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英雄伝説~光と闇の軌跡~(碧篇)

作者:sorano
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第86話

~歓楽街・カジノハウス『バルカ』~



「これは皆さん。……もしやランディの件でいらっしゃったんですか?」

自分に近づいてきたロイド達を見たカジノのオーナーは真剣な表情で尋ねた。

「はい……やはり彼はこちらに?」

「ええ、夜中の3時くらいに店にフラリと現れまして……しばらくここで飲んでから帰って行きましたが……」

「……どうやら真っ先にこちらを訪れたみたいですね。」

「それで、その後どこかに行くとか言ってなかったかい?」

「……やはり支援課には戻らなかったみたいですね。いえ、どこに行くとは特に言っていませんでした。ただ、どうも飲んでいる最中、いつも以上に減らず口が多くて……おまけに帰り際、ある物を私から引き取って行ったんです。」

ワジに尋ねられたオーナーは重々しい様子を纏って答えた。

「ある物……ですか?」

「ええ……随分重いトランクで中身は私も存じません。2年前、ランディがこの街に来たばかりの時に預かったんです。『俺が死んだらジャンク屋あたりにバラして売り払ってくれ』と言って。」

「そんな……」

「ランディ先輩……」

「……らしく無さすぎです。」

「…………………」

オーナーの説明を聞いたエリィは表情を青褪めさせ、ノエルとティオは心配そうな表情をし、ロイドは黙り込んだ。

「……ヤツの経歴については私もある程度は存じています。ですが、過去にどんな事があったのかまでは知りません。それを知ってヤツの力になれるのは恐らく、皆さんだけでしょう。」

「オーナー……」

「……はい。そうありたいと思います。」

その後ロイド達はラギール商会の店舗を尋ねたが、店舗の扉に”臨時休業”の札がかけられていた。



~ラギール商会~



「あれ………休みになっている………」

「確か今日は定休日じゃないですよね?」

「今のこの状況で”臨時休業”ですか………」

「”何か”がありそうなのはプンプンするねぇ。」

「昨日の通報の話ではメンフィル兵達に各地を監視させていたというし……ランディに関しての情報もあると思うのだけど………」

”臨時休業”の札を見たロイドは驚き、ノエルは戸惑い、ティオは真剣な表情をし、ワジは口元に笑みを浮かべて呟き、エリィは目を伏せて言った。そしてロイドは扉に近づいてノックをし

「―――お休みの所、すみません!クロスベル警察、特務支援課の者です!少し相談したい事があって来ました!どなたかいらっしゃいませんか!?」

大声で店舗を見つめて叫んだ。すると数分後扉が開いてエリザベッタが姿を現した。

「本日は……臨時休業となっておりますが………何の御用…………でしょうか………?」

「……昨夜から今朝にかけて、ランディはここを訪ねてきませんでしたか?」

エリザベッタの言葉を聞いたロイドは真剣な表情でエリザベッタに尋ね

「…………………いつ……とはランディ様に決して誰にも教えないで欲しいと頼まれている為………申せませんが………ランディ様が……ご来店なさったことは事実です……………」

「その……少し事情があってランディの行方を追っているんです。何とか何時ごろこちらにいらっしゃったのか教えていただけませんか?」

エリザベッタの答えを聞いたエリィは真剣な表情で尋ねたが

「………………………」

エリザベッタは黙り込み

「どうやらダメみたいですね。」

「”どんな客”でも明かして欲しくない事は守るみたいだねぇ?」

エリザベッタの様子を見たティオは溜息を吐き、ワジは口元に笑みを浮かべて言った。

「――――わかりました。本来でしたらチキさんにも昨日の通報の件なども含めて色々と尋ねたい事があるのですが……今のそちらの状況を考えると会わせていただけないのでしょう?」

「…………………………」

ロイドに尋ねられたエリザベッタは何も答えず黙り込み

「何も答えない……という事は当たりなんでしょうね……」

エリザベッタの様子を見たノエルは複雑そうな表情で言った。

「……でしたらせめてランディがここで一体何を買ったのかや、滞在時間を教えて頂いてもよろしいでしょうか?」

「…………………火薬式の弾丸や……さまざまな魔術効果が籠められた弾丸…………さらにさまざまな魔術効果が籠められた特殊な炸裂弾を……在庫にある分……全て購入して……いかれました………滞在時間は……およそ……20分ほどです……………」

