| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

時には派手に

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第二章

「今日は不思議とね」
「調子がいい」
「怖くないですか」
「得意な役のせいかな」
 しかも歌ってきた役の中でもとりわけだ。
「気分がいいよ」
「それならですね」
「今日は気分よく歌えますか」
「いけますか」
「うん、こんな日は珍しいよ」
 舞台が怖いコレッリではあるがだ。
「思いきり歌うか、特にね」
「見よ、恐ろしい炎ですね」
「あの時ですね」
 第三幕で歌うアリアだ、マンリーコはおろかこの作品での一番の聴かせどころだ。非常に劇的な歌である。
「歌いますか」
「いつも以上に」
「喉の調子もいいよ」
 コレッリはこのことも言った。
「だから余計にね」
「いい歌をですね」
「歌えますか」
「そうしてくるよ」
 こう言ってだ、コレッリは舞台に入った。そして。
 一幕、二幕と歌い彼は楽屋で周りに言えた。
「本当に絶好調だよ」
「いつも以上にですね」
「調子がいい」
「喉も音程も」
「どれもですね」
「こんなに舞台にいてやれると思うのはね」
 それこそというのだ。
「滅多にないよ、これならね」
「見よ、恐ろしい炎もですね」
「万全の調子でいけますね」
「若しかしたら」
 コレッリはその整った顔を真剣なものにさせて言った。
「これまでにないものになるかな」
「見よ、恐ろしい炎が」
「コレッリさんにとっても」
「いけるかもね、ヴェルディがいたら」
 作曲した当人がというのだ。
「何ていうかな」
「そこまで、ですか」
「凄い歌が歌えそうですか」
「これは」
「そうかもね、じゃあね」
 それならとだ、コレッリは時間になってだった。舞台に戻った。そして第三幕の舞台を進めていき遂にだった。
 見よ、恐ろしい炎を歌う場面になった。そこで舞台は一変した。
 コレッリが歌うとだ、誰もが聴き惚れた。
「これは」
「今日のコレッリはいつも以上に凄いぞ」
「かなり調子がいい」
「高音がかなり出ている」
 所謂ハイCがというのだ、テノールが注目されるこの音程もというのだ。
「全体的にも」
「こんなに調子がいいコレッリも珍しいわ」
「ここがこのオペラ最大の聴かせどころだが」
 まさにだ、多くの観客はこのあまりも劇的なアリアを聴きに来ているのだ。他にも名曲が多い作品ではあるが。
「今日は格別だ」
「コレッリはこの役を当たり役にしているが」
「今日はまた違う」
「別格よ」
「いいアリアを聴けた」
「こんなに調子のいいコレッリははじめてだ」
 まさに絶唱だった、コレッリは完全にマンリーコになりそのうえでアリアを歌った。そして歌いきった後でだ。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