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遊戯王GX-音速の機械戦士-

作者:蓮夜
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―時計塔の戦慄―

 デュエル・アカデミアの夜10時、俺はいつものデュエル場に立っていた。

 先日の、プロリーグによる亮VSエドのデュエルの折に発表された、エドのデュエル・アカデミアへの……いや、俺への挑戦。
ナポレオン教頭は、喜んでエド側の申し出を承諾した――エドが勝ったら(一応)デュエル・アカデミアの生徒であるエドの宣伝に、俺が勝ったらデュエル・アカデミアの生徒の宣伝になるため、ナポレオン教頭に断る理由は無いのだろう。

 エド側の条件は、出来るだけ一目のつかない深夜にデュエルを行うことだった。

 ……エドの真意は全く分からないが、十代と亮の件もある為に、挑んでくるならば俺は受けて立つという選択肢しかない。

 そして、例の放送でエドが言ったことで気になることがもう一つある……エドの父のことだ。
カードデザイナーのフェニックス氏と言えば、このデュエルモンスターズ界では少し有名な存在で、人気なフェニックス氏がデザインしたカードは人気が出ていたのだが……ある日、何者かに殺されてしまうという痛ましい事件があり、フェニックス氏のカードが出ることは無くなった。

 エドが使用していた《D−HERO》シリーズは、氏の最後の作品であったという……そしてそれを、息子であるエドが受け継いだのだ。

 逆に《機械戦士》というと、一般的には彼の作品だというのは、あまり知られてはいない。
俺も、三沢が調べてくれる前までは知らなかったものだ。

 ……しかし、《D−HERO》と《機械戦士》に、描いている人が同じなら見当たる筈の共通点などが、何も見当たらない。
強いて言えば、全体的にステータスが低めなことは共通しているが……それは関係ないだろう。

 影丸理事長が言うには、実体化も出来ないぐらいの弱めの精霊の宿っているらしい……俺のデッキの《機械戦士》。
深読みに過ぎると自分でも思うが、《機械戦士》は氏の作品ではなく、何か秘密があるのではないか。

もしかしたら、エドは何か知っているかも知れない。

「……大丈夫、遊矢?」

 デュエル場の外にいる明日香から、ずっと考え事をしている俺に心配そうな声がかけられた。

「ああ。ちょっと考え事してただけさ」

 デュエルをする俺の他には、三沢と明日香の同行が許された。
デッキの調整を手伝ってくれたこともあるので、同行させられて良かったことは良かったのだが、中等部であるレイが断られたことが残念だった。

「相手はD-HERO……エド相手に勝機はあるか、遊矢」

「もちろん、と言いたいところだけどな……」

 俺の亮への勝率は三割……そしてそれを、D-HEROをメインになってからのエドはほぼ完封したと言って良い。
そんな相手に、俺は一体勝てるのか……いや、勝たなくてはならない。
今のデュエル・アカデミアのおかしさへの答えを得るためにも、十代のようにカードが見えなくならないためにも……

 ……そして、デュエルスタジアムに響く足音が、俺の対戦相手の来訪を告げた。

「……エド」

「黒崎遊矢……お仲間と一緒に仲良しごっこか? お前らしいな」

 ひさびさに会うなりいきなり嫌味を言われたが、いちいち構っておくこともなし、放っておく。
代わりにデュエルディスクを構え、明日香と三沢のところからデュエル場の中央に向かって歩いた。

「ふん……」

 エドも俺の行動を受けて、デュエル場の入り口から俺の位置に対応するところまで移動する。

「シニョール遊矢、シニョールエド。二人とも準備はいいノーネ?」

 代表決定戦や学園対抗戦の時と同じように、ジャッジを行うのはクロノス教……じゃなく、クロノス校長代理。
とは言っても、ジャッジとは名ばかりの始まりを告げるだけの役目ではあるが。

「ああ」

 特に気負いもせずに、エドはクロノス校長代理の言葉に気楽に答えた。
……こういうところは流石はプロ、と言ったところか。

「いつでも」

 自分もクロノス校長代理の質問に答え、勝てるのか、なんてことは考えても無意味な領域に達する。
後はデッキの《機械戦士》を信じるだけ……大丈夫だ、亮だって三幻魔だって、俺たちは打ち破ってきた……!

