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英雄伝説~光と闇の軌跡~(碧篇)

作者:sorano
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第116話

~鉱山町・マインツ・宿酒場”赤レンガ亭”~



「フフ……………さてと。それじゃあ、あたしもあなた達に同行させてもらおっかな?」

ロイド達の会話の様子を笑いながら見ていたグレイスは口元に笑みを浮かべてロイド達を見回し

「へ……!?」

「いきなり何を……」

グレイスの言葉を聞いたロイドは驚き、ティオはジト目でグレイスを見つめた。

「だって今後の動きの中心はあなた達になりそうだし。ジャーナリストとしてはちょっと見過ごせないわね!」

「いや、でも……」

グレイスの話を聞いたロイドは苦笑し

「うーん、僕は別に構わないけど。マスコミの人間を乗せたらアッバスがうるさいだろうねぇ。」

「キーアも記事にされたら、困るよ……………」

ワジは考え込んだ後口元に笑みを浮かべ、キーアは疲れた表情で言い

「あー、心配しないで。記事にしたいのは山々だけど今はそんな状況じゃないしね。今のあたしは、クロスベル独立国がどうなるかだけが知りたいの。この欺瞞に満ちた新体制が果たして”歴史に選ばれるのか”をね。」

二人の言葉を聞いたグレイスは真剣な表情で言った。



「歴史に選ばれる……?」

グレイスの言葉を聞いたロイドは不思議そうな表情をし

「こう言っちゃなんだけど大陸全土の混乱はかなりのものよ。その一因が、ディーター大統領にあることは否定できないけど……彼が退いたからといって、この危機が乗り越えられるかしら?」

「………それは…………………―――――恐らく局長達――――”六銃士”がクロスベルを支配し、危機を乗り越えると思っています。」

「実際、ヴァイスさん達はメンフィル帝国と既に同盟を結んでいる形ですし………あのメンフィル帝国が味方になれば、恐いものなしかと。」

「IBCで”覇王”も認めていたしな……」

グレイスの言葉を聞いたロイドは複雑そうな表情で考え込んだ後真剣な表情で答え、ティオは静かな表情で言い、ランディは溜息を吐いて言い

「マジ?カーリアンさんがいるのは”ラギール商会”の思惑かと思っていたんだけど………」

二人の答えを聞いたグレイスは信じられない表情をしてエルミナを見つめ

「………ええ。既に我々”六銃士”による革命が成功した際、正式にメンフィルと同盟を結ぶ形となり、新たなクロスベル――――『クロスベル帝国』を建国すると同時にメンフィル軍と共にエレボニア、カルバードの同時侵略の開始を予定しています。」

「………………………」

見つめられたエルミナは静かな表情で答え、ミレイユは複雑そうな表情で黙り込み

「なっ!?」

「既にそこまで具体的な計画もできているなんて…………」

「…………………」

「前代未聞の歴史が創られそうだな………」

「こりゃ、ゼムリア大陸にさらに混乱が訪れるのは確定だね……」

「一体ゼムリアはどうなるのかしらね……」

「………………………」

エルミナの答えを聞いたロイドとティオは驚き、ランディは目を細めて黙り込み、ツァイトは厳しい表情で呟き、ワジとエオリアは真剣な表情で呟き、キーアは辛そうな表情で黙り込み

「なるほどね……………――――だったら、なおさらあたしは確かめたいわ。今後のクロスベルがどんな道を歩むか。そしてその選択が、歴史にどう伝えられるのか。あなた達について行ったらそれが見られる気がするのよね~。」

グレイスは真剣な表情で頷いた後笑顔でロイド達を見つめた。



「……グレイスさん。」

「なんつーか……そこまで考えてたとはねぇ。」

「何だかシリアスすぎて別人みたいですが……」

「あはは、まあ一番の理由は面白そうだからなんだけど。それに通信社の方にパイプは残してあるからね。ひょっとしたら市内の情報なんかも提供できるかもしれないわよ?」

「―――わかりました。俺達は異存ありません。ワジ、キーア。そちらは構わないか?」

そしてグレイスの話を聞き終えたロイドは頷いた後ワジとキーアに尋ね

「キーアは、キーアの事を記事にしないのならいいよー。」

「フフ、僕も構わないよ。まあアッバスを説得するのは一苦労かもしれないけど。」

尋ねられた二人はそれぞれ頷いた。

「サンクス、恩に着るわ!よーし、みんなで気合いを入れてフェーリッツァ賞を狙いましょ!」

「いや、別にグレイスさんの手伝いをするわけじゃ……」

「まあ、グレイスさんですから。」

そして嬉しそうな表情で言ったグレイスの言葉を聞いたロイドは脱力した後苦笑し、ティオはジト目で言った。

「フフ………それじゃあ私も貴方達についていくわ♪」

するとその時カーリアンが口元に笑みを浮かべて意外な提案をし

「へっ!?」

「マジですか……!?」

「なんでまた俺達に……」

申し出を聞いたロイドやティオ、ランディは驚き

「その方が面白いと思っただけよ♪エステル達に出会って以降面白い体験をたくさんさせられたしね~。」

カーリアンは口元に笑みを浮かべて答えた。

「わたし達をエステルさん達と一緒にしないでほしいのですが。」

カーリアンの答えを聞いたティオはジト目で突込み

「ハ、ハハ……―――でも、とても心強いです。これからお願いします、カーリアンさん。」

ロイドは苦笑した後、静かな笑みを浮かべてカーリアンを見つめ

「ええ、よろしくね♪」

見つめられたカーリアンはウインクをした。その後、ロイド達はエルミナ達に密かに協力しているマインツの町長に挨拶した後……今後の段取りを話し合ってから山間部の拠点(ベース)に戻るエルミナ達に別れを告げるのだった。

