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英雄伝説~菫の軌跡~(閃篇)

作者:sorano
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第31話

課題内容を一通り消化したリィン達は通信で来たレーグニッツ知事による追加課題―――宝飾店の盗難事件の調査の為に、宝飾店に向かった。



~ガルニエ地区・宝飾店”サン・コリーズ”~



「すみません、あなたが宝飾店の責任者でしょうか?」

「僕達、帝都庁から盗難報告について話を聞いてきたんですけど……」

「え、ええ……私がここの店長ですわ。ということは、皆さんがトールズ士官学院の……」

リィンとエリオットに話しかけられた宝飾店の店長は恐る恐る尋ね

「はい、特科クラス”Ⅶ組”、A班の者です。」

「ああ、よかった――!これでうまくいけば、”紅蓮の小冠”も―――」

マキアスが名乗ると店長は明るい表情をした。



「”紅蓮の小冠”……それが被害に遭った品の名か。」

「ええ、嵌められた最大級の紅耀石(カーネリア)が見る者の心を奪う―――今回の展示の目玉も目玉―――その価値は1億ミラとも言われる国宝級のティアラですわ!」

「い、一億ミラ………」

「それはとてつもない被害ね。」

「あれって、そんなにしたんだね。」

ラウラの質問に興奮した様子で答えた店長の話を聞いたエリオットは驚き、レンとフィーは目を丸くした。



「あ、ああ……正直想像もつかない額だな。だがまさか、盗まれてしまうなんて……」

「ですが、一体どうやって?確か、今回の展示に合わせて最新鋭の導力防犯システムを搭載したと聞いたのですが……」

「ううっ……それは(ひとえ)に私どもの不手際が招いた結果ですわ。防犯システムには何の不備もございませんでしたが……かの”怪盗B”にまんまと上を行かれてしまいまして。」

「”怪盗B”って、あの――――」

「噂はあったが、まさか本当に現れるなんて……」

店長の話を聞いたエリオットは目を丸くし、マキアスは驚き

(うふふ、クロスベルに続いて帝国にも現れるなんて、言葉通り”神出鬼没”ね♪)

レンは小悪魔な笑みを浮かべていた。



「”怪盗B”……どこかで聞いたことがあるような……」

「エリオットとマキアスは知ってるんだ?」

リィンが考え込んでいる中、フィーは犯人に心当たりがあるエリオットとマキアスに尋ねた。

「う、うん……帝都では結構名の知れた盗賊だからね。」

「確か……『美の解放活動』だったか。数年前、自らの盗賊行為にそのような名前を付けて、世間を騒がせたこともあったな。その手口は大胆かつ華麗で、一部に熱狂的なファンすら存在するそうだ。」

「そうか、思い出した―――確か帝国軍から、導力戦車すら盗み出したとんでもない盗賊だよな。」

「うん、その話は有名だよね。」

「ふむ、それなら私も噂程度に聞いた事があるな。」

「導力戦車を泥棒……一体どうやったんだろ。ちなみに、今回はどうやって盗まれたの?」

「怪盗Bは、いつも事前に犯行予告を記したカードを送りつけることで有名ですが……やはり今回も送られてきたのでしょうか?」

犯人の手口が気になったフィーとマキアスはそれぞれ質問した。



「ええ、お察しの通りです。そして―――カードにはこう書かれておりました。『既にティアラは、ダミーと交換させてもらった』と。ですが……それこそが怪盗Bの仕掛けた罠だったのです。防犯設備を信頼してはいたものの、相手はなにせ、あの”怪盗B”……念のため、中を確認しようとケースを開けた瞬間……まさにそこを突かれてしまいまして。」

「なるほどね。と言う事はその時に盗まれちゃったのね。」

「ええ……お恥ずかしながら。」

「なんという……」

レンの指摘に頷いた店長の話を聞いたマキアスは信じられない表情をした。

「ちなみに、犯人の顔は確認できなかったのだろうか?」

「ええ、その瞬間、店内の照明が全て落とされてしまいましたので。再び明かりが点いた時にはもう……ティアラはどこにもありませんでした。」

「そ、そうでしたか。」

「怪盗B……只者じゃないね。」

(まあ、そんなドジをするようなら、”執行者”としてやっていけないでしょうしねぇ。)

