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第二章

「後輩の娘が」
「あいつになの?」
「いつも斎藤にあれこれ聞いててね」
「部活のことで」
「そう、楽器のことで」
 吹奏楽で演奏しているだ。
「それのことで聞いてるらしいから」
「じゃあ」
「その娘がね」
「斎藤に告白したの」
「そうかもね」
 こう光に話した。
「それでそんな話が出たのかしら」
「そうなのね」
「まあ斎藤が受けたかどうかは」
 それはというと。
「わからないわ」
「実際はどうかは」
「ええ、ただね」
「ただ、なのね」
「この話ひょっとしたらよ」
 かなり真剣な目でだ、柚は光に言った。
「本当かもね」
「そうなのね」
 光はここまで聞いてだ、その顔を蒼白にさせてだった。
 そしてだ、すぐにだった。
 動くことにした、そしてだった。
 駿がクラスを出た時を見計らってだ、何気なくを装って
 彼の隣に来てこう告げた。
「ねえ、今日の放課後ね」
「放課後?」
「ちょっとあんたに会いたい人がいるらしいわよ」
「俺になんだ」
「そう、だからね」
 それで、というのだ。
「放課後部活の前にね」
「その人と会えるか」
「どうなの、そこんとこ」
「うん、今日も部活だけれど」
 それでもとだ、事情を知らない駿はぼんやりとした調子で答えた。
「ちょっとならね」
「会えるのね」
「うん、誰かわからないけれど」
「そう、それじゃあね」
 駿がいいと言うのを聞いてだ、光は。
 そのことに安堵しつつだ、己の本音を隠したままさらに言った。
「場所は屋上ね」
「屋上?」
「この校舎のね」
 二人がいるクラスのというのだ。
「そこでよ」
「屋上なんだ」
「そこに行ってね」
「放課後にだね」
「そうしてね、いいわね」
「わかったよ」
 やはり事情を察しないまま答えた駿だった。
「誰かわからないけれど」
「それなら」
 こうしてだった、光は状況を整えた。そのうえでだった。
 後は放課後を待った、その間一日千秋の思いだったが。
 何とか堪えた、そして。
 駿が屋上に向かったのを見てだ、自分もだった。
 こっそりと、逸る気持ちを抑えて彼の後に屋上に向かった、それから。
 屋上に出た駿のところに来てだ、死にそうな顔で言った。
「来てくれたのね」
「あれっ、沖田じゃない」
 駿はその彼女を見て目を瞬かせた。
「ひょっとして」
「そうなの、隠して悪かったけれど」
「俺に会いたいっていうのは」
「私よ」
 駿の前で決死の顔で言った。 
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