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英雄伝説~光と闇の軌跡~(碧篇)

作者:sorano
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第80話

その後、オルキスタワーの屋上でロバーツ達の協力の元、リンとエオリアのエニグマの位置―――エルム湖の南岸である湿原地帯である事がわかったロイド達はミシェルに報告し、さらにフランにボートの手配も頼んだ。



~遊撃士協会・クロスベル支部~



「何とかボートを確保できたみたいですね?」

通信を終えたロイドにノエルは尋ね

「ああ、フランが手早く手配してくれて助かったよ。」

尋ねられたロイドは口元に笑みを浮かべて頷いた。

「―――ふう、今回に関しては頼りきりになっちゃったわね。でも、本当にいいの?1時間もすればアリオス達が戻ってくると思うんだけど……」

一方ミシェルは溜息を吐いた後真剣な表情でロイド達を見つめて尋ねた。

「いや、それだったら俺達が先行した方がいいだろ。」

「そうですね……どんな状況かもわかりませんし。」

「事は一刻も争う状況でしょうしね。」

ミシェルの言葉にランディ、エリィ、リィンはそれぞれ答え

「ま、彼らが戻ってきたら追いかけるように言っといてよ。」

ワジはミシェルを見つめていった。

「……わかったわ。リンにしてもエオリアにしてもA級に迫る凄腕の遊撃士よ。その2人が連絡も入れずに揃って足止めされている事実……何があるかわからないわ。くれぐれも気を付けなさい!」

「はい……!」

「準備を整えたら波止場に行きましょう。」

その後ロイド達は準備を整えた後、導力ボートで目的地に向かった。



~ラギール商会~



「特務支援課の方々が……あそこに……ですか………妙な事になりましたけど…………まあ、問題はありませんね……」

ロイド達が湿原地帯に向かったその頃、チキは部下から報告を聞いて考え込んでいた。

「にしても、何でそんな所を”銀”を使ってまで調べさせているのよ?」

チキの近くで報告を聞いていたカーリアンは不思議そうな表情でチキに尋ね

「………現在のクロスベルの状況を考えると”彼女”のカンは無視できません………なので、ここは”彼女”を信じてみようかと………」

「暗殺者のカンを信じるってのもヘンな話ね~。」

チキの答えを聞いたカーリアンは苦笑していた。

「――――失礼します!」

するとその時、慌てた様子の新たな部下がチキの部屋に入って来た。

「そんなに慌てた様子で………どうしたの……ですか……?」

部下の様子を見たチキは不思議そうな表情で尋ね

「その……今しがたマインツ方面の監視している者達から信じ難い報告がありましたので。」

「信じ難い報告?」

部下の話を聞いたカーリアンは首を傾げ

「………………………―――詳しい話を聞かせてください。」

チキは考え込んだ後、真剣な表情で部下を見つめて言った。



~エルム湖~



一方その頃ロイド達がボートで先へと進んでいたその時、雨だった天気が晴れだした。

「……天気予報の通り、午後からは晴れましたね。」

「これも女神の導きかもしれねぇな。正直、どんな危険が待ち受けてるかわからねぇ。」

ティオの言葉にランディは溜息を吐いて頷いた後目を細め

「ま、雨の中で探索するよりはマシかもしれないね。」

「そうだね~。雨の中、探索していると体力も奪われるし……」

ワジの言葉にシャマーラは頷き

「それにお二人が衰弱している可能性もありますからね………」

「……無事だといいのですが……」

考え込みながら言ったエリナの言葉にセティは不安そうな表情で言った。

「……可能性があるとしたら”幻獣”でしょうか、それとも……」

その時ノエルは不安そうな表情で呟き

「正直、今の状況だとどんな可能性も考えられそうね……」

「……下手をすればその”結社”と対峙する可能性もあるって事ね。」

疲れた表情で言ったエリィの言葉に続くようにエルファティシアは目を伏せて呟いた。

「……アリオスさんたちの到着がいつになるかわからない。なるべく俺達が先行してリンさん達の無事を確認しよう。場合によったら……警備隊にも連絡する必要があるかもしれないな。」

「……はい。」

「お姉さんたち………どうか無事でいてくれよな。」

そしてボートがしばらく進んだ。



「……これは……湿度の急激な上昇を確認。注意してください……!」

ボートがある程度進むと何かを感じたティオが警告し

「なに……!?」

警告を聞いたロイドが驚いたその時、周囲は霧に包まれた!

