| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

FGOで学園恋愛ゲーム

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

十一話:お風呂


 温かな湯気が立ち上り顔をしっとりと湿らせる。
 湯船は体全体を包み込み優しく癒してくれる。
 しかし、ぐだ男の精神は全くと言っていいほど休まらなかった。

「気持ちいいですか?」
『うん。温かくてとろけそう』
「もう、変なこと言わないでください」

 浴室にくぐもった声が響き合う。
 彼女の声が鼓膜を打つ度に彼に甘美な刺激を与える。
 鼓動は倍速になったようにひっきりなしに血を送り続ける。
 端的に言うと彼は―――のぼせそうになっていた。

「お父さんの服を置いておくので上がったらこれを来てくださいね」
『ありがとう』
「そ、それと下着なんですが……」
『大丈夫! 下着は濡れていないからそこまでは用意しないでいい!』
「分かりました。それではゆっくり温まってくださいね」

 扉の向こう側からジャンヌが立ち去っていく気配を感じぐだ男は大きく息を吐く。
 一緒にお風呂に入るという夢のような展開は残念ながら起きなかった。
 もっとも、起きたら起きたらでキャパシティーオーバーで気絶しただろうが。

『でも……今のもなんかいいなぁ』

 お風呂の扉越しに会話する男女。まるで夫婦ではないか。
 そう考えたところで恥ずかしくなり、顔を真っ赤にして口元までお湯に浸かるぐだ男。
 だが、妄想はまだ収まらない。

『それにこのお風呂には毎日ジャンヌが……』

 本能に抗うこともできずジャンヌの入浴シーンを想像してしまう。
 湯船に浸かる陶磁器のように白い肌が火照り赤く染まる様。
 美しく均整の取れた女性らしい体を洗う姿。
 あの長く綺麗な髪はどのようにして手入れしてあるのだろうか。

『…ッ』

 ハッと妄想から我に返り一体何を考えているのかと自分で自分の頬を抓る。
 しかし、思い浮かべてしまったものはそう簡単には消えてくれない。
 悶々とした状態が続き頭に血が上り頭がクラクラする。

『……上がろう』

 このままここにいると昂ぶってはならない何かが昂ぶる。
 そう判断したぐだ男は湯船から上がり、浴室を出る。
 ここで一般的な家の構造について話すとしよう。

 基本的に一般的な家では水回りを良くするために風呂と洗面所は同じ空間にある。
 ジャンヌの家もその例外ではない。
 つまり、風呂場から出た人間と洗面所にいる人間が―――


「ああ、姉さん出たの。早く代わってくれない。雨で濡れて気持ち悪―――」


 ―――鉢合わせすることがあるのだ。

『……お、お邪魔してます』

「……え? あ、ああ、そうね。いらっしゃい」

 向かい合うぐだ男とジャンヌ・オルタ。
 彼は一糸まとわぬ状態で咄嗟に手で前を隠し、できるだけ爽やかに挨拶をする。
 そんな彼に彼女はタオルを手にし、雨で濡れ下着が透けて見える姿で挨拶を返す。
 どちらも硬直したまま動けない。

『タオルこれでいいのかな?』
「は? い、いいんじゃないかしら」

 取り敢えずジャンヌが置いてくれたであろうタオルを取り、前を隠すものを得る。
 一方のジャンヌ・オルタは混乱しているのか何も言ってこない。
 当然だろう。家に帰ったら赤の他人が風呂から出てきたのだ。訳が分からない。

『それと悪いけど出てくれる?』
「そうね。そうよね、ここにいるのはおかしいわよね―――って!!」

 我に返ったジャンヌ・オルタが事態に気づき顔を真っ赤にする。
 そして大きく口を開き悲鳴を上げる。

「なんでいるのよ!? このケダモノォオオッ!!」
『ごめんなさいぃいい!!』

 手に持っていたタオルや、近くにあった石鹸などを手当たり次第に投げ飛ばすジャンヌ・オルタ。
 ぐだ男はどうすることもできずに攻撃を受け止め続ける。
 恐らくは彼女はジャンヌから何も知らされていないのだろう。
 それ故に彼女からすれば変質者の裸を見せつけられたようなものだ。
 対応としては当然のものだろう。そう考えるが痛いものは痛い。

