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ソードアート・オンライン~隻腕の大剣使い~

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第70話銃の世界

 
前書き
※ライリュウは女顔の男であって、女性ではありません。

何故こんな事を書いたかって?それは今回登場するライリュウのGGOアバターを見れば分かります。 

 
2025年12月13日

オレはバイクを走らせ、菊岡が《ガンゲイル・オンライン》にログインする用意をした都立中央病院に来た。
死銃(デス・ガン)の話は99%が噂の産物だろうと思ってる。仮想世界から現実の人間に死をもたらす、そんな事が可能とは信じられない。でもーーー

【これが本当の力、本当の強さだ。愚か者どもよ、この名を恐怖と共に刻め!!俺とこの銃の名は・・・死銃(デス・ガン)だ!!!】

残り1%の可能性がオレの足を、この7025番の病室に向けた。
オレは病室のドアをノックし、横に開いた。

「失礼します」

「おっす!神鳴君、おひさしぶり!」

「あっ・・・」

病室の中には一人の看護婦さんがいた。長い茶髪を三つ編みにして肩から垂らし、看護婦用の白いワンピースの上に水色の薄手のパーカーを着た看護婦さんーーーオレのリハビリ担当、安岐ナツキさんだった。

「どうも、ご無沙汰してます。安岐さん」

オレが安岐さんに挨拶して頭を下げた時にーーー安岐さんがオレの尻を触ってきた。

「お~!すごい筋肉!超ガッシリしてるよ!もう身体は完全復活してるみたいだね~!」

「かなり鍛えてるんで・・・安岐さんそろそろ放してください。くすぐったいんで」

オレの筋肉を揉みしだく安岐さんに指摘して、ようやく放してくれた。その時オレの左腕を見た安岐さんの顔がすごく印象的だった。
実はオレが左腕を切断された通り魔事件でオレを救ってくれたのは、他でもないこの安岐ナツキさんだった。だからSAOから戻ってきて、オレのリハビリ担当が安岐さんだと知った時には本当に驚いた。

「それより、何で安岐さんがここに?」

「あの眼鏡のお役人さんから話聞いてるよ。何でもお役所のために、仮想ネットワーク?の調査するんだって?まだ帰ってきて一年経ってないのに、大変だね~。それでリハビリ中の神鳴君の担当だった私にぜひモニターのチェックをしてほしいって言われて、今日はシフトから外されたんだ。看護師長とも話着いててさ、流石国家権力って感じだよね~」

なるほど、あのクソ眼鏡か。確かに安岐さんならリハビリや通り魔事件の事でオレも信用してるから、そこまで怒りはしないけどーーー国家権力なら何でもありか。

「とりあえず、またしばらくよろしくね。神鳴君」

「・・・はい、こちらこそ。それで、その眼鏡の役人は来てないんですか?」

「うん。代わりに伝言預かってるよ」

そう言って安岐さんは胸ポケットから一枚の紙を取り出し、オレに手渡した。それは菊岡からの伝言だった。それにはーーー

【例の件
報告書はいつものアドレスに頼む。
諸経費は任務終了後、報告と併せて支払うので請求すること。
追記
美人看護婦と個室で二人きりだからといって若い衝動を暴走させないように。
菊岡誠二郎】

追記は余計だ。オレはこの紙をクシャクシャに丸めて、ズボンのポケットに突っ込む。

「それじゃあ、早速ネットに接続しますんで」

「はい、準備出来てるよ」

よし、じゃあ早速オレの《アミュスフィア》を接続してーーー

「じゃあ脱いで、神鳴君」

「はい!?」

急に何を言い出すんだ!?オレそういうーーーあぁ、そっか。電極貼るのか。

「心配しなくても大丈夫よ。どうせ入院中に全部見ちゃったんだから~・・・」

そう言って安岐さんは視線をオレの股間に落とし、オレは股間を隠す。

「あの・・・上だけでいいですか?」

「う~ん・・・うん」




******




「よし、これでOKと!」

オレは上半身裸になり、ベッドに寝転がれるように座った。今オレの身体中には心電図を測るための電極が貼られている。

「それじゃあ行ってきます。多分4~5時間くらい潜りっぱなしだと思いますが」

「はーい。神鳴君の身体はしっかり見てるから、安心して行ってらっしゃい!」

「よ、よろしくお願いします・・・」

実際オレ上に何も着てないんだけどーーー安岐さん、言い方ってモンがあるだろ。
オレは呆れながらも《アミュスフィア》を起動して、ベッドに横たわる。そして目を瞑り、SAOベータテスト時代から言い馴れたセリフを言う。仮想世界への扉を開くための、魔法の言葉ーーー