「デュエル開始なノーネ!」

 クロノス校長代理の宣言と共に、デュエルを行う俺たちも気合いを入れる。
そして、告げる。

『デュエ「ちょっと待ったーーッ!」

 俺たちのデュエルの宣言に被さって、やたら大きな声がデュエル場へ響く。
俺たちが状況を理解する前に、再び声の主は自分の用件を告げた。

「そのデュエルちょっと待った! エドとデュエルするなら、俺にやらせてくれ!」

 その不必要に騒がしい、もはや懐かしいと言って良い声は……
俺は声の主の正体に当たりをつけ、声がした入り口の方へ身体を向けた。

「……十代!」

「おお、遊矢!」

 エドに敗れてカードが見えなくなり、このデュエル・アカデミアを去ることになってしまった友人、遊城十代。
その元気いっぱいな姿から、カードが見えなくなることから回復したのだと分かる。

「どうなってるかは良くわかんねぇけど、エドとデュエルするなら代わってくれ遊矢!」

 十代にとっては、エドに対してのリベンジマッチ。
デュエルしたい気持ちは分からなくもないが、このデュエルは俺にだって譲れない。

「いいや、悪いけど譲れないぜ十代」

 エドがテレビでデュエルを挑んできたのは俺であるし……それに十代がエドに負けた場合、またカードが見えなくなってしまう可能性もあるのだから。

「シニョール十代、休学中だった筈でーは……ってそんなことよーり、コレはシニョール遊矢とシニョールエドとデュエルなノーネ! シニョールエドもなんとか……」

「別に良いんじゃないか?」

 ジャッジであるクロノス校長代理の意見も、エドのまさかの一言によって意味をなくした。
別に良いということは……

「二対一の変則タッグデュエルだ。もちろん僕は一人で良い。……わざわざリベンジを申し込むぐらいだ、自信はあるんだろうな」

「もちろんだ! 話が分かってありがたいぜ!」

 エドの申し出に十代はありがたく応じ、どこから持ってきたのか分からないが、デュエルディスクを構えてデュエル場の俺の横へ並ぶ。

「しか~し、オシリス・レッドであるシニョール十代が乱入する~と、特に教頭が黙っていないノーネ……」

 ナポレオン教頭は、前のクロノス教諭以上のエリート偏重主義であり、オベリスク・ブルーに配置されたアイドル養成所を初めとする、今年から導入されたことを見ても分かるだろう。
近々、オシリス・レッド自体の取り壊しを考えているとか、いないとかという噂も流れている……らしい。

「それは俺がなんとかします」

 クロノス教諭の発言を受けて立ち上がったのは三沢。
どのような方法を用いるのかは分からないが……なに、三沢ならば問題ないだろう。

「任せたぜ、三沢」

「任せてくれ……明日香くんは、ここで俺の分まで応援を頼む」

「え、ええ」

 明日香に自分の分まで応援を頼み、三沢はデュエル場を出て行く……後でお礼に何か奢ろう。

 実際、ここで三沢の行動はありがたかった。
デュエリストとしては少し認めたくないが、十代が入ってくれれば勝率はグンと上がる。

「ま、まあシニョールエドが許してくれればきっと問題ないノーネ……三人とも、準備は良いノーネ?」

「ああ」

「待ちくたびれたぜ!」

「いつでも」

 クロノス教諭の、どちらかと言うと自分に言い聞かせているような質問に、俺たちは三者三様の答えを返す。
さっきは十代のせいでお流れになってしまったが、再び宣言しよう……デュエルの開始を。

『デュエル!』

エドLP8000

十代&遊矢LP8000

「先攻は俺からだぜ! ドロー!」

 デュエルディスクが最初のターンプレイヤーに示したのは、十代。
カードが見えなくなった時の事が嘘のように、元気良くカードを引いた。

「俺は《E・HERO スパークマン》を召喚!」

E・HERO スパークマン
ATK1600
DEF1400

 十代の初手に召喚する可能性の高い、雷を操る光の特攻隊長、スパークマン。
下級E・HEROの中では、まあまあなステータスを誇っている。

「……相変わらず、たかがE・HEROか」

「へっ。今のHEROデッキを前のHEROデッキと同じにしない方が良いぜ! ターンエンド!」

 デッキを同じと思わない方が良い、ってことは、これまでの【E・HERO】とは違うデッキなのだろうか。
初手スパークマンを見る限り、そうは見えないのだが……

「僕のターン、ドロー!」

 十代のデッキについて考えている暇はないようで、エドのターンへと移る。
……まあ、デュエルを進めていればいずれ分かるだろう。

「僕は《D−HERO ディスクガイ》を守備表示で召喚!」

D−HERO ディスクガイ
ATK300
DEF300
 円盤を身体に纏った、小柄なD−HEROが守備表示の態勢をとる。
その貧弱なステータスとは裏腹に、D−HEROの中でも有数の警戒すべき効果を持っている。