「これは……霧!?」

「さ、さっきまであんなに晴れていたのに!?」

「一体どうなっているんだ!?」

「まさか………結界の類!?」

霧に包まれた状況を見たワジは厳しい表情をし、エリィとリィンは驚き、エルファティシアは信じられない表情をした。

「ロ、ロイドさん………どうします!?」

「くっ………速度を落として慎重に進んでみてくれ!ティオ、岩壁の接近を感知できるか!?」

「はい、何とか……!」

ノエルに確認されたロイドはティオに尋ね、尋ねられたティオは頷き

「―――ロイドさん!私が飛行して先導しましょうか!?」

「頼む!ただし、視界がかなり遮られているから俺達のボートを見失わないように細心の注意を払ってくれ!」

エリナはロイドに申し出をし、申し出を聞いたロイドは指示をし

「わかりました!」

指示をされたエリナは空へと舞い上がって、ボートの進む先を飛行し始め

「こうなったらもう、腹をくくるしかねえな……!」

ランディは目を細めて呟いた。その後ボートは霧の中、岩壁に接近し、ロイド達はボートから降りた。



~湿地帯~



「こ、これは……」

ボートから降りたロイドは厳しい表情をし

「そ、そこにあるのが、リンさん達が乗って来たボートみたいだけど……」

エリィは疲れた表情で呟き

「……まさか……こんな事になっているとはねぇ。」

ワジは厳しい表情で呟いた。ロイド達が見た光景―――そこはなんと幻獣が現れた時に必ずあった蒼い花―――『プレロマ草』が一面に咲いていた異様な光景だった!

「おいおい……俺ら、夢でも見てんのか……?」

「まるでおとぎ話の中にいるみたいですけど……」

ランディは目を細め、ノエルは疲れた表情で呟き

「『プレロマ草』がこんなにあるなんて………!」

「まさか”幻獣”はここから全て現れているのでしょうか……?」

シャマーラは驚き、セティは考え込んでいた。

「し、信じられません……まるで空間自体の構成が現実とは違っているような……」

「ええ…………もはやこの空間だけこの世界と”異なる”といってもおかしくないでしょうね。」

ティオが呟いた言葉に頷いたエルファティシアは目を細めた。



「プレロマ草………いつからこんなに繁殖していたんだ?でも、そうか……ヨアヒムがグノーシスの原料を採取していたのは―――」

ロイドは厳しい表情でプレロマ草を見つめ、そして推理したその時

「まあ、この場所と考えて間違いはないだろう。」

なんと”銀”がロイド達の目の前に現れた!

「な……」

「あ、あの時の……!」

「”(イン)”……どうしてあんたが!?」

銀を見たエリィやノエルは驚き、ロイドは信じられない表情で言った。

「それはこちらの台詞だ。”蛇”どもの影と不良リーダーの魔人化……各地で咲き始めた蒼い花と不可思議な”幻獣”の出現……それらの気配を辿ってきてみればお前達に出くわすとは……」

「へえ……?」

「そんじゃあこの場所が怪しいと睨んでわざわざ踏み込んできたってか?」

銀の話を聞いたワジは目を丸くし、ランディは目を細めて尋ね

「その通りだ。」

尋ねられた銀は答えた。

「そ、それよりも………」

「”黒月”はクロスベルから追い出されたのに、どうしているの~!?」

一方エリィは不安そうな表情をし、シャマーラは驚きの表情で言った。

「フッ……私の腕を必要とする組織は”黒月”だけではないという事だ。」

「まさか………!」

銀の話を聞いたセティは何かに気付いたのか目を見開き

「あんたの今の雇い主は”ラギール商会”か……!」

ロイドは厳しい表情で言った。

「………”闇夜の眷属”を主とした”社員”がいる”ラギール商会”………クク、人外魔境とはまさにあそこの事だろうな?その中に”東方の魔人”と恐れられる私が紛れ込んだところで違和感はあるまい?」

ロイドの言葉を聞いた銀は口元に笑みを浮かべて呟き

「なんてこと………」

「そ、そんな………今度はよりにもよってメンフィル帝国の裏組織にあの”銀”がいるなんて……」

「……チキさん達は一体何を考えているのでしょう……?」

「……恐らく、リウイ陛下達も承知済みなんだろうな………」

「前いた組織をあっさり見限って、敵対していた組織に雇われるとは中々肝が座っているじゃねえか……」

「―――ま、暗殺者ってのはそんなものじゃないかしら?」

「……というか、”ラギール商会”自体でも戦力過剰としか言いようがないのに、そこに”銀”さんまで加わったら反則としか言いようがないじゃないですか。」

銀の説明を聞いたエリィは青褪めさせ、ノエルは悔しそうな表情で銀を睨み、エリナは不安そうな表情で考え込む、リィンは真剣な表情で呟き、ランディは目を細め、エルファティシアは冷静な表情で言い、ティオはジト目で銀を見つめて言った。

