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幻想交響曲

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第二章

「最近何かあったの?」
「怖いことは別に」 
 特にとだ、妹に今度はこう答えた。
「ないよ」
「怖い人に会ったとか」
「コンクールに落ちたらとか思うけれどね」 
 音楽の道を歩む者にとっては避けて通れないことだ、コンクールで賞を取れるかよい演奏を出来るかどうかが運命に大きく関わるからだ。
「それならだよ」
「必死に努力して」
「落ちると思う、負けると思うのなら」
「余計に努力ね」
「そうすればいいしね」
「兄さんはそう考える人ね」
「そんなことを思っても」
 また妹に言う。
「仕方ないよ、怖がったり嫉妬を抱くのなら」
 コンクールに落ちたり自分より優れていると思う相手に出会ったらというのだ。
「まずはだよ」
「練習ね」
「そして勉強だよ」
 そうすべきだというのだ。
「だから練習漬けの夢が見たことがあるけれど」
「それでもよね」
「今はね」
「また違う夢みたいなのね」
「覚えていないけれど」
 それでもというのだ。
「そうした夢とは違うみたいだね」
「もっと違う夢なのね」
「何かね」
 ここでだ、カミュは妹に思い出せる限りのことを話した。
「凄く強烈な恋愛をして」
「今交際してるエマさんと?」
「多分ね」 
 顔がよくてしかも知性的でかつ美貌なので異性には困っていない、セインの別の一面である。ただし浮気はしない主義だ。
「その人と舞踏会に行って野原を歩く?」
「いい夢じゃない」
「違う、何かね」
 セインは妹の言葉を強く否定した。
「それが違うんだ」
「ハッピーエンドに終わらないのね」
「何故か彼女を殺して」
「あら、恋愛感情のもつれね」
「それはわからない、けれどね」
 それでもというのだ。
「あくまで覚えてる限りだよ」
「結構覚えていない?」
「何しろ最近その夢ばかり見ているみたいだからね」
「だから結構覚えてるのね」
「そうかもね、それでね」
「ええ、殺してしまって」
「殺人は死刑になるね」
 近年死刑廃止の国も多いがだ、セインは近年までの常識から話した。
「そうなるね」
「悪いことをしたら罰を受けるものよ」
 また文学からだ、マリーは答えた。
「自然とね」
「そうだね、そしてね」
「兄さんは死刑になるのね」
「それでギロチン台まで行進させられる」
「昔の話ね」
「それでギロチンで首を落とされて」
「終わるのね、嵐の九十三年ね」
 マリーはユゴーの代表作の名前を出した、この作品では主人公は最後はギロチンで処刑され首が落ちて終わる。
「それね」
「ところが何故か僕は生きていて」
 そしてというのだ。 
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