怪盗Bを警戒するフィーの言葉を聞いたレンは苦笑していた。

「ちなみに……俺達に依頼があったのはどういう経緯なんでしょうか?」

「ええ、これを見てくださいまし。」

リィンに尋ねられた店長はリィンに一枚の”B”が記されたカードを渡し、リィン達はカードの裏側に書かれてある内容を読んだ。





サン・コリーズの店長殿へ。



”紅蓮の小冠”―――――確かに頂戴した。



ただし、次の条件を満たせば無事にお返しすることを約束しよう。―――これは取り引きだ。



一、事件を鉄道憲兵隊には報せぬこと。



二、同封したもう一つのカードを、トールズ士官学院、特科クラス・Ⅶ組A班に渡すこと。



三、Ⅶ組A班のメンバーがカードに書かれた我が試練に打ち克つこと。



――怪盗B



「こ、これは……」

「面白がられているようで何とも複雑な気分だが……」

カードの内容を読み終えたマキアスは驚き、ラウラは複雑そうな表情をし

「うふふ、お兄さん達、凄いわね♪世間でも有名なあの怪盗Bに目を付けられているのだから♪」

「う、うーん……」

「そ、そんな事を言われても正直困るよね……?」

からかいの表情で呟いたレンの言葉を聞いたリィンとエリオットはそれぞれ困った表情をした。



「でもこれって……僕達の行動次第でティアラを返してくれるってことだよね。」

「確かに、そう取れるね。」

カードの内容から手練れの盗賊が盗んだ品を返してくれることに気付いたエリオットの推測にフィーは頷き

「ちなみに、このもう一つのカードというのは?」

「ええ、お渡ししておきますわね。」

リィンに尋ねられた店長はカードを渡し、リィン達はカードの裏側に書かれてある内容を読んだ。



トールズ士官学院、特科クラス・Ⅶ組A班へ。



宝に至らんとするならば、我が挑戦に応えよ。



鍵は全て緋色の都にあり。始まりの鍵は……『獅子の心を持つ覇者。その足元を見よ。』



「これは……謎かけというやつか。」

「緋色の都……もちろん帝都のことだよね。それと『獅子の心を持つ覇者。その足元を見よ。』か。」

「この言葉をヒントに街で宝探しをしろってことかな。」

「うん、おそらくそうなのだろう。」

「うふふ、盗まれた宝冠の価値を考えたら言葉通り本当の”宝探し”ね♪」

カードの内容を読んだマキアス達がそれぞれ考え込んでいる中レンはからかいの表情で呟いた。

「あの、それで皆さん……協力していただけますでしょうか?」

「ええ、もちろんです。」

「ああ、ここまで挑発されて黙ってなんかいられないしな。」

「よし、ではさっそく向かうとしようか。」

「ありがとうございます!――どうかよろしくお願いします!」

そしてリィン達は”紅蓮の小冠”を取り戻す為に怪盗Bによる謎かけの解読を開始し、怪盗Bによる謎かけを解読して順番に様々な所を回っていたリィン達は、次の謎かけのカードがあると思われる場所に向かった。



~マーテル公園・クリスタルガーデン~



「『光透ける箱庭の中』……ここで間違いないよね。」

「うん、まさにこのクリスタルガーデンを指しているんじゃないかな。」

「そして『北東の座』―――座は椅子を示す言葉でもあるから……」

「となると、北東に設置されたこのベンチが怪しくなるか。」

(うふふ、謎解きの回数を考えるとそろそろ見つかるでしょうね。)

「あれは――――」

逸早くカードを見つけたリィンはベンチに張り付けられてあるカードを取った。

「当たりだね。」

「次はなんて書いてあるの?」

「ああ、えっと……」

フィーに促されたリィンはカードの裏側に書かれてある文面を読んだ。





第三の鍵は……『かつて都の東を支えた籠手たち。彼らが憩いし円卓に』



「ふぅん?」

「ふぅ、またわかりにくい表現だな……」

「うん、でも頑張って探さないとね。」

内容を知ったレンは意味ありげな笑みを浮かべ、マキアスは溜息を吐き、エリオットは呟いた。

「フフ……諸君、また会ったね。」

「この声は……」

するとその時リィン達にとって聞き覚えのある声が聞こえ、声を聞いたリィンは目を丸くしがした方向へと振り向くとそこにはかつての”特別実習”で出会った事があるバリアハートで出会った貴族――――ブルブラン男爵がいた。