『不可抗力です! 許してください!』
「うるさい! そもそも何であんたが家にいるのよ!?」
『それはおりいった事情が―――』
「何事ですか!?」

 高らかに音を立てて扉が開かれる。
 それと同時に飛び込んできたジャンヌに跳ね飛ばされぐだ男の頭が洗濯機にぶつかる。
 思わず目を回し頭を振るぐだ男にジャンヌが慌てた様子で声をかける。

「すみません、つい勢いで」

 ―――下着だけを身に着けた状態で。

『…………』

 思わず彼女の姿を凝視してしまう。
 女性の下着のことなど彼には分らないが色気の少ない白い生地がどうしようもなく目に付く。
 特別なものではない、普段着の下着。
 だが、彼女の完成されたプロポーションにより引き立てられ危険な美しさを醸し出す。
 何より心配そうに覗き込んでくるせいで、柔らかな双丘の谷間が目の前で強烈な存在感を放っている。

『……我が生涯に一片の悔いなし…ガフ』
「き、気絶しないでください! どうしましょう……」

 脳の処理限界を超え、満足そうに気絶するぐだ男。
 気を失った彼にジャンヌは自分がぶつけたせいで気絶してしまったのだと思いオロオロとする。
 一方で、ジャンヌ・オルタはそんな二人の姿を観察しある結論に至る。


「あ、あんた達……まさか―――ヤったの?」


 顔をトマトのように赤くしながらジャンヌ・オルタは尋ねる。
 下着姿の姉。そして何故か家で風呂に入っていた同級生。
 それはつまり情事の後の光景ではないかと邪推したのだ。

「はい? やるとは何を?」
「何で分からないのよ! あ、赤ちゃんを……作るやつよ……」

 心底恥ずかしそうに消え入るような声で呟くジャンヌ・オルタ。
 それを聞いたジャンヌは一瞬何を言われたのか分からないようにポカンと口を開ける。
 しかし、次の瞬間にはどういった勘違いがされたのかを悟り頬を染め上げる。

「ち、違いますよ! そんなことしていません!」
「じゃあ、なんで下着姿なのよ! というか、なんでこいつが風呂にいるわけ!?」

 ジャンヌ・オルタに言われて初めて自分の姿に気づき慌てて反論するジャンヌ。

「これは着替えている最中に急いできたからです! ぐだ男君がここにいるのは、その…服が濡れていたからです!」
「はぁ? 別に乾くまで別の服着せてればいいだけじゃない」
「風邪を引いたらどうするんですか!?」
「知らないわよ、そんなこと!」

 気絶するぐだ男の上で騒がしく喧嘩を繰り広げる姉妹。
 普通であれば起きてきそうな喧騒ではあるがぐだ男の精神は未だに覚めない。
 そのため二人の姉妹喧嘩は誰に止められることなく続く。

「大体、男を連れ込むとか常識考えなさいよ! 犬や猫じゃないのよ!!」
「う…い、いいじゃないですか! 人助けです! 恩返しです! よって無罪です!!」
「だったら何よ! あんたのせいで私は変なもの見る羽目になっちゃったじゃない!!」
「変なものというと……」

 二人の視線がぐだ男のある一部に向けられる。
 幸いにしてタオルのガードは崩れておらず事故は起きていない。

「……見たのですか?」
「完全には見てないわよ! ただ、上がった瞬間に一瞬だけ…見えたような……」

 目を逸らしながらぼそぼそと語るジャンヌ・オルタ。
 二人の間に妙な空気が流れる。
 しばらく沈黙が続いていたが、お互いにその空気に耐えられなくなり口を開く。

「……こいつどうすんのよ?」
「一先ず、起きるまで安静にしたいのですが……体を拭かないといけませんよね」

 運悪く体を拭く前に倒れてしまったためにぐだ男の体は水で濡れている。
 このままでは湯冷めで風邪を引いてしまうかもしれない。
 しかしながら、二人は無言で見つめ合う。

