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IS~夢を追い求める者~

作者:かやちゃ
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第2章:異分子の排除
  第32話「桜VS簪&本音」

 
前書き
トーナメント戦です。
まずは桜と主従コンビ。...ちょっとのほほんさんが魔改造されてる? 

 






       =桜side=





「いやぁ、間に合った間に合った。」

「...ギリギリですね。」

  トーナメント前日。ようやく俺は“ヤル事”を一段落着くまで終わらせてきた。
  ギリギリだけど、整備くらいはできるだろう。

「秋十君、ペアの方はどうだ?」

「そうですねー...やっぱり自分は才能ない方なんだなって思うぐらいには伸びがいいですよ。」

「ほう...そりゃ、楽しみだな。」

  曰く、既に“風を宿す”事ができるらしい。
  接近戦に持ち込まれた時のためにと教えたらしいが、習得は確かに早い。

「普段は真面目だからか、射撃も正確でしたよ。」

「おまけに連携もしっかり練習した...か。」

  案外、このトーナメントでは鷹月がジョーカーになるかもな。
  まぁ、負けるつもりなんて毛頭ないが。

「連携と言えば、一番注意すべきは本音か...。」

「簪のペアですか?...確かにそうですね。」

  あの二人は従者であり、親友だ。互いの事はよく知っているだろう。
  おまけに、本音はのほほんとしているが結構やり手だ。

「ま、目の前の相手に集中するだけでいいさ。」

「...そうですね。俺にはそれがぴったりです。」

  さーて、パパッと整備を済ませておきますか。









「....しっかし、一回戦から飛ばすなぁ...。」

  そして翌日。各地からお偉いさんが集まるトーナメントが開始される。
  表示される表を見て、思わず俺はそう呟いていた。

「専用機持ち同士がぶつかりまくってますね。」

「まぁ、専用機持ち同士で潰しあわなきゃ、他の人の士気にも関わるからな。」

  他にも、専用機持ち同士の戦いは色々と見所があるしな。
  戦いの派手さもあるが、後々の動きの勉強にもなる。
  ちなみに、この組み合わせは後から確かめたが正真正銘偶然だったみたいだ。

「で...俺は簪ちゃんと本音のペアか。」

「やっぱり1対2って異色を放ってますね。」

  連携において注意するべき相手がいきなり当たるとは...。

「んじゃ、適当に会社の広告塔になってくるわ。」

「あ、そういえばそういうのも兼ねてましたね。このトーナメント。」

  ...忘れてたのか秋十君...。







「あ~一回戦からさくさくとか~。」

「手強い...けど、負けるつもりはない。」

「おっし、そうこなくちゃ。」

  試合開始前、簪ちゃんと本音とそんな会話をする。
  ...何気に“貧乏くじ引いた”って顔してるのは気のせいか?

「(...専用機でもない本音がどう動くかがわからないな...。)」

  簪ちゃんはこの前の模擬戦を見たから大体わかるが、本音は全く分からない。
  どう出るか思考している内に、試合が始まった。

「っ....!」

「(手始めに簪ちゃんか!本音はどう出る!?)」

  始まった瞬間、勢いよく簪ちゃんが薙刀を振るってくる。
  それを防ぎ、本音の方を見ようとして...。

「っ!?」

     ギィイイン!!

「防がれたよっ!」

「分かっ..てる...!」

  ISでなければ死角となる角度から本音が切り付けてくる。
  それを咄嗟に防ぐと、簪ちゃんが間合いを離しながらライフルで撃ってくる。

「行かせないよ~!」

「何ともまぁ...シンプルで厄介な!」

  流石と言うべき連携の良さ。
  簪ちゃんは適格に射撃してくるし、本音はそれを邪魔しないように喰らいついてくる。
  普通ならどちらかに集中した途端やられるだろう。

「(“普通”...ならな!)」

     ガガガガァン!!

「っ....!?」

  射撃を展開したライフルで相殺し、本音の攻撃はブレードで防ぐ。

「嘘ぉ....!?」

「ほらよっと!」

「っ....!」

  驚く本音に、簪ちゃんの射撃を逸らして当てようとする。
  ...が、咄嗟に躱される。

「人間業じゃないよ~...!」

「そりゃ、IS使ってるからな。」

  ブレードはブレードで、射撃は射撃でそれぞれ相殺する。
  確かに、1対2でそれを成し遂げていたら人間業とは思えないだろう。俺も生身は無理だ。

「でも~、かんちゃんも私も甘く見ないでね~?」

「ん...?っ!」

  瞬間、本音の動きが滑らかな動きから鋭い動きへと変わる。
  簪ちゃんの方も、相殺されると分かったからか、射撃を躱す。

     ギギギギギィイン!!

