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『八神はやて』は舞い降りた

作者:羽田京
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第5章 汝平和を欲さば戦に備えよ
  第46話 ドラグ・スレイブ

 
前書き
・これでこの章は終わりです。あと二章です。年内に終わるといいなあ……
 

 
「ハアッ!」

 裂帛の気合のもと、先に仕掛けたのははやてだった。
 騎士杖シュベルトクロイツを槍のように扱い、神速の突きを繰り出す。
 並の存在ならばその一撃だけで勝負がつく。それだけの威力。


「ファファファ、甘い!」
「くっ」


 ハーデスもまた槍使い。一合、二合と槍を合わせるが、互いに一歩も引かない。
 槍を合わせるごとに、衝撃波が発生し、神殿を破壊していく。
 プルートたち死神を含め、ヴォルケンリッターも手出しができずにいた。
 双方とも自らの主が勝利すると信じているからこそ、固唾をのんで見守る。
 何十合と繰り返したあたりで、ハーデスは痺れを切らした。


「消えた……?」


 はやては考える。
 ハーデスは姿を消す宝具をもっていた。それか。
 だが、それは悪手だ。
 クラウ・ソラスで動きを止めて、


「――闇に沈め」
『Diabolic Emission』


 術者を中心に広域殲滅魔法を放つ。すべてを飲み込むような闇が広がる。
 後に残ったのは、ボロボロのハーデスだった。
 
(サービスとして、決め技は、アレをやってみるか)





 ダメージで身動きが取れない。
 神たるこの私が手も足も出ないだと……!? 
 それに、先ほど詠唱を始めてから感じるこの気配は一体なんだというのだ。


「あ、ありえん。その力……魔王の力だと…しかし奴らが貴様に力を貸すなど」
「冥府の土産に教えてやろう。魔王は魔王でも異世界の魔王だ。括目せよ! 赤眼の魔王(ルビーアイ)シャブラニグドゥの力を! アハハハハハハッハハハ!」


 理解できない。初めてハーデスは目の前の少女に恐怖を抱いた。
 存在すら知らない異世界。そこにいるという魔王。
 嘘だ。
 ハーデスの理性が理解を拒否する。


「黄昏よりも暗き存在(もの)血の流れよりも赤き!存在(もの)――――」


得体のしれない力がはやてに流れ込むのを感じていた、
あれは、まずい。何とかしないと。身動きできず、思考のみがただ空転する。
だから、陳腐だが会話をここ試みた。
時間稼ぎだが、はやての目的を知りたいのも事実だった。


「八神はやて。貴様の目的はなんだ?」


 ハーデスの問いかけに対し、意外にもはやては詠唱を中断してまで、律儀に答えた。
 彼女の存在意義。目的。そして、憎悪。力こそパワー。


「つまり、サマエルが目的だと?」
「冥府の殲滅はついでに過ぎない。けど、どんなに脅したってサマエルをボクに渡そうとはしないだろう」
「あれは貴様ごときに扱える代物ではない。ただの人間ごときが……神すらも超えるつもりか?」


 はやては嬉しそうに嗤った。


「――生きているのなら、神様だって殺して見せる」
「この気狂いめ!!」
「さて、時間稼ぎご苦労様。身体は動くかい?」


 はやてと続けた会話で、身体の痺れはとれた。
 反撃にでようとして、突如身体がシアンブルーの光の束に拘束された。
 身動きがとれない! と、焦る。
 そんなハーデスの姿を、はやてはあざ笑う。


「ボクにはバインドの適正はないんだけれどね。リインフォースに強力なディレイバインドを頼んだんだ。なにせボクら一心同体。同時詠唱も可能なのさ」
「ば、莫迦な……」
「黄昏よりも暗き❘存在《もの》、血の流れよりも赤き存在(もの)時間(とき)の流れに埋もれし偉大なる汝の名において、我ここに闇に誓わん、
 我らが前に立ち塞がりし全ての愚かなるものに、我と汝が力もて、等しく滅びを与えんことを!………竜破斬(ドラグ・スレイブ)!!」





「あれが……ドラグ・スレイブ」
「知っているのか曹操」
「ゲオルグ、話だけはな。異世界の魔王の力を借りるらしいが、想像以上だ」
「異世界の魔王とやらはそんなに強いのか?」
「いや、こちらの前代魔王とそう変わらないらしい。ぶっちゃけ、はやてお得意のラグナロクの方が威力はあるとさ」
「なんでまた面倒な技を使うんだ?」
「さあ? 詠唱がかっこいいからじゃないか」
「まさか。そんなアホみたいな理由ではあるまい」


 そんなアホみたいな理由で殺されたハーデスが、かわいそうだった。
 真実とはときに知らない方が幸せなのである。


「これでサマエルが手に入ったわけだが」
「はやても気前がいいよな。せっかく手に入れたサマエルを曹操に渡すなんてよ」
「ヘラクレスの言う通りだな。はやてからの贈り物。これは脈ありじゃないか?」
「……」
「ドラゴンイーターの術式はできたのか」
「シャマル女史のおかげでな」
「ジャンヌに聞いたぞ、弟子入りを断られたんだってな」
「もしかして、シャマルさんに惚れちゃったとか?」


 まさかねー、ははは。と、曹操たちは笑い合う。


「え? 顔が赤い、ちょ、ゲオルグマジなの!?」





「ようこそ、忌々しき偽りの魔王の血縁者、リアス・グレモリー。そして、その卑しき眷属たちよ。我々の目的のために散って貰う」

 襲撃は突如行われた。禍の団を名乗る悪魔の一党が乱入してきたのである。
 その日開催されたサイオラーグ・バウルとリアス・グレモリーのレーティングゲームは盛況で、内容も熱い展開だった。
 三大勢力の長を主賓に、特別ゲストとしてオーディンまでもが参加している。
 開始早々一誠がサイオラーグに一騎打ちを申し込み、つい先ほどまで互角の戦いを繰り広げていたのだ。
 残された陣営は、遠巻きにして応援するにとどめる。


