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黄鶴楼 

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第七章

「私の遠いご先祖かも知れないですね」
「だからだね」
「はい、こうした話が残っていました」
「そうだったんだね」
「それで若旦那にもお勧めしました」
 黄鶴楼に登ることをというのだ。
「それでなのです」
「成程ね」
「ご先祖も願ったかも知れないですね」
 辛の、その彼もというのだ。
「何かを」
「そうなんだね」
「はい、それが何かは知りませんが」
「ひょっとしたら」 
 ふとだ、劉は察して言った。
「あのご老人がそうかもね」
「そうかも知れないですね」
「今もいるかな」
 黄鶴楼、その最上階の方を振り向いて思った。
「あの人は」
「いるんじゃないでしょうか」
「仙人なのかな」
 劉は老人についてこうも思った。
「やっぱり」
「そうですね、やはり」
「そう思っていいよね」
「私が祖父様に聞いた話でもです」
「あの人がいたんだね」
「私は会ったことがないですし祖父様も代々聞いてるだけで」
 それこそ誰もというのだ。
「会ったことはないそうですが」
「三国時代の時の辛さんのご先祖様が会った位かな」
「多分そうだと思います」
「じゃあやっぱり仙人かそれに近い人だね」
「そうでしょうね」
「孫権公と言ってたしね」
 三国時代の呉の皇帝だ、この時代では三国志演義という羅貫中が書いたとされている書からも有名である。
「やっぱりね」
「相当な長生きで」
「仙人かそれに近い人だね」
「ですね、じゃあ屋敷に戻って」
「朝食を食べて」
 劉はそれからのこともだ、辛に話した。
「また学問をしよう」
「ではお励み下さい」
「願ったしね」
 微笑んでだ、劉は辛に言った。そしてだった。
 彼は家に帰ると朝食を食べ学問に励んだ。この日に願ったせいか彼は会試に及第し遂に殿試にも及第し進士となることが出来た。朝廷において皇帝の傍にいて優れたかつ清廉な者として知られた。そうなったことはこの日にあったことは彼だけが知っていることだった。


黄鶴楼   完


                      2016・5・15 
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