「っっ...!普段からは考えられない動きだな...!」

「私ばっかりに構っていいの~?」

「シッ!!」

  翻弄するかのような動きで俺と剣戟を繰り広げる本音。
  そして、射撃を躱しながら接近し、薙刀で一閃してくる簪ちゃん。
  本音の攻撃はブレードで防ぎ、簪ちゃんの方はライフルを犠牲に防ぐ。

「っと!安心しろ。どっちもちゃんと見ている!」

  挟み撃ちにされ、一時的とはいえ武器はブレード一本のみ。
  すかさず俺は上に飛び上がり、グレネードをばら撒く。

「(“水を宿す”動きは厄介...だから、先に簪ちゃんを...!)」

  グレネードの爆発をバラバラに避けた二人の内、簪ちゃんの方に狙いを定める。
  “風を宿し”、一瞬で間合いを詰める。

「っ、来た...!」

「さぁ、どこまで耐えられるかな!?」

  簪ちゃんはバランス型だ。だから、近距離遠距離のどちらかに偏った相手とは、その分野では敵わない。その代わり、一応どちらにも対処できるという感じだ。
  ...俺?俺はバランスブレイカーって所か。所謂チートキャラみたいな。

  ...とまぁ、そんな簪ちゃん相手に、俺は近接戦で追い詰める。

「っ...!くっ....!」

「(“水を宿す”動きはまだまだだけど、使えないなりにアレンジしている...!空中にいられると、仕留めづらい...!)」

  しかし、空中戦なのと、ISの機能性を利用して俺の猛攻を耐え凌ぐ。
  俺はまだ“風を宿す”動きしかしていないので、どんな攻撃でも直撃はしないのだ。

「はぁっ!」

「っ、く、ぅ....!!」

  また一閃繰り出すと、なぜか簪ちゃんは正面から受け止めた。
  せっかく直撃は避けていたのに、なぜまともに受けたのか。
  その答えを頭に導き出すと同時に、ISから警告される。

     ギィン!ギィイイン!!

「そういう...事か。」

「普通に防がれたよ~。」

  鍔迫り合っていると、右下からブレードが飛んでくる。
  それを咄嗟に弾き落とすと、それに追従するように本音がブレードを振るってくる。
  それもブレードで防ぐが、簪ちゃんに対して無防備になる。

「そこっ!」

「甘い!」

     ギィイイン!

  ...だが、それはブレード一本での話だ。
  振るわれた一閃を、もう一つ展開したブレードで防ぐ。

「っ.....!」

「(...不用意に動くと本音がどう動くかわからないな。)」

  まだ本音の全ての動きを把握した訳ではない。
  意表を突くような動きばかりなので、不用意に動けばどうなるかわからない。

「....本音!」

「任せて!」

「...おいおい...。」

  そこで、簪ちゃんが動く。
  薙刀で俺のブレードを抑えたまま、ミサイルを放ってくる。
  こんな近距離で放てば、自分はもちろん、本音も巻き込むはずだが...。

     ギィン!ギギィイン!!

「行かせないよ!」

「(確実にダメージを与える選択をしてきやがったか...!)」

  俺は離脱しようとするが、それを本音が逃がさないように押さえつけてくる。
  自身を犠牲に、ミサイルを直撃させる気だ...!









       =out side=







     ドォオオオン!!

「...桜さんに、一撃を入れた...?」

「やっぱり連携上手いなぁ...。」

  アリーナに響く爆発音に、試合を見ていた秋十とマドカはそう呟く。

「でも、桜さんまだまだ力を出してないっぽいね。」

「そういえば、まだ“風”しか使ってないな。」

  そう。桜はまだまだ力を出していない。
  しかし、同時にもうすぐ力を出すだろうと、二人は思った。

「...あれ?ユーリは?」

「ユーリならペアの子と一緒にいるよ。秋兄も行って来たら?」

「...そうだな。試合も近いし、行ってくる。」

  トーナメント初戦で躓く訳にはいかないと、秋十はペアの下へと行く。

「私は...後の方だから今はいいか。」

  残されたマドカは、もう少し試合を見ておくようだ。







「....っと...!」

  爆風から桜が飛び出す。
  SEは確かに削られたが、まだまだ戦えるようだ。

「(...互いを信じあっているからこそ、できる行動か...。)」

「はぁっ!」

「っ!」

  ふと、先ほどの攻撃について考えると、そこへ簪が攻撃を繰り出す。
  それを桜はブレードで防ぐと、簪は上を通るように回り込みながらさらに攻撃する。
  もちろん、桜は背後を取られまいと動くが...。

