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ソードアート・オンライン stardust=songs

作者:伊10
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アインクラッド篇
movement Ⅲ 迫り来る狂気の行進曲
  死神降臨

「な………!?」

武器を失ったことで、男達は目に見えて動揺している。甘い甘い。そこですぐに切り換えられないからオレンジなんぞに身を墜とす羽目になるんだ。

「何されたか、分かる奴いるか?いねぇだろうな。サービスだ。もう一回やってやるからさっさと武器持ち換えろ。」

その言葉に、リーダー格と思われる男が、ストレージから予備の大剣を取り出す。

「クソッ…………死ねぇ!!」

なんの捻りもない、ただ力任せの一振り。避けるのも受けるのも造作もないが……実力差を理解させるためにはこれが一番だろう。

「あらよっ!と。」

腰のブラッドクロスを引き抜き、見え易い様に、『ゆっくり』振るう。寸分狂わずに大剣の横っ腹に当て、一気にへし折った。

武器破壊(アームブラスト)》、そこにいるキリトが得意とするシステム外スキルだ。キリト曰くかなりの集中力が必要らしいが、正直先読みに比べれば息をするように簡単だ。

「んな!?」

怯んだ男の顔面に体術スキル基本技《閃打》を叩き込む。

「ぶぼぉあ!?」

数メートル吹っ飛んだ男のHPは、その一撃だけで半分を割っていた。

「おいアマギ!やり過ぎんなよ!」

「わーてるって、キリト。退路は塞いどいてくれ。」

「おう、任せろ。」

「な、キリトに……アマギ?」

「全身黒ずくめの盾無し片手剣士(ソードマン)…………《黒の剣士》?」

「それだけじゃねぇ。紅い十字のジャケットに両手剣クラスの片手剣………《十字の剣聖》だ……。」

「ヤバイよロザリアさん。コイツら二人とも、攻略組だ。」

ようやく俺達の正体に気付いたらしい。皆泡を食ったように動揺し始めた。

「狼狽えんじゃないよ!攻略組がこんなところでうろついてる訳がないだろう!名前を騙ってビビらせようっていうコスプレ野郎に決まってる!」

「でも………あの男ヤバイっスよ……。」

「うるさい!全員で掛かれば……。」

「オイ。」

「っ……!?」

「ここに回廊置いとく。自分で入るか放り込まれるか好きなの選べ。行き先は………言う必要はないよな?」

数秒の沈黙。最初に動いたのは、リーダー格の男だった。

「チクショウ……!!」

一人が動けば早いものだ。次々と回廊に消えていく男達。残ったのは、ロザリア一人となった。

「……後はあんただけだな?」

「っ……グリーンの私を攻撃すれば困るのはあんただよ!」

「なーに、フラグ回復クエストならソッコーでクリア出来るから問題ない。」

「っ………そうだ!あんた、私と組まない?あんたと私ならどんな獲物でも……」

「……阿呆か?俺は、お前らみたいなのが、一番嫌いだって、言ったよな?」

「っ~~~クソッ!?こうなったら……」

そう言って一目散に走り出すロザリア。森に入ってから転移結晶で逃げるつもりだろう。

「させるかってんだ。」

転移結晶を掲げたロザリアにナイフを投げるべく構える、視界の端ではキリトがロザリアを確保しようと動くのが見えた。間に合う。そう判断した次の瞬間、恐怖を伴った猛烈な悪寒に襲われた。

(これは………!?)

街でも感じたこの感覚。これは………この感じは…………!?

「っ!?駄目だ!!そっから離れろぉぉ!!!」

「はぁ?何をいっ………て………?」

そこから先は続かなかった。皆の視線は、転移結晶を握りしめたまま地面に転がったロザリアの右手と、それを切り落とした漆黒の刃に釘付けになっていた。

最初の反応はロザリアだった。

「っ、アッグゥゥゥゥ!!?あ、て、手が、う、アアアアアアアア!!?」

先を失った手首を握り締め、まるで痛覚があるかのようにのたうち回る。その時点で、黒い刃の主が誰なのか、俺には容易に想像がついた。

次に刃が襲ったのはキリトだ。流石の反応速度でその一撃をかわすと、バックジャンプしつつ背中の剣を引き抜いている。

「あら?思ったよりやりますのね。無傷で避ける事までは予想してませんでした。」

漆黒のフード付きマントを纏い、やはり黒で統一された服装は否応なしに死を想起させる。得物は柄から穂先まで漆黒の金属で統一された長槍。140cmにも満たない死神(いもうと)が、木陰から音もなく現れた。カソールは当然オレンジだ。

「ご機嫌麗しゅう、お兄様。お元気そうでなによりですわ。」

「誰だ……アマギ、知り合いか?」

「………がれ。」

「うん?」

「下がれ。コイツの狙いは俺だ。シリカの方を頼む」

ブラッドクロスを構え、黒ずくめの妹を見据える。

「久しぶりだな、アマナ。半年振りか?」

「ええ、お兄様の評判は聞いていましたよ?」

クスリ、と微笑むアマナ。その仕草は年相応の可愛らしさに満ちているが、その事がより、彼女の狂気を際立たせていた。

「改めて自己紹介を。レッドギルド《(ラフィン)棺桶(コフィン)》副長、『死神』アマナと愛槍の《アイグロス》ですわ。どうも、よしなに。」

その名乗りに、少なくない衝撃を受ける。

「……意外だな。お前は集団には属さないと思ってたが。」

「人殺しには人殺しなりに色々あるんですよ。」

そう言うアマナの口許は、普段と変わらない笑みを浮かべている。

「さぁお兄様?お喋りもいいですけど、そろそろ良いですか?私、もう抑えきれなくて………。」

上気した顔で言い放ち、槍を振り回すアマナ。ギラギラ輝くその瞳に明確な殺気が宿るのを見て、俺は無言で剣を構えた。 
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