 レーティングゲームとしては異様な内容だった。
 が、みな観客も含め、若手最強の武闘派悪魔と急速に名をあげつつある赤龍帝の勝負に見惚れる。
 小猫とともにザフィーラの指導を受けた一誠はさらに力に磨きをかけていた。
 両者とも一歩も引かない世紀の大決戦といってよい。
 それだけに苛立ちが募る。


「目的? 正々堂々と戦いもせず禍の団に落ち延びたテロリストごときが、調子に乗るなよ?」
「俺たちの闘いの邪魔をしたんだ。ただで済むと思うな」
「くっ、劣等種ごときが、その余裕もここまでだ」


 サイオラーグと一誠が闖入者に宣戦する。
 旧魔王派を名乗る悪魔が怒りの表情を浮かべると、周囲に数百を超えようかという魔法陣が展開し、無数の悪魔が出現した。
 

「さあ、足掻くがいい。おっと、外からの援軍は期待するなよ? 不当なる魔王やオーディンどももいまは動けまい」
「気を付けて一誠! 信じられないけれど、こいつら一人一人が上級悪魔並の力を持っているわ」


 リアスの忠告を受け、その場に戦慄が走る。
 サイオラーグもグレモリーもいまだ若手の中級悪魔なのだ。
 実力では上級悪魔にも劣らないと自負しているが、数が多すぎた。
 しかも、サーゼクスとまではいかないが、タンニーン並の魔力持ちまで複数居る。





 戦況は膠着している。
 グレモリー眷属とバアル眷属の共闘だが、連携は避けている。
 下手な連携をするよりも、それぞれ息の合ったチームで動く方が適切だからだ。



「木場、小猫、任せた!」
「任せて欲しい」
「はい、イッセー先輩」


 イッセー先輩は、私とユウト先輩に声をかけると、大将首をとりにいった。
 サイオラー・バアルもまた複数の最上級悪魔クラス相手に格闘戦を仕掛けている。
 敵の指揮官と中核となる戦力を釘付けにすることで、敵は数の利を生かせないでいた。


 私たちも部長の指揮のもと、チームワークで頑強に抵抗している。
 長期戦は私たちに不利。理由は、アーシア先輩の不在だ。
 体調を崩したらしく、レーティングゲームに参加できなかったのである。
 あと、修行に出ているギャー君もいない。


 これで何体の悪魔を倒しただろうか。
 私たちだけでももう百を超える悪魔を屠ったのに、一向に減っている気がしない。
 このままではジリ貧―――


「苦戦しているようだな、同志たちよ! われこそは四天王が一人――――」
「くっ、強いわね。ゼノヴィア、そっちお願い」
「このデュランダル、斬れないものはあんまりない!」
「ぐあああああ」


「四天王でも奴は最弱」
「くっ、強いわね。ユウト、そっちお願い」 
「アバンスラッシュ!」
「ぐあああああ」


「戦いは数だよ兄者!」
「くっ、強いわね。朱乃、そっちお願い」 
「我は放つ光の白刃」
「ぐあああああ」


「わはははは、オーフィスの蛇でパワーアップした私相手に勝ち目はあるまい」
「くっ、強いわね。小猫、そっちお願い」
「フタエノキワミアァアアアアアア!」
「ぐあああああ」


 ジリ貧?





 激戦が繰り広げられている。
 夥しい数の悪魔の死体。
グレモリーとバアルは、手傷こそ負っているものの、全員が未だ戦えている。
 数で勝負する旧魔王派に、質で拮抗する若手悪魔たち。
その危うい均衡が崩れたのは突然だった。
 雷の嵐が襲撃者たちに襲い掛かったのである。


「オーディン様!?」
「生きとったか、リアス嬢。なんとか間に合ったかの。よくまあこれだけの数を相手に生き残れたものだ」
「……もう少し早く来てほしかったです」
「朱乃の言うとおりね」
「すまんすまん、こちらも大変でな」
「やはりレーティングゲームは、禍の団に乗っ取られたのですか?」
「それについてはアザゼルに聞くがいい。この場はわしに任せよ。そして、しかと聞くがいい――――」


 オーディンの言葉に、全員が言葉を失った。






――――八神はやてが裏切った。
 
 

 
後書き
・生きているのなら神様だって殺してみせる
神は死んだby紫藤イリナ。型月。

・ドラグ・スレイブ
好きすぎて詠唱を暗記していました。ちなみに、主人公は人間じゃないのでロード・オブ・ナイトメアとも余裕で交信できます。スレイヤーズ。

・レーティングゲーム
ライザー戦に出てきたアレです。もうチェスとか関係なく殴り合ってます。一騎打ちです。

・旧魔王派
テロ組織禍の団(カオス・ブリゲード)の一派。サーゼクスやセラフォルーたち4大魔王に敗れた悪魔の残党。アザゼル先生に討ち取られたカテレア・レヴィアタンもこれです。 

・修行に出ているギャー君
劇的ビフォアアフターになります。ヒントはミルたん。

・斬れないものはあんまりない!
好きなセリフです。こんにゃくは斬れないですね。東方プロジェクト。

・我は放つ光の白刃
分かる人いますかね? マリア教師が好きでした。ガラスの剣とかかっこいい。オーフェン。

・フタエノキワミアアアアアアアア
予測変換がすでにフタエノキワミアアアアアアアア。るろうに剣心。 
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