| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

ドリトル先生の名監督

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第二幕その十二

「残念なことよ」
「ちゃんと傍にいるのよね」
「ちょっと落ち着いて見ればわかるのよ」
「君達がいるってことがだね」
「そうよ、わかるのよ」 
 妖怪は人間の傍にいて一緒に暮らして楽しく過ごしている、このことにというのです。お静さんもそこは言うのでした。
「ちょっとしたらね」
「そうだよね」
「先生は気付いてくれたわね」
「文献で君達のことはよく読むしね」
「否定しないのね」
「しないよ」
 絶対にという返事でした。
「学問は否定してはね」
「それでなのね」
「そう、否定したら」
 そうしたことをすればというのです。
「それで学問は止まるからね」
「それはしないのね」
「だから君達のこともね」
「最初から否定しなかったのね」
「そうだよ、狐君や狸君達のこともね」
 その彼等のこともというのです、京都や松山でお会いした。
「否定しないんだ」
「凄いことね」
「凄いかな」
「そうした何でも受け入れられる人なら」
 それこそと言うお静さんでした。
「絶対にいい人が来てくれるわね」
「いい人っていうと」
「決まってるじゃない、先生まだ独身だから」
 お静さんも言うのでした、このことを。
「奥さんに決まってるじゃない」
「ははは、お静さんもそう言うんだ」
「何ならいい人紹介するわよ、人でね」
 猫又ではなく、というのです。
「先生にね」
「それはいいよ、僕は女性には縁がないからね」
「私にはいい縁が見えるけれど」
「そうなのかな」
「そうよ、絶対にいい人とね」
「結婚出来るっていうんだね」
「先生みたいな人こそね」
 まさにとです、先生に言うお静さんでした。
「そうなるわ」
「だといいけれどね」
「何か先生は自分を過少評価してるわね」
 人間に化けている姿でお口をへの字にさせてです、こうも言ったお静さんでした。腕を組んで首も少し傾げさせて。
「絶対にいい人と出会えるわよ」
「だといいけれどね」
 笑って返した先生でした、ですが。
 先生は相変わらずでした、本当に気付かないことは気付かない先生です。
 ですがその先生にです、動物の皆はお静さんが帰った後も言うのでした。ただしそうしたお話は今はしないで。
 あらためてです、お相撲のことをお話するのでした。
「王子も好きだしお静さんも興味あるし」
「大学の相撲部の方もね」
「気になるよね」
「どうしても」
「うん、本当に聞きに行くよ」
 先生も皆に言葉を返します。
「怪我の原因がわからないとね」
「どうしようもないからね」
「だからだね」
「まずは相撲部の人達に直接聞く」
「そうするんだね」
「うん、そうするよ」
 こう皆に答えてでした、そのうえで。
 実際に相撲部の方に行くことにするのでした、これが先生のあらたな出来事との出会いになるとはこの時は夢にも思っていませんでした。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