「え……肝心の重火器は購入していかなかったんですか?」

エリザベッタの説明を聞いたノエルは不思議そうな表情をして尋ね

「はい……………それと……ロイド様………後でチキ様からご連絡があると思いますので……………できれば……チキ様のご連絡に応じてくださいませんか…………?支援課の方々も一緒で構いませんので……………」

尋ねられたエリザベッタは頷いた後ロイドに視線を向けて尋ね

「………………今は優先すべきことがあるため、難しいですが………ランディの事で何か知っているのでしたら。」

尋ねられたロイドは真剣な表情で答えた。

「………それでしたら………大丈夫……かと……」

「え………」

そしてエリザベッタの答えを聞いたエリィが呆けたその時、エリザベッタは店の中に入って扉を閉め、さらに鍵も閉めた。

「あ………」

「あの言い方は絶対知っている言い方でしたね。」

「やれやれ……彼の行方と交換に一体何を僕達に聞きたいんだろうねぇ?」

エリザベッタの行動にノエルは呆け、ティオはジト目で言い、ワジは口元に笑みを浮かべてロイドを見つめ

「……………今は考えても仕方ない。チキさんから連絡があるまでランディの情報を集めよう。」

見つめられたロイドは考え込んだ後静かな口調で提案した後旧市街に向かい、旧市街に向かう途中、ロイド達はオルキスタワーの様子を確かめる為にオルキスタワー周辺に向かい、そこに装甲車両の側にいるミレイユを見つけて近づいた。



~オルキスタワー周辺~



「ミレイユ三尉……街に来てたんですね。」

「山道の警戒についたと聞きましたが……」

「ええ、ついさっきね。山道の方はルイーネ一佐達が警戒しているから大丈夫だしね。まだこちらで会議を続けている司令と副司令をお待ちしているの。」

ロイドとティオの言葉にミレイユは真剣な表情で答え

「課長や局長達も昨夜から参加していた会議ね……」

「ギュランドロス司令達が残っているということは……やっぱり対策も難航しているんでしょう。でもギュランドロス司令……というより今のベルガード門の警備隊員なら赤い星座を殲滅できるような気がするのですが…………」

エリィは真剣な表情で呟き、ティオは尋ねた。

「…………司令はトンネルに仕掛けられていると思われる導力地雷(オーバルマイン)を駆除後、慎重かつ電撃的な強襲で一気に赤い星座を殲滅、マインツを解放する事を提案しているんだけど……副司令や市長達が反対らしくてね……中々決まらないようね。……それよりあなたたち。今朝、その課長さんから問い合わせがあった件だけど……ランディが行方をくらませたんですって?」

「……はい。おそらく……マインツ山道に向かっている状況だと思われます。」

「……そう………………………」

ロイドの話を聞いたミレイユは心配をそうな表情で黙り込んだ。

「……大丈夫かい?」

「……ええ、私は平気よ。それよりも……ランディが姿を消したのは、あいつの過去が関係している……そうなんでしょう?」

「そ、それは……」

「……くやしいけど、私はランディの過去はエルンストからあいつが元”赤い星座”の団長の息子で猟兵だった事くらいしか知らされてなく、詳しい事情は知らないわ。今まで実戦訓練でライフルを使えなかった理由も私にはわからない。だけど……今回のこれが、皆に多大な心配をかける本当に馬鹿な行為なのはわかる。」

「ミレイユ三尉……」

「……確かに、バカを超えた大馬鹿です。」

「……警備隊も甚大な被害を受けたわ。多分司令の事だから、強引にでも意見を押し通させて、本格的な殲滅並びに救援部隊を編制することになると思う。私達はそれまで動く事はできないし……ランディ一人のために出動を早めるわけにもいかない。だから皆さん……あの馬鹿のこと、どうかお願いね。」

