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サトシ「25歳」〜理想と現実の先にあるもの〜

作者:ドリ男
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ヒカリ「その前に、どっちが
お兄さんでどっちが弟なんですか?」



カツラ:「そう言えば言ってなかったのっ。
知恵と勇気を託された方が兄じゃっ。」



ヒカリ:「あっ、そうなんですかっ」




カツラ:「そして、愛と優しさを託された弟は
いつしかポケモンに慕われるようになり、
丸石にポケモンを自由自在に封印したり
解放したりする力を身につけ、
十になった頃にはポケモンの個々の能力を
引き出し、ポケモンの持つ力を
村人達に見せました。そして村人達に対し
”ポケモンには意志があり、
人とポケモンは心を通わす事が出来る”と唱え、
やがて夫婦の村は、人とポケモンが
共に生活するようになりました。
村人達は家にポケモンを招いては
そのポケモンに作物を与え、
ポケモンも又、村の人々が困った時は
己の秘めたる力で人々を助け、夫婦の村は
愛と優しさで溢れる村になりました。」


ヒカリ(丸石に、秘めたる力、、、それって、、)



カツラ:「そして、ポケモンの力で
村は(さか)え、弟が齢十五になった頃には
1つの国となり、弟はその地を治める
若き長となり、夫婦と人々、
そしてポケモンと共に
兄の帰りを待ちました。、、、しかし、
夏を越え、秋を越え、冬を越えても、
兄は帰って来ませんでした。
夫婦は嘆き、月夜の晩には夜空を見つめ、
空に叫び、涙を浮かべました。
そして、それを見た弟は、兄を探しに
旅へ出る事にしました。」



ヒカリ(大丈夫かしら)


カツラ:「夫婦は言いました。
”愛おしい我が子、お前まで旅立っては、
私達には何も残らん。どうか(そば)にいておくれ”
すると弟は、”()がこの世に生を受けたのは、
父君と母君が空を尋ね、神の声を聞き、
喜び、愛を誓った証、、しかし、
今は空を尋ねても神の声は聞こえず、
辺りは静まり、涙を(すす)り、嘆くばかり、、。
父君と母君が再び柔い笑みで、余とこの国を
照らして下さるよう、余は旅立ちます。
そして、兄上をこの地へ()す事を、
父君と母君に誓います。”
引き止める夫婦にそう()げ、
共に育った者とポケモンにも告げた後、
弟は国を飛び出し、旅に出向きました。
同じ月、同じ夜空の下で産まれた
たった1人の兄上を探す旅に。」


ヒカリ:「、、、」



カツラ:「やがて弟は、旅の中で
出会う人やポケモンに事情を説明し、
山を越え、海を渡り、
ついに、兄が渡された里の場所を
知る事が出来ました。そして、
弟はやっとの思いで、兄が居る里へ
たどり着きました。しかし、
兄が居る里を見ると、弟は驚きました。」


ヒカリ:「、、、」ドキドキ





カツラ:「目の前に広がるもの、それは、
鉄と銅で出来た巨大な城でした。
そして、城下の町ではポケモンと
異色な服を着た様々な人が
奴隷のように働かされており、中には
鉄の(おり)に閉じ込められている人もいた。
その光景を目にした弟は、恐怖と悲しみで
その場から動けず、
しばらくすると1人の国王が現れました。」



ヒカリ(その国王って、、、まさか、、)




カツラ:「弟は言葉を交わさずとも
すぐにわかりました。”目の前に立つ
鎧を着た男、この者こそが、我が兄上だ”と。
知恵と勇気を託された兄は、その知恵で
国の(いしずえ)を築き、国の王となり
君臨していたのです。
そして兄も、目の前に立ちすくんでいる者が、
己と血縁がある事を悟りました。
弟は兄に、自分達の故郷に帰ろうと
説得をしました。しかし、兄は帰ろうと
しませんでした。それどころか、
弟と同じ不思議な力を使い、
丸石からポケモンを解放し、弟に
攻撃をしたのです。」



ヒカリ:「!」


カツラ:「兄は何かを愛す事も、
愛される事も知らないまま育ち、
ポケモンも人も我が道具とし、その結果
知恵の他に託された”勇気”は
(よこしま)な心と共に邪悪な”力”と化し、
弟の国とは違う、
帝国を築き上げてしまったのです。
弟は襲いかかってくる
ポケモンと心を通わそうとしましたが、
兄の”ポケモンを支配する力”の方が強かった為、
ポケモンは弟に一斉攻撃をし、
弟はその場に倒れてしまいました。」


ヒカリ:「、、、」ドキドキっドキドキっ



カツラ:「兄は言いました。
”貴様を闇に葬った後、我は
鋼鉄の槍とポケモンの力を使い
全ての国を滅ぼし、見渡しきれぬ
永遠の富を手に入れてくれよう。”
それを聞いた弟は、父君と母君、そして
自分の国に住む人々を想い出し、
涙を流しました。そして、兄が
ポケモンに指示を出すと、稲妻や火炎、
岩石や猛毒が弟に襲いかかりました。」



ヒカリ:「、、、」ドキドキドキドキっ


カツラ:「しかしその時、弟の体が
光輝き、ポケモンの力を全て(はじ)き、
兄とポケモンが驚くと、弟が言いました。
”兄上が邪な心と力で余を凌ごうとも、
父君と母君、そして余の国で生きる者たちの
命を奪わせはせぬ。兄上が闇の(つるぎ)
なるのであれば、余は光の盾となり、この命と
引き換えに末裔の世を護らん。”
弟がそう告げた瞬間、辺りは眩い光に
包み込まれ、光が止んだ時には
兄と弟は消えてしまっていました。」



ヒカリ:「、、、」




カツラ:「その後、兄の帝国に
住んでいた者たちが国を作り直し、
舟を作りこの話を各地へ広めに行きました。
そして、その話はやがて弟の国、
あの夫婦の元にも届きました。
夫婦はその話を聞くと、三日三晩嘆きました。
そして、夜空を見上げ、あの日に
2人の赤子を授けてくれた神様の事を思い出し、
再び、空に向かって願いました。
”神様、私達は約束を破ってしまいました。
離れ離れにしてはならない2人を
切り離してしまい、授かりし命の
命運を他の者に(ゆだ)ねてしまいました。
もし、この声をお聞きであるならば、
永い眠りから覚め、もう一度だけ、
私達の願いを叶えて頂きたい。
2人の我が子を私達の元に、、”
しかし、いくら問いかけても、
神様の声は聞こえませんでした。
、、、2人の赤子の話は各地に広がり、
二度と同じ過ちが起きぬよう
各地から有力者が集まり中心部を築き、
支配する者が再び現れぬよう
各地に護り人と、
護り人が選んだポケモンを置く掟を作り、
カントー地方と言う
一つの国に統一されたそうじゃ。」


ヒカリ:「、、、」




カツラ:「これで、この話はおしまいじゃ」








 
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