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艦隊これくしょん【幻の特務艦】

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第二十二話 話合い


紀伊に呼ばれていた榛名は、自室を出ようとした時、郵便係の妖精から一通の手紙を受け取った。差出人の名前を見た榛名の顔がぱっと輝く。
「瑞鶴さんからね!」
もどかしげに一読した榛名は、それをぎゅっと握りしめると、一刻も早く紀伊に知らせようと早足で彼女の部屋に向かった。ちょうど榛名の部屋は紀伊の部屋と同じ棟にあり、部屋も同じ階の3部屋へだてたところだった。
 ノックをすると「どうぞ!」という声が返ってきた。
「お邪魔します。」
紀伊の部屋のドアを開けて入ろうとした榛名は、とたんに「あっ。」と声を上げ、少し気まり悪そうにその場に立っていた。ちょうど握りしめている手紙、それをあまり読み聞かせたくない相手が中に入っていたからだ。
「榛名さん!大丈夫ですよ。入っていただいても。」
紀伊が声をかけた。
「あ、はい。では・・・。」
榛名は少しためらった後、紀伊の部屋に入ってきた。
「どうしましたか?」
「あの・・・加賀さんのいらっしゃる前ではあまり言いにくいのですけれど。」
「なに?」
じろと加賀が榛名をにらんだので、慌てて榛名が手を振った。
「あ、あの、あの、あの!!その・・・・いつも加賀さんたちに負けないって言っている親友からのお手紙なものですから・・・・。」
「あぁ、五航戦。」
「そ、そんなにきっぱり言わなくても・・・・・。」
榛名は困ったように笑った。第一航空戦隊と第五航空戦隊の軋轢のほとんどが加賀と瑞鶴との対立である。赤城は第五航空戦隊の鍛錬、努力を高く評価していたし、翔鶴は第一航空戦隊の二人をいつも敬う態度をとっていた。
「瑞鶴さんからですか?翔鶴さんがこの間退院されたという知らせがありましたけれど、その後何かあったのですか?」
と、赤城。
「いえ、お二人とも元気です。内容は近況報告、それにこの間呉鎮守府で行った紀伊半島沖の戦いについて書いてきました。」
「瑞鶴さんと翔鶴さんが出撃されたんですね!」
紀伊が叫んだ。
「はい!お二人でとっても大活躍っ・・・・!!(榛名はブルブルと首を振った)あ、その~~・・・お二人で協力して敵を撃退なさったって――。」
「別にいいわ。私は気にしていないから。五航戦の子なんかと一緒にしてもらいさえしなければ、気にしないから。」
「あ、はい・・・。(これじゃとても言えないわ。二人で敵主力戦艦7隻も沈めたなんて)」
 後で紀伊はこっそり榛名から戦況を聞いた。

それはほぼ完全に近い勝利だった。横須賀鎮守府から回航した最新鋭艦娘が残存艦隊に襲われるというアクシデントがあったにもかかわらず、呉鎮守府の艦娘たちは彼女たちを保護した後、理想的な戦闘をやってのけた。

第五航空戦隊の新鋭戦闘機部隊によって制空権を確保したのを確認した後、まず由良をはじめとする遊撃部隊が敵別働艦隊と接触、これを壊滅させた。そして余裕をもって本隊を待ち受け、つかず離れずを保ちながら敵を翻弄し、第五航空戦隊の艦載機隊と協力して陣形を乱さしめた。ついで第五航空戦隊から発艦した攻撃隊が敵艦隊に雷爆撃を敢行し、大打撃を与えると同時に伊勢・日向の主力艦隊の砲撃、由良達水雷戦隊の雷撃という3方向からの包囲連携攻撃によってとどめを刺された。当初の予定では殲滅戦を予定してはいなかったのだが、結果として敵艦隊のほぼ全艦隊を撃沈したという。わずかに重巡1隻、軽巡1隻、駆逐艦2隻が逃亡を図ったが、それも後に佐世保鎮守府の哨戒部隊によって撃沈されたそうだ。