「……任せてください。ランディは俺達が、必ず……!」

ミレイユの言葉にロイドは力強く頷き

「それともしあの馬鹿が私が猟兵達の殺人に関わった事を気に病んでいたら言っておいて。――――これが私が選んだ道。貴方が気に病む必要はないって。」

「ミレイユ三尉……………」

「…………………」

優しげな微笑みを浮かべて言ったミレイユの言葉を聞いたエリィは複雑そうな表情をし、ノエルは複雑そうな表情で黙り込み

「……必ず伝えておきます。」

ティオは静かな表情で言った。その後旧市街に向かって到着したロイド達はジャンク屋を訪ねた。

~旧市街~



「おう、お前ら!ランディのヤツ、一体どうしやがったんだ!?なんか尋常じゃねぇモンの整備を頼まれたんだが……」

ロイド達を見たジャンク屋の主人である親方は尋ねた。

「やっぱりそうですか……」

「今朝のことですね?」

「ああ、5時くらいにいきなり店を訪ねてきてな。ちょうど徹夜明けだったから勢いで引き受けちまったが……」

「それで……『尋常じゃないモノ』とは?」

「やっぱり……部屋に残してあった重火器の類いでしょうか?」

「ああ……と言っても、バラしたユニットだけだがな。しばらく使ってなかった機関部や排気ユニットやらを一通り整備してやったが……ありゃあ、組み立てたらとんでもねぇ化物になると思うぜ?」

「察するに部屋に残してあった特注のライフルあたりかな?」

親方の話を聞いたワジはロイドに尋ね

「ああ……間違いないだろう。」

尋ねられたロイドは頷いた。

「ギヨームさん、情報ありがとうございました。」

「ああ、いいってことよ。事情は知らんが……ずいぶんと思いつめた顔をしてやがった。仲間のお前達が出来る限り力になってやんな。」

「はい!」

「了解です!」

その後ロイド達は交換屋に向かった。



「おや……さすがというか、早速、辿りついたかい。」

ロイド達の気配に気付いたアシュリーは感心した様子でロイド達を見つめた。

「ということは……やはりランディはこちらに?」

「ああ、昨日の夜に連絡があって朝早くブツを受け取っていったよ。アンタらが訪ねてきたらシラを切って欲しいと頼まれたがそこまでの義理は無いしねぇ。」

「アハハ、確かに。」

「それで……結局ランディは何を注文したんですか?」

「やはり導力式のライフルとか?」

「いや、そんな真っ当なシロモンじゃなかったね。炸裂弾やら徹甲弾、グレネード弾なんかは勿論、火薬を使った旧式の弾薬まで……店にあった在庫を洗いざらい買い占めていったよ。それと闇に流れていた無登録の”エニグマⅡ”、それも2つだね。」

「なるほど……さすがに用意周到だな。」

アシュリーの話を聞いたロイドは考え込み

「ええ……無登録のエニグマではこちらも番号がわかりませんし。」

ロイドの言葉にティオは頷いた。

「でも、ここでも重火器の”本体”は購入していかなかったんですか?

その時ある事が気になったノエルは尋ねた。

「ああ、ウチもそれなりに強力な導力式・火薬式のライフルを扱っているつもりだったが……”赤い星座”の次期団長にはお気に召さなかったようだねぇ。」

「アシュリーさん……」

「ご存知だったんですか……」

「ハ、あたりまえだろ。こちとら情報が命だからねぇ。どうやら古巣に一泡吹かせるつもりみたいだが……”赤の戦鬼(オーガロッソ)”と”血染めの(ブラッディ)シャーリィ”といえば正真正銘の化物どもだ。半端な猟兵ごときじゃ間違いなく返り討ちだろうね。」