「えっと、誰だっけ。ブル……なんとか。」

「ブルブラン男爵、ですね。」

「ああ……バリアハートの実習以来ですか。」

「フフ、未だに覚えていてくれて何よりだ。もっとも、そこの3人はお初にお目にかかるがね。」

ブルブラン男爵は大げさに頭を下げて挨拶をした後エリオットやラウラ、レンに視線を向けた。



「え、えっと……はじめまして。」

「うふふ、確かにおじさんとこうして”顔を合わせて話す”のは初めてね?」

「ふむ、軽く話にこそ聞いてはいたが……」

「今回も……”美”との出会いを探しているんですか?」

「まあ、そのようなものさ。だがバリアハートに続き、この(あか)の帝都でも君達に会えるとは……これを運命と言わずして、何と言うべきだろうか?」

リィンの問いかけに頷いたブルブラン男爵は笑顔を浮かべてリィン達を見つめ、ブルブラン男爵の発言にリィン達は冷や汗をかいて呆れた。



「それは知りませんが……」

(あはは……何というか変わった人だね。)

(ああ、それもかなりな。それにしても、気配をまったく感じなかったが……)

「フフ、私の顔に何かついているかね?それともまさか―――見とれていたのかな?」

真剣な表情のリィンに見つめられたブルブラン男爵は静かな笑みを浮かべた。

「そんなわけがありませんから……」

「フフ、まあいい。今日は私も少々忙しいので、この辺で失礼させてもらおう。それでは――――諸君らの健闘を祈らせてもらう。」

そしてブルブラン男爵はリィン達から去って行った。



「……行ったみたいだね。」

「ふむ、あの男性は一体我らに何を言いたかったのだ?」

「さあ……何だろうな。(ブルブラン男爵、か……)」

(クスクス♪)

ラウラの疑問を聞いたリィンは考え込み、レンは小悪魔な笑みを浮かべていた。その後怪盗Bの謎かけの解読をしていったリィン達はついに”紅蓮の小冠”があると思われる場所である導力トラムに向かい、運転手に事情を説明して中を調べると”紅蓮の小冠”が入っていると思われるトランクが置いてあった。



~導力トラム内~



「どうやら、このトランクが『黒き匣』みたいだな。」

「しかしまた……あからさまに置かれてあるな。」

「なのに、運転士さんが気付いていなかったってことは……」

「ちょっと前に、怪盗Bが置いていったってこと?」

「問題はトランクの中にちゃんと”紅蓮の小冠”があるかどうかね♪」

「さて、どうだろうな。……とにかく、中を確認しよう。」

マキアス達がそれぞれ話し合っている中、リィンがトランクを開けると紅耀石の眩しいティアラが入っていた。



「あった、これで間違いないね。」

「”紅蓮の小冠”……まるで燃えるような輝きだな。」

「ええ、まさにその名を示す冠ね。」

”紅蓮の小冠”を確認したフィーは頷き、ラウラとレンは”紅蓮の小冠”に見惚れ

「こ、これが1億ミラ……」

「そ、そう考えるとやたら緊張するな。」

高級品を間近で見た事によってエリオットとマキアスは緊張した。

「あ、ああ……とにかくこれは無事に届けよう。」

そしてリィンは”紅蓮の小冠”をトランクに仕舞い直した後、トランクを持って導力トラムを出て運転士に見つかった事を説明した。



「そうか、本当にティアラが置かれてあったんだね。ということは、最後に降りたお客さんが怪盗Bだったのかなぁ……特に変わった人を乗せた覚えはないんだけど……」

「そうですか……では心当たりはないんですね。」

「だが痕跡がここまで見えぬとは……怪盗B、恐るべしだな。」

「うん……まあでもティアラが返ってきただけでもよかったんじゃないかな。」

「………………」

「どうしたの、リィン?」

”紅蓮の小冠”を取り返した事にクラスメイト達がそれぞれ安堵している中運転士をジッと見つめるリィンの様子に気付いたフィーは不思議そうな表情をし

「ど、どうしてそんなに私を見るんだい?」

(うふふ、もしかして”気づいた”のかしら♪)

