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色を無くしたこの世界で

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第一章 ハジマリ
  第0話 プロローグ

 よく晴れた青空の下、新緑が映えるグラウンドの上。
 楽しそうに走り回る人だかり一つ。

「天馬ー!」
「あぁっ!」

 その中心にいるのは茶色い翼の様な髪型をした、さわやかな少年。
 ここ、雷門中サッカー部キャプテン『松風天馬』だ。
 彼はボールを蹴りながら全力で、それでいて楽しそうにグラウンドを走り抜ける。
 仲間達もそれにつられて、楽しそうにサッカーをする。
 ここではごく当たり前な日常的光景。

 彼等はそんなごく平凡な日常に満足し、幸せだと感じていた――



 場所は変わって謎の場所。
 白と黒の濃淡で染められただけの世界。
 空は先ほどの青空とは打って変わってどんよりとした黒い空に。
 新緑が映え、青々しい芝生が植えられた地面は白と黒のみのタイルに。

 『彼』はそんな白黒の床を全力で駆けていく。
 モノクロ色で染め上げられたこの空間には不釣合いな黄色い髪をなびかせながら、前だけを見てひたすら走る。
 後ろから迫ってくる何かから必死に逃げる様に。

「ハァ……ッ………早くッ……」

 そう呟きながら塔の外へと続く扉を目指して螺旋状の階段を下りていく。
 瞬間。

「っ……!?」

 彼の頬に何かがかすった。
 それは鋭利な物なのか皮膚と肉を切り、血が飛び散る。
 それと同時に彼はバランスを崩し、長い螺旋階段の下へと落ちていく。

「! あ……っ!?」

 ずどどどどっという音を鳴らしながら、長い長い階段を転げ堕ちて行く。
 予想外の展開に彼、そして『彼を追っていた男』の思考も停止する。

 男はハッと我に帰るとすぐさま後を追いかけようとする。
 が、すでに彼の姿は無く。目の前には、ただひたすら黒い階段だけが続いている。

「……逃げられちゃったか……」

 男はそう呟くと踵を返し暗闇の中に消えていった。

 一方彼は、長い階段を未だ転げ落ちていた。
 身体中に痛みが走る。思考は止まり、自分が今どうなっているのかさえ分からない。
ただただ自由の利かない身体が早く止まる事だけを祈っていた。
 すると。

「…………!?」

 突如として自分の身体が宙に浮く感覚に襲われる。
 と、そのまま真っ逆さまに下へ落ちていった。
 階段を転げ落ちた拍子に塔の中心に吹き飛ばされたのだ。
 手すりも囲いも無いこの階段は一歩踏み外せば数m先の地面へと叩き落される。

「嘘……っ」

 身体は一切のブレを起こさず真っ直ぐに落下していく。
 やっと動き出した思考回路が最悪の結末を導き出す。

 ――“死”――

 自分に存在するはずの無いソレが、もの凄く恐ろしいモノだと心が訴える。

――いやだ

 そんな言葉が脳内をよぎる。

――このまま何も出来ずに終わるなんて

 今までの記憶が走馬灯の様に蘇る。
 地面がすぐ近くまで迫る。
 もうすぐ自分の一生が終わる。自分が消える。
 やりたかった、叶えたかった願いも叶えられずに終わる。

「そんなの…………ボクが望んだ終わりじゃない――――!!」

 そこで意識は途切れた。 
 

 
後書き
お初にお目にかかります。@クロナキと申します。
本日は多数の作品の中からこの小説を閲覧してくださってありがとうございます。
以下はこの小説を読む際の注意・禁止事項になります。
御一読の方、お願いします。

・この作品は長編です。
・イナズマイレブンGOの物語を舞台に、作者が考えたオリジナルストーリー、及びそれに伴うオリキャラ、化身等の新システムの登場。
・あくまで主人公は公式同様『松風天馬』です。
・試合描写あり。
・雷門メンバーの離脱描写あり。
・暴力、自傷行為、超能力描写あり。
・この小説に記載された設定、文章の無断使用・転載は禁止します。
・この小説はフィクションです。作中に登場する人物・団体・名称等は架空であり、またそれらに関係する事柄を誹謗中傷・差別・侮辱する意図は全くありません。
・pixiv、ハーメルンでも同タイトルで投稿しています。

上記の記載を無視したと思われるコメントは、対応いたしかねますのでご了承ください。
ご理解の程、よろしくお願いします。 
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