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ドラゴンクエストⅤ 砂時計の僕

作者:蜂兵衛
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2話 海

大きな船は風を受けて、帆をはためかせていた。

僕はよっこいしょと立ち上がると大きな伸びをした。
腰が痛む。


呑気に兄さんは
「びっじょ美女ーー♪」

と言いながらさっさとどこかへ行ってしまった。


こんないい船に乗っているのに寝て過ごすのは何とも惜しい気がするので、僕もこの豪勢な船を探検することにした。



手あたり次第ひのきの棒で樽やらツボやらをたたき割っていく。
昔、こうして薬草を見つけたときにお父さんがとても褒めてくれたのが今でも忘れられなくて申し訳ないがやってしまう。


僕はあたりを確認してさりげなく破片を海に投げ捨てて薬草を拾う。

そこに丁度若い船乗りが二人やってきた。
幸い見られてなかったが、こんなゴツイ人に叱られたら拳骨一振りで頭がへこむ気がする。



船員A「どうした坊や?船長はそこの船室にいるぜ?」



一人がおもむろに話しかけてきた。
いい人そうだな、この人なら頭がゆがむ程度で済みそうだ。


リュカ「おにいちゃんをさがして、ふねたんけんしようかなぁっと思って!」


精一杯の笑顔を作り、ヒノキの棒を背中に隠しながら元気に答える。

これが良い子の手本とゆうやつだ…

船員B「そうか、でも船長室にはあまり気軽に出入りしてくれるなよ。奥の階段を下ると食堂や船員室もあるからな、気を付けて船から落ちるなよ。」



もう一人は不愛想だがなかなかに親切だ。兄さんも見習ってほしいところだ。

リュカ「ありがとうございます!船のおしごとがんばってくださいね!」


船員に別れを告げると、食堂に向かった。正直船長に興味もないし船長室は後回しにしようかな。



階段を下るとおいしそうなにおいがして来た。
あいにく今ごはんを食べたら色々すごいことになる気がするので、腹の虫を一所懸命に押さえつける。



リュカ「いいにおいですね!」

おじさん「おっ、坊やはもうおなかすいてきてしまったのかい?おじさんの料理はうまいだろう?坊やのお父さんとどっちが上手かな?」



いやそれは骨付き肉の食べ比べでないと図れない。

因みに今のところお父さんの骨付き肉を超える骨付き肉を僕は知らない。
キングオブ骨付き肉職人はお父さんなのだ。

リュカ「ん~?」

とりあえず困ったときは可愛らしく首を傾げとけという兄さんの教えに従っておく。
僕はあざとく首を傾けた。


おじさんを振り払い船員室に下る。

そこでお父さんをしこたま褒められた。

船員C「男の子二人を男手一つで育てるなんて…坊やのお父さんはえらいよなぁ」

と、頭をがしがし撫でられた。
僕もちょっと誇らしい。

リュカ「えへへ」

実は僕はお母さんの顔を知らない。
兄さんは知ってるらしいけど、僕が生まれてすぐいなくなってしまったらしい。


お母さんの話をするとお父さんが悲しそうな顔をするのであまりしないけど。

たぶん探し物も探し人なのかもしれない。

だからきっとずっとこうして海を渡っていろんなところに行って旅をしてるのかもと思うと何となくしっくりする。


船員室を後にする。

階段は石造りで頑丈でひんやりとしていた。

 
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