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魔法少女リリカルなのは~無限の可能性~

作者:かやちゃ
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第3章:再会、繋がる絆
  第60話「波乱の幕開け」

 
前書き
椿…脇腹二か所に両腕にそれぞれ二か所、足にも三か所斬られており、アバラも二本ほど折れている。さらに全身打撲。掠り傷も全身にあり。
葵…脇腹に一か所刺し傷があり、さらに切り傷も二か所、腕は左腕が三か所の切り傷、右腕は切り傷が多すぎてちぎれかけ。アバラも三本折れている。さらに全身打撲に掠り傷も全身にあり。
優輝…リンカーコア9割以上損傷。しばらくは魔法が使えない。全身打撲に全身に掠り傷があり、無理な魔法行使によって内蔵が傷ついている。

...これが三人の大体の状態です。...なんで戦えるの?
葵が一番ひどいですが、吸血鬼の再生力があるので何とかなってます。

あ、今回から改行の際の空白を1マスにしました。
 

 








       =out side=





「っ....開きました!」

「行くぞ!」

 リニスの言葉に、神夜が声をあげ、一気に結界内へ雪崩れ込む。

 ...気づいたのは、ついさっきだった。
 ふと、プレシアがアリシアの帰りが遅いと心配していた時、結界の反応を捉えた。
 その反応を頼りに、プレシア達は同じく気づいていた神夜や奏、なのはと共に学校に来てみれば、ベルカ式の結界が張られていたのだ。
 今は八神家は管理局に無償奉仕として行っているので、プレシア達は優輝が張ったものだと推測。なぜか入れなかったので、リニスが解析して侵入する事にして、今に至る。

 ちなみに、今はクロノ達はいない。代わりに休暇を取って地球に滞在しているユーノはいるが。(なお、リニスと共に結界の解析に貢献していた。)

「「アリシア!」」

 アリシアが心配なプレシアとフェイトが我先にと結界へ入る。

「アリシアっ!?」

「....来たか。」

 ...そこには、倒れ伏す傷ついたアリシアと、崩壊し荒れた結界内の校庭。
 そして、所々にある血痕と、脇腹に傷を負った優輝...いや、偽物がいた。

「これは...!?」

「っ、アリシア!」

 アリシアを視界に入れた瞬間、フェイトはアリシアの下へ駆け出す。
 しかし、その行く手を飛んできた剣が遮った。

「優輝!?何を!?」

 もちろん、そんな事を知らないユーノは攻撃してきた訳がわからず問う。
 ...ふと、そこでプレシアが気づく。

「....辺りにある血痕は...どういうことかしら?」

 アリシアのものではない、とプレシアは断定づける。
 アリシアは掠り傷こそあるものの、大きな傷は負っていないからだ。

「ああ、これか?...大体察しはつくだろう?」

「っ....てめぇええええええ!!」

 この場におらず、本来ならいつも一緒にいる存在...。
 つまり、椿と葵の事を遠回しに示した事を察し、神夜は駆け出す。

「...っと、危ない危ない。」

「よくも椿と葵をぉおおお!!」

 神夜の攻撃を、偽物はあっさりと受け流す。
 それに構わず、神夜はアロンダイトを振るう。

「っ、今の内にアリシアを...!」

「そうね...っ、避けなさい!」

「....!くっ...!」

 まずはアリシアの保護が優先だと、ユーノは動こうとする。
 しかし、それをまたもや飛んできた剣が阻み、プレシアの声と共に防御魔法で防ぐ。

「がぁっ!?」

「神夜君!?」

 その直後、神夜が地面に叩きつけられる。
 プレシアが偽物を見れば、蹴り抜いた体勢の偽物がいた。
 神夜の攻撃を受け流し、カウンターで強力な蹴りを叩き込んだようだ。

