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普通だった少年の憑依&転移転生物語

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【ハリー・ポッター】編
  164 一年目の終わり

SIDE ロナルド・ランスロー・ウィーズリー

〝“賢者の石”防衛戦〟の後──ダンブルドア校長に詳しい話を事情聴取された後、マダム・ポンフリーに〝問題なし〟と太鼓判を押されてから数日。〝緑〟一色の大広間にて、俺とアニー、ハーマイオニーの三人は〝期待〟と〝不安〟が()い混ぜになった──どうにも形容しがたい気分で椅子に腰掛けていた。

……ちなみにダンブルドア校長から〝なぜアニーに変身したのか〟と()かれた時は、〝目立ちたくないから〟と言ったり。

閑話休題。

「……何点で済むのかしら?」

「三人合わせて100点で済めば御の字だな」

……なんて、大して後悔した様子を見せていないハーマイオニーと〝深夜徘徊(こうそくいはん)〟で引かれるだろう点数について予想していると、教職員の席の真ん中に座っていたダンブルドア校長がふと立ち上がり…

――「……また一年が過ぎた!」

いきなり張り上げられた声。俺は一応〝寮対抗杯について〟の事だと予想は出来ているが、他の一年生の面々と同様に耳を傾ける。

「皆にご馳走を堪能してもらう前に、この老体の戯言(たわごと)をお聞き願おう。……そう──寮対抗杯の件についてじゃ。諸君らも(さぞ)やお腹を空かせていることじゃろう、故に手早く済ませたく思う」

スリザリン生をちらり、と見てみれば、マルフォイを筆頭として、スリザリンの生徒の誰も彼もが勝ち誇った様な笑みを浮かべている。
……スネイプ先生もまた、ニヒルな笑みを浮かべているのを見逃さない。

「……まずは、4位、ハッフルパフ──352点! 3位、レイブンクロー──426点! 2位、グリフィンドール──492点! ……そして1位、スリザリン──512点!!」

スリザリンのテーブルから、どっ、と大歓声が上がる。……そんなスリザリンに反比例するかの様にハッフルパフ、レイブンクロー、グリフィンドールのテーブルはお通夜ムードだ。

1、2分もすれば、(やが)てスリザリンの歓声も止み──頃合いを見計らったところで、ダンブルドア校長は言葉を生徒の皆に対して投げる。

「スリザリンはこれで7年連続で寮対抗杯を獲得する事になるの。……ようやった──本当にようやった。……しかし、ここ最近の生徒の働きを(かんが)み、点数を計算し直さねば(いささ)か不公平じゃろうて」

〝だがしかし〟と、いきなり声音(トーン)と話題を変えるダンブルドア校長を、スリザリンの生徒達は(いぶか)しむように見る。

「ミス・ハーマイオニー・グレンジャー──紫炎と黒炎に退路と進路を塞がれた状況下で、(きわ)めて論理的な思考を下せる、その智慧(ちけい)に50点を与えよう」

一瞬の静寂の後、グリフィンドールのテーブルから──だけではなく、ハッフルパフとレイブンクローのテーブルからも、先程のスリザリン以上の歓声が沸き上がる。……スリザリンに優勝杯を渡すのを阻止できたからだろう。

……加点されたハーマイオニーは林檎みたいに真っ赤だった。……ふと、教職員席に座っているマクゴナガル先生を見てみれば、呆然としているのがここからでも判る。

しかし、まだまだダンブルドア校長からの駆け込み加点は止まらない様で──

「ミスター・ロナルド・ウィーズリーには無類の駒捌(さば)きと、三歩四歩先を見透(とお)すその叡知(えいち)に対して──ミス・アニー・ポッターには見事な箒捌きと、友と力を合わせながらも眼前の強敵に挑めるその瑕疵(かし)無き精神性に対して、二人合わせて120点を与えよう」

(〝二人合わせて〟120点──ねぇ…。……ダンブルドア校長も味なマネを…)

ダンブルドア校長は、〝有名人(アニー)〟と一緒に加点しては──その〝120点の内訳〟をあやふやにしてくれる。……どうやら、俺の〝目立ち過ぎたくない〟と云う思いを正しく理解してくれた様である。

〝スリザリン憎し〟だった三寮の歓声も、留まる事を知らずに上昇していく。先程とは打って変わって、今度はスリザリンのテーブルからお通夜ムードが漂う。……どうやら季節外れの冬眠に入ってしまったらしい。

ダンブルドア校長も、広間の天井に掛かっている魔法を吹き飛ばす勢いのテンションを、さすがに見かねたらしく──ダンブルドア校長はこんな事を(のたま)う。

「しかし、大変残念な事に、それは〝校則違反〟の元で行われた事でもある。……さすれば、減点もせねばならぬ。……ミス・アニー・ポッター、ミスター・ロナルド・ウィーズリー、ミス・ハーマイオニー・グレンジャー──一人につき、20点減点」

「ふぅ…」

「良かった…」

「……助かったわ」

俺とアニーとハーマイオニーは予想以上に小さい失点に、小さく安堵(あんど)の息を漏らす。

しかし他の──主にグリフィンドールとスリザリンの生徒は、一気に60点が減点され、グリフィンドール生は当たり前として──中途半端な期待を持たされたスリザリン生からはブーイングが巻き起こる。

それでもグリフィンドールの順位は〝492+50+120-60=602〟──と、スリザリンに90点もの差で1位になれたと云う事実に変わりはないからか、グリフィンドール生のブーイングはそこまで大きくない。

