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英雄伝説~光と闇の軌跡~(碧篇)

作者:sorano
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第96話

~特務支援課~



「………………………」

演説を見ていたロイドは仲間達と共に黙り込んだ。するとその時ロイドのエニグマが鳴り、ロイドは慌てた様子で通信を開始した。

「はい、ロイドです……!」

「……おう、俺だ。」

「課長!今の就任演説は―――」

「……当然、見ていた。まあ、是非はともかく、警備隊は『国防軍』として完全に再編成されたようだ。俺達警察も、その一部として組み込まれる事が決定している。」

「そ、そんな……ひょっとしてソーニャ副司令も……」

「映像に映ってただろ?まあ―――了承したんだろう。もしかしたら局長達は予めこうなる事を予測して、自分達が利用されない為に姿を消したのかもしれんな………」

「………………………」

「どうなるかわからんが……今はオルキスタワーには近づかないようにしておけ。国防軍の”兵士”たちが厳重に警備しているはずだ。」

「くっ………了解しました。」

「―――また連絡する。あんま先走るんじゃねえぞ?」

「……課長はなんと?」

通信を終えたロイドにエリィは心配そうな表情で尋ねた。

「ああ、国防軍だけど………」

ロイドはセルゲイから聞いた情報をエリィ達に説明した。

「そう……」

「くっ、ソーニャ副司令があっち側に回ったのかよ……」

「まあ、立場からすると仕方のないことかと……」

「……アリオスさん、シズクちゃんを連れていったのはこの事が原因だったのね。」

「あ………」

セシルの言葉を聞いたロイドは声を上げ

「そうですね……あんな立場になってしまったらシズクちゃんにも影響が……」

「反対派に狙われる可能性とか出てくるかもしれねぇしな……」

「……この状況ですと無いとは言い切れないかと。」

エリィ達は重々しい様子を纏い

「…………………」

キーアは不安そうな表情をしていた。

「キーア……大丈夫だ。シズクちゃんに危険が及ばないようアリオスさんも考えてるはずさ。」

「うん……そうだね。……えへへ。ちょっと心配だけど………」

「キーアちゃん………」

ロイドの言葉を聞いて寂しげな笑みを浮かべたキーアをセシルは真剣な表情で見つめた。するとその時

「………こちらにおられましたか。ご無事で何よりです。」

なんとエクリアがビルに入ってロイド達に近づいてきた!



「エクリアお姉様………!」

エクリアを見たエリィは驚き

「……エリゼちゃんがリィン達を迎えに来たように、セシルさんを迎えにきたんスよね?」

ランディは真剣な表情で尋ねた。

「ええ………―――前もってリウイ様から連絡をいただいていると思いますがお迎えに上がりました、セシルさん。突然で申し訳ないですが今すぐにクロスベルから離れて頂きます。いつ国防軍が貴女の存在に気付いて確保しに来るかわかりませんので事は一刻を争います………クロスベルがメンフィルを敵対視した今、貴女の今の身は危険すぎます。それと失礼とは思いましたが病院の寮のセシルさんが借りている部屋に勝手に入らせて頂き、予め準備していたと思われる荷物も回収しておきました。……どうぞ、お確かめください。」

ランディの言葉に頷いたエクリアは真剣な表情でセシルを見つめて荷物をセシルに渡し

「……………………………わかりました。できればお母さん達やマーサ師長、病院の方達に別れの挨拶や事情の説明をしておきたかったのですが………私がいる事によって病院の皆に迷惑をかけるわけにもいきませんし……………」

エクリアから荷物を受け取ったセシルは複雑そうな表情で答えた後溜息を吐き

「あの………せめて今この場でお母さん達に事情を説明する手紙をかいてもよろしいでしょうか……?」

「……そのくらいでしたら。そう言うと思って既に用意してあります。」

そしてセシルの言葉を聞いたエクリアは懐から複数の紙と便箋、ペンを出してセシルに渡した。

「……………あの、エクリアさん。いつ頃、クロスベルを起つおつもりなのですか?」

「………何故、それを教えなければならないのでしょうか?――――”国防軍の一員にもうなっているかもしれない”貴方達に。」

「……!!」

「エクリアさん……!」

「オ、オイオイ………!まさか……!」

「…………私達がセシルさんやエクリアお姉様の事を国防軍に通報する事を疑っているのですね……………」

ロイドの疑問を聞いた後連接剣をロイドの首筋ギリギリに突きつけて、剣の刃を突き付けられたロイドは息を呑み、ティオは真剣な表情でエクリアを見つめて声を上げ、エクリアの行動や言葉にランディは驚き、エリィは複雑そうな表情で答えた。