「リンクスタート!!」




ライリュウside

《ガンゲイル・オンライン》、首都・グロッケン

目を開けば、現実にありそうで、それでいて存在しないような少し荒廃したような街だった。そしてそこら中に銃を持った厳つい顔の男たちがいた。ALOとはまるで違う雰囲気ーーー世界観だ。PvPーーー殺し合いに特化した世界って事か。
さて、オレのアバターはどんな姿だ?せめて厳ついおっさんは嫌だぞ。そう思いながらオレは後ろに振り向き、アバターの姿を見るための鏡を見た。そこにはーーー

「わー、オレ可愛い~・・・じゃなくて」

オレーーー何か女みてぇなアバターだな。白いシャツと黒いズボンは初期装備だろうから別にいいとして、何でこんな女みてぇな顔なの?黒いショートボブの髪形、ちょっとつり上がった目、鼻も結構整ってる。これ男アバターだよな?女みてぇな男アバター。厳ついおっさんは嫌だけど、流石にこれはーーー仕方ない、我慢しよう。幸いかんなはALOだし、そもそもあいつは女が好きなんだ。いくら女みたいなアバターでも、男なんだから襲いはしないだろ。こんな胸がムニッとした男を襲うような奴じゃーーー

「・・・ムニッ?」

何でだ?今、完全に男が出さないような音がしたぞーーー気のせいだよな?オレ男だもん。こんな胸に重苦しい脂肪の塊をぶら下げてる訳なーーーあった!

「何じゃこりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

オレ女になってる!!何故に!?何でオレ女になってんの!?何でこんな胸デカくなってんの!?何で産まれた時から標準装備してた剣が鞘になってんの!?何故にこんなーーーそうか、性別反転事故だ!!
性別反転事故ーーー仮想世界で現実とは違う性別のアバターに設定すると、現実の肉体にも悪い影響を与えるため、《アミュスフィア》にはプレイヤーの脳から発せられる脳波を計って性別を判定するシステムがある。だから今のバーチャルMMOはSAOの時みたいに性別を自由に決める事が出来なくなっている。だが今のオレのようにアバターの性別が変わってしまう事が稀にある。それが性別反転事故だ。
でも何でオレがーーーとにかく今はここから逃げるしかない!世界観からかSAOやALOよりも女性プレイヤーが少ないゲームだ、この世界の男たちは女に飢えているに違いない!!!




******




ただ周りを見ずに泣きながら走った結果、迷いました。ここがどこなのか分からない。オレが男なのか女なのか分からなくなってしまった。オレは今どこなのか分からない場所に置いてある樽の上に座って泣いている。本当なら名前を売って死銃(デス・ガン)と接触しなくちゃいけないのにーーーもうそんなのドウデモイイ。死銃(デス・ガン)様ァァァァ、貴方の存在がただの噂の産物や都市伝説であってくれェェェェ!オレを早く男に戻してくれェェェェ!オレを誰が得するのか分からない女体化した主人公から解放してくれェェェェェェェェ!!!!!

「ねぇ、あなた、大丈夫?」

「グスッ・・・ふえ・・・?」

オレが泣いているところに誰かが話しかけてきた。その声の主に顔を向けたらそこにはーーー黄土色のコートと灰色のジーンズを着て、白いマフラーを巻いた水色のショートヘアーの、蒼い瞳の女の子だった。

「あなた・・・このゲーム初めて?それに何で泣いてるの?」

「はい、そうです。コンバートしたばかりで、いざアバターを確認したら女になっておりました・・・」

「え?あなた、男なの?もしかして性別反転事故?」

オレは《死銃(デス・ガン)事件》を除いた全ての事情を話した。オレが17歳の高校生男子で、別のゲームからコンバートしたら女になっていた事を全て。SAOでのアスナさんの気持ちがよく分かったよ。もしかしたらシリカもこんな調子でSAOで中層のアイドルとか言われてたんだと思うし、スグも多分こんなだったんだろうなーーー

「すみません。無理も承知で厚かましいのも覚悟の上でお願いしたいんですが・・・色々、教えてくれませんか?今は男に頼むのがとてつもなく恐いんです・・・」

本当に無理だと言われるのを覚悟して彼女に頼む。完全に初対面の相手に、それも女アバターの男にこんな事頼まれても断るのが普通だ。でも今は男を今までのように見れない。だからーーー

「・・・分かったわ。可哀想だから、案内してあげる。女の子扱いするかもしれないけど、そこはあんまり怒らないでよね?」

「本当ですか!?ありがとうございます!!」

よかった!快く引き受けてくれた!女扱いされても許せる!オレは彼女に安い武器屋と総督府という場所に案内をしてもらう事になった。

「そうだ!オレ、ライリュウっていいます」

「そっか、名前知らなかったわね。私はシノン。よろしく」

オレは彼女にーーーシノンにこのGGOについて教えてもらう事になった。
 
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