「なぜ、アリシアを...!どうして椿と葵を殺した!!」

「どうして....ねぇ?」

 あの二人ならアリシアを置いて逃げない。だからいないという事は殺された。
 そう思って、ユーノは思いの限り叫んだ。

「当然、僕の邪魔をしたからさ!霊力の供給を断てばあの二人にも余裕で勝てる。」

「邪魔だって...?...一体、何が目的だ!!」

 優輝のあまりの変わりように、魅了されていないユーノ達は戸惑いながらも問う。

「目的?.......ははっ、いいだろう。せっかくだ。教えてやるよ。」

 そう言って偽物は核でもあるジュエルシードを取り出す。

「まずはジュエルシードを集める事だ。願いを歪めて叶えるよう変質してしまった、天巫女の持つジュエルシード...感情に左右されるのは目的にちょうどいいからな!」

「ジュエルシード...!?そんな、虚数空間に消えたはずじゃあ...!?」

「ははは!憐れだな!それが正しいと、誰が決めた?その記憶が正しいと、本当にそう思うのか?」

「何を....。」

 先ほどから驚愕の連続に、ユーノもプレシアもリニスも理解が追いつかない。
 ...ちなみに神夜達は神夜が攻撃に移った時点で既に敵視している。

「ああ!本当に憐れだ!()()()()()に気づけないなんて!」

「偽り...?」

「...おっと、まだ目的を話していなかったな。」

 話を逸らす(この場合元に戻しただけだが)ようにジュエルシードを懐に仕舞う(と見せかけて体の中に戻している)偽物。
 そして、高らかに目的を語り始めた。

「僕の目的は緋雪を蘇らせる事!ジュエルシードがあればそれが可能となる!」

「「「「「なっ.....!?」」」」」

 その言葉に、ただ敵視していた神夜達もさすがに驚いた。
 ...なにせ、それはかつてプレシアが行おうとしていた事だからだ。

「そんな馬鹿な!ジュエルシードにそんな力はない!」

「...本当にそう思うか?」

「......っ、まさか...!」

 神夜の主張にそう返し、その言葉にユーノが気づく。

「ジュエルシードの本当の力...それを使えば理論上は可能となる。」

「本当の力...やっぱり...!」

 本当の力...つまり天巫女が使った際の事を示している。
 しかしそれは...と、ユーノは言い返す。

「それは、天巫女の一族にしかできないはず...!」

「ああ。祈りの力は天巫女にしか扱えない。...だが、僕が必要としているのは祈りの力を増幅するその魔力だ。」

 かつて次元震をも起こしたジュエルシードの魔力。
 そこから考えるだけでも、膨大な魔力だとその場の全員が思った。

「その魔力を使って、緋雪の魂を呼び寄せ、肉体を創造魔法で創り出せば....ほら、蘇生ができるだろう?例え膨大な魔力が必要としても、ジュエルシードなら賄える。」

 そんなの机上での空論でしかない...と、ユーノは言えなかった。
 なにせ、偽物の言った事はやり方がわからないとはいえ確かに魔法で実現可能なのだ。

「...だからこんな事をして、それで生き返らされたあの子は喜ぶと思うの?」

「...さぁ、どうだろうな?」

 かつてアリシアを生き返らせようと躍起になり、生き返ったアリシアに怒られたプレシアだからこそ問うた言葉に、偽物は答える。

「人の気持ちは、本人にしかわからない。...もしかしたら喜ぶかもしれない。」

「....そう...。」

 返ってきた言葉にプレシアは目を伏せ、少ししてから顔を上げる。

「...何が貴方を狂わせたのか、私には理解できないけど....私と同じ過ちを起こさせる訳にはいかないわ!!リニス!フェイト!アルフ!」

「「「っ...!」」」

 プレシアの言葉にリニスとフェイトとアルフが行動を起こす
 刹那、頭上から雷が落ちてくる。

「っ...!ちっ、“アイギス”!」

「今、だぁあああ!!」

 強力な魔法を前に防御魔法を使う偽物。
 それを好機と見て、アルフがシールドブレイクを仕掛ける。

「はぁああっ!!」

「っ、くそ...!」

 さらに下からフェイトがサイズフォームのバルディッシュを振るう。
 上下からの挟撃に、偽物は防御魔法に割く集中力を減らす事となった。
 その結果、防御魔法は破られたが...。