「カードを一枚伏せ、ターンエンド」

「楽しんで勝たせてもらうぜ! 俺のターン、ドロー!」

 先も言った通りステータスは低い代わりに、墓地で発動するディスクガイの効果は強力だ。

「速攻魔法《手札断殺》を発動! お互いに二枚ドローし、二枚捨てる!」

 喜ばしいのか悲しいのか、いきなり手札交換を行う……《リミッター・ブレイク》とかは特に無い。
この手札交換で、出来れば《ブラック・コア》を使いたかったところではあるが……まあ、そう上手くはいかない。
だからまずは、頼むぜアタッカー!

「俺は《マックス・ウォリアー》を召喚!」

マックス・ウォリアー
ATK1800
DEF800

 十代のスパークマン以上に使用頻度が高いアタッカー、マックス・ウォリアーがその三つ叉の槍を持って現れる。

「バトル! スパークマンでディスクガイを攻撃! スパークフラッシュ!」

 いくら効果が強力でも、その守備力はスパークマンの攻撃力には適わない。
だが、破壊されたディスクガイから、『D』と書いてあるシグナルが空中へと放たれた。

「リバースカード、《デステニー・シグナル》を発動! そのエフェクトにより、デッキから《D-HERO ドゥームガイ》を特殊召喚!」

D-HERO ドゥームガイ
ATK1000
DEF1000

 ドゥームガイ……確か戦闘破壊した時、墓地のD-HEROをエドのスタンバイフェイズに特殊召喚する未来が決定する効果だ。
マックス・ウォリアーの相手モンスターを戦闘破壊した時のデメリットもあるし、ドゥームガイを破壊してもディスクガイが特殊召喚されて二枚ドローされるだけだ。
ここは攻撃しないでおく。

「カードを一枚伏せ、ターンエンドだ」

「……攻撃しないのか。僕のターン、ドロー!」

 そりゃあ攻撃しないだろう。
だが、相手フィールド場にモンスターを残すということは、相手が攻勢に出れるということだ。

「僕はドゥームガイをリリースし、《D−HERO ダブルガイ》を召喚する!」

D−HERO ダブルガイ
ATK1000
DEF1000

 ドゥームガイをリリースされて召喚されたのは……スーツ姿の男性?
上級モンスターにしては攻撃力は低い1000という数値で、亮とのデュエルには出なかったために効果は分からない。

「そしてダブルガイに《デーモンの斧》を装備する!」

 英国紳士風の男に悪魔の斧が装備されるという、シュールでミスマッチな光景が描写された。

「バトル! ダブルガイでスパークマンに攻撃! デス・オーバーラップ!」

「《くず鉄のかかし》を発動し、ダブルガイの攻撃を無効にする!」

 英国紳士の斧による攻撃は、突然飛び出したくず鉄のかかしによって防がれる。
そしてそのままくず鉄のかかしはセットされ、次なる出番を待った。

「助かったぜ遊矢……」

「甘いな。ダブルガイのエフェクト! このモンスターは、一ターンに二回攻撃が出来る!」

 英国紳士的な容貌であったダブルガイが、徐々に姿が変わっていき……似ても似つかぬ筋骨隆々の、野性味ある荒くれへと変貌した。

「ダブルガイでマックス・ウォリアーの攻撃! デス・オーバーラップ!」

 くず鉄のかかしは、さっき発動したために発動出来ない。
悪魔の斧がこれ以上似合わない格好となったダブルガイに、マックス・ウォリアーはその槍で抵抗するも破壊されてしまう。

十代&遊矢LP8000→7800

 マックス・ウォリアーは破壊されたものの、受けるダメージは微々たるものだ、まだまだやれる。
 そして役目を終えたダブルガイは、荒くれ姿から英国紳士風の姿へ戻っていった。