「誰が拭きましょうか…」
「私は知らないわよ。あんたのせいなんだから、あんたが拭きなさい」
「そう……ですよね。はい、そうするしかないですよね」

 自分が起こしてしまった悲劇故に自分で尻拭いをするしかない。
 ジャンヌは軽く頬を叩いて気合を入れ、新しいタオルを手に取る。

「……いきます」

 まるで戦場に赴くような表情でぐだ男の体を拭きにかかるジャンヌ。
 その姿をジャンヌ・オルタも固唾を飲んで見守る。
 頭をあまり揺らさないように拭き、肩から腕にかけての水滴を拭き取る。
 何とも言えぬ緊張感で体が火照る中、ジャンヌは黙って作業を行う。
 だが、見守っていたジャンヌ・オルタの言葉でそれも終わりを告げる。

「こいつ……意外と良い体してるわね」

 言われてまじまじと彼の体を観察してしまうジャンヌ。
 服の上からでは分かることのなかった分厚い大胸筋。
 背中まで盛り上がった背筋。そしてハッキリと割れ目の見える腹筋。
 控え目に見ても彼の体は鍛え上げられていた。

「確かに、カッコいい体です……はっ! いけません、そんなことよりも早く拭いてあげないと」

 思わず見とれていた自分に恥ずかしくなり顔を隠すように俯きながら再開する。
 しかし、先程までは気にしなかった浮き上がった鎖骨や乳首、腕の筋肉がいやに目につく。
 それでも何とか我慢して足まで拭き終える。
 ここまで来れば安心だと思ったジャンヌだったが肝心なことを忘れていた。

「タ、タオルの下は……どうしましょうか」
「わ、私に聞かないでよ!」
「拭くとなると、ふ、触れないとダメですよね…」

 体の残りの一部。タオルで隠された部分に目をやる二人。
 ここを拭くとなると見ないようにはできても一部分に触らねばならない。
 だが、そんなことは純情なお年頃の少女二人にはできない。

「も、もう、諦めなさいよ。ちょっと濡れてる程度で風邪引くほど柔じゃないわよ、こいつ」
「そ、そうですよね、仕方ないですよね。後は風邪を引かないように毛布でも掛けて起きるのを待てばいいですよね。はい」

 ここまで自分達はやったのだからもういいだろうとお互いに頷き合う。
 そしてぐだ男が起きるまで立ち去ろうとしたところでタイミングよく彼が起き上がる。

『うーん…あれ? 俺、何してたっけ』
「ああ、良かった。起きたのですね、ぐだ男…く…ん…」

 ホッと胸を撫で下ろすのもつかの間。
 起き上がったことで最後の防御壁として機能していたタオルがハラリと落ちる。
 一切の遮蔽物もなく露わになるぐだ男の“ぐだ男”。
 事態に気付いた張本人が慌てて手で覆うがもう遅い。


「「キャァアアアッ!!」」
『ホントにすみません!!』


 顔を真っ赤に染めた二人の悲鳴と共に攻撃を受けながらぐだ男は謝罪を繰り返すしかなかった。





『この度は不快な目に合わせて本当に申し訳ありませんでした』

 乾いた制服を着た状態で二人に対し深々と頭を下げるぐだ男。
 年頃の女性に男の象徴を見せつけたなど通報されてもおかしくないこの時代。
 頭を下げるだけで許してもらえるのなら安いものである。

「たく、今度やったら縊り殺すわよ」
「元はと言えば私のせいでもあるので、もういいです。それに不快というわけでも…い、いえ、なんでもありません!」

 唸るように警告をするジャンヌ・オルタ。
 自分も悪かったと頭を下げ何事か顔を赤らめるジャンヌ。
 何はともあれ、これ以上の追撃がないことに安堵の息を吐くぐだ男。

『ありがとう。それじゃあ、これ以上迷惑をかけるわけにもいかないから帰るよ。服とお風呂ありがとう』
「雨は……止んでいますね。もう少し居てくれても良かったのですが仕方ありませんね」