 負傷者はほとんど出ず、むろん轟沈した艦娘は一人も出なかったという。

だが、加賀の前では榛名はそのことはおくびにも出さなかった。代わりに
「何をなさっているんですか?」
「今横須賀鎮守府で起きている軋轢について話していました。」
赤城が言った。榛名もそれを知らないどころではない。何しろついこの間間宮で尾張が麻耶と高雄に高飛車な口を叩いたところに居合わせたのだったから。あの後はさすがにお茶にする気分にもなれず、3人と近江、讃岐は早々に間宮を出た。その後色々と相談したのだが、良い解決策は思いつかなかった。ただ、別れ際に紀伊がまだあきらめず、もう一度考えてみる、何かあったら連絡すると言っていた。その答えが今日の集まりなのだと榛名は納得する思いだった。
「すみません・・・私の妹がいたるところで問題を起こしているようで。」
紀伊が申し訳なさそうに頭を下げた。
「あなたに謝ってもらっても事態は何も変わらないわ。」
加賀が乾いた声で言った。
「そして問題はあなたの妹のせいばかりじゃない。もともと艦娘の間には表面に出ないだけで各艦種同士の対立はあったのだから。あなたにも記憶があるんじゃない?最初呉鎮守府に着任した時に。」
紀伊にとっては最初の最初のころの出来事だ。あの時は自分がどの艦種なのかもわからず、ウロウロしているだけだった。自分の受け入れ先を巡って各艦娘がもめにもめたことも後で聞いて知っていた。その後は対立の火種などまるでなかったかのような和気あいあいとした雰囲気だったが、後でそのようなことがあったのだと瑞鶴たちから聞かされた紀伊は驚くばかりだった。
「それが、今度のことで一気に表面に現れたのですね。今こそ全員が結束しなくてはならない時だというのに・・・・。」
赤城がと息を吐いた。
「でも、まだ間に合います。」
榛名が両こぶしをぎゅっと握りしめて言った。
「今だってこうして戦艦の私、正規空母の赤城さん、加賀さん、そして空母戦艦の紀伊さんが話し合っているじゃないですか。」
「私たちだけじゃないわ。」
加賀が言うのと同時に、また新たな艦娘たちが失礼します、という言葉と共に部屋に入ってきた。不思議そうな顔をしている榛名に紀伊が説明した。まだ対立しあっていない若しくは対立を望まない艦娘は多くいる。そこで彼女たちを呼んで打開策を考えたかったのだと。納得した榛名も加わってそれから彼女たちはひとしきり現在の状況を話し合った。
「単純な対立じゃないから、始末に負えないの。」
いつにない沈痛な顔をしているのが高雄型重巡の次女愛宕だった。
「高雄も麻耶もあれ以来ずうっと部屋にこもりがちなの。戦艦や空母の先輩方とは口を利かなくなったわ。どちらかといえば軽巡や駆逐艦の子たちと一緒にいるようになったかもしれないわね。」
「私たちのところはそれほどでもないですけれど、矢矧が尾張さんの話を聞いて猛烈に怒って抗議しに行きました。まぁ・・・結果はお判りでしょうけれど。」
と、能代。
「阿賀野姉と酒匂が矢矧を抑えにかかっていますけれど、それもあまり持たないかもしれません。」
「飛龍、蒼龍、そして大鳳さんは特に何も。あの人たちはこういうことをあまり気にしないタイプの人たちですから。」
と、赤城。
「お恥ずかしい話ですが、同じ空母の一翼を担うのに、尾張姉様ときたら――。」
「最悪だよね。」
近江と讃岐が浮かない顔をしていた。
「私のところは野分や朝雲たちが反発してるなぁ。」
と、舞風。
「ただのお荷物と言われたのがよっぽど気に食わなかったんだなぁって思うよ。」
「私とてそれは同じだ。だが、それを反発の形であらわそうとは思わないな。」
磯風がため息交じりに言った。
「皆さんの前でこんなことを口に出すのは恥ずかしい次第ですが、私たちのところもそうです。妹の武蔵が主力艦隊決戦主義を露骨に掲げてきています。つまり・・・戦艦こそが海戦の主力だと。これまでそんなことは口に出してこなかったのに。」
「長門はそれほどでもないわ。ただ、いかにして各艦娘をまとめ上げるか腐心しているといったところね。今日は大淀さんと一緒に提督方とそのことについて秘密裏に話し合っているわ。みか・・・・葵さんも交えてね。」
陸奥が咳払いして報告を締めくくった。葵の正体については、まだ艦娘に漏らすには早すぎると思っている。葵自身は自分を梨羽 葵として接してほしいと望んでいた。連合艦隊総旗艦といっても、1万5千トンであり、前弩級戦艦にも及ばない級である。そのような立ち位置の自分が、歴史的勝利を収めた栄光ある連合艦隊総旗艦というだけで艦娘たちに号令を下すことはバカバカしいと言っている。
 陸奥はそれについては、少し考えすぎではないかと思わないでもなかったが、葵の言う通り黙っていることにした。それよりも今は目前の火種について、だ。

