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おぢばにおかえり

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第三十四話 あちこちでその六

「だからね」
「ですからどうですか?」
「阿波野君のをなのね」
「貸しますけれど」
「用意がいいわね」
 しみじみとしてこの言葉を出しました。
「また」
「だって一つが破れたりしたら困りますよね」
「ひのきしんの時に」
「そうです、ですから」
 それでというのです。
「持ってるんですよ」
「そうだったの」
「それでどうですか?」
 また私に言ってきました。
「一つ」
「それじゃあ」
 私は阿波野君の誘いに乗ることにしました、何か断るのも悪い気がしまして。
「お願いするわ」
「一緒にひのきしんですね」
「そうね、まあひのきしんはね」
 そのひのきしんについてはです、私は真剣そのもので言いました。
「欲を忘れて」
「心を澄ませてってことですか」
「そう思っていいわ」
「奇麗な心で、ですね」
「するものだから」
「はい、本気で欲を忘れて」
 阿波野君も言います。
「僕やりますよ」
「真面目にね」
「回廊もやらせてもらいます」
「頑張ってね、かく言う私もね」
 本当に考えてみればです。
「最近回廊ではしてなかったから」
「よくされてるんですよね」
「寮でも学校でもね」
「特に寮で」
「お掃除も食器洗いもひのきしんよ」
 そうしたことが主になるでしょうか。
「することは多いわ」
「ひのきしんの種類がですか」
「洗濯もそうだし」
「じゃあ家事とかは殆ど全部ですか」
「そうなるわ、お料理もね」
 本当にこれもです。
「ひのきしんになるわ」
「そうなんですね」
「だから寮にいたら」
 それこそです、起きてお掃除があってです。
「ハイジの曲で起きてから寝るまでよ」
「ああ、東寮って朝の音楽アルプスの少女なんですね」
「そうよ、今はね」
「仮面ライダーとかホークスの曲駄目ですか?」
「何よ、その曲」
 どっちもかなりあれだと思いました、正直。
「仮面ライダーってどのライダーよ」
「フォーゼとかどうですか?ホークスは応援歌です」
「完全に阿波野君の趣味でしょ」
「そうですけれど駄目ですか」
「阿波野君がそうしたのを決める係なら出来るけれど」
 どうも阿波野君はホークスファンみたいです、天理教の人は関西の人が多いせいで阪神ファンの人が主流ですけれど。
「曲をね」
「そうですか、そうした係ならですか」
「そうなの、寮には色々な係があるの」
「僕寮のこと知らないですね」
「自宅生だからね」
 ここで、です。私達は。 
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