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英雄伝説~光と闇の軌跡~番外編 アリサのお見合い篇

作者:sorano
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第1話

”ゼムリアの敵クロイス家の騒乱”から半年後、士官学院を通っていたアリサはある日母親であるイリーナ会長に呼ばれて実家に戻り、とある話を聞かされた。



~夜・ルーレ・ラインフォルト本社ビル・24F~



「私に縁談!?どういう事よ、母様!!」

母親であるイリーナ会長から話を聞き終えたアリサは信じられない表情で大声で叫んだ。

「……シャロン、詳しい経緯をアリサに説明してあげて。」

「かしこまりました、会長。」

イリーナ会長に促されたシャロンは会釈し

「シャロン!?まさか貴女も知っていたの!?」

シャロンの様子を見たアリサは信じられない表情をした。

「はい。……ちなみにこの縁談は1ヵ月前から会長が相手方と何度も交渉し、ようやく応じてもらえたのです。」

「なっ!?そんなに前から!?どうして縁談に臨む本人である私には何も知らせなかったのよ!?」

シャロンの説明を聞いたアリサは驚いた後怒りの表情で2人を睨んだ。

「事はラインフォルトグループの未来に関する事だから、貴女には教えないように命じていたのよ。下手に貴女の口から第3者に知れ渡って、ラインフォルトグループのライバル社にこの縁談を邪魔される訳にはいかないしね。」

「ラインフォルトグループの未来って……一体どういう事よ。」

イリーナ会長の説明を聞いたアリサは呆けた後二人を見つめて尋ねた。

「……とりあえずまずこれを見てみなさい。」

その時イリーナ会長がアリサに書類を差し出した。

「?……………なっ!?か、母様!?これは一体どういう事……!?あのクロスベルで起こった”大樹”の事件以降からグループ全体が大赤字だらけじゃない……!」

書類の内容――――ラインフォルトグループの経営状況の内容を読んだアリサは驚いた後信じられない表情でイリーナ会長を見つめて尋ね

「……”ラインフォルトグループ”は”貴族派”と”革命派”、それぞれに加担して元エレボニア帝国で内戦を激化させたせいで、ラインフォルトグループはクロスベルとメンフィルの両皇家からは一切信用がなく、エレボニア帝国滅亡後兵器開発工場は返されたけどラインフォルトグループによる兵器並びに武器の開発及び販売は現在禁じられているのよ。」

「―――現在は車両や鉄鋼品に生活用品、今までの利益によって得たラインフォルトグループの経営金で賄っている状況ですが……それも長続きせず、早ければ5ヵ月以内には倒産する見通しです。」

「そ、そんな!?で、でも……鉄鋼品や生活用品は売れているんでしょ?これからはそちらの方向性を重視すればいいんじゃないの?」

二人の説明を聞いたアリサは表情を青褪めさせた後不安そうな表情で尋ねた。



「無理ね。ラインフォルトグループの強みは何といっても武器や兵器の販売だし、以前と違って”ザクセン鉄鉱山”の資源はかなりのコストがかかるし、生活用品等の製品に関しても『インフィニティ』が出す製品の方がよっぽど性能が上だから、ラインフォルトグループが販売している製品では勝てないわ。」

「『インフィニティ』?……一体どこの会社なのかしら。」

イリーナ会長の説明を聞いたアリサは不思議そうな表情で尋ねた。

「『インフィニティ』――――かのユイドラ領主”匠王”のご息女である姉妹の方々が立ち上げた新たな会社です。確かお嬢様はその会社を立ち上げた姉妹の方々と面識があるはずですが………」

「え………まさかセティ達の事!?」

シャロンの話を聞いたアリサは呆けた後信じられない表情で尋ねた。

「『何でも創る』を謳い文句にしている『インフィニティ』――――まさにその謳い文句通り、”工匠”である彼女達は社員達に自分達の技術を教えながらどのような商品でも創っているのよ。」