「……させません。」

「そうさせないために俺達がいるつもりです。」

アシュリーの言葉を聞いたティオとロイドは真剣な表情で答え

「フフ、さっきからずっとこの調子でね。挑発してもムダみたいだよ?」

ワジは静かな笑みを浮かべて言った。

「やれやれ、そうみたいだね。ま、あの若造がくたばろうがアタシの知ったこっちゃないが……お得意様が減ってもつまらない。せいぜい助けてやるんだね。」

「はい……!」

「情報、ありがとうございました。」

その後ロイド達は交換屋を出て話し合いを始めた。



「……昨夜から今朝にかけてのランディの動きが見えてきたわね。」

「ああ、軽く整理してみよう。」

エリィの言葉に頷いたロイドはメモにランディの動きをまとめてみた。



3時~4時 カジノバー”バルカ”



4時~4時20分 ”ラギール商会”



5時~6時 修理屋”ギヨーム工房”



6時~  交換屋”ナインヴァリ”



「―――おそらく最初にドレイク・オーナーに預けていたトランクを受け取ったんだろう。そのトランクに入っていたのはランディの猟兵時代の得物……多分、IBCでウィルさんがランディにあげた特殊な導力ライフルじゃないかと思う。そして恐らくだがトランクを受け取ってから”ラギール商会”によって弾丸とかを購入したんだろう。」

「普通、そうしたライフルは分解した状態で持ち運ぶはずです。2年ほど使っていなかったため、ランディさんは分解されたユニットを修理工房で整備してもらった……」

「―――うん、間違いないと思う。武装の整備は、戦場での生死を左右するものだから……ランディ先輩なら絶対に線密にチェックしたはずです。」

「最後に、交換屋に寄ってさらに色々と仕入れたみたいだけど……火薬の弾薬も仕入れたってことはかなり特殊なライフルなのかな?」

「ラインフォルト社の中には導力式と火薬式を切り替えられるラインナップもあるし、魔術効果が込められた弾丸は火薬式と導力式、どちらにも対応しているそうだけど……いずれにしても、部屋にあったような相当特殊で強化されたライフルでしょうね。」

ワジの疑問にエリィは考え込んだ後真剣な表情で答えた。

「ああ、それに赤い星座の猟兵達も見たことのない巨大なライフルを使っていたからな。―――よし、これで大体、ランディの状況は掴めたけど……」

「最後にランディさんが交換屋を訪れたのが今朝の6時過ぎ……現在、10時くらいですから4時間近くも経っていますね。」

「今から先輩の足に追いつくのはかなり難しそうですけど……」

「……いや、ランディだっていくらタフでも限度があるはずだ。”赤い星座”に仕掛けるならさすがに仮眠くらいは取るだろう。」

「その上、地形の利を活かして一気に仕掛けてケリを付ける……ま、玉砕覚悟で特攻するつもりじゃなければそのあたりが妥当だろうね。」

「……いずれにしてももうそんなに余裕がないわ。」

「ああ、こうなったらもう一回ラギール商会に行ってエリザベッタさんに頼んでチキさんと連絡を―――」

エリィの言葉にロイドが頷いたその時、ロイドのエニグマが鳴りはじめた。

「まさか……」

「チキさんからなのでは……?」

そしてロイドは通信を始めた。



「―――はい、特務支援課、ロイド・バニングスです!」

「…………お久しぶりです………エリザベッタさんからは既に連絡がいっていると思いますが………」

「……やはり貴女でしたか。どこに行けばいいのですか?」

「―――タイムズ百貨店……そこの屋上にいます…………それではお待ちしております……」

そして通信相手は一方的に通信を切り、ロイドは黙り込んでいた。

「……ロイドさん、今の通信はやはり……?」

「やっぱりチキさんだったの?」

黙り込んでいるロイドを見たティオとエリィは尋ね

「ああ……中央広場のデパートの屋上で待っているらしい。」

尋ねられたロイドは頷いた。

「ええっ……!?」

「……本当にいいタイミングでかけてきたね。やっぱりランディの事を知っていそうだね?」

ロイドの答えを聞いたノエルは驚き、ワジは真剣な表情になった。

「ああ……エリザベッタさんの反応も考えると間違いないだろう。山道に行く前に寄ってみよう。」

「わ、わかったわ。」

「とにかく急ぎましょう。」

その後ロイド達は急いで中央広場のデパートの屋上に向かった………………… 
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