Liber incendio Vulgate
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Praeteritum
Will not forget
前書き
最後です。
Anacondaの本部では何時もと変わらず『マスター』が椅子に座って部下達の報告と成果を聴いていた。組織のトップらしい堂々とした態度である。
そんな中、彼の背後から喉元に鋭く光る、冷たい小刀が添えられた。
「IS。漸く戻ってきたか」
マスターは顔色一つ変えず、振り返ろうともせずに話し掛ける。
「はい。貴方を殺す為に。僕の守るべきものの為に」
ISは哀しかった。自分に生きる意味を与えてくれた初めての人。これからその人間の命を奪わなければならないのだから。
「俺はな、待ってたんだ。お前のような息子を。俺に刃向かえば消されるから誰も俺には逆らわない。でもそれじゃあ駄目なんだよ。子供ってのは何時か親を追い抜き追い越すもんだろう。だからお前の裏切りは俺にとっちゃあ親孝行みてえなもんなのさ。俺より強い、俺が育てた最高傑作に殺られるなら本望ってもんだ。生憎と俺の実の息子はお前みたいになってはくれなかったがな」
ISはマスターの喉を切り裂く。そして涙を流しながらポケットのスイッチを押した。直ぐには建物が崩れず脱出出来るギリギリの爆発が起きる。それに気を取られた目の前の幹部達を一瞬で片付けた。
この部屋から出入口までの一本道以外に居た者は全員死んでいるだろう。ISは外へ向かいながら火の海の中、戦い続けた。
(逃がしはしない。全員消えてもらう!)
そしてとある人物と鉢合わせした。
「IS……お前の仕業かッ!?」
「EVE、他の連中はまだしも君は放っておけない」
彼はAnacondaのマスターの実の息子。その目的はマスターを殺した後に新しいマスターとして君臨することだった。
「君は危険だ。それに君ではマスターのようになれない」
小刀が彼の顔を左目から左頬に掛けて切り裂いた。
「ギャアアアァァ───!!! 目が、俺の目がああぁ───!!!!」
「悪いけど逃がさ───」
這いずって背を向けるEVEを追おうとしたが天井の崩落と爆発で二人の間に距離が出来てしまう。その間にEVEは上手く逃げ果せた。
「クソッ! 覚えていろIS。何時か必ず復讐してやる! どんな手を使ってもなあッ!」
微かに見える彼の背中を見てISが呟く。
「相変わらず逃げ足だけは速いな。暗殺者としては二流以下だが」
彼を逃がしたのは痛かったが仕方無い。後は脱出するだけだ。そう思い出口まで走る。しかし其処で声が聞こえた。瓦礫を退かすとそこには先輩であり、親友の『OR』がいた。
「IS…君…なのか……?」
助からない。一目で解るほど手遅れの状態だ。
「……命を奪う者には…それに相応しい…末路、が……待っている……まさか君の手で死ぬことになるとは……」
「後悔していますか?暗殺者になったことを」
「後悔以外、はしていない…よ。殺りたくない…こと、なんて……幾らでも……」
ISが銃を取り出して彼の頭に向けた。
「今まで……有難う御座いました……」
その手は震えている。顔も辛そうに苦悶の表情を浮かべている。彼はAnacondaで一番殺したくない相手だったから。銃が音を鳴らして揺れる。狙いが安定しない。
「……一思い……に、終わらせてくれ………」
両手で構え銃口を頭に押し付ける。
「ありがとう…今度、は、来世で…君に……」
銃爪が引かれた。薬莢が落ち金属音がする。
「EVEのことだけが唯一の心残りだけど……一先ずは終わったか……帰ろう……。鈴菜さんが待ってる」
Anacondaを壊滅させた彼は自分を待ってくれている人の元へと帰っていった。
それから暫くして───
「操作。貴方の新しい名前です」
自分の運命を操り作り出すという意味らしい。
箱部鈴菜のスケッチブックらしき紙には苗字と名前がびっしりと書かれている。
「じゃあ苗字は『池野』にしてほしい」
(健二さんと鈴菜さん。僕の運命を変えた大切な二人から授かった名前。これが新しい僕だ)
二人がSTUDENTに入るのは三年後。
そして現在───
操作は鈴菜の頭を撫でる。
「うぅ…ん……操作様………」
眠りながら昔の呼び方をする彼女に苦笑う。
(今でも忘れてないよ。君は僕が命を懸けて守りたいもの。これからもそれは何ら変わらない。あの誓いは必ず守ってみせる。でないと鈴菜さんの親御さんや健二さんだけでなくマスターやORにも顔向け出来ないからね)
後書き
何とか終わりました……。色々おかしくなった気がしますがこの辺が限度です。元の完成度が高いのもそうなんですが単語のチョイスが殆ど変えようの無いものばかりだったので大苦戦しました(;^ω^)
次はどの話を進めよう。
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