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Liber incendio Vulgate

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Edizione straordinaria
  Along the way 3

 
前書き
久し振りな気がする。 

 
「ほっ」


蹴り上げた足が顔面を捉え、相手は壁にめり込む。張り付けにされたような形でピクリともしない。


「うん、流石は【最深学区】だ。四区画の住人が恐れるだけのことはある。同じ生物と思えない平均身体能力の高さが目立つね」


池野操作(いけのそうさく)》は《騎城優斗(きじょうゆうと)》や《桐崎飛鳥(きりさきあすか)》のように【TEACHER(ティーチャー)】の元へ向かっているところだ。

その最中で最深学区の住人から『洗礼』という名の強襲を定期的に受けていたが、全て返り討ちにしていた。


「ふむ、この区にいる住人の肉体は調べ終えた。次は品物を取りに行かないと。【封絶葬殺界(ケーラウェルト)】の方へ向かうには一人だと危険だからね。帰りに勝哉と寄ることにしよう」


操作は既に目的地の目と鼻の先にいるので到着すれば他のメンバーを待つだけだ。


「ん? 何だあれは」


視線の先で戦闘が行われている。一対多数のようだが押しているのは一人の方だ。操作は気配を殺して気付かれないギリギリまで近付く。


「この辺が限度だな」


そして物陰に隠れてその戦闘を覗き見る。個人の力で集団を翻弄(ほんろう)している人間は操作にとってそれほど珍しいものでもない。問題はその実力である。


「近距離戦闘型か。
僕と同じ間合いが得意のようだ」


その人物の動きは速く鋭い。能力無しの体術だけで能力を(くぐ)り抜け、急所に攻撃を加え戦闘不能にする。それが出来ない場合は手足を狙って戦力と機動性を()いでいく。


「王道だな。無駄となる攻撃は無い。身のこなしで全ての体術を命中させていく。だが技術はそこまで洗練されているわけでもない。しかし強いな。《OR(オア)》以上の戦闘能力だろう」


ORとは操作が過去にNo.1の暗殺者として所属していた【Anaconda(アナコンダ)】という暗殺組織のNo.2だった今は亡き先輩で親友のこと。その体術は操作も認めるほどであった。


「並みとはいえ最深学区の能力者相手に体術だけで圧倒出来るというのは大したものだ。僕やORのようにちゃんとしたところで体術を訓練したらどうなるか」


危なくなったら割って入ろうと決めた。ここで死なせるには惜しいと思ったから。それにあの戦い方にはあの男と通じるものがある。


「へっくし!」

「どうした悠持?」

「いや、なんか寒気が」


恐らく彼のように何も知らない状態から叩き上げで路上と戦場の技術を身に付けていったのだろう。荒っぽく雑な行動に見えて必ず相手が追い込まれるように状況が動く。

感覚(センス)は【STUDENT】のアジトにいる彼の方が上だろうが経験値はこの人物の方に軍配が上がるだろう。単純に戦い慣れし過ぎている。


「まったく第0学区は本当に面白いよね。こんなのがそこらを彷徨(うろつ)いてるんだからさ」


そして事態は結末を迎える。
遂に多勢の方が一人になった。


「く、くそ、くっそおおおぉぉぉぉぉ!!!!!」


最後の一人は幅と高さが4mはある炎の渦を放射した。その温度は約4000℃に達する。しかしそれを前にしたにも関わらず笑みは消えない。

むしろ白い犬歯を覗かせながら目には楽しそうな光を(たた)えている。悪意は無いが尖ったナイフを更に研ぎ澄ませ、薄く鋭く、ひたすら斬れるように仕上げられた刃物が持つ狂気がある。


「0ポイント。【腕骨鉄剣(ハンドナイフ)】」


その両腕からは、まるで獲物を捕らえる蟷螂(とうろう)のような、首を切り落とす断頭台(ギロチン)のような、魂を刈り取る死神のような鎌刃(けんじん)が生えてきた。

最後の一人は死の匂いが(かぐわ)しく背筋を走り、狂おしい戦慄が脳髄を駆け抜ける。

その人物は両腕を広げながら地面を蹴った。床が弾け飛礫(つぶて)となり、空気の壁を破り捨て衝撃が()ぶ。

操作はそこで見た。その人物が迫る炎の渦を斬り裂き削りながら前進するところを。恐らくあまりの鎌を振る速さで真空状態となり酸素が回らないのだろう。

いや、それが無くとも炎は紙片(かみきれ)の如く意味を成さなかったに違いない。


「楽しかったぜ。これで終わりだけどな」


そう言って鎌を(おさ)めると拳を握り肘を後ろに引いた。そしてアッパーのようにボディーを打ち、数メートルほど浮かせる。


「0ポイント。【振動発生(ショックウェーブ)】」


その直後だった。男の体は()ぜた。頭から足まで綺麗に飛び散った。破裂の勢いがあったのか血風惨雨のように周囲を血に染める。

それをした本人は返り血を浴びて
汚れないように逃げていた。


「俺が【0ポイントマスター】で超が付く接近戦タイプだからって舐めてたろお前ら? この《小山田(こやまだ)城島戌(きじまいぬ)》を倒そうってんなら感知も反撃も出来ないところから狙い射てってんだよ」


城島戌は操作の隠れている方を見た。
操作が身構え逃げる体勢を取る。


「誰か知らないけど悪かったな。TEACHERの群雲(むらくも)博士に【数字切換(ポイントシフト)】の様子を見てもらってたんだよ。もう用事は終わったから行って良いぞ」


青年はそう言い残し立ち去る。


「0ポイントマスターのことは『禁忌』の一つとして噂を耳にしたことがあるが、あれほど若いとはな。僕と同じくらい、いや、一つ二つ下か? 伸び代がかなりあるようだ」


予定外の邂逅(かいこう)を経て操作は《群雲咎目(むらくもとがめ)》の元へ辿り着いた。


「そう言えばどんなものを受け取るんだろう。JAIM鉱石の何かみたいだけど」 
 

 
後書き
城島戌君は偽悪の二次の方で出るかも知れないし出ないかもしれません。少し強そうにしておきました。

操作君は別に接近戦以外も出来ます。ただ体術と身体能力を使って戦うのが慣れているのでその方向で戦ってます。

蟷螂(とうろう)はカマキリです。 
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