運転士は焦った様子で尋ね、その様子をレンは面白そうに見守っていた。



「ええ、茶番はこの辺りでお仕舞いにしようと思いまして。ブルブラン男爵―――いや、怪盗B!」

「なんだって……!?」

「ふむ……」

「まさか……!?」

そしてリィンが運転士を睨んで宣言し、リィンの宣言を聞いたマキアス達が驚いたその時

「フフ、フフフフ……ハハ、ハーハッハッハッハ!」

なんと運転士が高笑いをして指を鳴らすと運転士の姿は一瞬で仮面をつけた紳士――――”結社”の執行者の一人である”怪盗紳士”ブルブランへと変わった!

「これだから……これだから青い果実はたまらない。」

「さっきの男爵……?それに、その仮面って……」

「間違いない。怪盗Bの仮面だ……!」

「改めて―――”怪盗B”こと『怪盗紳士ブルブラン』という。ブルブラン男爵は、あくまで仮初の姿に過ぎない。ちなみに……いつから見破っていた?」

エリオットとマキアスが驚いている中ブルブランは大げさに頭を下げて会釈をした後興味ありげな表情でリィンを見つめた。



「見破るもなにも……わざわざクリスタルガーデンで姿を現したくらいだ。あなた自身、本気で正体を隠そうとしていなかっただろう。変装に関しては、見事としか言いようがないけど……これまでの行動パターンを考えるとこの辺りでもう一度、様子を見に来るんじゃないかと思ってね。」

「フフ、なるほど―――いい読みだ。」

(クスクス、ロイドお兄さんといい、この鋭さが恋愛方面に発揮されないのが不思議なくらいね♪)

リィンの説明を聞いたブルブランは感心し、レンはからかいの表情になった。

「でも、一体どうしてこんなことを……」

「フッ、知りたいかね?」

エリオットの疑問を聞いたブルブランは髪をかきあげて問いかけたが

「いや―――これ以上、ここであなたと話すつもりはない。」

「とりあえず泥棒は泥棒。」

「ああ、我らから逃げられると思わぬことだ。」

「うふふ、そう言えば貴方とは直接剣を交えた事はなかったわね♪」

リィン達はブルブランを拘束するつもりでそれぞれ身構えた。



「フフ、威勢のよいことだ。」

リィン達の様子を見たブルブランが静かな笑みを浮かべたその時ブルブランはまるで瞬間移動をしたかのようにその場から消えて、別の場所に現れた!

「な!?」

「今のは………一体どうやって。」

「フフ、ちょっとした隠し芸のようなものだ。とにかく、此度はもう存分に愉しませてもらった。諸君らの活躍、これからも期待している。――――どうか次なる邂逅を楽しみにしてくれたまえ!」

そしてブルブランはリィン達に恭しく頭を下げた後その場から消えた!

「また……」

「くっ……妙な術を使う。」

「もしかするとまだ近くに……とりあえず探してみよう。」

その後、リィン達は怪盗Bの行方を追う見つかることはなく―――事件のあらましを帝都内に伝えた上で、宝飾店に報告を行うのだった。



~ガルニエ地区・宝飾店”サン・コリーズ”~



「ああ―――皆さんのおかげで無事にティアラが返ってきましたわ!本当に―――なんとお礼を言ってよいのやら!」

リィン達に”紅蓮の小冠”を返却された店長は嬉しそうな表情で頭を下げた後リィン達を見つめた。

「うーん、怪盗Bの言い分によると俺達のせいでご迷惑をかけたという気もしますが……」

「いえ―――そんな事はありませんわ。だって、怪盗Bのすることは元々そのほとんどが意味不明……きっと、最後に都合よく皆さんのせいにしたんだと思いますわよ。」

(あの執着ぶりを考えると、それはなさそうだが……)

(ま、あえて否定しなくても。)

(ああ……これ以上混乱させることもないからな。)

(クスクス♪)