「それ~っ!」

「くっ!」

  その簪の後ろから同じように迫ってきていた本音に阻まれる。

「...やっぱり、爆風を利用してダメージを減らしていたか...!」

「さくさくの後ろにいたからね~。」

  本音が爆風を受ける時、爆風と本音の間には桜がいた。
  なので、爆風を受けるのに一瞬のタイムラグがあり、その時に爆風を利用して大きく離れる体勢を取り、爆発に巻き込まれるのを防いだのだ。
  ちなみに、桜は“水を宿す”事で爆発を一部切り裂き、ダメージを抑えた。

「さて....。」

  今桜が展開している武装はブレード二本。
  そのブレードで左右からの攻撃を防いでいる所だ。
  だが、それも一瞬。二人は一斉に連撃を放ってくる。
  そこで、桜が打った手は....!

「いっくよ~!」

「は、ぁあっ!!」

     ギギギギギギギィイン!!

「っっ...!全部、防がれた...!?」

「...“動きに風を宿し、身に土を宿す”...さぁ、所謂第二形態だ。来い。」

  今までは“風を宿す”だけだったが、鋼の如き力と防御力を発揮する“土”も宿して、桜は二人の攻撃を全て受け止める。

「っ...まだ、その先を行く!!」

「あまり見せびらかしたくないんだけどね~。」

  一度間合いを離し、再度二人は攻撃を仕掛ける。
  簪は薙刀のリーチを生かし、柄なども利用した攻撃。
  本音は、家系が家系だからか、やはり性格にそぐわない鋭さを持った連撃だ。

     ガ、ギィイン!

「射撃は下手だけど、この距離ならどうかな~?」

「っ...!ちっ!」

  そして、ブレードを一瞬抑えた瞬間に懐に入り込み、展開したライフルを撃たれる。

「(ここまでできる奴が身近にいたとはな...!)」

  その手際のいい動きに、桜は戦慄する。

「くっ...!」

  簪を弾き、すぐさまその場を飛び退く事でライフルを躱す。

「本気を出さないその油断が...命取り!」

「っ、ほう....!」

  躱した所へ簪が“風を宿し”て切りかかってくる。

「(“水”は相性がいいから少し違うとはいえ扱えたが、“風”も扱えるか...!)」

  高速な動きを見て、桜はそう思う。
  同時に、少し厄介だとも思い、それがさらに闘争心を昂らせる。

「シッ!」

「っ、はぁっ!」

  ブレードを振るうが、それは木の葉のようにするりと躱される。
  そのまま反撃の一閃が迫り、上体を反らして回避する。

「ふっ...!」

「っ...!」

  そのまま一回転し、ライフルを展開して撃つ。
  ライフルが見えた瞬間行動を起こしていたのか、それは躱される。

「(そのまま高速で旋回して再度攻撃してくるだろうけど...。そっちに気を取られる訳にはいかない...か!)」

「そ~れっ!」

     ギィン!ギギギィイン!

  またもやブレードが飛んできて、それに追従するように本音が迫る。
  今度は短剣で攻撃だったが...どうやらこちらの方が使い慣れているらしい。

「はぁああっ...!!」

「っ....!」

  さらにそこへ、簪の攻撃が加わる。
  早いうえに防御をすり抜けようとする攻撃に、さすがに桜も焦る。
  ...尤も、それは“ダメージが入るか否か”の範囲内でだが。

「くっ....!」

「させない!」

  咄嗟に間合いを離そうとする桜に対し、簪が薙刀のリーチを利用して妨害する。

「(元より“風”と“土”じゃあ、“風”と“水”とは相性が悪い...か!)」

  風の如き速さを出し、大地の如き剛力と防御力を出す“風”と“土”だが、同じ“風”の力と、その気になれば炎なども切り裂け、防御を貫く“水”とは相性が悪かった。

  おまけに、“水”は相手の動きに合わせて攻撃を回避する事も可能だ。
  まだ完全に扱えないとはいえ、簪が有利になるのも無理はなかった。

「(それに...!)」

「それ~っ!」

  雰囲気にそぐわない、鋭い攻撃を本音は繰り出す。
  それも、桜を焦らせる要因だった。

「せぁっ!!」

「っ.....!!」

     バ、ギィイイン!!