「っ、なっ...!?」

「くっ...!」

 そこは導王流による受け流しで防がれる。
 椿や葵のような戦闘技術があれば、話は変わっていたが...。

「今よ!」

「っ!」

 だが、そこへさらに雷撃が入る。
 先程よりも弱い雷撃を偽物は咄嗟に受け流す。

「ユーノさん!」

「っ!分かりました!」

 しかし、受け流した腕にピンポイントでリニスのバインドが決まる。
 さらに、その上にユーノの頑丈なバインドで偽物でも易々と解けなくする。

「喰らいなさい...!」

   ―――“Thunder Rage(サンダーレイジ)

 流れるような連携の最後に、集束された雷の砲撃が放たれる。
 プレシアの大魔導師としての砲撃魔法が、偽物に直撃...したかのように見えた。

「......防がれたわね...。」

「なっ!?あれを...!?」

 苦虫を噛み潰したかのようなプレシアの言葉に、神夜が驚く。
 神夜の中ではあれで倒したと思っていたようだ。

「創造魔法...なるほど。厄介ね。」

「....これでも、ダメージは通ったんだけどなぁ...。」

 砲撃魔法による煙が晴れると、そこには盾を創造した偽物が佇んでいた。
 バインドを解除するよりも、防ぐ事を優先したようだ。
 しかし、防ぎ切る事は出来なかったらしく、少し焦げていた。

 ちなみに、剣で相殺も試みていたが、あっさり撃ち落とされたらしい。

「っ....。くっ、傷が開いたか...。」

「っ、逃がさない!!」

 椿と葵によってつけられた脇腹の傷が今ので開いたらしく、偽物は撤退しようとする。
 それを止めようと、神夜と奏が駆け、なのはが砲撃魔法を放とうとするが...。

「...別に、この程度の傷でもお前らは倒せる。」

「ぐっ...!?」

「くっ...!」

 二人の攻撃を受け流し、そのまま偽物はなのはへと投げつける。
 これにより、三人の咄嗟の行動はあっさり止められた。

「っ....!」

「おっと、動くなよ?」

「アリシア!!」

 次にフェイトが動こうとして、偽物は剣をいつでもアリシアを刺せる位置に創造する。
 ...先程プレシアの砲撃の際にリニスが保護しておいたのに...だ。

「っ....!」

「少しでも動きを見せれば、防がれる前に殺せるぞ?」

 まさに目と鼻の先。そんな位置に剣はある。
 遠隔的な人質に、保護しているリニスさえ動けなかった。

「....じゃあな。」

「っ....くそっ!!」

 あっさりと逃げられた事に、神夜は悔しがる。

「....椿ちゃん....葵ちゃん....。」

「...生きてる...とは言い難いかな...これじゃあ...。」

 なのはとユーノは、僅かに残る椿と葵の服の切れ端を見て悲しみに暮れる。
 所々にある血痕から見ても、傷が大きいはずで、逃げられたとも思わないからだ。

「....リンディに伝えましょう。...これは緊急事態よ。」

「そうですね...。」

 プレシアの言葉にリニスも賛同し、一度家に戻って管理局へと連絡した。







   ―――...こうして、偽物が偽物だと気づかれないまま、夜の戦いは終わった。





















「...ぁ....ぐ....。」

「っ......。」

「ぁ...ぅぅ.....。」

 森の中、血塗れの少女二人と、吐血している少年が身動きも取れずに倒れていた。
 ...言わずもがな、優輝達三人である。

「....アリ...シアが.....くそ.......。」

 アリシアを助けようと動こうにも、そこで優輝は力尽きてしまう。

 ...なぜ、三人がこんな森の中にいるのか。
 それは、あの時仕掛けられた魔法陣がただの転移魔法だったからだ。
 ...最も、転移の衝撃さえも三人にはダメージとなったが。