「『インフィニティ』が販売している製品はどれも性能が我が社で出している製品と比べると明らかに上なのです。今は小さな会社である為、販売している製品の数は少ないですが、”工匠”の数は徐々に増えて拡大していますし、このまま大きくなればラインフォルトグループではもはや敵わない状況になるかと思われます。」

「―――『インフィニティ』の強みは何といっても信頼度と会社を立ち上げた姉妹が持つコネ、後は新たに公布された”工匠”制度による”工匠”達をほぼ独占状態にしている事ね。父親である”匠王”の知名度もあって、リベール、メンフィル、クロスベルの各皇家にも信頼されている上、”工匠”は今までとは違った方法で様々な製品を加工しているわ。このままだと全ての事業が『インフィニティ』に持っていかれる事になるでしょうね。そこに加えてヴェルヌやZCFの製品も加わるのだから、ラインフォルトの利益は極端に落ち込むわ。」

「………………その……………ラインフォルトグループの社員を”工匠”にはできないの?そうしたら『インフィニティ』が出している製品をラインフォルトグループでも作れるんじゃないの?」

二人の話を聞いたアリサは複雑そうな表情をした後二人を見つめて尋ねた。

「”工匠”には免許が必要でね………免許が発行できる権利を持つのは”匠王”、”匠貴”、”匠範”、”工匠長”のランクを持つ”工匠”なのだけど………現在そのランクの”工匠”は”匠貴”のランクを持つ『インフィニティ』の社長達――――ディオン3姉妹と、彼女達がユイドラ領から呼び寄せた数人の”工匠”しか免許の発行ができないのよ。――――加えて”工匠”が創る製品は”工匠”のランクごとに分けられ、さらに”工匠”のみしか創ってはいけない制度になっているのよ。」

「”工匠”の免許は”工匠”の免許を発行できる方達の講習を受け、試験を受けて合格すれば発行される法律になっておりまして。無論、社員達に講習を申し込ませたのですがなにぶん希望者が殺到している状況でして………講師の資格を持つ”工匠”の数ではとても足りなく、現在は予約待ちの状況でございまして、早期に”工匠”の免許を取る事は現状不可能なのです。」

「…………………”ラインフォルトグループ”の社員達を優先的に講習を受けさせる事はできなかったの?ラインフォルトグループとの提携とかを条件にしてとか。」

イリーナ会長とシャロンの説明を聞いたアリサは考え込んだ後尋ね

「勿論、彼女達に直接会って交渉したわ。でも彼女達からは講習を受けさせる人達は平等にする方針だからって言う理由で断られたのよ。」

「ちなみに平等にする理由は貧困に苦しむ人々が手に職を持って生活できるようにする為……との事です。なお、こちらの調査によるとヴェルヌやZCF、エプスタインにも同じような取引きを申し込まれ、我々の時と同じ解答をされたようです。」

「……………………………」

二人の答えを聞いたアリサは複雑そうな表情で黙り込み

「………それで?私が縁談に臨んで、その相手と結婚できたらラインフォルトグループが何故立ち直れるのよ。」

すぐに気を取り直して真剣な表情で尋ねた。



「相手方の家はメンフィル皇家やこのルーレの領主の一人―――エイフェリア様から信頼されておりまして………アリサお嬢様のご結婚と引き換えに、ラインフォルトグループによる兵器並びに武器の開発及び販売の再許可に加えてザクセン鉄鉱山の資源のコストの削減、更にはその場にいたクロスベル帝国の兵器開発並びに技術開発部を担当しているエイフェリア様がラインフォルトグループとの協力体制を約束して下さったのです。」