  “水”を宿した、鋭い一閃。
  それを桜はまともに防いでしまい、ブレードが折れる。

「ぐっ....!」

「はぁあっ!」

  ブレードが使い物にならなくなり、本音の攻撃を防いでいたブレードを盾にする。
  またもやブレードが使い物にならなくなるが、なんとか直撃を避ける。

「(...見事...なら、()を見せようか....!)」

  無理矢理簪の攻撃を防ぎ、間合いを離した桜は薄く笑う。

「好機....!」

「っ...かんちゃん!!」

「なっ....!」

  武器を二つ破壊し、簪は追い打ちをかけようとして、本音が叫ぶ。
  ...瞬間、簪の攻撃は回避され、後ろに回り込まれていた。

「...一対一ではないとはいえ、身近な者以外でここまでやるのは称賛に価するよ。...よって、俺も力を出そう。」

「っ....!」

  “力を出す”。そう言った桜から簪は慌てて距離を取る。

「今の俺のISの武装は、至ってシンプルだ。予備こそ多いが、ブレード、ハンドガン、アサルトライフル、グレネードと、なんの変哲もない武装しかない。」

「代表決定戦で使った武装は~?」

「使う気はないな。」

  本音の言う武装とは、セシリアのBT兵器を再現した武装の事だ。

「舐められたもの....!」

「...代わりに、純粋な戦闘技術でやってやるよ。」

  武装を出し惜しみする。そう言われた簪はその言葉を撤回させようと意気込む。
  しかし、桜が続きの言葉を言い終わった瞬間、その意気は破られた。

「えっ...きゃあっ!?」

「かんちゃn....あうっ!?」

  避ける間もなく、桜は二人を斬る。
  二人とも咄嗟に反撃していたのだが、それすら水のように躱された。

「“風”と“水”の真髄...見せてやろう。ここからは一撃も貰わない。」

「っ....!」

  空気が変わったのを簪は感じ取り、戦慄する。
  ...確信してしまったのだ。“攻撃が当てれそうにない”と。

「でも...諦めない....!」

「やぁっ!」

  それでも一矢報いてやろうと、簪は奮い立つ。
  それと同時に本音が桜に攻撃を仕掛ける。

「.........。」

「っ、え....!?」

「本音!」

  しかし、それは紙一重で回避され、逆袈裟切りでブレードが断ち切られる。
  まるで豆腐のように切られ、一瞬とはいえ本音は硬直してしまう。
  そんな隙を桜が逃すはずがないので、すぐさま簪がフォローに入る。

「仮初の“水”では...防げん!」

「っ、くっ....!!」

     キィイイン!!

  リーチを利用して切りかかるが、回避され、反撃を喰らいそうになる。
  それを、ギリギリ薙刀の柄で受け止める。

「此れは流水を断ち切る一太刀...。」

   ―――“明鏡止水”

  刹那、その状態から桜は横に逸れるように動き、そこで一閃を放つ。

「っ―――!?ぁああああっ!?」

  一撃。たった一撃で簪の薙刀は断ち切られ、SEが半分以上削られた。
  ...絶対防御発動によって普通よりも大きく削られたのだ。
  裏を返せば、絶対防御がなければ簪は両断されていたという事だ。
  絶対防御があるからこそ、桜はこの攻撃を放ったとも言える。

「(...一撃限りだな。次放つと簪ちゃんが死んでしまう。)」

  さすがに、桜も封印指定にするほどだったらしい。

「はぁっ!」

「......。」

  背後から予備のブレードを展開した本音が斬りかかる。
  しかし、それを桜は羽毛のようにするりと避けてしまう。

「くっ....!」

「甘い。」

  本音の攻撃に加え、簪がライフルで攻撃する。
  しかし、それさえも桜は避ける。全てが見えているかの如く。

「(武器を一撃で断ち切るだけでなく、そのうえさらにSEを半分以上削る...。おまけに私たちの攻撃は一切当たらない...。これが“水”の真髄、桜さんの実力...!)」

