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ポケモンに愛された男

作者:蛇騎 珀磨
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You are name ... ?

 そこにいるのは誰?もうすぐ閉館の時間だよ。
 
 ......え?この銅像の人物は誰か、だって?
 その台座に書かれているだろ。彼は『ポケモンに愛された男』だよ。この街出身の有名人さ。

 もっと詳しく知りたい?
 あのさぁ...自分で調べるとかしてないの? え?昨日、この街に引っ越して来たから分からない?
 ──しょうがないなぁ。じゃあ、閉館時間までね。あの辺に座りながら話そうか。


 彼がこの街出身なのは話したね。まあ、彼が生きてた時はまだ街じゃなかったんだけど...。当時、彼はポケモンマスターを目指して旅をしていたんだ。君も知ってるとは思うけど、旅に出る前にはパートナーとなるポケモンを1体選ばなくちゃいけない。その時、彼が選んだのは指定されてる3体のポケモンではなくて、手が付けられなくて困っていたポケモンだった。

 ほら、銅像にもなってる。彼の肩に乗っているのが、その時のポケモン──ピカチュウだ。

 最初は反抗ばっかりで、モンスターボールにも入ってくれなくて、喧嘩ばかりしてたそうだよ。その内に仲良くなって、パートナーの枠を越えて、親友......いや、家族のような存在になっていったんだ。


 ん?
 なんで『ポケモンに愛された男』と呼ばれているかって?
 簡単なことさ。彼ほどたくさんのポケモンに出会った人物はいないだろう。......そりゃ、テレビや本でたくさん知ってるって人は多い。僕だって、まだその程度だ。

 彼のすごい所はね、たくさんのポケモンを『見た』んじゃなくて、たくさんのポケモンに『触れ合った』ってことだ。そりゃあ、ポケモンはたくさんいるけどさ。君は、そのたくさんいる中の『伝説』『幻』『神』と呼ばれるポケモンに出会ったことはあるかい? あはは。そうだよね。見たことはあっても、出会ったことがある人物は少ないよね。普通ならね。でも、彼は違う。

 サンダー。ファイアー。フリーザー。ミュウ。ルギア。エンテイ。スイクン。ライコウ。セレビィ。パルキア。ディアルガ。ギラティナ。ダークライ。アルセウス。レシラム。ゼクロム。

 信じられる?今言ったポケモン、全部に出会ったんだ。まあ、ほんの一部だけどね。あとは自分で調べてよ。え?もうちょっと?
 ......しょうがないなぁ。じゃあ、『ポケモンに愛された』逸話でも話そうかな。


 シンオウ地方にあるアラモスタウンは知ってる?
 そう。『時空の塔』で有名な町。

 実は彼、そこで出会ったんだ。もちろん、ディアルガとパルキアにだよ。その時はダークライもいたんだっけな?ま、いいや。──いやいや、そんなのほほんとした出会いじゃなかったらしいよ。なんせ、下手をしたら町が消滅しちゃうところだったらしいから。
 その時の影響でギラティナが住む異空間に異常が発生したらしい。そんなこと知らなかった彼は、とあることから異空間に巻き込まれてギラティナに出会った。そんな状態で悪さしようとした奴がいたらしいけど、あっさり捕まったってさ。

 ──へぇ。よく知ってるね。
 そう。今言ったポケモンは、元々はアルセウスっていう1体のポケモンだったんだ。それが3体に別れて、ディアルガ、パルキア、ギラティナになったと言われているね。

 そして、それが原因で、争い始めた3体に怒ったアルセウスは暴走を始めた。彼は、それを止めるために過去まで行ったんだ。過去にも悪い奴はいるもんで、アルセウスを利用しようとした最悪な奴がいたらしい。
 彼はアルセウスと協力してその企てを阻止。それだけでもすごいけど、更に、現代に戻って怒りで暴走するアルセウスを正気に戻したんだ。そこまで親密になってたんだね。初めて聞いた時は思わず震えたよ。


 彼の逸話は、出会ったポケモンの数だけでも数え切れない程ある。僕が今話したのも、たったの一部でしかないよ。気になったのなら、自分で調べてみなよ。
 ヒント? ...まったく。しょうがないなぁ。
 ヒントって程のものじゃないけど、この博物館の展示されてある項目の中に『伝承』『伝説』『歴史』のコーナーがある。まずはそこを調べてみるといいよ。普通ならありえないくらい、彼のことがたくさん乗ってるから。


 おっと......もう閉館の時間みたいだね。
 そう。この音楽が鳴ったら10分後には閉館だ。さ、とりあえず立って。外に出よう。




 うぉ。でっかい満丸月だなぁ。月の光で影ができてら...。

 どうしたの?え?彼のことが気になるって?
 え。まさか銅像に恋しちゃったとか......あ、いてっ!
 痛い痛いッ!ごめんって!ちょっ、身長届かないからって蹴らないで!地味に痛いから!!

 は?僕?
 僕が彼のことを『ポケモンに愛された男』と思っているかだって? 愚問だね。もちろん、そう思っているよ。あー...いや、厳密には違うか。ん?知りたい? まあ、こればかりは調べても出てこないだろうしね......。

 僕は、彼が『ポケモンに愛された男』だとは思っているよ。
 でもそれ以上に『ポケモンを愛した男』だったんだろうな、って。
 これはあまり知られてないことなんだけど、ある日、この街にたくさんのポケモンが集まった。天変地異だの、都市壊滅だの、騒がれまくったなぁ。あ、いやいや、知られてないのはその日が彼の葬式だったってことだよ。


 彼の名前? 台座には書かれて無いな、確かに。この街の人間なら知らない人はいないからなぁ。
 うおっ、そんな怖い顔しないでよ。教えてあげるから。

 彼の名前は『サトシ』。
 この街、マサラシティがまだマサラタウンだった頃の偉人。
 最も『ポケモンを愛した男』。
 最も『ポケモンに愛された男』。


 そんなに詳しい僕が何者かって?
 ふふっ。この街ではあまり聞かれないから、なんだか新鮮に感じるな...。
 うん。確かに名乗ってなかったね。失礼、失礼。


「僕の名前は、サトシ。マサラシティのサトシ。
そして『ポケモンに愛された男』の玄孫(やしゃご)だよ」




 ようこそ、伝説の始まりの街。マサラシティへ── 
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