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カシュック=オユヌ

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第三章

「後はね」
「この村のですね」
「誰か、そしてね」
「どんな娘かを」
「調べてくれるかな」
「わかりました」
 アリババも確かな言葉で答えてでした、この時はお忍びでの領内の見回りを続けました。
 見回りから帰ってスルタンのお仕事をしていて暫く経ってです、アリババはスルタンの傍に来て囁きました。
「あの娘のことがわかりました」
「それでどんな娘かな」
「名前はヤシュムといいます」
「宝石の名前だね」
「両親が宝石の様に素晴らしい娘になる様にと付けたそうです」
「成程ね」
「村一番の働き者で」
 アリババはスルタンにさらにお話をしました。
「しかも気立てがよく村の子供達の面倒見もよく」
「いい娘なんだ」
「その様です」
「よし、それならね」
 スルタンも頷いてでした、そのうえで。
 村に行こうとしますがここでアリババに言われました。
「お待ち下さい」
「どうしたのかな」
「どの様にして行かれるのでしょうか」
「どの様にというと」
「そのまま行かれますか」
「ああ、スルタンのままだね」
「それですと」
 こうアリババは言うのでした。
「目立ちます」
「あっ、そうだね」
「はい、それにいきなり求婚ですか」
「いや、それは」
 スルタンは言われて気付きました。
「まずはね」
「はい、そうですね」
「僕の目でね」
 他ならぬスルタン自身でというのです。
「彼女がどんな人か確かめないと」
「その通りです」
 まさにと答えたアリババでした。
「それからです」
「そうだったね」
「はい、ことは焦らずです」
 そこは決してというのです。
「落ち着いてじっくりと」
「彼女がどんな娘か確かめて」
「そのうえで」
「どうするのかを決めればいいね」
「ですから」
 それ故にというのです。
「まずはです」
「お忍びでだね」
「あちらの村に行きましょう」
「それがいいね」
「しかもです」
「しかも?」
「人は一度見ただけでわかるでしょうか」
 その人がどんな人かというのです。
「それはどうでしょうか」
「そう言われると」
「はい、そうはいきませんね」
「その通りだよ」
 まさにと答えたスルタンでした。
「おべっかを使ったりとかね」
「そうしたことをする者もいますね」
「うん、本当に人はね」
「一度見ただけではわかりません」
「だからだね」
「何度も見てです」
 そうすべきというのです。
「そうしましょう」
「ではね」
「はい、それでは」
 こうお話してでした、そのうえで。
 スルタンはその村娘ヤシュムを商人の姿になったり他にも色々な姿に化けてです。そしてなのでした。
 村に度々、幸いなことに宮殿がある街からすぐの場所にあったので何度も行ってヤシュムを見てなのでした。
 その性格がいいことを確かめてさらにです。
 何度も何度も見てです、そのうえで言いました。
「確かにね」
「はい、いい娘ですね」
「うん」
 その通りと答えるのでした、アリババにも。 
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