「優..ちゃん.....。」

「....葵、動けるかしら....?」

「...さすがに、きついかな...?」

 気絶した優輝を介抱しようにも、椿と葵も動けない。
 本来なら戦えない状態なのに、それでも戦ったから当然の事だ。

「...動ける、まで....どれ、くらいかかる..かしら?」

「...かやちゃんも、無理しないで.....。...デバイスになったからかな....?...10分は、かかるよ...。それでも、ギリギリ...だね。」

「そう...。」

 葵の吸血鬼の再生力を以ってしても10分かかる事に、椿は力を抜く。
 このまま、無理に動くよりも少しでも回復に体力を回した方がいいからだ。

「....霊力に、まだ余裕はある...わ...。」

「...りょー、かい。....誰か、来てくれればいいんだけどなぁ....。」

 霊力を回復促進に割り当て、二人は回復に専念する。
 骨も折っているが、式姫の二人なら霊力で元通りになるので、そのままにしておいた。

「......くぅ?」

「...はは...狐じゃあ、さすがに....無理かなぁ...?」

 ふと、葵が顔を向ければ、そこには子狐が。
 さすがにそれでは意味がないと、葵は思うが...。

「...久、遠.....?」

「...くぅ..?....神..様...?」

 その狐...久遠に椿は気づき、顔を向ける。
 そんな椿に久遠も気づいたのか、少女の姿になって駆け寄る。

「...那美を...連れてきて頂戴...。」

「...くぅ、わかった。」

 今の時間は夜。大抵の人が家にいる時間だが、緊急事態だと椿は久遠にそう頼む。
 それを聞き入れた久遠は、そのまま那美のいる場所へ向かった。

「...よかった...これで....。」

「妖狐....野生の妖怪が、まだいたんだ...。」

 これで優輝がこのまま死なずに済むと、二人は安心する。

「これで...少し安心.......。」

「...かやちゃん...?眠いの?....実は、あたし...も.....。」

 そして、二人はそのまま死んだように眠ってしまった。



















「....嘘...だろう...?」

「残念だけど、事実だよ。僕も、あの優輝がこんな事仕出かすのには違和感があるけど。」

 プレシア達の連絡を受け、丁度地球の近くにいたアースラはすぐに駆け付けた。
 そして、ある一室でクロノはユーノから詳しい事情を聞いていた。

「それに...ジュエルシードか....。」

「...クロノの無駄な注文が役に立ったよ...。...まさか、またジュエルシードが現れるなんて。...それも、また地球に。」

「...ジュエルシードに優輝....予想外な事ばかりだ...。」

 お互い、かつてジュエルシードに関わった事もあるため、その危険性を知っている。
 さらにそこへ優輝(偽物)が敵に回っているのだ。厄介極まりない。

「....椿...葵....。」

「...血痕と僅かな服の切れ端から、生きている可能性は低いだろう。....あいつが、そう易々と逃がすはずがないからな...。」

 優輝と友人である二人であるからこそ、椿と葵はもう生きていないと考える。
 実の所とんだ勘違いだが、今の二人にそれを判断する術はない。

「アリシアの容態はどうだ?」

「僕とプレシアとリニスで軽く診たけど、傷は軽いものだったよ。...ただ、頭を打ったみたいでしばらく目を覚まさないけど。」

「そうか...。」

 これからの事について、クロノは考える。
 ジュエルシードが再び現れ、頼りになる者は殺されたか敵に回っている。
 おまけにジュエルシードの魔力をいいように利用されては勝つことも難しい。