つまるところ、正規空母を除いては各艦娘どうしは対立しあい、いたるところで火花を散らしている、ということになる。

「このままでは沖ノ島から先へ進むことはおろか、艦隊を組んで深海棲艦と戦うことすらおぼつきません。今のバラバラの状態では各人が統一行動を取れないでしょう。」
赤城が沈痛な顔をした。
「どうしてこんなことに・・・・。」
陸奥がつぶやいた。沖ノ島攻略作戦の前は、準備万端だと思っていた。後方支援も、備蓄も、そして各員の練度も。だが、一番肝心なものが抜け落ちていたのだ。あるいは抜け落ちているということを誰もが自覚しないままずっとここまできてしまったのかもしれない。
「・・・私はわかったつもりになっていただけなのかもしれないわね。大作戦の前に各艦隊の気持ちは一つだと思い込んでしまった。物質的な手配を可能な限り行ったことで慢心していたのかもしれないわ。精神的な手当てを怠ってしまったのだわ。これをどうすればいいのか・・・。」
「いいえ、さっき榛名さんのおっしゃったとおりです。まだ、間に合います。」
紀伊が言った。
「でも、どうするの?」
「それは――。」
紀伊は言葉に詰まった。人の対立についての特効薬はまだない。心という複雑極まりないものをどうやって解きほぐすのか、そもそも解きほぐせるのか。紀伊にはわからなかった。
 集まった艦娘たちも、一様に重い溜息を吐くばかりだった。1プラス1イコール2のようにわかり切った数式を解くようには、いかないのだ。

「あの・・・少し・・乱暴な手かもしれませんが・・・・。」
躊躇いがちに沈黙を破ったのは、榛名だった。
榛名が手を上げた。
「一つ提案があります。」
各艦娘の視線が一斉に榛名に向けられた。彼女が語りだしたとき、誰もが耳を疑った。提案してきた内容が内容だったのと、それを提案したのが率直で謙虚、飾らず、誰からも敬愛される艦娘だったことに。

