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Liber incendio Vulgate

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Praeteritum
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前書き
二次と変えれる所が殆ど無い。
.._〆(´Д⊂ 

 
迷いを抱えたままのIS(イズ)にまたもや任務が通達された。暗殺する標的は第0学区でも有数の名家、『箱部家』の当主『箱部宗次郎』。正直不安は残るが行かないわけにもいかないので仕方無く出撃する。


箱部の家は大きな屋敷のような外観をしており見るからに名家という感じの建物だった。しかし警備が厳重にも関わらず何時ものように誰にも見付からず侵入出来てしまう。


ISは今日ほど自分の技量の高さとそれを無意識で行う反応を恨んだことは無い。そして屋敷の中に居た人間をこれまた何時ものように殺害していく。


しかしこの日は今までと違った。見慣れたはずの人間の死体というものに恐怖を感じる。一体自分はどうしてしまったのだろうか。

不快感を(つの)らせながら任務を遂行するISは箱部夫妻の部屋に踏み入った。そしてらしくない言葉を掛けてしまう。



「言い遺すことはありますか?」



自分で自分を疑った。頭がどうかしてしまったのではないかと。誰より無情に冷徹な態度で命を奪ってきたというのに今更になって標的の死を憐れんでいる。


「娘を…頼みたい……。まだ君と同じくらいの歳なんだ……」


箱部宗次郎の願いを聞き入れる条件にIS(イズ)は夫妻に安楽死する為の薬を飲ませ部屋を後にする。そして頼まれた通りに娘の寝室へとやって来た。ベッドから一人の少女がこちらを見詰めている。彼女は恐怖を面に出さないように振る舞う。



「貴方は私を殺しますか?」

「僕は御両親から貴女を守るよう仰せつかっています。それがあの方達との約束ですから」

「では私が命じれば死ねますか?」



このようなことを言われることなど予想の範囲。両親を死なせたのだから。ISは彼女にナイフを持たせ、その手を掴み自分の首に当てた。



「これなら貴女でも殺せます。僕は自分では死ねません。貴女のことを頼まれていますから」

「貴方は命を軽く見過ぎです。少なくとも今は貴方を殺そうとは思いません。その覚悟に免じて私を守るよう私自らが命じます」



顔を上げて彼女の顔を見た。涙を流すことも無くこちらを注視している。視線が合わさると優しく微笑んで口を開いた。



「私は『箱部鈴菜(はこべりんな)』。貴方は何と言うの?」

「僕には本当の名というものがありません。ISと呼ばれてはいますが」



コードネームが名前の代わり。今まではそれで問題が無かった。二人が玄関から屋敷を出ようとすると鈴菜が声を掛けて引き留める。



「この家を燃やしましょう。体が残っていては天国(むこう)に行くことが出来ません。せめてこれくらいはしてあげないと」


ISが鈴菜の言う通り火を放つ。堂々と佇んでいた箱部の屋敷が焼け落ちていく。その時だった。『池野健二』の言葉を思い出したのは。



『君にも何時か自分の生というものに意味を与えてくれる相手と出逢う時が必ず来る』



鈴菜が燃え逝く生家からISへと目を移す。彼は涙を流していた。暗殺者として生きる為に捨てたはずの人としての感情が戻ったのだ。

彼女は彼を抱き締め頭を撫でる。


「辛かったでしょう……。よく頑張りましたね。これからは貴方自身の意志で生きる時です」


この日を境にISは『Anaconda(アナコンダ)』には戻らなくなった。




それから数ヶ月後、IS(イズ)の失踪が殉職ではなく標的を守るため共に逃亡したことが組織に気付かれてしまう。Anacondaは裏切った彼に対し、粛清へと動いた。


そしてある日の夜、ISは決心する。眠っている鈴菜を見た。彼女はIとSをイニシャルにした新しい名前を書いたものを持っていた。


「これがISにとって最後の殲滅任務。彼女を守るために僕が出した答え」


もう一度彼女が持っているものを見る。


「Sの名前は決まってないけどIの苗字はまさかの『池野』とはね……。僕が変わる切っ掛けになった健二さんと同じ姓だ。これも何かの縁なのかな?」


そして彼はAnacondaの本部へと向かった。今までの自分と決別し、因縁を清算するために。


 
 

 
後書き
次で終わりですかね。 
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