「………つまりは政略結婚って訳ね。」

シャロンの説明を聞いたアリサは顔に青筋を立て

「ちなみに相手方には既に両親公認の婚約者がいるわよ。」

「ハアッ!?じゃあ、何!?私に妾になれって言うの!?」

イリーナ会長の話を聞いて机を叩いて立ち上がって激怒した。

「………嫌ならこの話を受けなくていいわ。ただしラインフォルトグループ……いえ、今日限りでこの家と縁を切ってもらうわよ。……学院卒業までの学費は既に払ってあるから卒業後は自分の力だけで生きていきなさい。………私は最後まで足掻いてみるわ。調査によれば向こうとしても各地に多くの就業者を抱えるラインフォルトグループの倒産は望んでいないみたいだから、他にも方法は必ずあるわ。」

「会長…………………お嬢様、この縁談にはラインフォルトグループに務める多くの社員達の未来がかかっているのです………お見合いをして頂くだけでも二大国側に対して信頼できる”証”を示した事にもなりますので、どうかお願いします………」

静かな表情で答えたイリーナ会長の話を聞いたシャロンは心配そうな表情をした後、アリサを見つめて頭を深く下げた。

「………………………………」

二人の話を聞いたアリサは複雑そうな表情で自分と親しくしてくれたラインフォルトグループに務める多くの知り合い達の顔を思い出し

「…………………それで?肝心の相手は誰よ。」

目を伏せて考え込んだ後、目を見開いて二人を見つめて言った。

「ありがとうございます………!お優しいアリサお嬢様の事ですから、きっと受けてくれると思っていました……!」

「まだ受けるとは言ってないわよ!?早とちりするんじゃないわよ、シャロン!もし、相手の男性の年が滅茶苦茶離れていたら絶対嫌だからね!」

そして明るい表情で頭を下げたシャロンを見たアリサは慌てた様子で声を上げた。



「―――その点は安心しなさい。見合い相手の年齢は貴女と同い年よ。」

「お見合いのお相手はエイフェリア様と共にこのルーレを納める立場であられるシュバルツァー伯爵のご子息でございます。」

「へ………シュ、”シュバルツァー”………?(あ、あれ……?最近どこかでその名前を聞いた事があるような……?)」

二人の話を聞いたアリサは呆けた後首を傾げて考え込んだ。

「―――こちらの写真に写っている殿方がそのお相手になります。」

その時シャロンが見合い相手の写真を机に置いた。

「え……………う、嘘!?この人ってリィンじゃない!?という事は見合い相手の婚約者ってまさか………リィンの義妹のエリゼさんの事!?」

写真に写っている人物――――リィンを見たアリサは驚き

「あら………二人とも面識があるのかしら?」

「フフ、確か”ゼムリアの敵クロイス家の騒乱”事件解決の際に共に肩を並べて戦い、危ない所をリィン様にかばわれた事があると、以前私に話をしてくれましたよね?」

アリサの反応を見たイリーナ会長は目を丸くし、シャロンは微笑みながら尋ねた。

「う………………………」

シャロンに尋ねられたアリサは呻いた後顔を真っ赤にしてリィンの写真を見つめ

「(そ、そう言えば私、2回も助けられてお礼もまだ言ってなかったわよね……?)……………わかったわよ。とりあえず会うだけだからね……」

リィンの写真を見つめて考え込んでいたアリサは溜息を吐いて答えた。

「そう。……相手と会う時間と場所は明後日の12:00にミシュラムのレストラン”フォルトゥナ”よ。明日の夕方にはここを起ってクロスベルのホテルに宿泊する予定だから、それまでに準備をしておきなさい。」

アリサの答えを聞いたイリーナ会長は頷いた後説明し

「ウフフ………出発する時刻ギリギリまでリィン様を悩殺できるドレスや下着選びをお手伝いしますわ。ううっ……ついにお嬢様が大人の女性になる日が来たのですね……!」

「そんな事する必要ないわよ!?というか気が早すぎよ、シャロン!」

微笑みながら言った後嘘泣きをしている様子のシャロンを見たアリサは顔を真っ赤にして怒鳴った……………… 
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