「……………少なくとも俺達は国防軍の一員になった覚えはありませんし、それに何より………セシル姉を人質にしたり、危害を加える事なんて絶対にしませんし、させません……!万が一国防軍がセシル姉を確保しに来たら、俺が国防軍と戦います……!」

「ああ……!俺だって、ンな真似、絶対にさせるかってんだ……!」

「勿論私も戦います。」

「ええ……!いくらクロスベルの為だからと言って、今まで傷ついた人達の為に働いてきたセシルさんに危害を加えようとするなんて絶対に許さない……!」

「ロイド……………みんな………」

そして剣の刃を突き付けられたロイドは決意の表情で答え、ロイドの言葉にランディ達も頷き、ロイド達の答えを聞いたセシルは驚き

「……………本日の正午前のグランセルに向かう便のチケットを予め購入しておきましたので、その飛行船でクロスベルを起つつもりです。」

ロイド達の様子を見たエクリアは刃をロイドの首筋から離して連接剣を鞘に戻した後、静かな表情で答えた。

「………でしたら申し訳ないのですが少しの間だけ、ここで留守番をしていただいてもよろしいでしょうか?」

「ロイド………?」

「………そのくらいでしたら、先程のお詫びも兼ねて留守を預からせて頂きます。」

エクリアの答えを聞いてエクリアに頼んだロイドの言葉を聞いたキーアは不思議そうな表情をし、エクリアは静かに頷き、ロイドは仲間達に振り返った。



「なあ、みんな。とりあえず………ギルドを訪ねてみないか?」

「そ、それもそうね。」

「確かにアリオスさんの件は事情をお聞きしたいです。」

「だな……さすがに寝耳に水だぜ。」

ロイドの提案にエリィ達は頷き

「……わかりました。私達が乗る便の時間が近づいて来るまではできるだけの間、留守番をさせて頂きます。」

「大変な状況だけど……無茶はしないでね。」

「ああ、わかってる。」

「エクリアさん、セシルさん、感謝ッス!」

「それではお願いします。」

「キーア、二人と一緒にいい子でお留守番しててください。」

「あ………」

そしてロイド達は急いでビルを出て行き

「………………………」

その様子を真剣な表情で見つめていたキーアはロイド達を追い

「キーアちゃん!?」

キーアの行動にセシルは驚き

「………………………」

エクリアは真剣な表情でキーアの後姿を見つめていた。



「キーア?」

ビルから出てきたキーアに気付いたロイドが振り返って不思議そうな表情をしたその時

「~~~~っ~~~~………!」

「わわっ……!」

キーアは泣きそうな表情でロイドの身体に抱き付いた。

「キーア……?」

「ど、どうしたの?」

「確かに色々起きてるが心配することはねえんだぞ?」

「………うん………」

ティオ達の言葉にキーアは不安そうな表情で頷き

「……大丈夫だ、キーア。確かにこの先、クロスベルがどうなるかわからない状況だけど……俺達がいつだってキーアの元に帰ってくるのは絶対に変わらないからさ。」

キーアの様子を見たロイドはキーアの頭を撫でて優しげな微笑みを浮かべて言った。

「ロイド……………」

ロイドの言葉を聞いたキーアは驚き

「そうですね……それだけは確かです。」

「前に俺達が出かけた時もちゃんと帰ってきただろ?」

「だからキーアちゃん、安心して待っててちょうだい。」

ティオ達もそれぞれ笑顔で言った。

「エリィ、ティオ、ランディ………うん……!みんな、気を付けてね!」

ティオ達の言葉を聞いたキーアは一筋の涙を流して笑顔で答えた。



これがキーアとの一時にして長い別れになるとはこの時、ロイド達の誰もが予想していなかった………………… 
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