってから、立派な人間になってもいいのです。まだ時間は十分にあります」
「……」
「ぼくのデッキだって、きっとどこかに同じものがある。それでも、ぼくにとっては素敵で個性的なデッキなのです。たとえ誰がどう思っていたとしても」
「俺は……」
「あなたのデッキだって、誰かと被っているから駄目だなんてことはありません。同じデッキを使う人同士互いを、そして自分も尊重し合えばいいのです」
「俺が、お前を。俺が、俺を……」
 夢値はその言葉に、こっくりと頷いた。

ピーツー LP800→-400


「主よ我が儀式を愉しみ給え。主よ我が儀式に歓び給え」
 九衆宝(クシュボウ) 毛糸(ケイト)は、ろうそくの灯火の中ひっそりと囁きながら、真っ白な団子を口に入れた。
 それを食べ終わると、また先程と同じ文句を呟く。
(あのハンター同士の戦いの時の哀手 樢は明らかに異常だった。サンサーヴは目覚めかけているかもしれない)
 毛糸は夢値とピーツー達との決闘を思い出しながら、また団子を1つ食べ終えた。
「主よ我が儀式を愉しみ給え。主よ我が儀式に歓び給え」
 毛糸は操られたように口を動かしながらも、思考は冷静だった。
(私の力があれば最悪の事態はきっと回避出来る。だけど私のいない所で暴走すれば、一大事になることは確実だろう)
 同じ言葉を繰り返し次々と団子を食べながら、毛糸は思考を巡らせていく。
「主よ我が儀式を愉しみ給え。主よ我が儀式に歓び給え」
(かくなる上は……)
 ろうそくの気流で、立てかけてあった習字紙が揺れる。
 そこには、『ただ一心にサンサーヴを称えるべし』と力強く書かれていた。 
 

 
後書き
ピーツー達の使用デッキを公開するタイミングが無かったので。ヒント代わりに少し整理を。
というか簡潔に言います。
変なカード使わなきゃとてもじゃないが出せないような影霊衣いたでしょ?いるんだよ。

今回はいつになくシリアスになってしまって、仕方無く恥ずかしかったけどシリアスを茶化さずに書きました。書いたつもりです。何言ってるか伝わってんのかなぁこれ。
次回は……次回シリアスになるかなぁ?シリアスもういいよ。なんでシリアスになったんだろう。前編書いてた時にどうしてもこの結論言いたかったんだろうね。

ともかく、ミスや誤字脱字等ありましたら、いや無くても、何か思うところがあればコメント下さい。それが創作の糧になります。 
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