店長の言葉を聞いたマキアス達がそれぞれ小声で話し合っている中、その様子をレンは面白そうに見守っていた。

「とりあえず―――大したものではありませんけどほんの気持ちですわ。どうぞ、受け取ってくださいまし。」

そして店長はリィン達に大量の7属性のセピスを渡した。



「これはセピス……十分、大したものだと思いますけど……」

「ふふ、そこはこの宝飾店―――そのような欠片でしたら、いくらでも余っていますので。」

「あはは、なるほど……どうもありがとうございます。」

「ふふ、どういたしまして。こちらこそ、本当に救われましたわ。」

その後リィン達は宝飾店を出て広場でブルブランとの邂逅について話合いを始めた。



~ドライケルス広場~



「ふう……さすがに疲れたな。”怪盗B”……ふざけた輩がいたものだ。」

「ドヤ顔で見てたかと思うとちょっとむかつく。」

ラウラの言葉にフィーはジト目で頷き

「うーん、帝都では結構知られている名前なんだけど……」

「前々から胡散臭いとは思っていたがここまで悪ふざけが過ぎるとはな……」

「………………」

「あら、リィンお兄さん、どうしたのかしら?」

エリオットとマキアスが話し合っている中、真剣な表情で考え込んでいるリィンが気になったレンがリィンに声をかけた。



「いや……考えてみたら凄まじいほどの技術だと思ってさ。あんな大仕掛けに変装まで……常識外れの能力を持つのは確かだ。それこそ武術における”達人”と言っていいくらいの。」

「それは……」

「……確かに。」

(へえ?)

リィンの推測にラウラとフィーが真剣な表情で頷いている中、レンは興味ありげな表情でリィンを見つめていた。

「そんな人間が、どうして僕らにちょっかいをかけてきたのかな……?」

「しかもB班ではなく、僕達A班を名指しでか。……うーん。さっぱり訳がわからないぞ。」

ブルブランの意図にエリオットとマキアスが考え込んでいるとリィンのARCUSの音が鳴り始めた。



「おっと……」

「なんだ、また父さんか?」

自分のARCUSに通信が来た事に気付いたリィンは通信を開始し、その様子を見ていたマキアスは首を傾げた。

「はい、こちら士官学院Ⅶ組、リィン・シュバルツァーです。」

「ハロハロー。頑張ってるみたいじゃない。」

「その声は……サラ教官ですか。」

「ビンゴ、当たり。これも愛の為せる業ね♪」

「信頼と感謝はありますけど愛はありませんが……―――珍しいですね。実習中に連絡するなんて。何かありましたか?」

「うん、レンを除いて君達全員に行ってほしい場所があってね。実習課題が片付いてからでいいから”サンクト地区”に行って欲しいのよ。」

「”サンクト地区”……”ヘイムダル大聖堂”や大使館がある場所でしたよね。(エリゼが通う女学院もたしかそこにあったはずだ……)」

「ええ、そこにある”聖アストライア女学院”の前に夕方5時過ぎに行ってちょうだい。B班の方にも伝えてあるから。それとレンに用事があるから、夕方5時過ぎにヘイムダル中央駅の出入り口に向かうように伝えておいて。」

「ええっ……!?」

「知事閣下の許可も頂いているから遠慮なく楽しんできていらっしゃい。それじゃあヨ・ロ・シ・ク♪」

「ちょ、ちょっと教官――――」

そして通信相手であるサラ教官は一方的に通信を切った。



「くっ……」

「な、何だったの……?」

「どうやらサラ教官が無茶振りをしてきたみたいだが……」

「ああ、よくわからないけど……」

リィンは仲間達にサラ教官から指示された内容を説明した。

「”アストライア女学院”……!」

「君の妹も通っているという、貴族子女の女学校か……」

「ふむ、私の知り合いも何人か通っているが……我ら全員で行けというのはさすがに解せないな。」

「女学院……ちょっと興味があるかも。でも、何でレンだけ別行動なんだろうね?」

「さあ?そんなのレンが聞きたいくらいよ。」

「ま、まあ何かあるんだろう。そろそろ夕方だし……用事を済ませたら行ってみよう。」

その後用事を済ませたリィン達は駅に向かうレンと一旦別れた後導力トラムに乗って、”サンクト地区”に向かった―――――


 
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