「カードを一枚伏せ、ターンエンド」

「俺のターン! ドロー!」

 ダブルガイにやられてしまったものの、マックス・ウォリアーとくず鉄のかかしのおかげでスパークマンは健在。
スパークマンを融合素材とするモンスターが融合召喚出来れば……

「俺は《融合》を発動! 手札のクレイマンとフィールドのスパークマンを融合し、《E・HERO サンダー・ジャイアント》を融合召喚!」

E・HERO サンダー・ジャイアント
ATK2400
DEF1500

 流石は十代、としか言いようがない最高のタイミングの融合。
しかもダブルガイを処理しつつ、ダイレクトアタックまで狙える融合モンスターだ。

「サンダー・ジャイアントの効果発動! 手札を一枚捨てることで、サンダー・ジャイアントより攻撃力が低いモンスターを破壊する! ヴェイパー・スパーク!」

「リバースカード、オープン! 《天罰》! 手札を一枚捨てることで、相手モンスターのエフェクトを無効にして破壊する!」

 サンダー・ジャイアントが放った雷はエドのリバースカードに吸い込まれ、天罰として自身に降り注いだ。
その雷により、サンダー・ジャイアントは破壊されてしまう……

「くっ……サンダー・ジャイアントが……だけど魔法カード《O-オーバーソウル》を発動! 墓地から通常モンスターのE・HEROを特殊召喚する!」

 十代とて、転んでもただではおかない。
特殊召喚するのは、やはりダブルガイの攻撃を防げるクレイマンだろうか。……更なる融合を狙ってスパークマン、というのは……流石の十代と言えども無理だろう。

 だが十代が起こした行動は、俺には……おそらくエドにも……予想出来ないことであった。

「俺の新たなヒーローを紹介するぜ! 来い、《E・HERO ネオス》!」

E・HERO ネオス
ATK2500
DEF2000

 『O』という空中に浮かび上がった文字から現れ、墓地から蘇ったモンスターは、《E・HERO ネオス》というモンスター。
十代が使用する旧E・HEROたちとは、デザインからして違い、アメリカンコミックのような旧E・HEROたちに対し、三分間しか戦えない光の巨人のような……そんないでたち。

「E・HERO、ネオス……?」

 いや、デザインなど今はどうでも良いとして重要なのは、今まで見たことがないという点である。
先の驚愕のセリフはエドのものだが、あの反応をみる限り、あのプロデュエリストを以てしても知らないらしい。

「ネオスペースからやってきた、俺の新しい仲間さ! バトル! E・HERO ネオスでダブルガイに攻撃! ラス・オブ・ネオス!」

 十代のかけ声に呼応して、ネオスは高く飛び上がって、そのままの勢いでダブルガイの脳天へとチョップを喰らわせる。
攻撃力の劣るダブルガイに防げるわけもなく、英国紳士風の姿と荒くれ姿の二つの姿が両断された。

「ちっ……」

エドLP8000→7500

 エドに本当に微々たるものだが初ダメージを与えた。
ダメージを与えたということより、エドの予想を外してネオスを召喚してダブルガイが破壊出来たことが大きかった。

「俺はこれでターンエンドだぜ!」

「僕のターン、ドロー!
……破壊されたダブルガイのエフェクト発動! 破壊されてセメタリーに送られた時、次の自分のターンのスタンバイフェイズに二体の《ダブルガイ・トークン》を召喚出来る! 《ダブルガイ・トークン》を二体、守備表示で特殊召喚!」

 ネオスに破壊されたダブルガイであったが、ダブルガイもD-HERO特有の未来を操る効果を持っていた為に、英国紳士風のトークンが二体、守備表示で召喚された。
D-HEROの名を冠しておらず、攻守共に1000の為に、攻撃力2500のネオスの敵ではない……が、二体特殊召喚された為に、十分な壁になる。

「僕はフィールド魔法《幽獄の時計塔》を発動する!」

 十代とのデュエルに使用した、D-HERO版がスカイスクレイパーである《ダーク・シティ》とはまた違うフィールド魔法《幽獄の時計塔》により、エドのフィールドには大きな時計塔が現れ、回りは英国風の街並みとなった。

 英国風のイメージを持つD-HEROに、良く似合ったフィールドだったが、特に何も起きなかった。
D-HEROがいないからだろうか……?