  あまりの実力差に、簪は愕然とする。
  ...しかし、だからこそ自身の全力を出し切れる。

「(私には、私なりの戦い方が...ある!)」

「...ん...?」

  簪の雰囲気が変わったのを、桜は感じ取る。

「本音!」

「っ、わかったよ!」

  簪は本音の名を呼び、本音は簪の意を汲み取ってライフルを展開する。

  ...ここで一つ、言っておこう。
  本音は本人でも言った通り、射撃が下手だ。それこそ、致命的に。
  つまり、そんな人物が乱射すれば....。

「敵味方お構いなしかよ!?」

「数撃てば当たるんだよ~!」

  簪を巻き込む形で、桜を狙う事になる。
  しかし、それこそ簪の狙い。

「(今持てる技術を使えば、本音の流れ弾は躱せる。おまけに、本音の乱射のおかげで、当たりはしないけど、ある程度は桜さんの動きを制限できる!そこを狙えば...!)」

  元より勝てる気がしない戦い。
  ならばと、簪は全身全霊を以って桜に挑みかかった。

「は、ぁっ!」

「っ!」

  予備のブレードを展開し、弾幕の中を駆け抜けて桜に斬りかかる。
  弾幕を避けていた桜は当然それを避けるが、やはり動きが制限されていた。

「(でも、それは私も同じ。一番の武器は既に斬られた。なら、後は“技”で勝負...!)」

  勝てないなら、勝てないなりに。
  そう思って、自身の扱える“風”と“水”の力を存分に振るう。

「シッ!」

「っ.....。」

  弾幕を避けきれずにSEが少しずつ削られながらも果敢に桜を攻め続ける簪。
  しかし、それでも当たらない。

「まだ、まだっ...!」

「っ、っと。......!」

     キィイイン!

  何度ブレードを振るったのか。
  試合中にも簪の技術は上がり、ようやく桜に防御をさせた。

  ...しかし、それまでだった。

「...やはり。やはりいいな...。こういう、可能性の成長ってのは!!」

「っ...!?なっ...!?」

  音もなくブレードが振るわれる。
  その瞬間、簪のブレードが細切れになり、SEがなくなった。

「かんちゃん!?」

「嘘...!?一瞬....!?」

  SEがなくなり、地面に落ちる。
  まさに一瞬の出来事。その一瞬で桜はブレードのみで簪のSEを削り切ったのだ。

「だが...それは後に取っておこうか。」

「っ....!」

  余所見している暇はない。そう思って桜に向き直る本音。
  だが、既に遅かった。

「(速っ!?全然見えなかった...!?)」

  気が付けば吹き飛ばされ、SEはゼロ。
  ...勝敗はもう決まっていた。

「..........。」

  ...決着は、あまりに呆気ないものだった。









「...終わったか...。」

「こ、ここからでも見えなかったんだけど...。」

  試合待機場所で、秋十と静寐はそういう。

「一瞬...ほんの一瞬とはいえ、桜さんに本気を出させたか...。」

「一人でもあそこまで強いなんて...勝てるかな....?」

  あまりの強さに、静寐は既に戦意喪失しかけていた。

「大丈夫だ。当たるのはまだ先だし、簪と本音もあそこまで善戦した。何とかなるさ。」

「...だといいんだけど...。」

  それでも本気を出したのは一瞬。
  そう考えると、やはり不安は拭えない静寐だった。









「.....一回戦負け...。」

「お、落ち込まないでよかんちゃ~ん...。」

  一方、試合に負けた簪は、相手が相手といえ、一回戦負けした事に落ち込んでいた。

「...山嵐を使う隙を作れなかった...。」

「ん~...さくさくが相手ならむしろ使った方が厳しいと思うよ~?」

「....そうなんだけど、せっかくの武装が...。」

  最大火力を誇る“山嵐”が使えなかった事に暗くなる簪。
  しかし、実際本音の言う通り相性が悪いのでむしろ使わなくて正解だった。

「ほらほら~、次はゆーゆーとあっきーの番だから、気を切り替えようよ~。」

「あ、うん。...よし、じゃあ、行こうか。」

  頬を軽く叩き、気を取り直して観戦する事にした。

「二人のペアは...鷹月さんと...あぁ、彼女になったんだ。」

「知ってる人~?」

  対戦表を見てそう言った簪に、本音が尋ねる。

「同じクラスだから...。それに、彼女は諦め悪いからいい勝負するかも...。」

「へぇ~...かんちゃんみたいだね。」

「...私より凄いと思う。...諦めが悪いというより、不屈?」

「なるほど~。」

  観客席に向かいながら、二人はそんな会話をする。















   ―――表示されている対戦表には、“高町なのは”という名前があった。















 
 

 
後書き
ちなみに本音が使ってるのはラファールです。

....最後にどこぞの白い悪魔が出ていますが、名前だけです。(射撃は上手いけど)
所謂ゲスト出演です。オリキャラを考えるよりはこっちのが楽ですし。 
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