「………あんたがここにいるのもチキ史との”契約”か?」

一方ロイドは真剣な表情で考え込んだ後尋ねた。



「その通りだ。ふむ、しかしお前達の方は少々事情が異なるようだな?」

「え、ええ……」

「この際だから事情を説明するけど……」

ロイド達は銀にリンとエオリアが行方不明になった経緯を説明した。

「―――なるほど、あのボートは遊撃士どものものだったか。クク、成程………この有様といい、どうやら核心に近づいているのは確かなようだ。」

「核心……」

「なぜ蒼い花――――”プレロマ草”がクロスベル各地で咲き始めて、”幻獣”が現れ始めたのか……それがクロスベルにおいて”どんな意味を持つか”だね?」

銀の話を聞いたノエルは真剣な表情をし、ワジは尋ねた。

「フフ、その通り。これも一応は”ラギール商会”との契約ではある。遊撃士どもはお前達に任せるとして、私は先に―――」

尋ねられた銀が答えかけたその時

「―――いや。”銀”……やはりここは一緒にいかないか?」

なんとロイドが驚くべき提案をした。

「ロ、ロイドさん!?」

「おいおい、マジかい?」

提案を聞いたノエルは驚き、ワジは目を丸くして尋ねた。

「はぁ、何となくそんな事を言いだしそうな気がしたけど……」

「まさに予想通りでしたね。」

「ったく、こういう時だけは柔軟すぎるっつーか何つーか。」

「警察官とはとても思えない提案ね♪」

一方エリィはジト目でロイドを見つめ、ティオは呟き、ランディは苦笑し、エルファティシアはからかいの表情でロイドを見つめた。



「……バニングス。何を勘違いしている?そもそも私とお前達は立場も異なれば利害も違う。病院の時と違って、お前達に協力する利点など―――」

ロイド達の会話を聞いていた銀は呆れた様子で指摘したが

「無い――――と言い切れるのか?リンさんとエオリアさんはA級に届くほどの凄腕だ。二人合わせたら、あのアリオスさんにも匹敵する腕前を持っていると見た。その二人が消息を断つほどの危険が待ち受けているとしたら……本当にあんた一人でも大丈夫だと断言できるのか?」

「………………………」

ロイドの話を聞いて黙り込んだ。

「まあ、緊急事態ではありますし。」

「リンさんたちが無事だったら情報を手に入れることもできるしな。」

「あくまで効率重視なら確かに協力はできるはずだわ。」

「それに”ラギール商会”に雇われているのだったら、もしかしたらウィルフレド様のご息女であるセティ達を陰から護衛する事も依頼されているんじゃないのか?」

そしてティオ、ランディ、エリィ、リィンはそれぞれ意見を言った。

「……クク……『特務支援課』……どうやら随分とリーダーに感化されているようだな?」

するとその時銀は口元に笑みを浮かべて言った。

「そ、そうかしら?」

「ま、否定はできんかもなぁ。」

「……少々不本意ですが。」

銀の言葉を聞いたエリィは顔を赤らめ、ランディは苦笑し、ティオはジト目で答え

「いや、だからなんで俺のせいになってるのか疑問なんだけど……」

ロイドは戸惑い

「あはは。」

「フフ……これも人徳だろうねぇ。」

「確かに……」

「そういう意味ではヴァイスハイトとも良い勝負よ♪」

ノエルやワジは笑い、リィンは静かな笑みを浮かべ、エルファティシアはからかいの表情でロイドを見つめ

「ロイドさんの人タラシは凄いもんね♪」

「ええ……それこそ父様と並ぶほどかと……」

「そういう点も含めて色々とお父さんと似ていますね……」

シャマーラは嬉しそうな表情で言い、エリナは静かな笑みを浮かべ、セティは苦笑していた。

「―――よかろう。此度も一時的に同行しよう。だが”風の剣聖”や”嵐の剣神”が追いついてきたら私は去る。それでいいな?」

「ああ、わかった。」

「しかしこの人数だとさすがに小回りが利かねぇな。魔獣に襲われた時なんか身動きが取れなくなりそうだ。」

銀の答えにロイドが頷いたその時、ランディは考え込みながら言い

「なら、二人程度はここに残った方がいいかもしれませんね。ボートの見張りも必要かもしれませんし。」

ランディの話に続くようにノエルは提案した。

「いいんじゃない?”風の剣聖”達が来た時のための連絡役にもなりそうだし。」

「わかった、編成を考えてみよう。」

ワジの言葉に頷いたロイドは仲間達と共に先を見つめ

(あの技をちゃんと教えてもらった借りをまだちゃんと返せていない……何としてもリンさん達を見つけて安全を確認しないと……!)

決意の表情になった。



その後ボートの近くにリィンとエリナを待機させたロイド達は”銀”と共に先を進み始めた……… 
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