「更に僕は《戦士の生還》を発動してセメタリーから《D-HERO ドゥームガイ》をサルベージし、そのまま守備表示で召喚する!」

 墓地から手札に戻され、二回目の登場となったドゥームガイ。
ドゥームガイ自身のステータスは低いが、墓地のD-HEROを特殊召喚させる未来が決定する効果はとても厄介だ……特に、今は墓地にディスクガイもいる。

「カードを一枚伏せ、ターンエンド」

「俺のターン、ドロー!」

 さて、エドは壁モンスターを召喚して守備を固めてきた。
だが効果は厄介でも、どれもステータスは低い。
十代のネオスがあれば押し切れる……!

「俺は……「相手プレイヤーのスタンバイフェイズのこの瞬間。《幽獄の時計塔》は新たな時を刻む!」

 メインフェイズに移行しようとした俺に、エドの《幽獄の時計塔》の処理が入った。
時計塔の時計が動き、12時から3時を指し示す……それに何の意味があるかは分からないが。

「気を取り直して、俺のメインフェイズ。《レスキュー・ウォリアー》を攻撃表示で召喚!」

レスキュー・ウォリアー
ATK1600
DEF1700

 消防士のような格好をした機械戦士がひさびさに召喚される。
攻撃向けの効果を持ったモンスターではないが、露払い程度ならばこなせる攻撃力は備えている。

「バトル! レスキュー・ウォリアーで、ダブルガイ・トークンを攻撃!」

 レスキュー・ウォリアーがその手に持った消火器から水を出し、銃のように扱ってダブルガイ・トークンを破壊した。
……エドには一枚リバースカードがあるが、全体破壊トラップではないのか。

「続いて、ネオスでダブルガイ・トークンに攻撃! ラス・オブ・ネオス!」

 ネオスの空中からのチョップによって、二体現れたダブルガイ・トークンは二体とも破壊され、エドのフィールドに残るはドゥームガイとリバースカードのみとなった。

「俺はこれでターンエンド」

「僕のターン、ドロー!
……ターンエンドだ」

 なんと、エドは何もせずにターンエンド宣言を行う。
あのリバースカードはおそらく、モンスターを破壊したり攻撃を無効にするカードではないし、そもそもデュエルモンスターズに元来の意味での【ドローゴー】など存在しないはずだ。

「とりあえず俺のターン、ドロー!」

 ……考えるよりもまずは行動を起こす十代が羨ましい。

「お前のスタンバイフェイズ、幽獄の時計塔は新たな時を刻む!」

 幽獄の時計塔が指し示す時間が、3時から6時となる。
……相変わらず、何が起きてるかは分からないが。

「どんどん行くぜ! 俺は《N・フレア・スカラベ》を召喚!」

N・フレア・スカラベ
ATK500
DEF500

 再び、休学前には持っていなかった新カードが召喚された。
しかも、新カードどころかの『ネオスペーシアン』と呼ばれた新しいシリーズカードだ。

「フレア・スカラベの攻撃力は、相手の伏せカードの枚数分500ポイントアップするぜ! フレイミング・イリュージョン!」

 500ポイントアップと言えば聞こえは良いものの、元々の攻撃力が低いせいで実際には攻撃力1500ポイント止まり。
だが、十代は先程ネオスについて「ネオスペースから~」と説明していた……『ネオスペース』と『ネオスペーシアン』。
その名前から、恐らくはお互いに関係しているカード群……!

「行くぜ! フィールドのE・HERO ネオスと、N・フレア・スカラベをコンタクト融合!」

「コンタクト融合!?」

 コンタクト融合についての驚きの声は誰のものであっただろうか……恐らくはここにいる、十代以外の全員の声だろうが。
十代のフィールドのネオスとフレア・スカラベがデッキに戻っていき、代わりに新たなヒーローが特殊召喚された。

「現れろ、コンタクト融合HERO! 《E・HERO フレア・ネオス》!」

E・HERO フレア・ネオス
ATK2500
DEF2000

 謎の融合、コンタクト融合をして現れたのは、まさしくネオスとフレア・スカラベを融合したような赤いHERO。
ステータスは変わらないが、カードを二枚消費して融合し、わざわざ同じモンスターを出すわけがない。

「フレア・ネオスの攻撃力は、フィールド場の魔法・罠カード×400ポイントアップする! 俺はカードを一枚伏せ、これでフィールド場の魔法・罠カードの数は四枚!」

 エドのフィールドには幽獄の時計塔とリバースカードがあり、俺たちのフィールドには十代が今伏せたカードと一度発動された《くず鉄のかかし》がある。
よって攻撃力は、4100ポイント。

「更に魔法カード《H-ヒートハート》を発動! フレア・ネオスの攻撃力を500ポイントアップさせ、貫通効果を得る!」

 これでフレア・ネオスは、攻撃力4600の貫通効果持ちモンスター……!