「はやて達は?」

「連絡は取れるがすぐに来てもらうのは難しい。...今アースラにいる人材だけで解決しないといけないな。」

「そう...。」

 他の仕事があるようで、はやて達にはしばらく協力を仰げない。
 だからこそ厳しい事件になると、二人は思った。

     コンコンコン

「入っていいかしら?」

「構わない。」

 ふとノックが鳴り、プレシアとリニスが入ってくる。

「あれ?アリシアの様子は見ておかないんですか?」

「今はフェイトが見ているわ。さすがにずっといる訳にも行かないしね。」

「それに、少々気になる事があって来ました。」

 そう言いつつ、二人はクロノ達と同じテーブルに就く。

「気になる事?」

「ええ。貴方も記録映像は見たでしょう?...彼の印象はどうだったかしら?」

「優輝の...?」

 プレシアに問われ、クロノとユーノは思い出す。
 ...そして、ふと気づく。

「....なんというか、優輝らしくなかった...ような...?」

「言動、性格がおかしい。まるで、狂ったかのような、別人のような...。」

「それだけじゃないわ。これを見て頂戴。」

 そう言ってプレシアが示したのは、昨夜の戦闘の記録の一部だった。

「.....デバイスを一切使っていないわ。」

「っ...!確かに...フュールング・リヒトも、シャルラッハロートも使っていない...!」

「彼はデバイスに頼る戦い方はしないけれど、だからと言って一切使わない事もないはずよ。...けど、この戦闘では一切使っていない。」

 プレシアが疑問に思うのも無理はない。
 いくら優輝のコピーとはいえ、デバイスまでコピーした訳ではないからだ。
 だから当然、リヒトとシャルを持っていない。

「....怪しい...。」

「...一概に優輝が犯罪者になったとは断定できないな...。もしかしたら、何か理由が...それこそ別人かもしれない。」

「ええ。その可能性が高いわ。」

 個人的な考えとしても、優輝はあんな事をする訳がない。
 そう思っている四人は、既にこれが単純な事件ではないと考えていた。

「....もう一つ、気になった事があるわ。」

「もう一つ?」

「アリシアに関してよ。」

 “単なる思い過ごしかもしれないけどね”と言ってから、プレシアは説明する。

「アリシアが無事...とは言い難いのだけど、それでもあの程度の怪我で済んでいたのは少しおかしいわ。」

「....?どういう事ですか?」

「私たちが結界の反応を捉えて、内部に突入するのに数十分かかったわ。もし、結界が張られた時点で戦闘が始まっていたのだとしたら、ちょっと遅すぎるわ...。」

 偽物は“霊力の供給を断てばあの二人にも余裕で勝てる”と言っていた。
 その事から、プレシアは()()()()()()()()()()()()と思ったのだ。

「...単に、それだけ椿と葵が耐えたか、結界が張られても戦闘はまだ始まっていなかったとかは...?」

「それこそありえないわ。彼はアリシアを遠距離から人質に取ったのよ?それができるのなら、私たちが中に入った時、アリシアは死んでいるか無傷のどちらかよ。...それ以外にあったとしても重傷よ。」