翌日――。
「なんだ?!この艦隊編成はッ!!」
会議室前掲示板に張られた、次の艦隊編成表をみた武蔵が我慢できないように叫んだ。武蔵だけでなく、集まってきた艦娘たちみんながざわざわとしている。
「戦艦が駆逐艦の旗艦に従うだと!?」
「ウソだろ!?どうしてアタシが戦艦部隊の旗艦を務めなくちゃならないんだ!?」
「私なんか正規空母の先輩たちと一緒だよ。しかも私が旗艦ってどういうこと!?」
麻耶、そして朝雲が動揺全開の様子で叫んだ。
「見てのとおりよ。沖ノ島攻略作戦も終わったことだし、少し息抜きが必要でしょ?」
掲示板の前に立った葵がしゃあしゃあと言った。
「息抜きどころか――。」
「こんなこと地獄だぜ・・・・。」
「私は我慢できないぞ!!」
発表された臨時艦隊の編成はまさに「変・則」そのものだった。
第一艦隊は旗艦野分 舞風 磯風 村雨 矢矧 そして武蔵 榛名 霧島
第二艦隊は旗艦麻耶 愛宕 陸奥 大和 扶桑 山城 
第三艦隊は旗艦朝雲 能代 加賀 赤城 飛龍 蒼龍
第四艦隊は旗艦高雄 金剛 比叡 大鳳 近江 讃岐
第五艦隊は旗艦紀伊 尾張 阿賀野 酒匂 吹雪 清霜
などという、ほとんど冗談とでもいうべき編成だったからだ。
「これは提督方の承認を得ているものよ。変更はできないわ。いいわね?」
「そんな無茶苦茶な――。」
「命令よ。」
葵の顔を見た麻耶はうっと声を上げて黙り込んだその隣で武蔵がぶつぶつ言っている。
「戦艦が駆逐艦の下風に立つなどと・・・・。」
「武蔵、あなたもよ。いくら前世で浮沈戦艦、超弩級戦艦と言われていても、至近距離から100本の・・・いいえ、20本だったかしらね。雷撃を受ければあなただってどうなるかはわかるでしょう。」
武蔵は舌打ちして黙り込んだが目はじっと葵をにらみ据えていた。
「とにかく、今後しばらくはこの艦隊編成で各自哨戒任務に当たること。次の作戦の詳細が決まるまでです。いいわね?」
葵は集まった艦娘たちを前に有無を言わせぬ口ぶりで言い渡した。