「バトル! フレア・ネオスでドゥームガイに攻撃! バーン・ツー・アッシュ!」

 エドがブラフを使っていなければ、エドのリバースカードはモンスター破壊効果や攻撃無効効果ではない。
これは、初の大ダメージか……?

「リバースカード、オープン! 《エターナル・ドレッド》! 幽獄の時計塔の針を二つ進ませる! 刻め! 運命の針!」

 幽獄の時計塔の針が六時間刻まれ、時計塔の針が再び12時に戻る……だかそれだけ。
エターナル・ドレッドはそれ以外の効果を起こすことはなく、幽獄の時計塔からも何もなかった為にフレア・ネオスはドゥームガイを破壊する。

 その炎の攻撃に相応しく、フレア・ネオスが放ったのはドゥームガイを灰にするような火力。
H-ヒートハートにより、貫通効果で3600ポイントのダメージがエドのライフにい……かない!?

 フレア・ネオスの炎は、ドゥームガイを破壊したもののエドを避け、エドのライフにはダメージはない。

「ダメージが……?」

「幽獄の時計塔が再び12時を指した時、僕は戦闘ダメージを受けない!」

 俺も十代もデッキのタイプはビートダウン。
十代のフェイバリット《E・HERO フレイム・ウイングマン》や俺の《ニトロユニット》、《ミニマム・ガッツ》のようにバーンダメージを与えるカードがあるにはあるが、それで8000ポイント……いや、7500ポイントのエドのライフを削りきらなければならない。

 そんなことはもちろん不可能なために、一刻も早くあのフィールド魔法《幽獄の時計塔》を破壊しなければ……

「くっ……ターンエンドだ」

 戦闘ダメージを与えられないのであれば、レスキュー・ウォリアーでの追撃は無意味。
十代がエンド宣言をしたことで、H-ヒートハートの効果が切れて攻撃力が4100に……

 ……いや、フレア・ネオスが十代のエクストラデッキへと戻っていった……って、は!?。

「なに戻ってんだよフレア・ネオス~っ!?」

 十代も想定していない出来事だったようで、デュエルディスクに向かって泣き言を叫んでいた。

「……フン。僕のターン、ドロー! ドゥームガイのエフェクト発動! セメタリーから《D−HERO ディスクガイ》を特殊召喚する!」

D−HERO ディスクガイ
ATK300
DEF300

 ドゥームガイの戦闘で破壊された時、次のスタンバイフェイズに特殊召喚する運命が決定する効果によって、ディスクガイが特殊召喚された。

「ディスクガイがセメタリーから特殊召喚された時、二枚ドローする! ……僕は魔法カード《大嵐》を発動! フィールド場の魔法・罠カードを、全て破壊する!」

 ディスクガイのインチキ効果に辟易する間もなく、エドの使用した魔法カードを訝しむ。
確かに、俺たちのフィールドには《くず鉄のかかし》と十代が伏せたリバースカードがもう一枚あるが、それ以上にエドのフィールドには《幽獄の時計塔》がある。

 タイムラグがあるとはいえ、自分への戦闘ダメージを全てシャットアウトするという強力な効果を持ったフィールド魔法を、わざわざ自分の手で破壊した……?

 ……ならば考えられるのは、俺の《リミッター・ブレイク》のような破壊時に発動する効果……!

「再び12時を指し示した幽獄の時計塔が破壊された時、手札またはデッキから、《D-HERO ドレッドガイ》を特殊召喚する!」

 ドレッドガイ……確か、鉄仮面を付けた囚人のようなD-HEROで、攻撃力・守備力が自分フィールド場のD-HEROの攻撃力の合計となる効果を持った、亮にトドメをさした切り札……それが今、特殊召喚される……? 

「カモン、《D-HERO ドレッドガイ》!」

 エドの大嵐に幽獄の時計塔は崩れていくが、その中から崩壊する瓦礫をものともせずに……D-HERO ドレッドガイが、現れた。
 
 

 
後書き
またも前後編となりました。
……というか、遊矢何もやってない……

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