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川赤子

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第二章

「何処からか」
「そうか?」
「うん、これは」
 ここで先を見たひかるだった、う二人が今いる道の。
「川の方ね」
「淀川か」
「そっちの感じだけれど」
「じゃあ川の方行ってみるか?」
 ひかるの言葉を今回も真面目に受けてだ、明は言った。
「そうするか?」
「ええ、じゃあね」
「行こうな」
「二人でね」
 こうしてだった、二人は丁度帰り道になっている淀川の方に行った。そしてだった。
 川の土手のところに行くとだ、明もその声を聞いた。その声はというt。
「赤ちゃんのな」
「泣き声よね」
「御前の」
「話をして五分も経ってないわよ」
 ひかるも今度はむっとした顔だった。
「そんなにすぐに子供出来る?」
「漫画だと読んでる間にだけれどな」
「漫画はね、けれどね」
「リアルだとな」
「無理よ」
 こう明に答えた。
「そんなにすぐに出来ないわよ」
「そうだよな」
「ふざけたこと言ってると川に落ちるわよ」
「落とすなよ」
「これ位じゃしないから」
 今度はこう返したひかるだった。
「とにかくね」
「ああ、とにかくな」
「赤ちゃんの泣き声するって」
「ちょっと、いや相当にまずいな」
「捨て子?」
「かもな、探そうな」
「ええ、何処にいるのか」
 こうしてだった、二人で川辺に降りてそこの草原や川辺を探して回った。だが泣き声がしたと思った場所に行くと。
 すぐに別の方向から泣き声が聴こえた、そして。
 そこに行くとまた別の方向からだ、このことにだ。
 明は首を傾げさせてだ、ひかるに言った。
「おかしくないか?」
「あっちに行けばこっち、こっちに行けばそっちで」
「泣き声がな」
「あちこちに移ってるな」
「何だ、これ」
 明は怪訝な顔になり言った、泣き声が聴こえてきた水草の方を見回りつつ。
「さっきここに声がしたのに」
「そうよね」
 ひかるもその水草の方をみているがだった。
「いないわ」
「おい、今度はな」
「あっちからだな」
「探す?」
「そうするか」
 今度は岩の方だった、それで二人でそこに行くと。
 赤子はいなかった、今度は橋の下からで。
 そこにもおらずこうしたことの繰り返しだった、それで気付くともう夜で明もひかるも暗がりの中で話した。 
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