……(むしろ)ろ、ぬか喜びしていたスリザリンからのブーイングの方が大きいまである。

更に──

「おお、(わし)とした事がもう一人の勇者について言及するのを忘れておった」

もう90点と云う大差で負けているスリザリン。これから行われるであろう死体蹴りを前以て察知したのか、スリザリン生の顔がいっそう暗くなる。……マルフォイなんかは、もうマダム・ポンフリーのところに連れていった方が良いような気さえしてくる。

「勇気にも色々ある。……確かに強大な敵に立ち向かうには勇気が必要じゃ。……しかしじゃ、友に立ち向かうのもまた、多大なる勇気が必要じゃろうて──ミスター・ネビル・ロングボトムのその勇気に10点!!」

そのトドメとばかりの加点で、改めてグリフィンドールは沸き上がる。ダンブルドア校長から直々お褒め言葉にネビルは、その丸っこい顔も相俟って──()れたトマトみたいに真っ赤にさせている。

ちらり、と、改めてマクゴナガル先生を見てみればハンカチを片手に、その双眸から涙を滂沱(ぼうだ)の如く流していた。

……マクゴナガル先生がどれだけ寮対抗杯を切望していたかが窺える。

「……さて、儂の脳内の計算機がストライキを起こしていなければ、この広間の装飾は少々おかしいじゃろう」

ダンブルドア校長はそう柏手(かしわで)を一つ打つと、広間の装飾をスリザリンの〝緑〟からグリフィンドールの〝赤〟へと変える。……加点された俺達4人は周りの生徒から肩をばしばし、と叩かれたりして、やたら誉めちぎられている。

……()くして、最高のパーティーが始まるのだった。

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

「……それにしても、もう一年か」

フレッドやジョージと全生徒に配られた〝休暇中は魔法を使わない様に〟と云う注意書に辟易(へきえき)しては荷造りにかかる。

「……やっぱり魔法って便利だよな──“詰めろ(パック)”」

……(もっと)も、その荷造りさえ魔法で一瞬なのだが。

スリザリンに100点差と云う、歴史的らしい大差を着けて──ハッフルパフとレイブンクローからも惜しみ無く称賛されたあのパーティーから数日が経過して、試験の結果が発表された。

順位のトップ3は、上から順に俺、ハーマイオニー、アニーだった。ちなみに2位と3位の二人は殆ど〝とんとん〟である。……俺が1位になれたのは、〝変身術〟の実技でマクゴナガル先生が気に入りそうな──実に豪奢(ごうしゃ)な〝嗅ぎたばこ入れ〟を作ったからだろう。

同室三人──ネビル、シェーマス、ディーンも無事試験をパス出来た上に、テストの出来自体もかなり良かったらしく、その三人からは深く礼を言われたり。

……ちなみに、こちらも大体〝とんとん〟ではあるが──その3人衆で一番成績が良かった32位のネビルも〝魔法薬学〟の下から数えた方が明らかに早い成績は、元々得意だったらしい〝薬草学〟と、最近めきめきとその成績を伸ばす様になった〝妖精の呪文〟で試験の点数を補えたのだとか。

閑話休題。

(……さて、ドビーはどうするか…)

今考えているのは、今夏にアニーの家──もとい、ダーズリー家に現れるだろう屋敷しもべ。

……どうにも、〝17歳未満の者の周囲での魔法行為を嗅ぎ出す呪文〟とやらが掛けられているらしいのだ。……ドビーが現れて魔法なんか使われたりしたら、すぐに魔法省へと通知が行ってしまうだろう。

(……“デスペル”やら“シャナク”やらを掛けたマジックアイテムでも渡しておくか…?)

例えば、そのマジックアイテムを指輪にするなら、その指輪を中心に“デスペル”の効果範囲を半径2メートル程の球状に設定して──常時発動出来る様にしてやれば、MPが続く限り、それで常時打ち消す事が出来ると予想。

消費MPは、指輪の半径500メートルに存在する人間を含めた動物から、【ドラゴンボール】に出てきた“元気玉”の要領で、“アスピル”やら“マホトラ”やらで少しずつ並行して奪い、その魔力で賄えば良い。

……プリベット通りの様な住宅密集地ならきっと問題ないだろう。……後はそれにON/OFF機能を着ければ完成だ。

「後は──」

後、気になる事があるとするならば、それは【レーベンスシュルト城】の事。

「……そろそろ〝別荘〟を使うのも自粛するか…?」

〝あったりなかったり部屋〟──〝別荘〟を使っての訓練は、常人の24倍時間を使える──が、それを裏返せば常人の24倍年を重ねるハメになる。

アニー、ハーマイオニーと一緒に〝別荘〟に入ったのは計164回。それは二人が164日分、人より日を重ねたと云う事だ。……来年、開校当初から籠りきるのは、さすがに(まず)い。

……かと云って、入る度にスキルで寿命を態々(わざわざ)止めたりするのも億劫(おっくう)である。

「さて、どうするかね──っ…!」

いつもみたいに現実逃避しようとした瞬間、天啓が舞い降りる。……ある意味では逆転の発想とも云える。

「……そうだ──〝他の何か〟に時間を吸わせれば…っ!」

某≪半純血のプリンス≫宜しく〝独自魔法(オリジナルスペル)〟を開発する必要があるが、それもまた面白くはある。……その魔法が完成するまで〝別荘〟は〝課題消化部屋〟として割りきってもいい。

「……俺が目指すのは〝身代わり〟──または〝吸収〟の魔法」

新たなやりがいを見つけた俺は、【ホグワーツ魔法魔術学校】から、ほんの少しの期間だけ離れる事となった。

SIDE END 
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