~マインツ山道~



「それでは、私達はこれで失礼します。」

「はい、今後もよろしくお願いします。」

エルミナの言葉にロイドは頷き、そして警備隊は次々と山間部の中に入って行った。

「ミレイユ!」

その時キーアがミレイユに走って近づき

「?どうしたのかしら、キーアちゃん。」

近づいてきたキーアをミレイユは不思議そうな表情で見つめたその時

「あのね………(未来のランディの奥さんはミレイユだよ♪それとさっきは言わなかったけど、子供もいるよ♪)」

キーアはミレイユに小声で耳打ちをし

「!!!??~~~~~!!??」

耳打ちをされたミレイユは顔を真っ赤にして混乱し

「えへへ………ミレイユが大好きな人へのアプローチ、頑張ってね!そうすればきっと、さっきキーアが教えた通りになるよ♪」

キーアは無邪気な笑顔を浮かべてミレイユを見つめて言った後ロイド達の元に戻り

「…………………」

ミレイユは顔を真っ赤にして固まっていた。

「ミレイユ?どうしたのですか?」

その時ミレイユがついてきていない事に気付いたエルミナが足を止め、ミレイユに近づいて話しかけ

「!!い、いえ!何でもありません!それより私達も急ぎましょう!」

話しかけられたミレイユは我に返って真剣な表情で言い

「?ええ。」

ミレイユの様子をエルミナは不思議そうな表情で見つめながら頷いた後、山間部の中へ入って行った。

「キー坊?ミレイユに何を言ったんだ?」

一方戻ってきたキーアにランディは不思議そうな表情をし

「えへへー、秘密だよ♪」

キーアは無邪気な笑顔を浮かべて答え

(もしかしてまた、未来を遠回しに教えたんじゃないですか……?)

(あ、ありえそうだな………)

ティオはジト目でキーアを見つめ、ロイドは苦笑しながら頷いた。



~メルカバ玖号機・ブリッジ~



「うっわ~………ホント、すごい飛行艇ねぇ!まさか七耀教会がこんな船を持ってたなんて!」

「一体いつから持っていたのかしらねえ?」

「さあ?わりと昔からあるらしいけど、詳しい事は忘れたよ。そんな下らない事を覚えるの、面倒だったし。」

”メルカバ”のブリッジまで来たグレイスは興味深そうな表情をし、カーリアンは口元に笑みを浮かべてワジを見つめ、見つめられたワジは静かな笑みを浮かべて言った。

「……繰り返すがくれぐれも他言無用に願うぞ。記事にでもしたら今後、教会の一切の庇護を受けられぬと覚悟してもらおう。」

その時アッバスが真剣な表情でグレイスに忠告し

「ハハ、まあ記事にしたところでヨタ話のたぐいにしか思われないかもしれないけど。”結社”やウチの総長あたりと同じように。」

ワジは笑顔で笑った後口元に笑みを浮かべた。

「ワジ……!」

ワジの言葉を聞いたアッバスは怒鳴り

「心配せずとも約束は守りますって。そっちのキーアちゃんが未来のキーアちゃんで、しかもイーリュン教の”聖女”の一人っていうのもね!」

グレイスは静かな笑みを浮かべて頷いた後キーアを見つめ

「お願いだから、キーアの事はみんなに教えないでよ~。」

見つめれたキーアは疲れた表情で言った。

「その代わりとは言わないけどキーアちゃんが”聖女”になった時、独占取材をさせてもらってもいいかな!?」

そしてグレイスは興味深そうな表情でキーアを見つめながら叫び

「え、えっと、それは………”今の時代”のキーアと交渉してー。」

グレイスに見つめられたキーアは冷や汗をかいて苦笑しながら言った。

(なあロイド……本当に連れてきちまってもよかったのか?)

グレイスたちの会話を聞いていたランディは溜息を吐いた後真剣な表情でロイドに尋ね

(ま、まあ一応、約束は守る人だと思うし。)

尋ねられたロイドは苦笑しながら答えた。

「クロスベル西部に新たな”隙間”を感知しました。」

その時ブリッジ内の端末を操作していたティオが報告し

「正確な座標を特定。西クロスベル街道、中間………警察学校や拘置所方面への分岐地点の付近です。」

ティオに続くようにフランが報告した。

「そうか………」

報告を聞いたロイドは真剣な表情になり

「たしか拘置所を脱出する時、ガルシアのオッサンとアーネストの野郎に助けてもらったんだったか?」

ランディは真剣な表情でロイドに尋ねた。

「ああ……何だかんだ言って力になってくれたよ。アーネストさんの方はルファ姉が煽ったようなものだけど………あれからどうなったのか気になっているんだけど……」

尋ねられたロイドは頷いた後考え込み

「でも、警察学校方面に行ってみるのは得策じゃないね。君が脱出したことで警備も強化されているだろうし。」

「かと言って他に行けるとしたら国防軍がいるベルガード門だけ……ちょっと困ったわね。」

ワジとエオリアはそれぞれ真剣な表情で言い

「まあ、ノコノコ訪ねたら捕まるのは確実でしょうね。」

「…………………………」

グレイスは目を伏せて忠告し、フランは複雑そうな表情で黙り込んでいた。

「……とにかく降りるだけ降りてみよう。どの程度、国防軍が警戒しているか確かめたいし、幻獣の徘徊具合も気になる。」

「了解です。」

「鉱山町の前にも”法陣”が設置された。いつでも降りられるので必要なら声をかけるがいい。」

その後時間も既に夕方となっていたので、休息をしたロイド達は翌日、西クロスベル街道に降り立った………………… 
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