皆が去った後、葵、大和、陸奥、長門だけが残った。長門は、昨日はいなかったが、陸奥から昨日の集まりの内容を聞かされている。驚くかと陸奥は思ったが、案外長門が乗り気なのが意外だった。
「流石は元連合艦隊総旗艦ですね。」
大和が先ほどの武蔵達に対する葵の態度を思い返していたのか、感嘆の目をしていた。榛名の提案を聞いた艦娘たちは、だいぶその後も議論しあったが、結局その策しかないということになり、それを紀伊と榛名が葵に持っていったのだ。これを他ならぬ艦娘が提案したとなれば、それこそ軋轢のもとになるが、軍令部参謀梨羽 葵の名前で出せば、曲がりなりにも皆は納得する。そう考えての相談だった。葵はあっさりとこれを承知した。承知したのみならず、編成は私が考えるわと、逆提案をしてきたのだ。
「よしてよ。私は確かに前世の時代では戦艦だったのかもしれないけれど、あなたたちの時代では重巡に毛が生えたような程度の艦だもの。1万5000トン級が戦艦だった時代は一瞬だったのだから。」
葵が少し寂しそうな顔をしていた。だが、輪をかけて寂しそうな顔をしているのが、長門だった。
「それは我々とて同じです。現代では既に電子戦略が一般的です。艦隊決戦主義や目視による索敵や旧式電探など本来は時代遅れ。たまたま深海棲艦によるジャミングでレーダーや電子システムが使い物にならず、それに対抗できる手段が我々だけだったという理由から登用されただけです。そうでなければ・・・・。」
「長門・・・・。」
「陸奥、大和。こんな時にと思うかもしれないが、私は時々不安になることがある。」
長門はそっと会議室の使い古されたテーブルを撫でた。
「この戦いが終わったとして、我々はどうなるのだろう?」
「それは・・・・。」
「使い捨ての雑巾や旧式艦みたいに廃棄されるのか?ただ、役目が終わったからという理由で・・・・。」
「・・・・・・・。」
「お前たちは曲がりなりにも中途で沈んでいった。むろんそれが羨ましいなどとは思わない。だが、私は結局前世では最後まで生き残って・・・・ビキニ環礁で実験標的艦として沈んだ。戦艦としては同じ死ぬのなら、敵の砲弾に当たって死ぬか、若しくは前世での日本復興のために犠牲になりたかったのだがな。」
長門の沈んだ顔を見て、陸奥も大和もかけるべき言葉を失っていた。一人葵は長門の肩に手をかけた。
「先々の話はあまり考えないようにしましょう。けれど、私のような生き方も一つあると思うわ。艤装を外して、一人の人間として、好きなように生きること。軍属になってもいいし、何か自分の趣味に見合った仕事をしてもいい。あなたは前世の戦艦ではなく、その意思と記憶を受け継いだ艦娘なの。艦娘は艦娘よ。一人の人間なの。それを忘れないで。」
長門は視線を落としたままだった。
「ところで。」
葵は話題を変えた。
「各艦隊はいつから哨戒任務に当たるの?」
「明日からです。既にその件でミーティングが始まっているとは思いますが・・・・。」
陸奥は大和を見た。あの時同意したものの、土壇場になって不安になってきたらしい。
「やっぱり無茶じゃないですか?私たちもこれからミーティングに参加しますけれど、とてもやっていける自信がありません。」
「事ここに至っては、もう言葉だけではどうしようもないの。劇薬は並の市販薬と比べ物にならないほど効力があるわ。でも、同時にとても大きな副作用をもたらす。私がやろうとしていることは一種の賭けなのよ。」
「賭け・・・・ですか。やっぱりそれは少し乱暴では・・・・。」
大和が不安そうな顔を崩さなかった。
「このままでは皆対立したままだわ。それもひどくなる一方だもの。あなたそんなメンバーと一緒に艦隊を組んで戦える自信、ある?」
「いえ、それは・・・・ないです。」
「理由は?あなたも前世で大和型の名前を冠する超弩級戦艦だったわ。そして今も。」
「私は万能ではありません。近接戦闘はできませんし、対空砲撃も満足にできない。艦隊戦だって、私一人で何十隻もの深海棲艦を相手取ることはできません。一人では・・・無力だからです。統一行動ができる艦隊があってこそ、一人の力はそれこそ何十倍にもなるんです。」
「そうでしょう?だからこそ試すの。戦いは深海棲艦とだけやるものじゃないの。今私たちが相手にするべきものはまさしく人の心、疑心暗鬼という闇なのだから。特に今は。」
葵は陸奥を見た。
「沖ノ島攻略作戦で尾張は裏切ったわけではなかった。となると、私たちの行動が敵に漏れていたことの説明がつかないわ。」
沖ノ島攻略作戦の際、陸奥は懸念した「裏切り」という問題事項を胸にしまっておき事はできず、極秘裏に長門、大和、そして葵に相談したのだった。大和を加えたのは、彼女が長門以前に横須賀鎮守府の秘書官を務めていたことがあり、よく艦娘、そして横須賀鎮守府の事情を知っていたことによる。
 仮に「裏切り」が艦娘によるものだとすると、よほど以前から情報を蓄積していたに違いなかった。艦隊の練度、編成傾向、そして戦術。様々なデータを蓄積しておかなくては、あれほど用意周到な、まさに「すっぽりとはまるような。」待ち伏せはできなかっただろう。
「敵は第一陣に対し、完全な半包囲体制を整えて待機していました。偶然ではありません。」
「航空部隊による空襲によって私たちの作戦意図が敵にわかってしまった可能性はあると思う?」
「その可能性は低いと思います。なぜなら私たちの同島攻略の意図はわかるかもしれませんが、私たちがどのルートを通って接近してくるかは未知数だからです。」
「でしょうね。」
葵は肩をすくめた。
「とにかく、このことに関しては私たちだけの機密事項よ。ほかには漏らさない事。艦娘同士の対立、そして士気の低下どころの騒ぎではなくなるわよ。」
「はい。」
3人はうなずいた。艦娘たちの対立。そしてその艦娘たちの中にいるかもしれない「裏切者」。この深刻すぎる二つの材料を背負いつつも、ヤマト軍令部、横須賀鎮守府は次なる作戦を発動しようとしていた。

 
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