 遠距離から人質を取る。それは創造魔法による剣の操作があるからこそできた事。
 それは椿や葵にも対処は難しい。プレシアはそれがわかっていたからそう思った。

「でも、アリシアは掠り傷程度で済んでいた。...そこがおかしいのよ。」

「それは...椿と葵が庇ったから....。」

「いや、あの二人でもこの遠隔での人質の対処はできない。こんなのに対処できるのは、同じような事ができる.....っ!」

 ユーノの言葉にクロノがそう返し、その途中で気づく。

「...優輝?」

「...飽くまで憶測よ。私の見当外れの可能性もあるわ。」

「....今は頭の片隅に置いておくべきか...。」

 “とにかく”...と、クロノ達は思考を切り替える。

「今は現状の対処だ。アリシアの事は時間が解決してくれる。...だけど...。」

「ジュエルシードと優輝...。この組み合わせは厄介だよ...。」

「優輝の唯一の弱点である魔力量がジュエルシードで代用されてるしな...。」

 味方だと頼りになるが、敵に回れば想像以上に厄介...クロノ達はそう思った。

「...そもそも、なぜジュエルシードはあそこにあったんだ?」

「...優輝が言っていたんだ。“偽りの記憶”って。...もしかしたら、今回のジュエルシードの件は、去年の皆が解決した事件と繋がっているのかもしれない。」

「あの事件の記憶そのものが、偽りだと言うのか?」

 クロノの言葉にユーノは頷く。

「....僕らだけで考えるのはダメだな。一度、アースラの皆に事件について報告して、それからどうするべきか会議するべきだ。」

「....そうですね。」

 とりあえずと決めた方針に、リニスが返事する。...が、少し歯切れが悪かった。

「どうかしたのか?」

「...いえ、何か違和感が....。...こう、ジュエルシードを見てから、胸がざわついているかのような気がして....。」

「ざわつく?」

「....途轍もなく、重要な事を忘れている...そんな気がするのです。」

 しかし、それが全く分からないと、リニスは言う。

「重要な....。」

「....あ、すみません。忘れてください。...今は、目の前の事を。」

「そ、そうか...。」

 明らかに置いておけなさそうな事だが、確かに今はジュエルシードと優輝を優先すべきだと、クロノは何とか頭から振り払う。

「(.....この事件、想像以上に複雑になりそうだな....。)」

 ジュエルシード、優輝の行動、そして微かに胸に宿る違和感。
 それらを考え、クロノはそう思わざるを得なかった。















「...くそっ、あいつめ....!」

「アリシアちゃん...。」

 一方、神夜達はアリシアのいる医務室で、ただただ悔しがっていた。

「緋雪の事と言い、洗脳したり見殺しにしたり....挙句の果てに椿と葵を殺すなんて....許せねぇ.....!」

「どうして...あんな....。」

「言っただろう?あいつは表面上だけ良い奴で、実際はあんな奴なんだ...!くそっ、ふざけやがって...!」

 悲しむなのはとフェイトに、神夜はさも本当かのように、ただの憶測(勘違い)を押し付ける。

「.....許せない...。」

「うん...こんな事するなんて...。」

 しかし、魅了されているなのはとフェイトは、それが当然の如く事実だと思い、ただ神夜に妄信的になりながらついていくだけだった。

「お姉ちゃん....見ててね...。」

「よし、クロノ達の所に行くぞ。多分、既に志導の対策について話してるだろうし。

「うん!」

 眠っているアリシアの手をフェイトは一度祈るように握ってから、神夜についていった。
 なのはもそれについていき、ずっとそれらを見ていた奏もついて行こうとして...。

「..........。」

 ...ふと、違和感に足を止める。

「(...あんな事をする?....本当に?)」

 唐突に...ふと、唐突にそんな疑問が浮かび上がってきたのだ。

「(神夜はこういう事で間違った事は言わない....。...でも、どうして....。)」

 魅了の効果で、奏も妄信的になっている。
 しかし、それでも優輝が本当に“悪”だというのが、信じられなかった。

「(......何か...忘れている.....?)」

 とても大事な事を、忘れるべきではない事を、忘れてしまっている。
 奏は、それを思い出そうにも、どうにも思い出せなかった。

「奏?どうしたんだ?行くぞ。」

「あ....うん....。」

 立ち止まっていたからか、神夜に話しかけられ、ようやくそこで現実に戻る。

「(....大丈夫...神夜は正しいんだから、大丈夫...。)」

 そう考え、さっきまでの違和感を忘れ、奏は神夜についていった。











   ―――....トクン....。













 .....彼女の心臓が、その考えを否定するように、小さく鳴った....。



















 
 

 
後書き
久遠と那美さんの出番はもうないと(キャラ設定で)言ったな.....あれは嘘だ。
...で、出番はない“かも”だったし。確定ではなかったし...!(震え声)

奏...Angel beats!...心臓...後は分かるな?(えっ 
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