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困った王子様

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第八章

「私にとっては当然のことだ」
「出すべきものですか」
「当然として」
「それも王にとってはわかっていたこと」
「そうなのですね」
「その通りだ、では私はまた執務に入ろう」
 王、そして帝国宰相のというのだ。
「これからな」
「今日もですね」
「そうされるというのですね」
「そうだ、私には全てわかっていた」
 己の席に座ってからまた言った、質素なその席に。
「最初は理解されないことも今こう言われることも」
「全てですか」
「ご承知でしたか」
「何かを言われて、それが批判でも賞賛でもだ」
 そのどれでもというのだ。
「私にはどうということはない、大事なのはだ」
「国家ですか」
「この国、そして帝国のことですか」
「そうだ、王は生まれた時から国家の第一の僕だ」
 この言葉も出した。
「それならばだ」
「そうした言葉に惑わされず」
「そのうえで、ですか」
「ことを進めていく」
「そうされていくのですね」
「その通りだ、そんな言葉に惑わされる様では」
 王子はさらに言った。
「その程度、しかし私は違う」
「ですか、それで落ち込んだり慢心しては」
「その程度の者でしかない」
「ですが王は違う」
「そうなのですね」
「私はこのまま続けていく」
 そのやるべきことをというのだ。
「そうするだけだ、ではな」
「はい、これより今日の仕事を持ってきます」
「そうさせて頂きます」
「ではな」
 新王は自信に満ちた声で応えてだ、この日の仕事をはじめた。クラウス=リッテンハイムは帝国全体の偉大な政治家として歴史に名を残した。その彼が王子だった頃の奇矯だとされた数々の話は改革が理解されない話だと後世では認識されている、その頃の彼は既に世がわかっていたが周りが理解していなかっただけだとだ、困った王子は実は偉大な政治家であり改革者であったというのが後世の者達の評価である。


困った王子様   完


                          2016・4・21 
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