 若干残念そうな顔をしてぐだ男を玄関まで案内しようとするジャンヌ。
 ジャンヌ・オルタは姉のそんな姿に何かを感じ取った後、小さく鼻を鳴らす。

「……フン」
「どうかしましたか?」
「べつにー、ポチに餌やってくるわ」

 不思議そうな顔をするジャンヌを残しジャンヌ・オルタはペットのポチの下に向かって行く。

『ポチ?』
「はい。家のペットのファブニールのポチです」
『そっかー。世界って広いなぁー』

 世界には色々なペットを飼う人がいるのだなと白目で考えながら歩くぐだ男。
 ジャンヌは何がおかしいのか分からないといった表情ながら黙って彼を案内していく。

「それでは気を付けてくださいね。今度は遊びに来てください」
『うん。ジャンヌも家にいつでも来ていいからね』
「はい、楽しみにしていますね」

 靴を履きながらジャンヌと和やかな会話を交わし立ち上がるぐだ男。
 そして、晴れやかな気持ちで玄関のドアを開けたところで彼女の父親と鉢合わせる。

「おや、ジャンヌの友達ですか。私はジル・ド・レェ、父親です」
『どうも。ジャンヌの同級生のぐだ男です。彼女にはいつもお世話になっています』

 スーツを着込み黒い髪に飛び出しがちな黒い瞳。
 一見すると変人奇人に見えそうな顔立ちであるがそこには確かな高貴さが滲み出ていた。
 何はともあれジャンヌの父親なので丁寧に挨拶を返すぐだ男。

「そ、そんなことはないですよ。私の方こそいつもぐだ男君にお世話になっています」
「ははは。仲が良い様で何よりです。ただし―――娘に手を出したら命の保証はできませんよ?」

 ギョロリとした瞳で笑いながらぐだ男を睨むジル・ド・レェ。
 その様子にぐだ男は彼は冗談や酔狂で言っているのではないと悟る。

「な、なに変なことを言っているんですか!? また目潰ししますよ!!」
「おおおッ! ジャンヌゥウウウッ!!」
『潰された後に言われても困るよ、ジャンヌ』


 しかしながら、父の言葉に顔を真っ赤にした娘の愛の鞭(目潰し)により一瞬で鎮圧される。
 目を潰されたのにも関わらず何故か嬉しそうな声を上げのたうち回るジル・ド・レェ。
 その姿に何となく憐れみを感じながらぐだ男はジャンヌの方を見る。

「もう……ぐだ男君も気にしないでくださいね」
『……そうだね、気にしない(・・・・・)よ。それじゃあ、またね』
「はい。それでは」

 特にこちらを意識した発言でないと感じながらぐだ男は背を向けて家を出る。
 そう、ジル・ド・レェの脅しなど気にすることはない。
 何故なら、命の危険程度で―――この想いが燃え尽きるはずなどないのだから。
 
 

 
後書き
~おまけ~本編で使わなかった落ち

 ジャンヌの家から帰り着き、茶の間で一息をつくぐだ男。
 しかし、制服のままでくつろいでいれば後でエミヤに小言を言われるので着替えに行く。
 制服を脱ぎ、Tシャツを探す。どこに置いたかと探っていたところで目当ての品を手渡される。

「お探しのものはこちらですか?」
『うん。ありがとう、清ひ……め?』

 気づけばすぐ傍にはニコニコと微笑む良妻(清姫)の姿があった。
 何故ここにいるのか。そしてその服の場所をなぜ知っているのか。
 言いたいことは山ほどあるが言葉にできない。そんな疑問に答えるように清姫は口を開く。

「嫌ですわ、旦那様。妻と夫が一つ屋根の下にいるのは当たり前のことでしょう?」

 心底当然だろうと思っている顔で首を傾げる清姫。
 彼女中では既に二人間には籍が入れられているらしい。

『そ、そっか』
「ええ、当然のことです。それとですが、旦那様―――お風呂に入った匂いがしますね」
『え? う、うん』

 クンクンと可愛らしく匂いを嗅ぎニッコリと笑う清姫。
 姿だけ見ればそれは愛らしい少女。
 だが、醸し出す空気は敵意をむき出しにした大蛇のそれである。



「先程どこで、何をしていたか。嘘をつかず(・・・・・)に教えていただけませんか? ―――旦那様ぁ?」



 少女の口が小さく、しかし全てを飲み込まんと貪欲に開かれるのだった。


~おわり~


どうですか。火照った体にはピッタリの湯冷ましでしょう(真顔)
因みに嘘ついたら辿り着くBADENDでもあります。勿論一回でアウト。
次回はデートっぽいイベントです。
その次は水着イベント。

 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

感想を書く

この話の感想を書きましょう!




 
 
全て感想を見る:感想一覧