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Three Roses

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第九話 若過ぎる死その一

                 第九話  若過ぎる死
 王は次第に玉座にいる時間が短くなっていた、政務を執ってもだ。
 それを出来るだけ早く終わらせてだ、こう言うばかりだった。
「ではもう」
「今日はですね」
「はい、休ませてもらいます」 
 こう傍の者に告げて退室する、玉座に座っていても。
 顔色は悪い、その玉座にいる時も短くなる一方だった。
 その王にだ、大公はこれまで以上に東西の霊薬や滋養にいいものを薦めるがそうしたものを口にしてもだった。
 王は衰弱する一方だった、その衰弱を見てだ。
 大公は暗い顔でだ、彼の側近達に言った。
「もうだ」
「王は、ですか」
「あの方は」
「何とかなって頂きたいが」
 それでもというのだ。
「あの通りだ」
「日に日にですね」
「まさに」
「まだお若いですが」
「それでも」
「やはりだ」
 苦い顔での言葉だった。
「あの方は」
「そうですか、もう」
「神に」
「そうなることをだ」
 まさにというのだ。
「覚悟しなければならないだろう」
「お子は」
「言うまでもないと思うが」
 これが大公の返事だった。
「最早な」
「そうなのですか」
「ここ半年はだ」
「夜もですか」
「とてもだ」
 それこそというのだ。
「起きられる状況ではない」
「では」
「この半年お一人で休まれている」
「ですか」
「そういうことだ」
 こう話した。
「今はな」
「何とかしなければなりませんが」
「それも、ですね」
「最早」
「うむ、望みはな」
 大公はここからは言わなかった、そして。
 そのうえでだ、こう言ったのだった。
「後はだ」
「はい、大公がですね」
「そうなりますね」
「こうなって欲しくなかった」
 苦い顔での言葉だった。
「私としてはな」
「王にお子が生まれて欲しかった」
「是非ですね」
「そうなって欲しかったですね」
「ロートリンゲン家の血を引いていてもな」 
 婚姻政策により婚姻を結んだ家を乗っ取る形でその領土も民も自分達のものにしてきた家の血、それが入っていてもというのだ。
「それでもだ」
「王のお子だからこそ」
「絶対にですね」
「授かりたかった」
「神から」
「これも神の思し召しか」 
 半ば自分に言い聞かせている言葉だった。 
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